バンドマンがもっと自由にやるきっかけに
──ついでに聞きますけど、最近のパンクシーンの勢いのなさについてふたりはどう感じているんですか?
SHUNICHI:コロナになって、お客さんが本来の遊び方をできなくなってるっていうのは大きいかもしれないですよね。もっと暴れたりモッシュしたりしたいはずなのにそれができないから。あとは、単純に音がおもしろくなくなっちゃったのかなとは感じてます。だから、新しいことをやろうっていう人もたくさんいるんだろうけど、新しくなりきれてないっていう。それなら、IFは3人とも好きなものもやってることもバラバラだし、好きなことだけやったほうがカッコいいものができるんじゃないかなって。枠としてはポップ・パンクかもしれないけど、無理やりこういうものをつくっていこうってなると付け焼き刃になってしまうし、そうじゃなくて、人間性も含めて、「これしかできない」っていうものをストレートに出すほうがおもしろいんじゃないかってすごく思いますね。
Ko-hey:パンクシーンに関して言うと、俺が10代だったらヒップホップのほうが好きになるなって思っちゃう。俺はジャパコアをきっかけにライヴハウスという場所を知って、もちろんコンサート的なバンドのライヴも観に行ってたけど、ライヴハウスは雰囲気が怖くてそれがカッコよかった。いまのライヴハウスにはそれがないからなんじゃないかって思っちゃう。ステージでもみんないいこと言うし。
SHUNICHI:逆に、バンドマンがいちばん真面目なんじゃないかと思う。
Ko-hey:超真面目だよね。
SHUNICHI:まあ、俺も真面目だけど。
Ko-hey:もちろん、真面目にやるのもいいし、素敵なことを本心で語るのもいいんだけど、いまは生き様で勝負する人たち、ストロングな人たちがあまりいないですよね。だからこそ、俺は難波さんとK5(NAMBA69のギタリスト)がすごく好きで。彼らのようなスタイルはいまの時代的には“往年のロックスター”なのかもしれないけど、そういう存在が若い子にもいてほしいなと思います。
──いまの話を聞いて思ったのは、なんとなくおもしろくないと感じる今だからこそ、せめて自分たちぐらいは楽しいと思えることをやりたいという気持ちが音に現れているのかなと。IFのサウンドについて、先ほどKo-heyさんは「懐かしいと思うヤツもいれば新しいと思うヤツもいる」と話していたけど、自分の場合は懐かしさだけだとは思わなくて。もちろん、リフを聴いた瞬間に「うわ~、2000年代だ~」とは思ったけど、それよりも「Ko-heyっぽいなあ」という感覚のほうが強い。美メロでゴリゴリにメタリックなバンドはいるけど、美メロでちょっとメタリックっていうのはあまりいないし、そういう絶妙なさじ加減がおもしろいと思います。
Ko-hey:これは語弊があるかもしれないけど、IFはしがらんでない(しがらみがない)んですよね。
SHUNICHI:うん、しがらんでない。
Ko-hey:まだ動きたてだし、これから1年2年経って音源を何枚も出していったらしがらんでいくのかもしれないけど、IFはそうならないような気がするんですよ。なぜなら「このバンドはこうあるべき」っていうのがまったくないから。このバンドは、俺がイメージする2000年代のポップ・パンクが軸としてあればいいんだろうなって俺は勝手に思ってるから、さっき「同期系の音が入ってない」って言ってたけど、もしかしたら次の音源には入るかもしれない。
──なるほど。
Ko-hey:とにかく、現時点のIFはしがらんでないっていうのがいちばん強い。3人とも楽にできてる。俺がデモをつくっていって、Shunちゃんが俺のつくったものを変えようとするときに「ここ、こうしたいんだけど」って言ってくれるんですけど、俺としては好きに叩いてくれて全く構わないし、シンスケが歌のフックを変えたいとか、ベースに遊びを入れたいっていうのも全然構わない。こだわりがないっていうのがこだわりなんですよね。リフとかメロをつくっている上で「ここは外せない!」っていうところはもちろんあるけど、それ以外は特にない。それがやりたいことをやれてると感じてもらえた理由なのかなっていまの話を聞いてて思いました。
──このスタイルで風穴を開けていきたい?
Ko-hey:風穴……開けたい?
