2022/06/28 17:00

REVIEWS : 045 アジアのシューゲイズ(2022年6月)──管梓 a.k.a. 夏bot (For Tracy Hyde / エイプリルブルー)

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜、あるいは、あるテーマをもとにエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナーです。今回はFor Tracy Hyde / エイプリルブルーなどのメンバーであり、さまざまなアーティストに楽曲提供も行っている管梓 a.k.a. 夏botが登場。「アジアのシューゲイズ」と題してここ数年にリリースされた東〜東南アジア(1枚は中東、イスラエル)のシューゲイズ作品をレヴューします。2019年にはFor Tracy Hydeとして台北、シンガポール、マニラ、ジャカルタの4都市を巡るアジア・ツアーを経験し、また自らSobs(シンガポール)やThud(香港)の日本公演の招聘・オーガナイズに携わるなど、アジアのシューゲイズ / ドリームポップ・シーンの重要人物でもある管梓が選ぶ、9枚です。


OTOTOY REVIEWS 045
『アジアのシューゲイズ(2022年6月)』
文 : 管梓 a.k.a. 夏bot

Moscow Olympics 『Cut The World』

シューゲイズをアクティヴに掘り下げていた大学時代に出会い、アジアのシーンに関心を抱くきっかけとなったフィリピンのバンドの唯一のアルバム。性急で不安定なドラムと重心の高いベースライン、きらびやかなシンセはジョイ・ディヴィジョン~初期ニュー・オーダーのようでありつつ、ブルーボーイのキース・ガードラーと声質がうりふたつなボーカルの印象も相まってどちらかといえば〈Sarah Records〉的なフィーリングが強く、清涼感のある聴き心地が素敵です。7th系のコードの響きや湿度高めのテクスチャーも含め、まさにアジアのシューゲイズ/ドリーム・ポップの「らしさ」を体現する一枚ではないでしょうか。

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Megumi Acorda 『Unexpectedly』

こちらもフィリピンから。日本生まれのフィリピン人ソングライター、Megumi Acordaを中心としたバンドで、スロウコアにも通じるレイドバック感、60年代ポップスを思わせる美しいハーモニー、哀愁たっぷりの切ないメロディが印象的な、日本人好みのノスタルジック・ドリーム・ポップです(Soundcloudにスネオヘアー「ワルツ」のカバーがあることを鑑みるとJ-Pop的な成分もルーツにあるかも?)。For Tracy Hydeのアジア・ツアーのマニラ公演でも共演させていただきましたが、彼女らが演奏していた40分間はこの上なくゆったりしたロマンチックなものでした……。

Sobs 『Telltale Signs』

来日ツアーにも携わらせていただいたシンガポールを代表するドリーム・ポップ・バンド。Alvvaysにも通じるエナジェティックできらびやかなポップネスがありますが、Alvvays以上にミッド感の強いウォームさやモジュレーションの揺らぎが熱帯の気候を想起させるところがなんともアジア的。また、メンバー自身が所属レーベルである〈Middle Class Cigars〉の運営やレコーディング、プロダクション、ライブ企画に携わっており、Cosmic ChildやSubsonic Eyeといったほかの所属バンド(いずれも最高のバンド!)ともメンバーを共有しているなど、DIY性の強いコミュニティを形成しているのも大きな魅力です。

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