HIP HOPって1番本音の音楽だと思う
——今のHIP HOPってコミュニティーを大事にして、新宿、下北沢、相模、藤沢や練馬など地域ごとにシーンを作っていると思うのですが、それはなぜでしょうか?
N : HIP HOPってそこが大事っていうか基本でもないですけど、地元密着型って言うんですかね。HIP HOPって1番本音の音楽だと思うんですよ。だからその土地で生まれることとか、育ったこととかが包み隠さず表現されるから、他の地域とは組めないと思うんですよね。感じることも違うと思うし。だから地元に根付くべき音楽だと思うんですよね。転々とライヴやったりする人は器用だなとは思いますね。自分は違うタイプかなって思いますね。
——DINARYがライヴで呼ばれて意識することはなんでしょう?
N : モスビルの色は出したいですよね。離れれば離れるほど主張したいですね。
——では藤沢らしさってなんでしょうか?
D : SLOWなところ。
J : このグダグダ感(笑)。鵠沼っぽいのは、予定が立てられないところですかね。ここ最近予定なんてないですからね。あるっちゃあるんですけど(笑)。
N : この街で気張ってる時点で違いますからね。気張る街じゃないですからね。他でやってくれって話ですよ。
——そんな藤沢で9年間DINARYとしての活動を築き上げきて、初のアルバムをリリースされた今どんな心境ですか?
N : やっと出したって感じっすね。5年位前に一度「今かな」っていうタイミングあったんですけど、タイミング的には、やっぱり2010年の今だったんですよね。音源は出せる時に出せるのが一番良いと思うんですよね。音源出さなきゃ、って焦るんじゃなくて、出せる時に出す方がいいものが出来ますね。今回それは思いましたね。若い子とかもCD出さなきゃっていうのが頭にあるじゃないですか。でもタイミングだと思いますね。
R : いい時期に出したよね。早くもなく、遅くもないタイミングで、25歳っていういい時期に出せましたね。
——今後は活動の幅が広がりますか?
N : 地方とかにガンガン行きますね。ライヴを全国に広めて、日々次の音源に向けて活動したいですね。
——N.Y.にも行かれてますよね。
N : 行ってますね。今年はまだ行けてないんだけど。前はバイナルをしこたま買って、それを送る金ももったいないからってロボコップみたいになって帰ってきましたね。
R : 自動販売機みたいだったもん(笑)。
N : かなりディグしましたね。
——N.Y.にはHIP HOPを突き詰めに行く感じですかね。
N : そうっすね。HIP HOPを感じに行きますよね。嗅感ですけど、もっとグルーヴを吸収しに行きますね。テンションの上がり方が違うんですよね。で、帰ってきて一発目のライヴで落とすみたいな。
——DINARYの方向性って、日本語と英語の混ぜ方で見るとアメリカ寄りのHIP HOPなんですかね?
N : 言葉に関しては地元にこだわってますね。普段から使ってる、日常の言葉を使ったりしてるんですけど、全てをHIP HOPにしたいんですよね。自らのフィルターを通してHIP HOPに変えたいんですよね。この人HIP HOPだなって存在でいたいんですよね。16小節書いたら何を言ってるか分からないし、この人凄いなって思われたいんですよね。リスナーに地元にすごいスラング(注7)が根付いてるんだなって。英語の入れ方は、海外の影響があるかもしれないですね。頭に残っている海外のパンチ・ラインとかが入りますよね。
——混ざり方がいいバランスだと思います。
N : でも海外に影響され過ぎず、モスビルの色を出してやりたいですよね。
——そのスタンスは変わらないですよね。
N : 昔から変わってないですからね。DINARYのスタイルは9年間変わってないですね。
R : ブレることはないですよね。
N : ファーストでDINARYを提示したんで、悲しませること無く続けて行きたいですね。
——ファンも増えてきたんじゃないですか?
