REVIEWS : 121 indie(2026年5月)──木幡徹己(雪国 / ゲスト・レヴュワー)

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ約3ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回はゲスト・レヴュワーとして、バンド、雪国からドラマーの木幡徹己に登場願いました。雪国はIDMやスロウコアをルーツに、そのサウンドによってインディ・シーンに新たな軌道を描きつつある気鋭のバンド。昨年は待望のセカンド・アルバム『Shion』をリリース、初の香港や台北公演など海外公演も成功させるなど、新たなレベルへと達しつつある注目のバンドです。
過去の雪国、OTOTOYでのインタヴューページ
OTOTOY REVIEWS 122
『122 インディー・ロック(2026年5月)』
文 : 木幡徹己(雪国)
Lucy Dacus 「Planting Tomatoes」
OTOTOYで音源を買う⇩
boygeniusのメンバーであり、シンガー・ソングライターとしても活動するルーシー・デイカスの楽曲"Planting Tomatoes”。同楽曲は、自身がベルリン滞在中に「愛する人の没年齢を自分が超えてしまった」という喪失感や死生観をテーマに書かれている。
"Planting Tomatoes"の「トマトを植える」という意味の通り、喪失感をネガティブに捉えず日常の中で見つめ、前を向くわけでもなく、ただ過ごしていくようなある種の温かさを私は感じた。東京の文房具店でのペンの試し書きを収めたリリック・ビデオも、彼女の日常を表す一部のように思える。
USの無骨なドラムのビートからは強がっているようにも聴こえるが、これを読んでからぜひ温かい気持ちを持って聴いてみてほしい。とても優しい気持ちになった。
ILLIT 「MAMIHLAPINATAPAI」
OTOTOYで音源を買う⇩
タイトルの『MAMIHLAPINATAPAI』は「互いに望みながらも踏み出せない視線の交差」というような意味の言葉(編注 : チリの先住民族の言葉に由来)。私はこのタイトルが読めずに気になって、リリースされてからすぐに聴いてしまった。
ILLITはK-POPという情報の密度が高いジャンルの中でも、ビートに乗せた余白のある音楽性が武器のように感じる。 同作もK-POP特有の派手な展開で押し切るのではなく、「視線の交差」を感じるような余白がある。
決して同作の曲調や音圧がタイトルのような意味により過ぎているわけではないが、どこか肩の力が抜けているような感覚を覚える。K-POPに興味がなくても、ふと聴いてしまいそう。
エスキベル 『Overthere』
OTOTOYで音源を買う⇩
タイトル『Overthere』が示す「向こう側」という意味を改めて考えると、どこか突き放しているような冷たさや、無関心さを感じる。
しかし同作は、決して突き放したり無関心でいるようなことはなく、「向こう側」へと視線を投げながらもすぐ側にいるような優しい浮遊感がある。
沢山の複雑な音によって難しいことをしているようにも感じるが、日本語が持つ奥ゆかしさのように、メッセージを間接的に受け止めることができるEP。音響の面でも、エスキベルメンバーとエンジニアKensei Ogataによって丁寧に作られた優しさをとても感じる。
(実は私がドラムを叩いています。)
エスキベル、OTOTOYでのインタヴューページ
































































































































































