2022/05/23 01:00

スペシャル・フォトギャラリー

〈打奏驚蛇〉のスペシャル・フォトギャラリー。ここでしか見られない写真たちをぜひ、存分にご堪能ください!

LIVE REPORT : 〈打奏驚蛇〉

取材&文 : 森山ド・ロ
写真 : 神宮司

2022年5月15日、ライブハウス新宿MARZでライブイベント「打奏驚蛇」が開催された。出演者は、おやすみホログラム、ナギサワカリン、そして、バーチャルアーティストから小宵(貝と蜃気楼)と隣町本舗が参戦した。「打奏驚蛇」の名の通り、観客にとって普段触れることが少ないであろうバーチャルアーティストのライブ、そしてバーチャルに慣れてしまった層にとっての迫力あるリアル生ライブという、各カルチャー同士、音楽を通して衝撃を与え合おうという現代において革新的なライブ構成となっている。

特にバーチャルアーティストは、ライブハウスでライブを行うことがほとんどない。そういう意味では、かなり挑戦的なライブイベントと言って間違いないだろう。しかし「打奏驚蛇」は、見せ方やテクニカルさといったバーチャルアーティストの抱えるあらゆる問題を乗り越えるきっかけというよりかは、リアルとバーチャルが音楽を通して1つのライブイベントを完成させることに大きな意味があると感じた。そんな革新的で挑戦的なライブイベントのレポートをお届けする。

ライブのトップバッターを勤めたのは、マルチシンガーソングライターのナギサワカリン。彼女の持ち前のキャラクターとは裏腹に、登場時には静寂となんとも言えない緊迫感が会場を包み込んだ。スポットライトがステージ上を照らすと同時に、「世界に稲妻の歌声を。打奏驚蛇、よろしくお願いします!ナギサワカリンです!」の盛大な掛け声が会場に響き渡る。なびやかなギターの音が流れ出すと、その場で合わせながら制作した楽曲とは思えぬほど、繊細で美しいメロディが魅力の『Hear me』を披露。パワフルで透き通る歌声と、哀愁的なメロディの相性は抜群で、開幕から彼女らしい圧巻のパフォーマンスが展開された。

この日誕生日だったという彼女は、「27歳になってしまいました〜!」と叫びをあげる。そのまま2曲目に突入しようかというタイミングで、この日イベントのキーパーソンである兎馬フィグ(おやすみホログラム)から花束贈呈のサプライズがライブ始まってわずか1曲の時点で行われ、「兎馬フィグちゃんと初めて会ったのもライブハウスでした」と、自然な流れで2曲目『ライブハウス』に繋げる。そのまま『僕の街まで』『生きる理由』を続けて披露し、未開拓で未知な要素が多いイベントの空気がわずか15分ほどでナギサワカリンの世界に変貌していた。

持ち時間30分という限られた時間の中で、濃厚な音楽が敷き詰められていく。自虐的であり、最終的にポジティブに持っていくナギサワカリンらしいMCが展開され、歌唱中とのギャップも楽しめるのが彼女のライブにおける魅力の1つだろう。最後は、『スポット』から「あなたにとっての”ヒカリ”が見つかりますように」と『ヒカリ』をしっとりと歌い上げた。彼女の作り上げる楽曲は、自身の人間性が顕著に現れた楽曲が多く、どこか前向きになれるような、背中を押されるような気持ちにさせてくれる。30分という短い時間ながら、ナギサワカリンの世界観を存分に堪能できた。

バーチャルアーティストの初陣を飾ったのは、隣町本舗。開幕、温かみのあるIntroが流れ出すと、モニターにイロトリドリの鮮やかな映像が忙しく映し出される。やがて「隣町本舗」の名前が映し出されると、人型のシルエットが神妙に登場。1曲目『青い亡霊』のイントロが流れ出すと、音に合わせて映像が見事にシンクロする。細かい色のついた粒子がモニター上を駆け巡り、楽曲に爽快感を演出、音楽ライブであることを一瞬忘れてしまうようなアート的な表現に、思わず目を奪われてしまう。続いて『Film』でも、楽曲に合わせて違った演出が施されており、演出の凄さに留まらず、必然的に飽きのこないライブが堪能できる。

