バンドと言うよりは音楽集団と呼ぶ方がしっくりくる。国内外を問わず、そういったミュージシャンが増えてきている。大所帯ならではの豊かな演奏とハーモニー、そこから生まれる祝祭感。このたび、2枚目のアルバム『okapi horn』をリリースした4 bonjour's partiesも、ロック、ギター・ポップ、エレクトロニカやジャズなどを独自の感性で混ぜ合わせ、そんな恍惚を味わわせてくれる音楽集団だ。現在休養中であるベースの栗原大輔を含め、メンバーは正確には9人。ギター、ベースやドラム以外にトランペットやトロンボーンほか、さまざまな楽器の音がアルバムからは聞こえてくる。何よりミックスやマスタリングを含め、その徹底的な構築性に驚かされた。新作についてはもちろん、4 bonjour's partiesの結成から現在までを、メイン・ソングライターの一人である植野康二(vo、syn、vib)と鹿野友美(vo、fl)に聞いた。

インタビュー&文 : 田山雄士
写真 : 関口史彦


4 bonjour's parties『okapi horn』

1. skipping birds & stones / 2.pins and needles / 3. optical song / 4.yottie / 5. omicron / 6. ventilation / 7. hypnosis / 8. valzer di onesti / 9. tap tap / 10. oma

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日常の中にライヴ・ハウスに行くっていう行為がある

——結成のいきさつをあらためて教えていただけますか?

植野康二(以下 植野) : 灰谷、田部井、日下部、栗原の4人が代々木のミューズ音楽院という音楽専門学校で知り合ったのが始まりです。PavementやSonic Youthが好きで、最初はその4人でオルタナ・バンドっぽいのをやってました。で、灰谷と僕は高校の同級生で、彼の誘いで僕が入ったのが2001年くらいかな。
鹿野友美(以下 鹿野) : そうなの? そんなに早かったんだ。
植野 : いつのまにか入ってた(笑)。それでインストのポスト・ロックなんかもやるようになって、Tortoiseみたいな音響的なものとか。あとThe Dylan Groupのようなヴィブラフォンを使うバンドも好きだったんで、ヴィブラフォン買って練習して。その頃はもう半年置きくらいに音楽の方向性が変わっていく感じで、「今度は歌入れたいね」ってなって。
鹿野 : で、ミューズのときから知り合いだった同じクラスのだいちゃん(日下部のあだ名)に私が誘われたんです。

——鹿野さんが加入したのはいつ頃なんですか?

鹿野 : 2002年か2003年くらいですね。ミューズを卒業してからです。
植野 : The PastelsやBelle & Sebastianのようなグラスゴー周辺も好きで、そこからはそういうメロディのいい歌を入れていく方向になりました。

——音楽専門学校に行ってよかったのはどんなところですか?

鹿野 : ハンカチ王子じゃないけど、仲間ですかね(笑)。“ミュージシャンになりたい”とか“こんな音楽がいいよね”とかいう気持ちが共感できて、その出会いがあったことがよかったです。知らない音楽の情報もいっぱい入ってくるし、技術的なこともちゃんと教えてもらえるし。

——専門学校に入る前は、楽器を演奏したりバンドをやったりしてたんですか?

鹿野 : 私はもともとクラシックをずっとやってて、音大まで行ったんですけど、途中で飽きちゃって。もうちょっと違う形で演奏できたらと思ってミューズを選びました。ほかのメンバーはすでにバンドをやってた人が多いですね。

——ファースト・アルバム『PIGMENTS DRIFT DOWN TO THE BROOK』のリリースが2007年で、その前の2005年にオーストラリア・ツアーを行なってますよね。これは、どうしてオーストラリアだったんですか?

