産休を経ても、ぜんぜん曲をつくれた
──FINLANDSの音楽は常にキャッチーですよね。だからJ-POPリスナーにも受け入れられるのだとも思います。
塩入:自分が聴きたい曲を作りたいんですよね。中学生のとき、どんなに好きなバンドでもアーティストでも、アルバムの中に必ず「ちょっとこの曲は自分の好みと違うかも」と感じた曲があったのをすごく覚えていて。だから自分がバンドをやるなら全部自分が気に入る曲にしたいんですよね。それが根底にあるので、自分の聴きたいものを求めるとキャッチーになっていくんです。
──なぜご自分がキャッチーなものを好むんだと思いますか?
塩入:自分自身が好きだなと思える曲は、だいたい口ずさみやすいんです。あと、何回も聴いたときに芸術的な要素に気づくという感覚がすごく好きなんですよね。わかりにくいものに対して「ここから紐解いたらわかるかも」「ここから攻めたらわかるかも」と探していくよりも、わかりやすいものの向こう側を見たり、わかりやすいものを一つひとつ紐解いていくほうが好きというか。性格的にもまどろっこしいものよりは、ストレートでわかりやすいほうがいいなと思うんですよね。
──FINLANDSが曲にしている事象や感情は、自ずと難しい表現になってしまうものであることが多いと思っていたので質問したのですが、すごく腑に落ちました。
塩入:奇を衒っているものを嫌っているので、性分みたいなものですね。サウンドがキャッチーでポップなぶん、歌詞には違和感や余白を持たせたいなとは思っているんです。そこで整合性を取っているんでしょうね。
──“割れないハート”はまさにそういう曲ではないでしょうか。
塩入:確かに。FINLANDSっぽいキャッチーさですよね。
──塩入さんの書くラブソングの主人公は、いつも恋に本気だなとあらためて思いました。
塩入:体当たりでめんどくさいっていうのが本当に……(笑)。ややこしいなと思うんですけど、恋愛をするとみんなめんどくさくなりますよね。特に女性は。サバサバ系を自称している人も含めて、全員一律でめんどくさい(笑)。やっぱり同じ女としてそのめんどくささを共有できる部分もあるとは思うんです。
──ここまで感情が揺さぶられるくらい本気ということは、それだけ離れたくない大切な相手ということですものね。そんな人と出会えることが、本当に素晴らしいことだと思います。
塩入:自分が持っているものが自分にとって最善の選択なのは間違いないんですけど、他人が持っているものが素晴らしく見えることは往々にしてありますよね。やっぱり「明日急に休みになった。韓国行こう!」と自由に行動する人を見ると素敵だし、輝いて見えますし。家族を持った以上そういう自由度は失ったんだなとも思います。子育てをしながら音楽活動をしているのがすごいと言っていただくこともよくあるけれど、やらなければいけないことは一般的な家庭と同じなので、わたしがFINLANDSを諦めずにいられているのは、わたし以外にも頑張ってくれている人がいるということなんですよね。だから申し訳なさも感じつつ。
──それだけ皆さんFINLANDSを続けてほしい、力になりたいと思っているということだと思います。お話をうかがっていると、『HAS』は4年間で得たものというよりはこれまでの人生で得たものなのかもしれないですね。

