2020/10/23 18:00

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.87

OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)


We Will Have The Power In A Better Way

大統領選をめぐる状況の混沌ぶりが、小学生が書くディストピア小説のごとく限界を迎えていることは知っての通りですが、ポスト・トゥルースの流れは着実に/しかも猛スピードでこちらにもやってきているのであまりバカにもしていられない。そんなものよりも多様性を広げる言説にやってきてほしかったのですが。むしろ「普通」を掲げた暴力を目にできてしまうというヒドさ。そんなこんなで日々ちょっとずつ気力が削がれていくなか、胸をすくような気持ちになれる動画に出会いました。それはパティスミスがニューヨークの路上で“People Have The Power”を歌っている映像で、なるべき場所で音が鳴らされているのはとても気分がいいです。

“yesterday on a street corner in Midtown, N. Y.
 USE YOUR VOICE. VOTE! ✊”
https://www.facebook.com/100007868524679/videos/2788417504763840/

パティスミスの歌声に合わせて「People Have The Power」と周りの人が歌うのを聴いて改めて思うのは「私たちにはそれぞれパワーがある」ということで。power=権力だとすれば悪い方向にもいってしまうでしょうが、ここで歌われているのは愚かな支配者から世界をとりもどし、耐えるしかなかった人々に恵みを与え、夢をみる、そういう類のパワー。この曲がリリースされたのは1988年、わたしが生まれる10年前くらいですが、こうした良い方向に向いたパワーはまだまだ足りていないという。無意識の上で被害を受けることも加害することも起こりうるからこそ、そうしたベターな使い方ができているか?ということは逐一見直していく必要があって、音楽を聴いたり映画を見たり本を読んだりするなかで、そのヒントが目の前に浮かび上がってくる感覚があります。自分にとってそんなヒントを与えてくれる曲を選びました。

あとOTOTOYにはなかったのですが、最近エンパワメントのために聴いているX-Ray Spexの“Oh Bondage! Up Yours!”は、「Some people think little girls should be seen and not heard」という語りから始まる曲で、最近のいろいろなニュースからも、全く古く聴こえないのが残念なことです。制度的なものは変えづらいかもしれませんが、メディアによる特定の属性に対する不適切な発言なんかはそれを喜んだりしょうがないとする人がいる以上終わらないので、そういった意味ではやはり、使い方次第でどうにでもなるパワーを持っているんじゃないかと思います。「自分はこれについて考える必要がない、義務ではない」なんて言っていいのは森の奥かピザ屋の地下室に住んでいる人だけ。ちなみにその地下室に子どもはいません。

この記事の筆者
津田 結衣

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