植野 : キーボード・マガジンに『メルボルン通信』というコラムを書いてる安齋(直宗)さんって方がいて、そこからオーストラリアの音楽シーンがいいっていう情報を得たんです。
鹿野 : オーストラリアに住んでる方で、その人とつながりがあって。
植野 : 灰谷が知り合いの知り合いみたいなつながりで(笑)。オーストラリアの音楽シーンが日本とすごく違うらしくて興味があったのと、同じ頃に好きになったクルー・トゥ・カロがたまたまオーストラリアのアーティストだったのも重なって。それでClue To Kaloにメールをしてみたんです。

——おもしろいですね。

鹿野 : 「今度オーストラリアに行ってみようと思うんだけど、いっしょにライヴできないかな? 」くらいの強引なメールを送ったんです(笑)。そしたら「ブッキングしてあげるよ」って親切な返事が来て。
植野 : それでオーストラリアに行ったんです。僕らがライヴをやった日はClue To Kaloも別のライヴがあったのに、終わったらすぐに駆け付けてくれて。「ちょっとしか観られなかったけど、すごくよかったよ」って。Clue To Kaloのマーク(・ミッチェル)とはそのときが初対面なんですけど、もう灰谷が「日本に来たら絶対いっしょにライヴやろうね! 」って30回以上は言ってました(笑)。その30回が効いたのか、いっしょにライヴをすることができて。

——そのあとも何度か海外でライヴはやってるんですよね?

植野 : オーストラリアにはもう1回行ってて、あと台湾でHer Space Holidayといっしょにライヴをやりました。
鹿野 : Her Space Holidayとはオーストラリアでも共演しました。

——オーストラリアの音楽シーンは、実際に行ってみていかがでしたか?

植野 : やっぱり根付いてるというか、日常の中にライヴ・ハウスに行くっていう行為があるんですよね。街のあらゆるところにヴェニュー(ライヴ・ハウス)がある。17時頃に仕事が終わって、そのあとはヴェニューに飲みに行くみたいな。
鹿野 : こっちで言う居酒屋に行くような感じで。
植野 : お酒飲みに行く感覚で、みんな音楽が好きなんです。お酒飲むからお店も儲かって、それで入場料も安くできて、だからまた気軽に行ける。すごくいい循環がある気がします。インディーズのバンドのライヴだったら、5、6ドルくらいで観られるし。

——それはオーストラリアのどのあたりの話なんですか?

植野 : アデレートやメルボルンですね。安いから僕らもそのときはいろいろハシゴして。あとフリー・ペーパーみたいのがあって、その週や月のライヴ情報が全部載ってるんですよ。
鹿野 : みんなそれをチェックして、よさそうなものを観に行ってるんだと思います。

——メンバーの灰谷さんと矢作さんはオーストラリアに留学してるんですよね?

鹿野 : はい、今もしてる最中です。

——ファーストと今回のセカンドの間に留学を決めたというのは、すごく珍しいことだと思うんですけど。

植野 : 法政大学でライヴをやったときがあって、終わってみんなでごはん食べてたら、灰谷が「留学してえわ」みたいなことを急に言い出して(笑)。それが2年前くらい。もうその頃には、灰谷が一度言い出したら反対しても結局きかないってことをみんなわかってたんで、「いいよ」って。Clue To Kalo、Lymbyc SystymやHer Space Holidayをはじめ、海外のアーティストとかかわることが多くなって、英語が得意じゃないことがストレスだったんでしょうね。コミュニケーション取りたがりな人間なので(笑)。
鹿野 : 本当は全員で行きたいって言ってたんですよ、ワーキング・ホリデーで。向こうの音楽シーンの友達が増えたのでそのつながりを重視したかったのと、英語も勉強したかったのかな。

——矢作さんも同じような目的で?

植野 : そうですね。半年くらい遅れて行きました。

——海外ではアメリカのレーベル、Mushからリリースしてるんですよね?

植野 : そうです。ファーストはMushから。

——新作の『okapi horn』は海外でも販売するんですか?

植野 : まだ決まってないですけど、出したい気持ちはあります。

——今回のアルバムには、オーストラリアのアーティストがたくさん参加してますね。

植野 : crayon fields、aleks and the rampsやthe motifsなどなど、オーストラリア仲間を集めて。コーラスをやってもらったり。

いたずらっぽい驚きとか聴いてる人がだまされる快感

——2009年に現在の9人になったということなんですが、ファーストの頃から編成が変わっての新作『okapi horn』はどんな作品になりましたか?

