感性をぶつけ合うことは、自爆であるために必要な行為
──曲作りはどのようにされてるんですか?
ササキ:7割は僕、2割がガンジー、残り1割はみんなでって感じですね。曲を持ってくる人がデモを仕上げ、雰囲気を共有してから全員で展開を練っていきます。
──アレンジはどのように?
ササキ:自分のイメージをまず伝え、メンバーの案が出てきたら自分の案と戦わせますね。混ぜるのではなく、最もいい案を採用する。人の曲でも、自分の解釈はできる限り曲げたくない。でも最終的には全員で合わせたときに「やっぱこれだよね」と一致する形に着地できていると思います。
ガンジー:自分で曲を作るときは4人で合わせたときに一番かっこよくなることを基準に作ってます。4人の作品として着地させることが大事なんですよ。
名人:僕とササキは聴いてきた音楽も感性も真逆なんですよ。ササキは1970年代やブルーハーツ以前のバンドのサウンド感をめっちゃ掴んでいて、音にするのも上手い。一方で僕は主に2000年代以降の邦楽を聴いてきたので、交わらない感性を持っている自覚があって。だからササキの曲でも、僕が弾くだけでテイストが大きく変わることが多々あります。
作ってきてもらったものを言われた通りに弾くだけでは、自爆の思想に反すると思うんですよね。だから僕は僕の中の“正解”も作って、真っ向からぶつける。それは自爆であるために必要な行為だと思うんですよね。自爆はソロでなくバンドなので、この4人じゃないとできないサウンドを作ることがいちばんかっこいい。なので、こだわりを持ってこれからも揉めていきたいと思っています。
──「天誅」では長いギター・ソロがありますよね。
一同:あれこそ揉めたよね〜!
ガンジー:1年前くらいに伊豆で録ったんですが、名人が弾くギターをササキが全然OKを出さなくて。結局リード・ギターだけ後日別で録ることになり、その後も2ヶ月くらい決まらなかったんですよ。
名人:感性のぶつかり合いがまさしく「天誅」のギター・ソロで起こって。僕はあの伊豆での録音が人生初のレコーディングだったんです。ライブではずっとやってきた曲なので正解は見えていたつもりだったけど、音源にすると全然かっこよくなくて。録れないまま迷惑をかけて挫折でした。でもあれがその後の自分に超活きています。
ササキ:僕が音楽理論だとか楽典的なことをまったく通ってないこともあって、「気持ちがいいか悪いか」という二元論的な見方しかできないんですよ。「これは人間が聴いて気持ちがいいと感じる音ではない」としか指摘ができなくて。
名人:2本あったギター・ソロは、最終的には前半をササキ、後半を僕が弾く形で折衷して着地しました。時間はかかったけど、すごく思い入れのある曲になりましたね。
──伊豆で録った4曲以外はどこで録ったんですか?
ガンジー:「君の性欲を認めない」と「ワンルーム」は高田馬場のスタジオで、残りの5曲は下北沢の〈Nasoundra Palace Studio〉で録りました。
──歌詞についてですが、「あの子とセックスしたやつ全員殺す」や「君はロックしか聴けない」に顕著な、情念や嫉妬心の赤裸々な描写が印象的です。歌詞を書くうえで意識していることはありますか?
ササキ:嘘をつかず、素直な自分のままに書くことですね。それは何事においてもそうです。人に届けるなら全力で人に届けたいし、思想もちゃんと持ってたい。それらを両立させるのは難しいので、気分で切り替えるようにしてます。今日はマーケティング、今日は思想の勉強、今日は曲作り、という感じで。詞を作る日は自分の内側を前面に出して本気で書くので、嘘のない僕の素顔が出るんだと思います。
──日本語でパンクやロックンロールを歌う点も特徴的ですが、そこはこだわってはいない?
ササキ:固執はしてないけど、神聖かまってちゃんや銀杏BOYZは好きなので影響はあると思いますね。
──ガンジーさん作詞の「ロックンロール・アディクト」にはいろんなジャンルが出てきますよね。
ガンジー:ヒップホップを腐すような表現もあるけど、自分は全然好きなんです。歌詞は「武田ガンジー」というキャラクターに喋らせるとしたらどう言うか?って想像して書くんですよ。
──「家内奴隷」の歌詞も気になりました。曲名からは弱者的な印象がありますが、「おべっかへつらいの家内奴隷よ」と歌っていますよね。この表現は?
