2022/04/27 18:00

歪でヘンテコな感性だって美しい──猫田ねたこがソロ活動を通してみつけた強さ

猫田ねたこ

“プログレッシブ・ポップ”バンド、JYOCHOと、ピアノ・ロックバンド、heliotropeのヴォーカル・キーボードとして活動している、猫田ねたこがファースト・ソロ・アルバムをリリース。キーボードを軸に、ミドルテンポな曲でゆったりと構成されている本作は、感情が赴くままに、まっさらな気持ちで自身と向き合った1枚。そうすることで見つけた、彼女なりの強さや自身との向き合い方、陰から陽への心情変化などが歌詞に落とし込まれており、ピュアな目線で猫田ねたこのアーティスト像を見つめることができる。エンジニアは、heliotropeを通して交流があった、toeの美濃隆章、またレコーディングにもストリングスやクラリネット、ハープなどを入れたりと、ライヴでの再現よりも、音作りへの興味を優先させたとのこと。猫田ねたこが先で待つ希望を見据え、素直に束ねたアルバム『Strange bouquet』について話をきいた。

猫田ねたこの初アルバムはこちらから!


INTERVIEW : 猫田ねたこ

シンガー・ソング・ライター、猫田ねたこのファースト・フル・アルバム『Strange bouquet』が、4月27日にデジタル・リリースとなる。今作は、「自分が好きなものだけを詰め合わせた、変わったブーケ」というテーマのもとで制作されたとのこと。そして、そのテーマのなかで彼女が束ねた7曲は、変化の急流に疲弊した心を癒し、励ますものだった。いまの時代にフィットした今作は、どのような経緯で生まれたのか? また、JYOCHOとheliotropeのヴォーカル/キーボードとしても活動している彼女が、シンガー・ソング・ライターとして活動をスタートさせたのは何故か? など、作品の話にとどまらず、彼女の内面を知るべく色々な話をしてもらった。

インタヴュー・文 : 峯岸 利恵
写真 : umihayato

理想への入り口が見えた気がして、いまはウキウキしています

──猫田さんは、heliotropeとJYOCHOのヴォーカル/キーボードとしてバンド活動もされていますが、シンガー・ソング・ライターとしてソロ活動をするに至ったのはなぜですか?

Rinky Dinkライヴハウス統括の小牟田玲央奈さんに背中を押してもらって、2015年にリリースされた、アコースティック・スプリットアルバム『田』に参加させていただいたことがはじまりなんですけど、それまではソロで活動していきたいとは思ってなかったんですよ。バンドでやってきたからこそ、ひとりでステージに立つことが怖かったんですよね。でも、誰かとリズムを共有しないからこそ生まれる自由さだったり、ライヴ当日の気分に合わせて楽曲の世界観を表現できたりと、バンド・サウンドのなかで歌うこととは違う楽しさを見出してからは、楽しんでやれています。

──ソロ活動で得たものが、バンドでのライヴや楽曲制作にも還元されたな、と思ったことはありましたか?

バンドのなかで歌うと、楽器の音の中に声が埋もれてしまう感覚が少なからずあったんです。でもソロで歌いはじめたことで、ヴォーカルが生み出す微妙なニュアンスの大事さを実感しました。だから、一瞬たりとも気を抜けないんだということに改めて気付きましたし、より集中して歌えるようになりましたね。JYOCHOのメンバーやお客さんからも「表現の幅が広がったね」と言ってもらえるので、目に見える変化になっているんだと思います。あと、これはJYOCHOのライヴでイヤモニを導入したことがきっかけなんですけど、自分自身がわりとフラットに歌うタイプのアーティストだと思っているので、表現力をつけるために、表情豊かに歌うアーティストの方に話を聞いたり、個人練習のメニューや普段の話し方を変えたりもしました。

──普段の話し方まで変えるというのは凄いですね。

演劇が好きなシンガー・ソング・ライターの子のライヴを観た時に、曲ごとに全部違う人間の人生を歌っているように聴こえたんです。その後、本人にその理由を訊いたら、普段から役者に成りきったように、演技している感覚を持っているんだと言っていたんです。嘘っぽくする訳ではなく、例えば身振り手振りを交えたり、多少大袈裟に話すことで、自然と表現力が養われるという話をしてくれて、私もその方法を生活の中に取り入れています。その結果、小さい声の出し方が変わりましたね。重心が低めの、広くて太い声を出せるようになったと思います。

──それは、猫田さんが目指していた声の出し方だったんですか?

そうですね。自分が好きなアーティストが、BjörkやEGO-WRAPPIN’の中納良恵さん、ハネダアカリちゃんといった、低い声での歌唱が魅力的な方ばかりなんです。声帯の作りが関係するものなのでもちろん限界はあるとは思いますが、理想への入り口が見えた気がして、いまはウキウキしています。

──重心低めの声が出せるようになったという、いまのお話は、今作の“Minimize”を聴いて感じた印象そのままだったので、とても腑に落ちました。今作『Strange bouquet』の制作は、いつ頃から始まったんですか?