植野 : より濃縮されました。これでも無駄は省いてるつもりです。トータルでフラットになった感じはありますね。1分台の曲「ventilation」「oma」を除けば、1曲1曲がすごくまとまりよく揃ってるというか。

——聴きやすくなってますよね。前作はエレクトロニカ寄りの曲が多かった気がするんですけど、それに比べるとバンド感があるものが増えてます。

植野 : はい、生楽器を入れてアレンジすることが前作よりも多かったです。ハープやストリングスもけっこう入れたし、生っぽさはグっと出てると思います。
鹿野 : ライヴを楽しくやりたくなってきたんですよね。セカンドを作ってるときの方がその気持ちが強くて。

——タイトルの『okapi horn』にはどんな意味が込められているんですか?

植野 : 切り貼りしたような構成、変な展開の曲が多いんです。もともと別の曲だったのを無理矢理くっつけた感じの曲もあるので、そういうのを表わしたものにしたかった。最初はだいちゃん(日下部)が「ぬえはどうだ? 」って(笑)。“ぬえ”っていう、トラとたぬきとヘビがくっついたような妖怪がいるんです。そんないたずらっぽいイメージから広げていって、オカピが出てきました。足はシマウマのようで、首はキリンみたいで、どこか馬っぽくもあっていいねって。ちょっと前までは未確認生物だったのもおもしろいし。
鹿野 : そういう何かヘンな動物いないかなぁって話してて。パッチワークじゃないけど、つなぎ合わせたかわいいものとか。灰谷のコンセプトとしてはだまし絵を音にしたいっていうことを言ってて、その発想から「optical song」とかはできたんです。

——それでこのジャケットなんですね。

植野 : はい。僕らはオカピを写真で見て、さらにツノが生えてたらおもしろいと思ったんです。
鹿野 : でも、実際には隠れて見えないくらいだけどツノがあるらしいんですよ。それを知らなくてタイトル付けちゃって。「あったかぁ! 」って(笑)。

——9人という大所帯でやりづらいことはありますか?

植野 : 音作りに関してはないですね。僕と灰谷がメインで曲を作るんですけど、お互いにあまり言い合わなくてもわかる共通の感覚があって、ミックスとマスタリングをしてくれた庄司(広光)さんもそれをすごくわかってくれる方ですし。メンバー全員で最終的な音のビジョンを話すときも、みんなけっこうわかってくれるんです。ライヴでは音のバランスを調整するのが大変だったりしますけどね。
鹿野 : 「映画を宮殿で聞いてるような音にしてほしいんです」とかすごい難しい注文をしても、庄司さんは「わかりました」って言ってくださるので(笑)。

——逆に大所帯のいいところは?

植野 : アイディアがいっぱい出てきて、ライヴでもいろんな楽器の音がして楽しいところ。シンプルじゃない楽しさがありますね。カーニバル的な、祭りっぽい雰囲気とか。ライヴは演劇のテイストもあるし。そういうのを売りにできればなぁと思ってます。

——曲作りはどんなふうに?

鹿野 : 植野も灰谷も最初にある程度デモ的なものを持ってくるんです。それをみんなに聴かせて、そこでアイディアを集めて、もう一度二人が調整する。

——いきなりスタジオでジャム・セッションとかはしないですか?

植野 : しないですね。

——すごく綿密に構築されたアルバムだと思うんですけど、曲ができるまでって時間がかかる方ですか?

植野 : めちゃくちゃかかります(笑)。今回僕が作ったのは3、4曲なんですけど、「valzer di onesti」なんかは3年前くらいから着手してた曲で。最終的な音源になるまではどれも半年以上かかってますね。
鹿野 : 壊し屋だもんね。一度作ってみんなで合わせて「いいね」ってなっても、一人だけ納得できないとか。ミックスも長くて、作曲の一部みたいになっちゃってるんです。

——ブログに庄司さんのTwitterでのつぶやきがまとめてありましたね。おもしろかったです。

植野 : 気の毒でした(笑)。(CD出ることが)都市伝説って感じで。1曲でファイル数が500くらいになっちゃって、庄司さん驚いてました。
鹿野 : こんなのありえないって(笑)。

——そこまでこだわって作り上げたアルバムということですよね。歌の面では声の使い方がすごく独特で、コーラスのハーモニーが豊かです。ア・カペラの要素があったりもして。歌はどんなことを意識しましたか?