N : 増えて来てる気はしますけどね。
R : マニアがいるでしょう。
J : 俺とモッタ(MILES)を越えるファンはいないけどね(笑)。
N : 出て来てほしいけどね。
——身内がライヴに出てると「かっこいいよ」って言いがちですけど、それを越えてますよね。
N : 仲間だからっていうのよりかっこいいんですよね。やってることが好きなんですよね。お互いにそう思ってるから、ライヴ見ても面白いっていうか。仲間だから手を挙げろとかないですし、格好悪いことやればむしろブーイングも言うだろうし。でも、今のところかっこいいことを皆やってますね。
——トラックは全部サンプリングですか?
N : そうですね。NAGMATICっていう本牧班のビート・メイカーがいるんですよね。
——最近では若い子のクラブ離れ、カルチャー離れが言われていますが、遊び時の20、21歳はもったいないですよね?
N : もったいないっす。HIP HOPにしても爆音で聞く音楽ですから、気持ちいいはずなんだけどね。クラブの顔出しとかも若い子が遊びに行かなくなっちゃう原因だと思うんですけど、自分の聞きたい音楽が流れるクラブに行けば、きっかけになると思うんですけどね。若い子達にはもっと自分の好きな音楽を探してほしいですね。それでいて自分達で行動してほしいですね。待ってないでね。
——DINARYは藤沢の若い子達に提示し続けてますよね?
N : 俺たちは提示し続けます! これが正解だとは言わないですけど、HIP HOPにハマるんだったら俺たちは裏切らないからっていう気持ちは常に持ってますね。
——スケボーもこれからも続けていくんでしょうか?
J : とりあえずはやっていきますね。ラップとは違って体を使うんでね。いつかは時が来るのかなって思うんですけど。まぁ廃人になりますね(笑)。
N : お前現状不満足じゃないかよ(一同爆笑)! ラップしたら1番やばいんじゃない?
J : これからも皆で遊び続けますね。夢は向かいの(道路挟んだ所にある)スーパー・マーケット(元セガ)(注8)買い取るのが夢なんですよ。皆のたまり場を作るっていう。
R : 絶対やった方がいい(笑)。
——藤沢にアジト的な場所はないんですか?
N : 去年全部なくなっちゃたんですよね。でも、1カ所、江ノ島に良い所あるんですよね。
J : あのよく行くケアフル(バー)の名前なんて言うの?
N : ワールド・コネクション!
R : ダサー。
D : ドリンカーの女の子可愛いよね。タトゥーがガッツリ入ってる子。
——最後に何か伝えたいことがあれば。
D : モスビル最高〜!!
N : シャモ(ギャル)かよ。でも、もっと藤沢の良い所を感じてもらいたいですね。来ないと分からないです。もっと一緒にやりたい仲間は欲しいですし。だってCHATTYのDVDを見てやられて、京都から出て来てすぐ近くに住んでる奴とかいますからね。こっちとしても嬉しいですよね。でも、なんだかんだ自分の地元が好きなのは皆一緒だと思うんですよ。HIP HOPは特にそれが強かったりして、自分のフットを盛り上げましょうって話なんですよね。俺らは俺らでこの街を愛すし、皆はそれぞれ自分の街を愛して街と街で会話をしていきたいですね。HIP HOPをやっててそれが凄い楽しいと最近感じます。それで他の街の奴が「藤沢駄目だよ」って言っても、それでいいと思うんですよ。自分の街を好きな奴が、もっとHIP HOPで消化していってほしいですね。
(注6) : BLAQ LIST POSSEから新たに生まれ変わったCREW、DINARY、BLAHRMY、SUPA DUPA FLY、NAGMATIC、URUMA、R-MAN、LEX、FARMY、JUNYA FIRE、MR.G、YOSHIAKI TOEDA。
(注7) : ライフ・スタイルが共通な仲間同士で生まれる言葉。
(注8) : セガ前と呼ばれる日本でも有名なスポット。D.L.I.P.のたまり場、CHATTY CHATTYの始まりでもある。今回リリースされたDINARYの『SOUNDTRACK TO THE BED TOWN』収録の「SEGA FRONT」はこの場所へのANTHEM。
