2011/06/28 00:00

musiquo musiqua インタビュー

「僕はこれでいいの? 」帰路の途中、ふと問いかけられる。musiquo musiqua、田村一哉(Vo,G)の声は、時に戒めるように激しく、時に寄り添うように優しく、聴き手に問うてくる。

2006年、大学で出会った田村一哉、中根洋哉(Ba)、七倉壮(Dr)により結成されたmusiquo musiqua。今では卓越した演奏テクニックを持つ彼らだが、田村以外のメンバーはオリジナルのバンドを組むのは初めてだったという。しかし彼らはそのテクニックを持ちながら、技を誇張するような演奏ばかりをするのではなく、田村の飾らない歌声に寄り添うように感情的な音を鳴らす。実は僕は高校時代にドラムの七倉とバンドを組んでおり、デモ音源ではレコーディング・エンジニアを務めるなど、このバンドを結成当初からずっと見守ってきた。この感慨深い初の全国流通となる彼らの1st mini Album、その名も『musiquo musiqua』のリリースにあたり、musiquo musiquaの今昔に感じる変化について話を伺った。

インタビュー&文 : 武居健太

musiquo musiqua / musiquo musiqua
09年、SUMMER SONIC出演を果たし、ライヴ・シーンで確実に評価を上げてきた超絶テクニック・スリーピース・ロック・バンド、musiquo musiqua初の全国流通ミニ・アルバム。ゲストに、残響レコード輩出のハイスイノナサの鎌野愛(Vo)、田村知之(Key)の2人をゲストに迎え、新たなサウンドを収録した渾身の最新作。

1. すみっこ / 2. 広がる世界 / 3. sss / 4. 小さな声 / 5. 今日と明日

☆アルバム購入特典者には特典として田村一哉手書きの歌詞カードが付いてきます!


現時点での僕らを全部吐き出す

――今まではインストゥルメンタルの楽曲が多かったけど、今作は5曲中4曲がうたものですね。この変化が起こったのはいつごろですか?

中根洋哉(以下、中根) : インストであることに特にこだわりがあった訳ではないんですけど、確かにインストの曲は多かったですね。歌を乗せるかどうかは曲を作りながら話し合うんだけど、田村(一哉)も結構いい声をしているので、これも一つの楽器だと思って、特徴として足していった感じですね。あえてというより、結果として歌ものが多くなりました。
七倉壮(以下、七倉) : メロディありきではなく、バック・トラックから作るので、乗りそうだと思ったら歌を乗せる。でも最近は、最初から歌を乗せるつもりで曲を作り始めたりと、一つの方法ではなくなってきました。先にある程度コンセプトを決めて取り組むことが多くなった気がするな。

――最初はコンセプト立てて作ることはなかった?

中根 : 思い付きで始めることが多かったかな。
七倉 : 作りながらイメージを固めていく感じでした。

――歌詞から作ることもありますか?

田村一哉(以下、田村) : メロディと歌詞はどちらを先に、ということはあまりなく、最近はバック・トラックも含め全部同時進行ですね。バック・トラックを聴いて言葉が出てくるなら歌詞から作るし、逆に乗っけやすいメロディを思いついたらメロディから作るし、半々ぐらいです。

――イメージを膨らませるためのネタになるのは、やっぱりセッション?

田村 : そうですね。そこからもらったイメージを元に曲の展開を考えることが多いかな。
中根 : 曲を作るのは本当にみんなでやっていて、AメロからBメロまでは僕が作るけどサビは田村が作ったり、曲一つにしても一人が作るということは無いんです。その時誰が一番いいものを思いつくかによる。
田村 : 思いついたもん勝ちですね。

――珍しい作り方ですね。曲によって主軸になる人が変わるっていうのは聞きますけど、曲の中で分担するというのはあまり聞いたことがない。

七倉 : 確かに、そう言われてみれば。
田村 : 行き詰まったら他の人に助けを求めるんです(笑)。

――助け合いの精神ですね(笑)。ちなみに先ほどコンセプト立てていると話していましたが、今作のコンセプトは?

田村 : 現時点での僕らを全部吐き出す。musiquo musiquaが持っているバンドの要素をまんべんなく出そうと思いました。たとえば超絶技巧って謳っているのにテクニックを全面に押し出した曲がないから、「sss」のような演奏を見せつける派手なインスト曲を作ったり、暗い曲が多いから明るい曲を作ったり。そういう工程で、バラエティ豊かな作品が出来たと思っています。

こだわりを達成した上で、さらに新しい要素を足せるようになった

――今まであまり無かったギターの多重録音や、ゲスト・ミュージシャンを招いて新しい楽器を取り入れたり、新しいことを始めようとしている印象を受けました。

七倉 : 「今日と明日」に関しては、曲が完成してから「これはピアノと女性の声が欲しいな」という話になって、ゲスト・ミュージシャンを招くことにしました。

――ハイスイノナサの鎌野愛さん(cho)と田村知之さん(piano)ですね。この方々にオファーしようとおもったのはなぜ?