塩入:曲作りにおいて、昨日は全然できなかったけど今日はできるということがたくさんあるんですよね。“HAS”にしても“シルエット”にしても、自分がGOサインを出せなかった楽曲はずっと心のどこかで残っているんです。常にパソコンのデスクトップに完成していない曲がたくさんあって、ふと「今ならこの曲を完成させられる」というタイミングが訪れるんですよね。
──スピードが重視される時代ではありますが、同じくらい待つことも大事だと思います。
塩入:コロナ禍や産休を経て「わたし本当に曲作れるのかな?」と思うときが正直あったんです。でもそれが杞憂で、全然作れた。全然いけるじゃん!と思えたから「今作れなかった」と焦る必要はないなとすごく思うようになったんですよね。日頃から「肩の力を抜け」と言われるし、確かに肩の力を抜いた方がうまくいくことも多いんです。今も曲作りを始めているんですけど、自分が作りたいなと思うものを貯めて貯めていって、じょじょに完成させられたらいいなと思っています。
──ワンマン・ツアー〈I HAS TOUR〉も充実の内容になりそうですね。FINLANDSのライブは塩入さんがお客さんの目を見ながら歌う姿が印象的で。あれだけで会場に、FINLANDSと自分しかいないような錯覚に陥るんですよね。
塩入:わたしとしてもお客さんの目を見ているほうがいいんですよね。コロナ禍が明けてライヴを再開して気づいたんですけど、お客さんの目を見てライヴをしてるほうが集中できるんです。もともと塩入一族全員、人のことをめちゃくちゃ見ちゃうんですよ。公共の場でもすぐに人を凝視してしまって、夫と出掛けるとそれが原因で怒られることがあるくらい。お客さんからしたらあんなに見てたら怖いかもしれないですよね(苦笑)。でもおっしゃっていただいたようにライヴはFINLANDS対大勢のお客さんというよりも、1対1だと思ってもらえる時間をすごく大切にしているので。そうなっていたらうれしいですね。
──「諦めるわけにはいかない」という思いの詰まったアルバムのリリースツアー。地に足のついたものになるのではないかと思います。
塩入:FINLANDSはこの約3年間すごくライヴをたくさんやっていて。それは「ライヴを観たいな」と思っていただいたときに観ていただきたいからなんですよね。どのライヴでも同じなんですけど、ワンマンツアーは主にFINLANDSのことを好きな人がチケットを取ってくださると思うので、その環境でいかに甘えずに最善を尽くせるかが重要だと思っています。その日にあるものを全部使い果たして、歩けなくなってもいいくらいやり切りたい。今回も全部をやり尽くせるように頑張っていきたいですね。初めて来てくださる方も100回目の方も、みんなが等しく楽しめる夜にしたいです。
4年間の変化を投影したフル・アルバム
編集 :菅家拓真
LIVE INFORMATION
I HAS TOUR

2025.3.20 (THU) FUKUOKA:DRUM SON
OPEN: 17:30 / START: 18:00
2025.3.22 (SAT) HIROSHIMA:CAVE-BE
OPEN: 17:30 / START: 18:00
2025.4.5 (SAT) NAGOYA:CLUB UPSET
OPEN: 17:30 / START: 18:00
2025.4.11 (FRI) SAPPORO:SPiCE SAPPORO
OPEN: 18:30 / START: 19:00
2025.4.13 (SUN) SENDAI:LIVE HOUSE enn 2nd
OPEN: 17:30 / START: 18:00
2025.4.19 (SAT) MATSUMOTO:LIVEHOUSE ALECX
OPEN: 17:30 / START: 18:00
2025.4.26 (SAT) SHIZUOKA:UMBER
OPEN: 17:30 / START: 18:00
2025.4.27 (SUN) OSAKA:Live House ANIMA
OPEN: 17:15 / START: 18:00
2025.5.10 (SAT) TOKYO:SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN: 17:00 / START: 18:00
詳細はこちら!
http://sambafree.moon.bindcloud.jp/has/
これまでにリリースされた音源もチェック!
FINLANDS 過去の特集記事はこちら!
PROFOLE:FINLANDS

Vo.Gt 塩入冬湖(シオイリフユコ)を中心に 2013年結成。「RO69JACK 13/14」での入賞経験を持ち、精力的なライブ活動に加えこれまで様々なイベントや大型フェス、全国大型サーキットライブへの出演もしている。2015年に『ULTRA』『JET』と 2枚のミニアルバム、2016年にはフルアルバム『PAPER』をリリース。『JET』に収録の”さよならプロペラ” は北海道日本ハムファイターズのテレビ CMに起用されるなどポピュラリティも併せ持つ。2017年7月5日、3rd ミニアルバム『LOVE』をリリース。その月のタワーレコード”タワレコメン”と HMV”エイチオシ”をダブルで獲得。 翌年の 2018年7月、フルアルバム『BI』とコンスタントに作品をリリースしオリコン上位に食い込む。『BI』リリースツアーのワンマンライブにおいて、渋谷クラブクアトロをはじめ、追加公演含め 6 会場すべてソールドアウトさせた。 2019年3月6日には、初となる EP『UTOPIA』をリリース。そのリリースツアーファイナルでもあった 4月10日渋谷クラブクアトロのステージを最後にコシミズが脱退。 同年、『BI』リリースツアーファイナルの渋谷クラブクアトロでのライブ映像を収めた DVD を発売。DVD リリースツアーファイナルの恵比寿 LIQUID ROOM もソールドアウト。2021年リリース「FLASH」での東名阪ツアーファイナルは Zepp DiverCity にて開催し、こちらもソールドアウトさせた。現在、正式メンバーは塩入冬湖のみで、ギター、ベース、ドラムにサポートメンバーを迎え活動。
【公式HP】
http://finlands.pepper.jp/
【公式X】
https://twitter.com/Finlands12
【公式Instagram】
https://www.instagram.com/finlands.official/
【公式YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCOOptsLj7iZRhbDeK5t_QEg
【公式TikTok】
https://www.tiktok.com/@finlands.official