2022/01/14 18:00

これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

四方颯人(YAJICO GIRL)

YAJICO GIRLはいま、自分たちの興味がある方向へと縦横無尽に走り続けている。その足跡が後々繋がったり、全く繋がらなかったり。そういう不確かな発見と予測不能なおもしろさを確実に更新しているバンドだ。今回は、R&Bやソウルを軸に、様々なジャンルを横断した新作『Retrospective EP』について、四方颯人(Vo)にきいた。本作は2022年1月19日にリリースされるが、ほとんどの収録曲はすでに先行配信中。今回は、ジャクソン5をリファレンスにしたという、唯一の未公開曲"VIDEO BOY"についても、ひと足はやくきいている。好奇心の音が鳴る方向へと走り続けた末に生まれた全5曲について、語ってもらった。

YAJICO GIRLの新作はこちら

INTERVIEW : YAJICO GIRL

ギター・ロック・バンドのサウンドにこだわらず、現行のインディーR&Bやヒップホップの影響をバンドなりに消化した『インドア』(2019年)ののち、大阪から上京。『インドア』での音楽性をフィジカルにも落とし込み、開かれた楽曲が集まった『アウトドア』(2021年)。本作収録の"FIVE"がSpotifyの公式プレイリスト"New Music Wednesday"のカバーに選出されたり、“Tokyo Super Hits!“で数週間リストインするなど、確実に新しいリスナーを獲得し、YAJICO GIRLの第2章は内実を伴ってきた印象だ。この連作に続く形で今回リリースする『Retrospective EP』では“FIVE”のアレンジ、ミックスを担当したTeje(MUSIC FOR MUSIC)のアダプトもより深くなり、創作形態も自由に。『アウトドア』から続くゴスペルやダンス・ミュージック、ハイパー・ポップなどのクロスオーバー感もどことなくリラックスした佇まい。新たな日常に向かういまの気分とリンクするこのEPへの経緯をヴォーカルの四方颯人に訊く。

インタヴュー・文 : 石角友香
カメラマン : 西村満

任せることでのおもしろさをちょっとずつ自分でもわかってきて

──今回の『Retrospective EP』に至る前段として『インドア』(2019年)と『アウトドア』(2021年)という連作がYAJICO GIRLにとってどういうアプローチだったのか、まず訊かせてください。

四方颯人(以下、四方): 『インドア』はそれまでのギター・ロックのテイストをガラッと変えたいなと自分がひとりで思って。で、ひとりで行動に移してっていうものだったんで、自分で頑張って作った、自分のパーセンテージが高いアルバムで。実際、ガラッと音楽性も変わったなと思います。『インドア』を作り終えた後に、次は『アウトドア』ってアルバムを作ろうかって話はその時点で出てて。『インドア』は結構、俺のわがままで作ったアルバムやったから、それを踏まえた上でメンバーから出てくるアウトプットもちゃんと取り入れて、もっとバンドとしての作品として開かれたものを作ろうというテーマで『アウトドア』の楽曲は制作していきましたね。

──この連作は活動にどんな効果があったと思いますか?

四方 : ここからなにやっても大丈夫だよねじゃないけど、それまでがギター・ロックも含めて、わりとサウンドが決められていたところから、ある程度どんな表現をしてもYAJICO GIRLっていうような、土台をこの2枚で作れたような気はしますけど。

──EPに先行してストリーミングでどんどん配信していて。

四方 : ライヴもあんまりできないですし。とりあえず曲作って配信で出していくっていうのを頑張ってましたね。サブスクが主流になってからはメジャーな人とかもすっごいペース早いなと思いますもん。やっぱり、配信でずっと出てないと難しい時代やから頑張ってはいます(笑)。

──今作収録の“雑談”も、もう8月にデジタルリリースして。『アウトドア』に入れる気もなくもなかったそうですね。

四方 : ああ、そうですね。一応、“雑談”のサビのメロディとコードと歌詞は『アウトドア』のタイミングでもあったんですけど、フィーチャリングとかしてもいいのかなって話がそのときには出てて。で、一旦、「まぁ保留でいいか」ってなってたんですけど、次の制作の段階で、やっぱひとりで歌ったほうがいいかもなと思い直して今回入れたって感じです。

雑談 - YAJICO GIRL(Official Music Video)
雑談 - YAJICO GIRL(Official Music Video)

──“雑談”が『アウトドア』制作中に片鱗があったというのは納得で。『アウトドア』のラストが「Better」でゴスペル調のコーラスと〈まだ音は続いてる〉という終わり方をしていたので、今回1曲目が「雑談」なのは腑に落ちるというか。

四方 : ああ、確かに。地続き感はあるかもしれない。

──今回、『アウトドア』までと音像が違うなと思ったんですがそこは意識しましたか?