七倉 : 元々対バンとかで仲良くさせてもらったりしていて、鎌野さん可愛いし、みたいな(笑)。
田村 : 華が欲しかった(笑)。好きなミュージシャンを2人も呼べて、レコーディングもすごく楽しかったです。

――ライヴにゲストで呼ぶ予定はありますか?

七倉 : 彼らもレコーディング中らしく、今回のツアーでは難しかったんですけど、いつか共演したいですね。

――これから他にどういう楽器の人と共演したいですか?

田村 : 木琴とかビブラフォンとか。あと俺がピアノ弾くとかもありですね(笑)。

――田村さん、ピアノ弾けるんですか?

田村 : 全員やってたんです。みんな初めての楽器はピアノ。

――ああ、でも3人ともベースの楽器にピアノがあるというのは音楽を聴いていてもわかる気がしますね。骨太な音が一本あるのではなく、繊細なものの積み重ねという感じ。

田村 : ピアノの響きはたまんないですね。ギターのクリーン・トーンで出したい音の究極は、ピアノのクリーンですからね。じゃあピアノ弾けって話ですけど(笑)。

――昔は「3人で鳴らすサウンドが良い」って雰囲気があったんですけど、気持ちに何か変化があったんでしょうか?

中根 : 確かに「3人のサウンド」ということにこだわりはあったと思います。そこから徐々に趣向も変わってきて、それに伴って作る曲のフレーズも変わってきて、新しい挑戦をする余地が生まれたというか、新しい表現ができるようになったんですよね。

田村 : 僕ら全員、自分のパートのメロディにすごいこだわっているんですけど、プラスできるものがあるのならプラスしようと思ったんです。こだわりが無くなったとか捨てた訳じゃなくて、こだわりを達成した上で、より良くするために足しました。こだわり自体に変化があった訳ではないですね。

――歌詞について聞こうと思うんですけど、作っているのは田村さん?

田村 : そうです。

――他のメンバーから意見されることはありますか?

田村 : 中根は全然ノー・タッチで、七倉からはたまに注文があります。でもメロディーを作ってるのが僕で、メロディ―の元となるイメージを一番知っているのもやっぱり僕なので、基本的に歌詞は任せてもらっています。

――何気ない日常のワン・シーンから内面の弱さまで描かれていて、曲を聴いているとこっちが問われているような感覚になるのですが、これは田村さんの実体験や日々の暮らしから生まれているのでしょうか?

田村 : そうですね。僕自身がそのまま出ています。

――飾らなくていい歌詞だなと思います。どんな時に考えているんですか?

田村 : 散歩したり、曲のデモを聴きながら夜中に徘徊したり、ボケっとしてる時。机に向かってガリガリ書くことはないですね。リラックスした状態の時に言葉が出てきます。

バンドが柔軟になり始めている

――曲ごとの話をさせてください。まず、1曲目の「すみっこ」なのですが、この曲はPVもありますよね。

中根 : この曲は、今の僕らを一番凝縮した曲です。テクニックあり、メロディあり、切れ味あり、エモーショナルな要素もプログレッシヴな要素もあり。楽曲的にはちょっと特殊と言われますが、musiquo musiquaとして僕らがやりたい要素を全部盛り込んだ曲です。

――1曲目の位置にあることや、初の音源『the vision, picked up by the wayside』にも収録されているあたり、ずっと大切にしてきた曲だというのがすごく伝わります。2曲目「広がる世界」は? ポジティヴな要素が強い曲ですよね。

田村 : このアルバムの中で唯一と言っていいほどの明るい曲だと思います。歌詞も前向きで、ノリもすごく軽やか。これを聴いてルンルンした気持ちになって欲しいです。

――では「SSS」は? 一番超絶技巧が光っている曲ですよね。

中根 : ギターのタッピングから始まる曲なんですけど。目で見て、耳で聴いて「おお! 」と思ってもらえるような面白いことをやろうと思って作りました。
田村 : 割と今まで玄人チックな渋いテクニックを追求してきたんですけど、最近はもうちょっと目立ちたい欲が出てきて(笑)。それでベースの中根が両手タッピングをやり始めて、「じゃあ俺も」ってタッピングで張り合いだして、そのまま勢いに任せて作った曲ですね。

――「小さな声」は聴いた時、「広がる世界」に反してダークな印象を受けました。

田村 : 気分がダークな最中に書いていた曲なので、いろいろ溜まってたんだと思います。「すみっこ」はサウンドも展開もころころ変わる曲で歌詞も抽象的な感じなんですけど、「小さな声」はもろに自分の内面が出ている。ただ僕の心情としては、諦めないぞという気持ちがありまして。

――何を諦めたくなかった?

