「Aqua Vite」とはラテン語で、「生命の水」を意味する。そう、ソウル・フラワー・ユニオンの曲はいつだって生命力に満ちている。彼らの魂が震え、私達の魂も共鳴する。その関係がシンプルで密だから、彼らがいくら大きなステージに立って歌おうとも、すぐ近くの存在だと感じる事が出来る。

今回、ソウル・フラワー・ユニオンがリリースする「アクア・ヴィテ」は、日々を生きるための、どっしりと構えた生命力を思わせる。自分を前に歩かせる身体と、その中を当たり前に流れる血。それを囲む自然と、そこに湧きあがる感情をヴォーカルの中川敬は歌う。

半ば興奮状態で話す私に、彼は「これをラヴ・ソングやと思う人もいるよ」と言った。なるほど。確かにそうとも思える。この歌詞に出て来る「君」は人によって変化する。恋人であったり、永らく会っていない友人であったり、家族と捉える人もいるかもしれない。ただ曲の真ん中に流れるノスタルジアと、「君」が愛しい人であるということは、聴く人全員と共有できる。この曲を聴いて、あなたは誰を思い出しますか?

インタビュー&文 : 水嶋美和

歌詞はいつも、誰でも共有できる様に説明しない

—今作『アクア・ヴィテ』は2010年元旦発売ですが、ゼロ年代を振り返ることはありますか?

あんまり十進法ではものを考えないから(笑)、“00年代”って考えることはそんなにないなあ。でも思い返してみれば、89年にニューエスト・モデルがメジャー・デビューして、99年にソウル・フラワー・ユニオンがメジャーとオサラバしてるから、80年代はパンクな青春(笑)、90年代は業界との闘争(笑)、00年代はインディーに戻ってD.I.Y.。そういう、たまたまではあるけれど、10年くくりで考えることも出来るようなところもあるかな。99年にインディーに戻って最初に出したのが『ハイ・タイド・アンド・ムーンライト・バッシュ』で、図らずしも90年代の総括っぽいライヴ盤やったし、今年も00年代ソウル・フラワーのライヴ代表曲をまとめたような『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』(最新ライヴ盤)を出したから、少しは十進法を意識することができたよね(笑)。

—タイトル曲でもある「アクア・ヴィテ」はどの様に生まれましたか?

元々この曲は、10年程前に他の歌手のために書いたメロディと歌詞が元になってて。メロディの起伏が難しいということで没にされちゃったんよね。ただ、その後、2、3年に一度ぐらい、ふいに鼻歌で歌ってしまうメロディで。「あれ? この主旋律、好きなんかな? 」って。元々フォーク調の曲やったのを今回ロック・ステディ調にしてバンドでやってみたらドンピシャ。で、歌詞も全面的に書き直して、ソウル・フラワー・ユニオンのものにした、というわけ。

—歌詞に出てくる「君はどこに居るんだろう? 」の「君」とは?

歌詞はいつも、誰でも共有できる様に説明しない。作ってしまったら“放置プレイ”(笑)やし、後は各々の人生に引っ掛けてとらえてもらえばいい。俺の、書き始めた当初の情景を言うなら、この歌詞は十代を一緒に過ごした親友のことがあった。そいつは高校を一年で辞めて、夜の世界にどんどん染まっていって、俺を闇の世界へ連れ回してくれた男(笑)。何年も会ってなくて、5年前に突然死で亡くなってしまってね。出来上がったこの歌詞は、特定の誰かのことだけを歌っているわけではない。しっかりとノスタルジアに向き合う。今回はそれがテーマかな。初期衝動ならぬ後期衝動やね(笑)。

「ヒューマン・ネイチャー」のコードを拾え!

—2曲目に忌野清志郎「僕の好きな先生」、3曲目にマイケル・ジャクソン「ヒューマン・ネイチャー」の追悼カヴァー曲が入っていますね。この曲を選んだ理由は?