植野 : 今回のアルバムを作るときにちょうど矢作が加入して、彼女はlost in foundというバンドのヴォーカルで歌っていたので、コーラスの魅力を引き出してほしい思いはもともとあったんです。モチーフスっていうオーストラリアのユニットが歌を多重録音してすごくきれいにコーラス付けてるのとかをやってみたかったり、The Beach Boysの『Pet Sounds』の感じとかも憧れたりして。
鹿野 : Anathalloを観て、みんなで歌いたいって思いました。楽しそうだったから。

——「omicron」の中盤からラストにかけてのクラリネットやフルートは、聴いててすごく歌っぽいです。

植野 : 鼻歌で思いついたフレーズを奏者に伝えて作ることがあります。奏者ならではの楽器的なフレーズの面白さと、鼻歌で作るようなキャッチーさは場面によって使い分けてますね。

——最近聴いてる音楽を教えて下さい。

植野 : なんだろう…。昔のアニメの主題歌? サリーちゃんのアレンジすごいとか言って(笑)。昔のアニメのバックはすごいんですよ。今ハマってる音楽とかって、必ずしもバンドじゃないんです。ちょっと前だと、僕はクラシックのプロコフィエフを聴くようになって。NHKで深夜にやってたクラシックの演奏をたまたま観たんです。「スキタイ組曲」というのがあって、それが衝撃的でした。そういったものに影響を受けることもありますね。

——今も昔もあまり関係ないんですね。

植野 : お金がないから図書館にCD借りに行ったりして(笑)。そこでクラシックのプロコフィエフやストラヴィンスキーを聴くと、これはこのまま活かせるなって思うし。
鹿野 : タンゴっぽいジングルを作ってほしいというお仕事をいただいたことがあったんです。タンゴなんて全然聴いたことがなかったので、また図書館に行って(笑)。触れたことのないジャンルはすごく刺激があるから、世界中の音楽をもっと聴きたいって思いますね。

——大所帯だとカナダのArcade FireやBroken Social Sceneといったバンドが最近人気ですけど、そのあたりはどうですか?

植野、鹿野 : 大好きです。
植野 : やっぱり聴いてますね(笑)。そういった音楽と同列でアニメ音楽やクラシックも聴いてます。あと、映画『かいじゅうたちのいるところ』のサントラもよかった。

——Yeah Yeah YeahsのカレンOのやつ、あれいいですよね。

植野 : 「valzer di onesti|」はあれの影響を受けてますね。子供たちが合唱してる感じ。

——disk unionと一部店舗のみの先着特典で、miyauchi yuriさんによるリミックス音源を収めたCD-Rが付くんですよね?

植野 : はい、「tap tap」っていう曲をやってもらいました。優里くん節のギターが素敵で、めちゃくちゃ合ってて。コード進行も一部変わってたり、ヴォーカルの乗っかり方がおもしろくなってたりするんですよ。
鹿野 : 優里くんって感じだった!

——今後、4 bonjour's partiesはどのような活動をしていきたいですか?

植野 : 国内でツアーをやりたいのと、海外でもまたリリースができればいいですね。せっかくオーストラリアにメンバーがいるので、向こうに行ってライヴもしたいし。あとはまた次のアルバムに向けて、新しいアイディア探しですね。さっきの妖怪の話じゃないですけど、いたずらっぽい驚きとか聴いてる人がだまされる快感とか、「こう来たか! 」っていうものを作っていきたいです。

——目標にしたいバンドはありますか?

植野 : うーん。音楽性で言ったらいろいろあるんですけど、スタンスの意味だと…なんかある?
鹿野 : あ! Dirty Three! 世界中に転々とメンバーがいるじゃないですか。それでもピューっと行って活動できるような。

——フットワークの軽さがいいですよね。

鹿野 : 「オーストラリアにメンバーが二人いて、活動できるの? 」みたいなことをよく言われるんですけど、今の時代だとそれが全然苦じゃなくて。ライヴはともかく、音源作りだったらデータのやり取りは簡単にできるし、Skypeで会議もできちゃうし。
植野 : そういうのを気にしない存在でありたいですね。離れてても大丈夫っていう。

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LIVE SCHEDULE

4 bonjour's parties 2nd album『okapi horn』release party!!

2010/12/18(土)@代官山 晴れたら空に豆まいて
open 18:30 / start 19:00
adv.\2,300 / door.\2,800(1drink別)
w/ Karenin / oonoyuuki / Predawn

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インタヴュー

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筆者について
田山 雄士 (田山 雄士)

ライター/編集者です。

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