「初めましてみなさん、隣町本舗と申します。」と、控えめな挨拶から、謙虚でありながら内に秘めたライブへの情熱はしっかりと伝わるような隣町本舗らしいMCを展開。最初のMC後は、最近リリースされたばかりの『Ctrl+Z』と続けて『seto』『ラスト・シネマティック』を披露。ライブを通して、歌詞が浮かび上がる演出が各曲に散りばめられており、単純に歌詞が理解できるというシンプルな捉え方もできるが、映像の雰囲気に合わせたフォントや飛び出し方がとにかく印象的だった。メッセージ性の強度に留まらず、作品の1部としての存在感は、バーチャルアーティストだからこその表現だなと改めて感じることが出来た。

最後は、Vtuberシーンの中でも人気の高い『52Hzの鯨』を披露。壮大で温かな隣町本舗の歌声がクライマックスを演出する。スクリーンには、電子の海を泳ぐ鯨が悠々と泳ぎ、楽曲との密度の高い演出が最後まで念密に展開されていた。ライブ全体を通して、映像と楽曲のクオリティ、そして隣町本舗が織りなす心の底まで響くようなメッセージ性と包み込むような歌唱は、バーチャルアーティストのライブを初めて見た人に限らず、シーンのファンにも深く刺さったライブだったと確信した。

続いては、完全なバンドセットで登場した小宵(貝と蜃気楼)。当たり前のように登場したが、Vtuberが生バンドでライブを行うのは珍しく、それが個人勢となるとなおさらだ。しかし、様々なハードルを乗り越えてきたであろう小宵含め、ステージ上に佇むバンドメンバーに守りの姿勢は感じなかった。轟音のギターロックに、どこかもの哀しさを感じさせる言葉の羅列を堂々と吐き出していく。開幕、『月の裏側』『空になれ』と激しいサウンドの中に、いい意味で似つかわしくない小宵の高音が響き渡る。偶然の産物ではあるだろうが、バンドメンバーがモニターからうっすら見え隠れするのも楽曲の雰囲気を助長していたり、とにかくより一層ライブハウス感が醸し出された空間が形成されていた。

そして、今日1番のギャップを感じられたのもこの時間だろう。歌っている時はあまり感じられなかったが、MCに入るとドッと小宵から緊張感が伝わってきた。歌唱中の彼女はソウルフルで狂気的なほどの表現力を見せるが、歌が終わると、途端に素朴な少女へと変貌する。そのギャップもこのバンドの魅力だろう。さらには、彼女自身の持つ世界観を抜かりなく後押しするバンドのクオリティがさらにギャップを助長する。

バンドメンバーの紹介も済ませ、ここから一気にラストスパートをかけていく。『海鳴りが聞こえる』 『ラストシーン』そしてラストナンバーの『漂程(Live Arrange)』と、軽快に繋いでいく。語りパートがあったりとガチガチのオルタナティブを感じさせるが、楽曲を通してキャッチーで耳に残りやすいメロディが多い。そこに小宵の文学的な歌詞が不気味なほど綺麗に合わさっていく。ライブを一度見ただけでは整理しきれない情報量と、中毒性を感じさせるライブパフォーマンスだった。

小宵(貝と蜃気楼)のパートが終わると、兎馬フィグ(おやすみホログラム)がステージに登場。小宵と兎馬フィグのコラボライブが間髪入れずに始まった。1曲目には、おやすみホログラムの『fire』を披露。この日だけの特別な選曲に会場からは歓喜のザワつきが巻き起こる。近代的で、どこか懐かしさを感じさせる『fire』を息のあった2人が力強く歌い上げていく。小宵(貝と蜃気楼)のライブの余韻が残る会場を一掃するかのように、パワフルな歌声と跳ね上がるようなダンスナンバーが空間を網羅していく。