2021年の春頃からスタートして、夏には全曲のデモは出来上がっていました。前作『犬にも猫にもなれない』は、歌とピアノのみというシンプルな構成だったんですけど、今回はライヴでの再現度を気にせずに、やりたいことを全部詰め込もう!という方針にしたんです。なので、ストリングスやグロッケン、クラリネット、ハープ、EUB(エレクトリック・アップライト・ベース)などを入れてレコーディングをしたんですけど、これがもう、本当に楽しくて! いままで“ライヴで出来ないことをやりたくない“という枠が自分のなかにあったんですけど、それを打破して作れたことが嬉しくて、過去最速で出来上がりました。

──今作は、エンジニアにtoeの美濃隆章さんを迎えて制作されたとのことですが、元々繋がりがあったんですか?

heliotropeの作品制作時にお世話になったというご縁があって、今回依頼させて頂きました。美濃さんは機材にとても詳しい方で、音作りに対するこだわりと熱量が物凄いんです。EUBのレコーディングをするとなった時に、私が“ティンパニーのような音を出してほしい“という無茶なお願いをしたんですが、DIからいくつも試してくださって。みんなで何度も聴き比べをして選んだ音は、自分が想像していたもの以上の出来上がりでした。美濃さんにお願いして本当に良かったと思いましたし、感動しましたね。

この記事の編集者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

SPiCYSOLが自由であり続けるために──2作品に込めたナチュラルな言葉とフリーな精神

SPiCYSOLが自由であり続けるために──2作品に込めたナチュラルな言葉とフリーな精神

Emeraldの10年間を体現した初ワンマン〈TEN〉ライヴレポート

Emeraldの10年間を体現した初ワンマン〈TEN〉ライヴレポート

歪でヘンテコな感性だって美しい──猫田ねたこがソロ活動を通してみつけた強さ

歪でヘンテコな感性だって美しい──猫田ねたこがソロ活動を通してみつけた強さ

視覚と聴覚を同時に刺激するバンド、the McFaddin──〈“Something is likely to happen”Release Party〉ライヴレポート

視覚と聴覚を同時に刺激するバンド、the McFaddin──〈“Something is likely to happen”Release Party〉ライヴレポート

詩に多種多様なキャラクターを宿して──“まなざし”を意識した、Predawnの新作

詩に多種多様なキャラクターを宿して──“まなざし”を意識した、Predawnの新作

SundayカミデによるWonderful Orchestra Band始動!──脳内トリップする新たなヒーリングミュージック

SundayカミデによるWonderful Orchestra Band始動!──脳内トリップする新たなヒーリングミュージック

デビュー25周年を迎えた岡本真夜──ベールに包まれたアーティスト像と人間性を探る

デビュー25周年を迎えた岡本真夜──ベールに包まれたアーティスト像と人間性を探る

「これがあるじゃん」の先は、それぞれで考えましょう──折坂悠太がたどり着いた『心理』

「これがあるじゃん」の先は、それぞれで考えましょう──折坂悠太がたどり着いた『心理』

前向きに解散をしたSUNNY CAR WASH ── 愛と敬意、軌跡を記録した最後のベスト作

前向きに解散をしたSUNNY CAR WASH ── 愛と敬意、軌跡を記録した最後のベスト作

自分が聴きたい音楽を追求し続けていく──ロック・バンド、続きはらいせの美学を表現したファースト・EP

自分が聴きたい音楽を追求し続けていく──ロック・バンド、続きはらいせの美学を表現したファースト・EP

イズミカワソラ×ニラジ・カジャンチ ── 新作『Continue』の意外な制作過程を語る

イズミカワソラ×ニラジ・カジャンチ ── 新作『Continue』の意外な制作過程を語る

ただ、承認されて自立していたい──励ましもせず、突き放しもしないステレオガールのアティテュード

ただ、承認されて自立していたい──励ましもせず、突き放しもしないステレオガールのアティテュード

出発点である自分と向き合うきっかけに──ミクロを意識したJYOCHOの新作

出発点である自分と向き合うきっかけに──ミクロを意識したJYOCHOの新作

1万通りの1対1を大切にするpolly──つぶれかけていたロマンを再構築した新作

1万通りの1対1を大切にするpolly──つぶれかけていたロマンを再構築した新作

理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー  ── 集団として闘い、大衆を救う決意

PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー ── 集団として闘い、大衆を救う決意

余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー  ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

「音楽って宇宙みたいなもの」──大柴広己の真髄に触れた新作『光失えどその先へ』

「音楽って宇宙みたいなもの」──大柴広己の真髄に触れた新作『光失えどその先へ』

「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

〈NEWFOLK〉はなぜ、愛されるのか──クロス・レヴューと主宰者への20の質問から全

〈NEWFOLK〉はなぜ、愛されるのか──クロス・レヴューと主宰者への20の質問から全

多くの人に親しまれる〈NEWFOLK〉とは!?──その魅力に2部構成で迫る!!

多くの人に親しまれる〈NEWFOLK〉とは!?──その魅力に2部構成で迫る!!

長く多彩なキャリアと新作から読み解く、アーティスト西村中毒の真髄とは

長く多彩なキャリアと新作から読み解く、アーティスト西村中毒の真髄とは

とがるー東京の片隅で独り内的闘争を続ける「モダン・グランジ」アーティスト

とがるー東京の片隅で独り内的闘争を続ける「モダン・グランジ」アーティスト

シンガーnonocが語る、アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』の魅力と主題歌にかける想い

シンガーnonocが語る、アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』の魅力と主題歌にかける想い

誰かではなく、自分たちの歩幅で──新体制ヒトリエの現在を映したフル・アルバム『REAMP』

誰かではなく、自分たちの歩幅で──新体制ヒトリエの現在を映したフル・アルバム『REAMP』

TOP