2021/10/15 18:00

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.138

OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)


街の混沌と閑靜

夏の一ヶ月間札幌駅から真っ直ぐに進んだところにある北18条というところで生活をしていた。札幌駅の周辺は京都の街並みを模倣したような形で碁盤の目のような道が続いている。まっすぐ歩いて直角に曲がれば駅地下の飯屋があって、さらに先を曲がれば銭湯がある、といった塩梅で慣れるのに時間のいらない街だった。

特にこれと言って何かをしに行ったわけでもなく、空いているクラブに行ったり野外のイベントに行ったりしながら、とかく毎日たくさん歩いて二日に一度は銭湯にいっていた。碁盤の目の上を日々歩いていたからか、札幌の街は規則正しく整然とした印象がある。ただ、すすきのまで行くとバブルから改造されていないであろう年季の入った建物がズラーっとならび、無機質な道の印象と風俗街の活気が当然の如くごた混ぜになってそこに存在している。札幌在住のヴェイパーウェーブ・アーティスト、豊平区民は「ヴェイパーウェーブは札幌のためにある」というようなことを言っていただけれど、自分が歪んだ音像やパキッとしていないビートが印象的な音楽ばかりを聴いていたのは街の影響が大きかったと思う。いく先のイベントでは主にBPM120以下のハウス、テクノが流れていたのも、ヴェイパーウェーブの街という視点からはズレるけれど、住んでいくうちに身に付くリズムと合っているように感じた。あと、小さめの箱はどこも誰かの家のような雰囲気で、外からフラッと入った側からすれば面白かった。揺れるように踊っては時たまソファーに座って話をするということを無理なくやっている感じが心地よかった。

札幌には札幌公衆浴場商業協同組合があって、どの銭湯にもサウナがついて均一で450円だったから行ける限り行った。歩いて、音を聴きに行って、たまに喫茶店でぼーっとして、考えがつまったらサウナへの繰り返し。後半には来た初日に頭の中にあったことの半分は消え去りサウナの整い方も質が上がっていくのを感じた。そして一ヶ月ほど経ち整い切った頭で東京に戻ると、その翌日のNOT WONKのワンマンはさらに正気を呼び起こした。自分と交わることのないノイズが少ない環境で表現を突き詰めることの素晴らしさよ。会場はWWW Xで、久々の人混みに気持ちが悪くなった。一昨日はパルコの展示に行ったけどもうなんともない、慣れ切った気味の悪い混沌にはすぐに適応してしまう。正気を保つのはあまりにも難しいので、北18条のワンルームで繰り返し聴いていた曲のプレイリストを置かせてもらいます。

この記事の筆者
津田 結衣

OTOTOY EDITOR'S CHOICE 144 音による没入

OTOTOY EDITOR'S CHOICE 144 音による没入

OTOTOY EDITOR'S CHOICE 138 街の混沌と閑靜

OTOTOY EDITOR'S CHOICE 138 街の混沌と閑靜

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.127 真夜中のホラー小説と共に

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.127 真夜中のホラー小説と共に

痛みを受け入れること、その美しさ──NEHANN、ファーストアルバム『New Metropolis』

痛みを受け入れること、その美しさ──NEHANN、ファーストアルバム『New Metropolis』

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.116 北の地への憧れ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.116 北の地への憧れ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.110 踊りの再開!(祝)

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.110 踊りの再開!(祝)

REVIEWS : 019 オルタナティヴ / レフトフィールド(2021年3月)──津田結衣

REVIEWS : 019 オルタナティヴ / レフトフィールド(2021年3月)──津田結衣

退廃とファンタジーの狭間で──Ms.Machine、ファースト・アルバム『Ms.Machine』

退廃とファンタジーの狭間で──Ms.Machine、ファースト・アルバム『Ms.Machine』

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.102 夏を待つ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.102 夏を待つ

生活の柔らかさと痛み──Cody・Lee(李)、ファースト・アルバム『生活のニュース』

生活の柔らかさと痛み──Cody・Lee(李)、ファースト・アルバム『生活のニュース』

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.93 BOARDというバンドに衝撃を受けた

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.93 BOARDというバンドに衝撃を受けた

yuzuha──浮遊と疾走、自由に羽ばたくロック・アーティスト

yuzuha──浮遊と疾走、自由に羽ばたくロック・アーティスト

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.87 We Will Have The Power In A Better Way

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.87 We Will Have The Power In A Better Way

東京の新たなシーンの胎動──WOOMANの自主レーベル・コンピが捉えるいまの空気を体感せよ

東京の新たなシーンの胎動──WOOMANの自主レーベル・コンピが捉えるいまの空気を体感せよ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.81 気づけばエモが目の前に!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.81 気づけばエモが目の前に!

Psychoheads──ピュアに追い求める「いまのパンク」のあり方

Psychoheads──ピュアに追い求める「いまのパンク」のあり方

幾度目かの変換期を迎えたNOT WONK、70人限定入場のワンマンをレポート

幾度目かの変換期を迎えたNOT WONK、70人限定入場のワンマンをレポート

Sisters In The Velvet──揺らぎを鳴らすオルタナティヴの魂

Sisters In The Velvet──揺らぎを鳴らすオルタナティヴの魂

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.70 真に音楽を止めなかったアーティストたち

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.70 真に音楽を止めなかったアーティストたち

仮想世界配信〈AVYSS GAZE〉が探る、ライヴ体験のネクストステージ

仮想世界配信〈AVYSS GAZE〉が探る、ライヴ体験のネクストステージ

USインディ・ポップ直系のサウンドで熱海まで、Jan flu

USインディ・ポップ直系のサウンドで熱海まで、Jan flu

妖艶なダークネスで異世界へと誘う──Barbican Estate

妖艶なダークネスで異世界へと誘う──Barbican Estate

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.62 TEENAGE VIBEは枯れない

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.62 TEENAGE VIBEは枯れない

illiomote──全てをハッピーに昇華する、コンセプチュアルな宅録ポップ

illiomote──全てをハッピーに昇華する、コンセプチュアルな宅録ポップ

Sorry、アルバム『925』から見るサウス・ロンドン・シーンのアティテュードと新しい波

Sorry、アルバム『925』から見るサウス・ロンドン・シーンのアティテュードと新しい波

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.56 音楽はあなたを殴りはしない

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.56 音楽はあなたを殴りはしない

The Cabins──新世代の感性が繰りなす、ジャンルレスな音楽の煌めき

The Cabins──新世代の感性が繰りなす、ジャンルレスな音楽の煌めき

Gi Gi Giraffe──軽やかに奏でられる宅録インディ/ブルースロックは誠実さから生まれる

Gi Gi Giraffe──軽やかに奏でられる宅録インディ/ブルースロックは誠実さから生まれる

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.48 何も考えずに音楽を聴いたっていい

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.48 何も考えずに音楽を聴いたっていい

TOP