SHUNICHI:まあ、風穴っていうか……より多くの人にこの素晴らしい作品を聴いてもらいたいけど、ガツガツやっていきたいっていうんでもなくて……これは伝わりづらいかもしれないですけど、音楽って生活の一部だったりもするし、いま、音楽は手軽に聴けるからそれは強みではあるけど、人間性まで含めたものを伝えるのってなかなか難しいと思っていて。だから、この作品もこれからつくっていく作品も、自分たちの自然体が伝わったらいいですね。
──なるほど。
SHUNICHI:生きている人はみんな自然体でありたいと思うんですよ。でも、それはなかなか難しいことだし、それこそ生きていればしがらみもある。そういうものを少しでも軽くしたいというか、この人たちみたいな生き方ができるなら自分もやってみようかなって思ってもらえたらうれしいですね。次つくるものはもっとそういうテイストが強くなるかもしれない。
Ko-hey:風穴が開いたらそれはそれでいいですけど、シーン的なきっかけになったらいいなとはちょっと思ってます。ひとつのバンドを貫くことはカッコいいし、バンドマンの美学だとは思うんですけど、今度、DIR EN GREYのボーカルとL’Arc~en~CielのドラムとMUCCのギターが新しくバンドをはじめるんですよ。そういうことを先輩方がやってるし、自分たちだってやっていいんじゃないの?とはちょっと思ってます。だから、バンドマンがもっと自由にやるきっかけにIFがなったらいいなって。難波さんだって、NAMBA69がありつつ、やりたくなったらハイスタでも動くわけじゃないですか。細美(武士)さんも普段はMONOEYESで頑張ってるけど、ELLEGARDENのレコーディングもやってたりとか、そういうことがもっとあってもいいと思うんですよね。あそこまで売れた人たちだからそういう動きができているっていうのももちろんありますけど、そこまでいってなくたって俺らは音楽が好きなんだからやればいいじゃんって。
──もっと肩の力を抜いて自分の好きな音楽と向き合えばいいと。
Ko-hey:ひとつのバンドを貫くのもカッコいいし、素晴らしいし、奇跡なんですよ。それに対してはリスペクトしかない。でも、俺たちみたいな動きも否定されるべきではないと思う。たぶん、シンスケもIFの結成を発表したときにお客さんから言われたと思うんですよ、「FOMAREはどうなっちゃうんですか!?」って。もちろん、あいつがいちばん大事にしているのは間違いなくFOMAREだし、かと言ってIFの活動をないがしろにしているわけでもない。そこにはシンスケの表現、FOMAREの表現、IFの表現があるだけの話なんですよ。俺のところにも、IFの告知をするたびに「NAMBA69のことを忘れないでくださいね」っていうコメントとかDMがめっちゃくるけど、「忘れるはずねえから!」っていう。
──そりゃそうですよね(笑)。
Ko-hey:でも、NAMBA69からMOROが脱退したいま、俺がここでなにも活動しなくなったらNAMBA69って名前自体がどこにも出なくなっちゃうから、俺のなかではちゃんと信念を持ってやってるし、それはお客さんにも伝わってほしいですね。
──こうなるとライヴが観たいです。
Ko-hey:それもけっこう言われるんですよ(笑)。「ツアーやってくれ」ってコメントきますから。
SHUNICHI:俺も言われますね。
──それはそうでしょう!期待の表れですから。
SHUNICHI:ありがたいですね。
Ko-hey:まあ、俺はいまちょっと暇になっちゃいましたけど、COUNTRY YARDもFOMAREもスケジュールが詰まってるから、ライヴはなかなか難しいんじゃないかなって思います、すげえリアルな話をすると(笑)。でも、必ずしもライヴってわけではないですけど、お客さんにはなにかしらの形で感謝を表現していきたいっていう話はしています。
──じゃあ、次の展開は?
Ko-hey:デモはつくってますよ、いつ出すかはまだ全く話してないけど。
SHUNICHI:ただ、めちゃくちゃいい曲です。
Ko-hey:そうだね(笑)。そういってもらえるのは嬉しいよ。KTRもVAPの担当の方も「ヤバいッスね」って言ってくれてます……もしかしたら、次の展開は俺らが考えるものではないのかもしれないですね。変な言い方ですけど、オトナが考えてくれるのかもしれない(笑)。
──それってある意味、正しいのでは。
Ko-hey:そう、我々は作品づくりに没頭して、いけそうだと判断したオトナがリリースの段取りを考えるっていうのは非常に正しい形ですね。
──軽くパンクシーンの希望じゃないですか。
Ko-hey:そんなん言われちゃったら、ねえ?