四方 : 『インドア』『アウトドア』である程度、自分たちの表現の幅みたいなのはできたなと思ってて、その上でもうちょっとチャレンジしてみたかったというか、「もうそういう表現はやりたくない」みたいなラインがいままでメンバーのなかであって。でもそのラインを広げたかったというか、ここまでやってみても逆にもしかしたら殻が破れるんじゃないかとか。自分たちの表現の限度、「これ以上行き過ぎたらよくないよね」みたいなのを確かめるためにもいろんな音楽性でチャレンジしていきたいなっていうのは、音像って点では今回ありました。

──アレンジャーさんの意見も訊いて?

四方:そうですね。任せることでのおもしろさをちょっとずつ自分でもわかってきて。やっぱり自分がやればやるほど自分の思った通りのものにはなるけど、どうしても縮こまるというか、飛躍できなかったりはするので。そういう意味でもうちょい人に任せてみて、「あ、こんな景色があったんだ」とか、「こんなとこにもYAJICO GIRLって行けるんだ」っていうことを今回試したかったのかもしれないですね。

──なるほど。より聴こえ方が明快になったと思うんですよ。20代が日本語でやるソウルやR&Bの影響がある音楽から、さらにそれをポップに聴かせる意志を感じたんです。

四方 : ありがとうございます(笑)。

──でも四方さんとしては自分の想像を超えるものを人の脳も駆使して?

四方 : 結果、みんなのアイディアの集まったのがひとつの意志として現れてるのかなって、いま訊いてて思いました。

──2021年の記録のようにも思えておもしろいです。で、“VIDEO BOY”以外はもう配信されていて。リリースの順番はどう考えていったんですか?

四方:デジタルリリースは“Life Goes On”から始まったんですよ。

──この曲を最初に出した意図は?

四方 : 5曲はいっぺんに作って、それを順番に出して行こうって話があって、“Life Goes On”がいちばんいままでのスタイルとも似てるなっていうのと、例えば“チルドレン“は冬に出したいよねとか。夏頃にちょっとパキッとした“雑談“を出したいよねとか、ってなったときにこれがいいんじゃない? って話になりました。

Life Goes On - YAJICO GIRL(Official Music Video)
Life Goes On - YAJICO GIRL(Official Music Video)

──“Life Goes On”の落ちサビも日本人がやるゴスペルのニュアンスがあるし、前作から続く感じで納得です。この曲のアレンジやメンバーそれぞれのアイディアというところでは?

四方 : この曲は比較的、結局「俺が」ってなっちゃうんですけど。元のビートとシンセの感じとゴスペル感とアンビエンスみたいのをひっくるめて、YAJICO GIRLの『インドア』以降、トライしてきたものの最終形態じゃないけど、1個ここで出来上がったなって感じはしました。この曲は確かに他の楽曲に比べるとなにか新しいことにチャレンジしてみた要素は少ないかもしれない。いままでで積み重なってきたものをここで押し込んだって形ですかね。

この記事の編集者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー  ── 集団として闘い、大衆を救う決意

PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー ── 集団として闘い、大衆を救う決意

余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー  ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

「音楽って宇宙みたいなもの」──大柴広己の真髄に触れた新作『光失えどその先へ』

「音楽って宇宙みたいなもの」──大柴広己の真髄に触れた新作『光失えどその先へ』

「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

多くの人に親しまれる〈NEWFOLK〉とは!?──その魅力に2部構成で迫る!!

多くの人に親しまれる〈NEWFOLK〉とは!?──その魅力に2部構成で迫る!!

〈NEWFOLK〉はなぜ、愛されるのか──クロス・レヴューと主宰者への20の質問から全

〈NEWFOLK〉はなぜ、愛されるのか──クロス・レヴューと主宰者への20の質問から全

長く多彩なキャリアと新作から読み解く、アーティスト西村中毒の真髄とは

長く多彩なキャリアと新作から読み解く、アーティスト西村中毒の真髄とは

とがるー東京の片隅で独り内的闘争を続ける「モダン・グランジ」アーティスト

とがるー東京の片隅で独り内的闘争を続ける「モダン・グランジ」アーティスト

シンガーnonocが語る、アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』の魅力と主題歌にかける想い

シンガーnonocが語る、アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』の魅力と主題歌にかける想い

誰かではなく、自分たちの歩幅で──新体制ヒトリエの現在を映したフル・アルバム『REAMP』

誰かではなく、自分たちの歩幅で──新体制ヒトリエの現在を映したフル・アルバム『REAMP』

TOP