訃報を聞いて急遽、6月のツアーで清志郎さんの曲をやろう、ということになってね。いろいろ聴きなおしたんやけど、やっぱり俺が歌うならRCサクセション時代の曲やなと思って。まあ迷ったりもしたけど、純粋に、彼の書いたええ曲、ということを着地点にした。で、この「僕の好きな先生」をソウル・フラワー流のレゲエにしてツアーで演奏することになった。そしたら、そのツアーの真っ最中にマイケル・ジャクソンが亡くなって。彼は「ビザールなセレブ」のイメージでその本質が隠されてるけど、素晴らしいシンガーであり、フレッド・アステア以来のダンス革命を起こした、すごいパフォーマー。ツアーでは既に清志郎さんの曲もやってたし、マイケルもやろう! と思って、「「ヒューマン・ネイチャー」のコードを拾え! 」って、メンバーにメール一斉送信(笑)。「ヒューマン・ネイチャー」は、何といってもマイルス・デイヴィスのカヴァーを浴びるように良く聴いてたし、遅ればせながらマイルスへの追悼も兼ねてる(笑)。2曲ともライヴの感触が良くて、ちゃんと録って今回のシングルに入れよ、と思ったんよ。

—4曲目「閃光花火〜曽我部恵一の線上ダブ盆唄編」とありますが、大空襲を描写した曲をダブ・ミックスというのに驚きました。

いや、これは花火大会の情景。雑多な人々が集まる、夏の田舎の花火大会。

—・・・!!! 勘違いしていました。感極まって色んな人に話してしまいました(笑)。

そういう大いなる勘違いは大好き。大歓迎。さっきも言ったけど、歌ってそういうもんなんよね。聴く人が自分の人生に乗っければいい。で、それもあながち勘違いではないかも。俺も花火見ながら空襲みたいやなって思し。きっと大阪大空襲を経験したであろうおじいちゃんやおばあちゃんが皆と一緒になって、一発打ち上がるたびに「わーきれい! 」「まーすごい! 」って顔で騒いでいるのがいいなあって思いながらこの歌詞を書いたのも、また事実やからね。

—この曲を曽我部恵一さんに、しかもダブ・ミックスを依頼した経緯は?

彼は、聞くところによると十代の頃ニューエスト・モデルのファンやったらしい。98年に共演して以来やから十年以上の付き合いになるかな。この曲のダブ・ミックスは元々誰かに依頼するつもりやったんやけど、俺らと関わりがあって、尚かつ、曲と歌詞の心象世界を自分なりに引き受けて共有できる人が良かった。彼にお願いしようと思ったのは、ムーンライダーズの鈴木慶一さんとの共作『ヘイト船長とラヴ航海士』を聴いた時。相変わらずきめ細やかな仕事するなぁと思ってね。音楽に対してすごい誠実やし、彼なら、さっきみたいな勘違いも含めて、気持ちを汲んだ、心のこもったものを作ってくれるんちゃうかなあと思って依頼した。彼に対してダブのイメージは無かったけど、やっぱり流石やね。曽我部恵一音楽にちゃんとなってる。

一人一人が世界を変えていける時代が来てる

—2007年からリリース・ラッシュが続いていますが、シングルを積極的にリリースする様になったのはなぜでしょう?

長い間、シングルっていう概念自体から離れてたんよね。ニューエスト・モデルの時は頻繁に出してたけど、ソウル・フラワー・ユニオンではあまり出さなくなっていって。ただ、ファンに、アルバム完成までの途中経過を見せる、とか、定期的に出し続けることで、自分達自体がメディアになるということもある。半年に一回のラジオ特番みたいな感覚。しょっちゅう「ソウル・フラワー・ユニオン特集」なんて番組もないし(笑)、なら自分達でやってしまおう! と。これからもしつこく出していくよ。毎度7〜8曲入りとかにするから、身体はしんどいけど(笑)。

—ジャケットの写真ですが、「上関原発建設阻止行動を見守る祝島のネコたち」という説明書きを見て、祝島という場所の存在と現状を知りました。今作のパッケージに、ここの猫達を載せようと思ったのはなぜですか?

