みんなで考え続けて、意識をつねに少しでも置いておくことが大事
──では最後に、毎年札幌の161倉庫で主催しているパーティー〈THE JUSTICE〉について聞きたいんだけど、コレそもそもタイトルはどういう意図でつけたの?
碧:これはカッコいいから(笑)。こんな名前ね、怖い印象を与えかねないし正直ミスったなって感じだけど(笑)。自分でつけた以上はその名前に嘘はつかないって、背中を押されてるとこあるね。みんなでブッキングとかなにかしらを決めるときに、「これってジャスティス?」って確認するんだけど、それでイベントの精度が保たれてる。あと、細かく自分で全部チェックするし、全部手放せないから。
──かなり理念高いパーティーだよね。全方位的にしっかりクオリティが担保されてると思う。始めたときはどういう志向性を持ってたの?
碧:〈THE JUSTICE〉は、その前に161倉庫でやってた〈マンモス〉ってイベントが元にあって。それはもういまはやってないんだけど、当時は上の世代と下の世代がいまみたいに交わってなくて。自分がいまこういう音楽をやってるのは、世代問わずいろんなものを聴いてきた影響があるから。ジャンルとか関係なくそこがうまく繋がっていけば、あとは勝手にいい感じに回っていくんじゃないかなって思って。
──今年の〈THE JUSTICE〉はどうだった?
碧:形骸化してまで毎年やってくのはあまり良くないって思ってる。アングラのフェスみたいになりかけてる気がして。〈THE JUSTICE〉はあくまで提案であって、それ自体が一年のピークになったら意味がない。来年の〈THE JUSTICE〉としての提案は、別の形でやろうかなとも思ってる。

──パーティー以外の方法で提案する?
碧:ライブイベントであることが大事なんじゃなくて、それがよき提案になって、みんなの頭が回っていくことが大事だからね。あと、こういうことできる人は他にもういるでしょ、っていうのもある。来年も同じようなことを期待しないで欲しいな。とりあえず、今年の記録を形にしていきたい。
──今年は撮影もめっちゃ入ってたね。
碧:やっぱ記録を残すことって大事。ハードコア・パンクの世界って、その瞬間の刹那的な感動を神格化するところがあると思うんだけど、自分たちが影響を受けたものって、ほとんどはなにか記録したものだから。今後はアーカイブを残すことの精度を上げていきたい。こないだヒルマ・アフ・クリント展に行ったんだけど、あの人は図鑑みたいなものを作りたくて必死にやっていたのに、いまアートとして評価されててさ。あの人にはたまたま絵っていう表現手段があって、そのできることで残していったモノがある。たとえばライブでお客さん呼んで盛り上がって…っていうのは、あくまで人生のたくさんある出来事のひとつのトピックであって、あとに残せるものは、同じくらい必死に自分の生活のなかでも見つけていくことなんじゃないかな。ちなみにいまは、カセットが入った300ページくらいの本を作りたいんだけど。
──それは〈THE JUSTICE〉にまつわる、所謂まとめ本?
碧:まとめというか、コンピレーションを作った方がいいなとは思う。もうすでに出来上がりまくっているものを、一回ちゃんとアーカイブした方がいい。予算とかまだ全然わかんないけど。今回募金を集めたら思いのほか集まったんだけど、大して残ることもなく。これじゃ本とコンピは作れないなと。〈THE JUSTICE〉のこれまでをアーカイブするっていうよりか、モノとして記録するっていうことを一緒に考えようって感じ。みんなで考え続ける意識をつねに少しでも置いておくことが大事だから。

後記
いまあらためて読むと、みどりの発言量が圧倒的に多い。 せっかく加入後、初インタビューとなるそうちゃんも同席しているにも関わらず、 後半部などはほぼ登場していないに等しい。 これは記事として些かバランスを欠いており、 己のインタビュアーとしての力量の無さを恥じ入るばかりであるが、 なんせこの日、碧は物凄くしゃべっていた。 このころ、みどりはアニメのガンダムにめちゃくちゃどハマりしていて、 話題といえば概ねガンダムという時期だったので、 みどりからガンダム以外の話を久々に聞いた気分だった。 いいたいことがある。というより、これを機にちゃんと言語化しておきたい。 というような切実な気持ちが伝わってきた。
2ndを「消化不良だった」といい、DJを「いまは優先順位が低い」と語るあたりは、 『あ、そんなこと考えてるんだ』と思った。 とくに『ただしいこと』のリリックにまつわる思い入れなどは、 ここ最近の碧のモードの重要な部分が詰まっているような気がする。 やはり人と時間をかけて深く話をするのは面白いものだ。 インタビューに出てくるそうちゃんの一ヶ月にわたる猛練習も、 その光景は間近で見ていたので、 やはりこうしてしっかり話を聞くと、知られざる内幕が開陳されたりしていて、 おもしろいエピソードがたくさんあるな〜と感心していた。 ムチャクチャ頑固だけど無限に素直な彼らのまわりには、 おもしろい事が山ほど起きる。
本稿はアルバムを聴きながら、ぜひ何度でも読んでほしい。 そして月並みな表現になるが、彼らの今後もすげえ、すんげえええ楽しみである。 近場から勝手に応援している。
(SF作家 山塚リキマル)



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編集 : 津田結衣
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