急激に温まった会場に向けて、最後に2人のオリジナル楽曲『フール』を披露。ピアノの音色が気持ちいい、ポップなメロディが印象的な『フール』は、小宵と兎馬フィグの持つ音楽性を十分に発揮したナンバーとなっている。前向きでストレートなメッセージが縦横無尽に飛び交うライブに、観客も自然と体が動いていく。2曲だけではあったが、リアルとバーチャルのコラボという、壁を音楽で超えていく衝撃を味わうことができた。

『打奏驚蛇』のトリを飾るのは、2021年7月より新体制となったおやすみホログラム。のちのMCで​​「この編成でやるの久々じゃない?」とオガワコウイチが話し出した通り、全メンバーが揃ってのライブは約3ヶ月ぶりとのこと。久しぶりとは言っても、開幕『Run out』『Colors』のパフォーマンスを見る限り、そんなことは微塵も思わないほど、息のあった5人の躍動をひしひしと感じた。特に『Run out』では、エレクトロサウンドに縦横無尽に動き回る3人の姿が印象的で、誰よりもライブを楽しむ姿が開幕から見て取れた。

「どんどん次の曲にいきましょうか」とカナミルの言葉から、軽快なピアノの旋律から3人のユニゾンが呼応する『Planet』を披露。2曲エレクトロなナンバーが続き、そこからバンドサウンドが鳴り響く。新体制になったとはいえ、リズミカルで、コーラスワークを存分に披露する姿は健在。それぞれが好きなように動いて、歌の部分でがっつりシンクロさせていく自由度の高いライブパフォーマンスは、見てる側の高揚感を駆り立てる。「おやホロのライブ楽しいよって広めて」と語ったカナミルの言葉が、実際のライブを通して証明されていく過程は、まさにおやすみホログラムの真髄だろう。

この日のライブは、一度もライブで披露したことがない『Nights out』を披露したり、『note』や『ニューロマンサー』など、新体制になって作られたアレンジを織り交ぜたりと、新旧のファンが楽しめるような選曲が用意された。「俺、歌うんでびっくりしないでください」と、オガワコウイチがボーカルとして参加するスタイルがよく見られるのも新体制の見どころだろう。常に変化を求めてきたおやすみホログラムらしさは、新体制になっても加速し続けている。この日の総括を兎馬フィグを中心に語ったあとは、『カウントゼロ』を披露。途中カナミルが「もっとライブしたい」と吐露したようにまだまだ歌い足りなさを感じ取ることができた。たった30分程度の時間ではあったが、バンドセットに加え、様々なジャンルを歌いこなす姿はこれまでのおやホロらしさでもあり、これからのおやホロを印象づけた時間でもあった。

打奏驚蛇 vol.1

2022/5/15(sun)
open17:30 / start18:00
@新宿MARZ
出演 : おやすみホログラム、小宵(貝と蜃気楼)、隣町本舗、ナギサワカリン

■5/29まで配信アーカイブ公開中
https://twitcasting.tv/koyoi_1101/shopcart/145383/

PROFILE:おやすみホログラム

■公式HP http://oysm-hologram.com/
■公式ツイッター https://twitter.com/oysm_hologram

PROFILE:小宵

■公式ツイッター https://twitter.com/koyoi_1101
■公式YouTube https://www.youtube.com/channel/UCMa85GlZvsN4H8dgq1Imw2Q

PROFILE:隣町本舗

■公式ツイッター https://twitter.com/tonarimachi_oz
■公式YouTube https://www.youtube.com/channel/UCxBjvm-ayoSD1NkTyt2OXtg

PROFILE:ナギサワカリン

■公式HP https://nagisawakarin.wixsite.com/live-infomation/home
■公式ツイッター https://twitter.com/Nagisawa_Karin

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