祝島

11月にソウル・フラワー・アコースティック・パルチザンの広島公演があったんやけど、その時に「No Nukes Relay」っていう上関原発を考える20代30代の集まりと知り合いになって。その時の公演名も、アコースティック・ライヴやのに『上関原発阻止行動支援GIG』ってタイトル(笑)。この出会いを大事にしたくて、本当は違うジャケット・デザインで進行しててんけど、急遽、この素晴らしい猫ちゃんの写真に差し替えたんよね。でもそれだけじゃなんやから、ツアー終った後、プライヴェートで祝島に行ってみた。ほんと、自然と共生してる素晴らしい島やったよ! 見事に企業が入り込んでない島で、電気をそんなに使ってないから晩の6時になるともう真っ暗。そんな人たちの目前に原発を作ろうなんてのは狂気の沙汰やし、危険極まりない原発がそんなに必要なのであれば、東京とか大阪とか電気使いまくる人間の傍に作るべきやね。大体、事故が起きれば、放射能なんてどこに居ても逃れようがないわけであって、誰しもが決して他人事ではないのに、地域だけの問題かのように細々と取り上げられてしまう。受け入れれば大金が島に落ちるのに、島民の90%以上が反対してて、30年もの間、建設反対の運動を続けてる。瀬戸内海みたいないわば小さな「水たまり」に原発なんて作っちゃたら、この海の幸の宝庫は一網打尽やね。一部の人間の利権のために無茶苦茶なことが進行してる。辺野古とかと同じやね。ある意味、反対運動を続けてくれてる人たちにもっと感謝しなあかんし、まずもってこのことをもっとみんなに知って欲しいな。

—今はインターネットがあるから、知ろうと思えば何でも知れるし、口コミの伝達も早いので、これを機に祝島のことを知る人は多いかもしれませんね。

フォト・ジャーナリストの広河隆一さんが、94年のチェチェン大虐殺について、「みんな、ちゃんと見てなかったことを反省するべきだ」っていうような論旨のことを言ってて。見つめること。目撃者がいる限り、為政者の無茶にも限界がある。世界の裏側で起こっていることでも、そこにも「私達」がいるっていう想像力が持てるのがホモサピエンスであって。口コミで繋がり合って広げてゆければ、不当利得者の「無茶」にもストップがかかるよ。ある意味、一人一人が世界を変えていける時代が来てるんやね。京都の三条大橋に生首が並んだ江戸時代を思い出してみようや(笑)。例えばTwitterなんかは、使い様によっては、世界の市民一人一人がジャーナリストになれるシステムなんやから、検閲のバイアスがかかったテレビなんかよりも生々しい情報がリアル・タイムで入ってくる。人生を時代のせいには出来ないよ。要は想像力なんやね。

INFORMATION

9曲入りマキシ・シングル『アクア・ヴィテ』2010年元旦リリース

「ルーシーの子どもたち」より半年ぶり、新曲+ライヴの多トラックの魂花スタイルを踏襲し、ソウル・フラワー史上最強の豪華さを誇るといっても過言ではない作品。新曲「アクア・ヴィテ」に加え、忌野清志郎とマイケル・ジャクソンに捧ぐ追悼カヴァー「ぼくの好きな先生」、「ヒューマン・ネイチャー」、曽我部恵一によるダブ・ミックス「閃光花火」、その他、ニューエスト・モデル&ソウルシャリスト・エスケイプ・ナンバーのライヴ録音などを含む全9曲。

アクア・ヴィテ / ソウル・フラワー・ユニオン
2010年1月1日(金)発売
1. アクア・ヴィテ / 2. ぼくの好きな先生 / 3. ヒューマン・ネイチャー / 4. 閃光花火〜曽我部恵一の線上ダブ盆唄編 <2009リミックス> / 5. 潮の路 / 6. もっともそうな2人の沸点 / 7. 日食の街 / 8. アクア・ヴィテ <オルタネイト・モノ・ミックス> / 9. アクア・ヴィテ <インスト>(M-5〜7 Live Recordings)

ニュー・マキシ・シングルの中から、リード曲「アクア・ヴィテ」をHQDで先行販売します。力強く、ノスタルジックなサウンドを、高音質でお楽しみください。ご購入頂いた方には、もれなく特典として、ジャケット画像(1200px × 1202px)をプレゼント。
先行シングル「アクア・ヴィテ(HQD ver.)」のダウンロードはこちらから
>>>特典のジャケット画像のダウンロードはこちらから

「アクア・ヴィテ」と一緒にこちらもどうぞ

裸の星(HQD ver.) / シカラムータ
結成15周年を迎えて、ますます充実、異次元へと弾けまくるシカラムータ。国内外から高い評価を得てきた彼らの、3年半ぶりとなる新作は、近年大好評のツイン・テューバ態勢では初となるライブ録音で音像化。シカラムータを素材とした太宰治賞受賞の小説『テューバはうたう』に出てくる架空の曲名に由来する「火の中の火」、怒涛の大曲「ちぎれ雲のバラード」、「迷Q都市」や「ヤマナミ」の圧倒的なサウンドを、高音質HQDでどうぞ。
シカラムータ特集ページ