ササキ:映画好きのガンジーに教えてもらった、タランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)が元になっていて。劇中には畑で農作業をする畑奴隷、家の中で白人に対しておべっかへつらいをする家内奴隷が出てきて。その家内奴隷とアメリカの属国状態になってる日本を揶揄して書きました。
──「未来はない」では、文字通り、未来はないと言い続けてますよね。
ガンジー:ネットのコメントで、「最後まで未来がないからオチがない」って書かれてた(笑)。
ササキ:あれだけ「未来はない」と言われると、聴く人は違和感を覚えると思うんですよ。その違和感で歌詞をもう一度読み直してもらい、現状を俯瞰的に認識して、主体的な怒りを持ってほしい、という意識で書きました。
名人:歌詞に沿った曲を作るなら、絶望的な雰囲気の曲にした方が合うと思うんですよ。でもそれをパンクに乗せることに面白みがあると感じていて。若い子たちに政治や日本の現状を考えてもうらうには、共感より攻撃的にぶつける方が効果的だと思ったんですよね。この曲のレコーディングは汚駄物以外の3人は上裸になって録りました。
──「君はロックしか聴けない」の歌詞についても教えてください。「君」が多く出てくる中で「俺」も登場し、視点が途中で混ざっていくのですが、どのように作ったのでしょうか?
ササキ:時間の概念ってありますけど、自分の中にも年代軸がありますよね。10年前の自分と今の自分は違う。それは聴く人も同じです。作り手の過去・現在・未来と、リスナーの過去・現在・未来がぐちゃぐちゃに混ざった結果、この歌詞になりました。
──そういえば、自爆は売れたい願望ってあるんですか?
ササキ:それはもちろん。売れるという仕組みを自分たちで作って、その仕組みとともに大きくなっていきたい。
名人:あくまでも“運動”として。迎合ではなく、味方を増やしていく感覚です。
──12月17日(水)には渋谷QUATTROで初のワンマン・ライブ〈自爆宣言〉を控えていますが、どんなライブにしたいですか?
ササキ:名人に「QUATTROのことばっかり考えてちゃダメだ」と言われて、その通りだなと思ったんですよね。次に挑もうとしている企画、「万博」に向けた準備として重要ではありますが、全体の流れではひとつの通過点に過ぎないので。あ、僕たち万博をやりたいんですよ。
──万博? 自爆万博ですか?
名人:そうです。自分たちのワンマンではなく、音楽以外のカルチャーも集合するフェスをやりたくて。
ガンジー:将来的には幕張メッセとかで。
ササキ:僕の構想では、出演者のうちバンドは半分くらいで、あとは映画や絵画、政治家に演説してもらってもいい。ジャンルにとらわれずなんでもありで、その全部が面白くなる日を作りたいですね。
──自爆として目指しているのは、シーンを作ることではない?
名人:シーンではなく価値観ですね。学生運動の美学や、ササキの持つ20世紀のロマンとか、そういうものを共有したい。
ササキ:様々な表現者たちと共に、想像を超える空間を作りたい。シーンはやっていった先に勝手に生まれるものだと思います。
編集 : 石川幸穂
フォトギャラリー
撮影 : 服部恭平
ライブ情報
自爆 初ワンマン・ライブ〈自爆宣言〉
2025年12月17日(水)
渋谷 CLIB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
一般チケット:¥4,000
学徒割(U-25):¥2,000
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/4365330001
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PROFILE : 自爆
パンク、ロックンロール、学生運動。目玉のロックンロールバンド。
2023年5月、Vo/Gt ササキがSNS上に「あの子とセックスしたやつ全員殺す」「かかってこいよ」の自主制作音源を公開。それに反応したメンバーたちが集い、同8月にバンド結成。
2024年1月、現メンバーが集結。
下北沢、新宿、池袋、SNSを中心に活動。
2025年4月、初のスタジオレコーディング音源4曲を配信リリース。
2025年7月、FUJI ROCK FESTIVAL‘25へ出演。
メンバー全員、人生初バンド。完全自主運営自主活動。無所属。
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