田村 : 音楽に対してもそうなんですけど、何でも落ち込んだままにしたくないという気持ちが出ていると思います。そういう負のパワーで作り始めたんですが、作ってるうちに楽しくなってきた曲でもある。それは音楽にも反映されていて、細かなフレーズもあるんですが、全体的にはみんな爆発している感じ。作品の中で一番エモーショナルな曲になったと思います。

――では、アルバム最後を締める「今日と明日」について。

田村 : 最初に持ってきたのは中根なんですけど、メロと展開を決めたのが俺で、基本的なリズムを作ったのが七倉。みんなで作った曲です。
中根 : ピアノや女性コーラスも入って、今までのmusiquo musiquaに全然無いサウンドになったと思います。それでも自分らしさは残しつつ、新しい境地に辿り着けた曲。
田村 : あとお休みソングを書きたくて。「明日頑張っちゃおうかな」って思える曲を書きたかった。

――では、次回作のことを考えていますか?

七倉 : けっこう面白くなりそう。バンドが柔軟になり始めている感じがあって、今作っている曲も今まで作ったことが無い感じなので、次の作品も楽しみに待っていてください。

繊細に重なる音が感情を揺らす

LITE / Rabbit

日本を代表するポスト・ロック・バンドLITEが、BOOM BOOM SATELLITESのエンジニアの三浦カオル氏を共同プロデューサーに迎えてレコーディングした新曲を配信でリリース。シンセ/パーカッションなどを導入したサウンドをさらに進化させ、それらの音をシンフォニックに重ねて行き、ダイナミックなハーモニーと緻密なリズムを生み出した。

虚弱。 / donguribouya

平成生まれ女の子4人組インスト・ポスト・ロック・バンド、虚弱。のセカンド・デモ『donguribouya』がKilk Recordsよりリリース! 音だけ聴くとまさかそんな若い女の子たちが作っているとは思えないような、細やかな曲の作りと完成された世界観。楽器が言葉の持つ力異常に感情の溢れを伝えている。

Bertoia / MODERN SYNTHESIS

シューゲイザー、フォークトロニカをギター・ポップに消化するBertoiaが、結成3年近くを経て遂にファースト・フル・アルバムをリリース! 哀愁漂う、北欧の風景を想起させるメロディの中に、溶け合いながら浮遊する声。80~90's のUS、UKシーンに夢中になった方にとっては懐かしく、その時代を知らない人にとっては新しく聴こえるはず。

LIVE SCHEDULE

『ムジコとムジカの今日と明日』
2011年7月2日(土)@大阪心斎橋FANJ
迷走ループ / HeLp / chouchou merged syrups. / Co shu Nie

『youthyouthyouth!!』
2011年7月3日(日)@京都 CLUB METRO
w / house. / the cabs / Cathy lost one's apricot yesterday / 彼方遙 / Sunday morning bell / my letter

『bird calling Tour 2011 & ムジコとムジカの今日と明日』
2011年7月16日(土)@松本Sound Hall aC
w / へきれき / masa / milkcaps

PROFILE

musiquo musiqua
2006年8月、Gt.&Vo.田村一哉、Ba.中根洋哉、Dr.七倉壮で結成。2006年10月より都内を中心にライヴ活動を開始。様々な音楽的背景を持つ3人から生まれる独自の発想と発明は、個々の高い技術力と表現力を通して既存の音楽を打ち壊す楽曲を生み出す。インストゥルメンタル曲ではテクニカルな面が十二分に発揮され、瞬きを許さない息を飲む展開と静と動を巧みに交えた緊張感で聴くものを圧倒する。ボーカル楽曲において田村から放たれる歌はノスタルジックで、寄せては返す波のように心に確実に押し寄せてくる。2009年8月にはSUMMER SONICに出演、2010年MINAMI WHEELに出演などライヴ・シーンで確実に評価を上げ、2011年6月ついに初の全国流通ミニ・アルバム『musiquo musiqua』のリリースを果たす。

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この記事の筆者
武居 健太

頭の中くるくるぱーな超絶ピアニストがいたら、たぶん恋をします。

musiquo musiqua『musiquo musiqua』

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