Here we go'round HQD / Moonriders
6ヵ月連続でリリースした配信限定シングル「Tokyo, Round and Round」「恋はアマリリス」「You & Us」「Tokyo Navi」「三日月の翼」「Come Up」を、シングル・コレクション『Here we go'round HQD』として、HQD(24bit48KHzのWAV)ファイルで高音質配信。購入者特典は、配信形態では入手不可能だった歌詞入りのウェブ・ジャケットです。
鈴木慶一インタビュー

ソウル・フラワー・ユニオン

80年代の日本のパンク・ロック・シーンを語るには欠かせない存在であったメスカリン・ドライヴとニューエスト・モデルが合体する形で、93年に結成。95年、阪神淡路大震災を機にアコースティック・チンドン・ユニット“ソウル・フラワー・モノノケ・サミット”としても、被災地での演奏を中心に精力的な活動を開始。99年には、韓国にて6万人を集めた日本語による初の公演を敢行。これまでに、スタジオ録音によるオリジナル・アルバムを4作、ミニ・アルバム4作、ベスト・アルバム1作、ライヴ・アルバム1作、ソウル・フラワー・モノノケ・サミット名義ではアルバム2作を発表。

LIVE SCHEDULE

2009/12/31(木)@渋谷O-EAST
w / 渋さ知らズオーケストラ / TURTLE ISLAND / NATSUMEN / 太華 / RINO LATINA II and more...
[DJ]KENSEI/SEEN
開場 16:00 / 開演 16:00
料金 : 前売4000円 / 当日4500円(税込・オールスタンディング・ドリンク別)
問い合わせ : O-EAST 03-5458-4681

闇鍋音楽祭2010

2010/3/20(土)@大阪Shangri-La
ゲスト : neco眠る
開場 18:00 / 開演 18:30

2010/3/21(日、祝)@大阪Shangri-La
ゲスト : 踊ろうマチルダ
開場 18:00 / 開演 18:30

2010/3/27(土)@渋谷O-WEST
ゲスト : Dachambo
開場 17:30 / 開演 18:30

2010/3/28(日)@渋谷O-WEST
ゲスト : 勝手にしやがれ
開場 17:30 / 開演 18:30

料金 : 前売 4200円 / 当日4700円(税込・ドリンク別・整理番号付)
キッズ・チケット 前売 2100円 / 当日 2600円(税込・ドリンク別)
中学生未満のお子様は入場無料。中学生未満のお子様も保護者同伴にて、ご入場ください。
障がい者に付き添いの介護の方1名は入場無料とさせていただきます。(障がい者手帳を必ずご持参ください。)
チケット一般発売 : 2010/1/30(土)

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インタヴュー

渋谷慶一郎のレーベル、ATAKの過去音源配信開始、第4弾
・2017年12月11日・ATAK過去作配信第4弾、今回はパン・ソニックや灰野敬二のライヴを収めた初の動画作品も 2017年9月11日より、毎月11日に、半年に渡って渋谷慶一郎が主宰レーベルのATAK過去作品を配信リリース。OTOTOYでは各作品に関して、毎回、ライター、八木皓平による渋谷慶一郎本人へのインタヴューを行い解説をお送りします。第4弾は、2006年リリースの渋谷慶一郎、中村としまる、ノルベルト・モスランによるスリリングなライヴを収録した『ATAK008』。2007年リリース、渋谷慶一郎の、世界初の三次元立体音響を実現したヘッドフォンによるリスニング専用の作品『ATAK010 filmachine phonics』。そしてレーベル初の映像作品となったライヴ作品『ATAK011 LIVE DVD ATAK NIGHT 3』(動画データを配信)の3作品となっている。インタヴュー : 八木皓平ATAK配信作品のまとめページはコチラ 曲に聴こえるけどこうは作曲できない、僕にとってそこが即興の醍醐味 今回は『008』からだっけ? ──ですです。今回は『ATAK008 Keiichiro Shibuya+Norbert Moslan
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過去、現在、そして未来へと繋がるサウンドスケープ──キセル、3年ぶりのアルバム『The Blue Hour』リリース
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楽しい場所にいる自分が本当の自分? それとも…? ──spoon+、触って着せて脱がせる4thアルバム
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筆者について
水嶋 美和 (bobbiiiiie)

酒と音楽と漫画と映画とお笑いに囲まれながら、何かしらとにかく書き続ければと思います。

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