SHUNICHI:ねえ?この老骨がねえ。
Ko-hey:出た!ここ最近のインタヴューで絶対言うの、「老骨」って。
SHUNICHI:だって老骨じゃん!最近、20コぐらい違うバンドと対バンするときによく言うんですよ、「俺がヤンキーだったらお前は息子の年だぞ」って。
Ko-hey:たしかにね(笑)。
SHUNICHI:でも、老骨でもこういうバンドに参加できるのは幸せですね。
Ko-hey:そういう意味でも希望かも。
SHUNICHI:ね。「老骨でもやれるんだぞ」って。
Ko-hey:お客さんも俺たちの存在を希望だと捉えてくれたら嬉しいですね。
編集: 梶野有希
IF、堂々の初作
FOMAREの過去作はこちらから
NAMBA69の過去作はこちらから
COUNTRY YARDの過去作はこちらから
PROFILE : IF
アマダシンスケ(FOMARE)を中心に結成されたスリーピースメロディックパンクバンド。Kohey(NAMBA69)、Shunichi Asanuma(COUNTRY YARD) が連なり、それぞれの得意を更に濃くした強化型バンド。 FOMARE のエモーショナルさ、NAMABA69のメロディックサウンド、 COUNTRY YARD のビートがハイブリッドにMIXされ、より王道へと昇華した楽曲達。無限の可能性を持つという意味合いから「IF」と命名。メンバーそれぞれの音楽活動に更につながるために、また別々のバンドのエッセンスが混ざったことによる化学反応で、シーンの盛り上げ、メロディックシーンの再構築&SMASH HITを目指す。
■公式Twitter:https://twitter.com/ififofficial
PROFILE : FOMARE
small indies table所属、群馬県高崎発日本語ロックバンド。メンバーは、アマダシンスケ(Vo&Ba)、カマタリョウガ(Gt&Cho)、オグラユウタ(Dr&Cho)。2019年6月にファーストフルアルバム『FORCE』リリースと初の全国47都道府県ツアー〈FORCE TOUR 2019〉を開催。ツアーファイナルとなった新木場スタジオコーストをソールドさせる。2020年1月 地元・群馬4箇所にて〈フォマレ大陸エクスプロージョン〉開催。7月 EP『目を閉じれば』リリースと、〈FOMARE LIVE HOUSE TOUR 2020 ~ おいでよ目を閉じて〉開催。9月にはソニ ー・ ミュージックレーベルズ内新レーベル・ Threethums スリーサムズよりメジャーデビューとMajor 1st EP『Grey』をリリース。
■公式Twitter:https://twitter.com/_fomare_
PROFILE : NAMBA69
Hi-STANDARD のフロントマンとして知られ、2010年3月より難波章浩 AKIHIRO NAMBAとしてソロ活動していた難波章浩が、2013年3月にサポートメンバーを務めていた K5(g)、SAMBU(ds) とともに結成。2016年6月1日から元ARTEMAのko-hey(Gt.Cho.) が正式加入し、4人編成となる。
■公式Twitter:https://twitter.com/NAMBA69official
PROFILE : COUNTRY YARD
2007年東京都町田市にて、それまでに別々で活動していた仲間が集まり結成。何度かメンバーチェンジを繰り返した後にサポートメンバーに元 SWANKY DANK の SHUN を加え現状のラインナップとなる。リリースを重ねるごとに楽曲は洗練され進化していき、所謂日本のメロコアといった物とは別次元のMelodic Punk Rockを武器に日本国内でも様々なフェスに出演。何度も自身の国内ツアーを経験する。2019年7月にPizza Of Death Recordsへの移籍を発表し、10月にキャリア初となるベスト盤を『Greatest Not』というタイトルで発表。その中に収録されている新曲2曲はパンクと一括りでは表せない物になっており、現状の彼らをカテゴライズするのであればネオ・オルタナティヴというべきバンドに成熟している。
■公式Twitter:https://twitter.com/COUNTRY_YARD