彼らが藤沢で叫び続ける理由 〜LIVE REPORT 2010.08.07 @藤沢朝日町パラダイス〜
朝日町パラダイスの漆黒の階段を上ると「D.I.L.P(注9)にようこそ〜」と若い女性が招いてくれた。重たい扉をあけると、DJの横でサイド・マイク片手に客を煽るリーダー N.I.K.E a.k.a DUSTY HUSKYの姿が目に入る。パンパンの入りで、多くのB-BOY達が集い、中には当日買ったであろう2LPを何枚も持っているB-BOYの姿も。ワン・フロアのクラブには蒸し暑さとタバコの煙が充満している。何かを待っている様子だ。
第1部のショウ・ケースが始まる。DINARYのメンバーとは古くから付き合いのあるBLAHMY、UMB横浜決勝でRHYME BOYAと戦ったあるまが堂々としたライヴをくり広げる。DJは、Wu-Tang Clan狂のR-MAN、レコード・ディグ(注10)の面白さを幅広いグッド・ミュージックと共に伝えるDJ FARMY等がライヴの合間に気分を高めてくれる。
第2部は、DEEP SAWER(from ZZ Production)の軽やかだがアンダーグラウンドな空気が伝わるライヴに続き、DINARY DELTA FORCEが現れた。深い時間、いい具合にお酒がまわったオーディエンスは歓喜した。メンバーの顔つきは鬼気迫っている。これまでに彼らのライヴを数回見ているが、このライヴほど熱気とパワーが伝わってきたことはない。ライヴの勢いは加速し、後押しする朝日町パラダイスのオーディエンスはもう汗だくだ。見つめる先はただ一点。DINARYもオーディエンスを見つめ返す。ほぼ全曲を全員が合唱する。心から「おめでとう」と祝っているようだ。
9年間という長い軌跡を彼らと地元のオーディエンスは肌で感じ共有してきた。「ラップを始めた時、俺らの周りには先輩はいなかったすね。居たらもっと違ってたかもしれないすね。」インタビュー後にRHYME BOYAはフッと遠くを見つめながら言い放った。今の環境に感謝しているかのような言葉は、彼らの強い団結力の現れである。
(注9) : DISH LABEL IN POSSHIというクルー名。DINARYを中心としてその数多数。
(注10) : 数多くある中から掘りあてる事。
DINARY DELTA FORCE INFORMATION
- 2010/08/27 @藤沢 朝日町パラダイス 「PROPS」
- 2010/08/28 @新宿タワーレコード TOWER RECORD IN STORE LIVE
- 2010/08/28 @中野HEAVY SICK 「HEAVY SICK 8TH ANNIVERSARY」
- 2010/09/02 @渋谷NO STYLE 「INTER SECTION」
- 2010/09/04 @渋谷GAME 「蝕」
- 2010/09/08 @渋谷PLUG 「ANOTHER PLAN」
- 2010/09/11 @渋谷FAMILY 「ONE『SOUNDTRACK TO THE BED TOWN』RELEASE PARTY」
- 2010/09/20 @横浜THE BRIDGE 「NIGHT FEVER」
- 2010/09/22 @横浜BAY SIDE
- 2010/09/26 @茅ヶ崎しおさい広場 「SHINKOOEN FES '10」
地域密着型HIP HOP!
GO ACROSS THA GAMI RIVER / SD JUNKSTA
NORIKIYO率いるSD JUNKSTAの全貌が遂に明らかに!! “相模のカンバン”NORIKIYOを筆頭に、シーンきってのリリシスト吟遊詩人BRON-K、TKC、 KYN、WAX、OJIBHA等個性的なMC陣が在籍し、謎のフィクサーDJ ISSOからなる大所帯グループSD JUNKSTAが遂に1stアルバムをリリース! 黙って聞け!!
ZZ / ZZ PRODUCTION
レペゼン横浜のホップ・クルーZZ PRODUCTIONがついにアルバム『ダブル・ゼータ』をリリースした。サイプレス上野とロベルト吉野やSTERUSSの所属するクルーとしてファンには知られていたけど、このアルバムではその全体像がばっちりわかるアルバムになっている。