2021/12/24 18:00

バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

été

3ピース・オルタナティヴ・ロック・バンド、étéが新作EP『IUTORA』をリリース。本作を制作するにあたり、考えたことはバンドサウンドの必然性だという。コロナ禍において、ヒップホップやインターネット・カルチャーが流行していくなか、彼らが今作で提示しようとしたバンドの必要性とは一体どんなものなのか。こんな時代だからこそ、ヴァイオレンスな音楽を届けようと決意した彼らの真髄に触れてほしい。

étéの新作音源はこちら


INTERVIEW : été

東京都在住の3ピース・オルタナティヴ・ロックバンド・étéが、2021年11月に約2年ぶりとなるEP『IUTORA』をリリースした。収録された4曲に根付くのは、オキタユウキが見た2020年の世の中。そのなかで湧き上がる彼の思考が、16分間言葉と音楽とともに突き付けられる。オキタのルーツであるメタルコアをはじめとしたヘヴィー・ミュージックを基盤に、そのルーツを持たないリズム隊のヤマダナオト、小室響が独自の解釈が介入することで完成した楽曲群は、今のétéにとってのコアと言っていいだろう。今作についてメンバー3人にインタビューを敢行。今年4月に公開されたデジタルシングル「Gate」のインタビュー記事とともに愉しんでいただくと、『IUTORA』をより多面的に捉えられるかもしれない。

インタヴュー&文 : 沖さやこ
写真 : 西村満

緻密で構築的かつヴァイオレンスな音楽

──最近のétéは「トーキョーニュースクール」を掲げていますよね。この文言に行き着いた経緯とは?

オキタユウキ(Vo/Gt)(以下:オキタ):自分たちを定義するにあたり2年くらい前から使っている言葉ですね。僕はニュースクール・ハードコアがすごく好きで、あれも従来のものから影響を受けたうえで新しいものを作り出したジャンルだと思うんです。そこから着想を得てつけました。

ヤマダナオト(Ba)(以下:ヤマダ):いい標語になってるよね。「自分たちを一言で説明してください」って本当によく言われるから(笑)。

オキタ:でも一言で説明できてたら、こんな音楽作ってないんですよ(笑)。

小室響(Dr)(以下:小室):間違いないね(笑)。

オキタ:一言で説明できる音楽はつまらないとも思うけど、それを作れることも特殊な才能だし、表現のひとつの完成形だと思うんです。でも僕らの音楽を聴いてくれる人が、それぞれの感性で受け取って定義してくれることは、なかなかいいことだと思っていますね。

オキタユウキ(Vo/Gt)

──「東京」もétéのキーワードになっていますよね。

オキタ:この前友達にも「オキタくんが東京にこだわる理由ってなんなの?」と訊かれて……その時ちょっと困ったんです。生まれた時から東京で暮らしている僕にとって、日常に根差した当たり前のものなんですよね。でもいろんな人が目指してくる場所でもあるし、日本の縮図でもあるような気もしていて。あと、ナンバーガールの「福岡市博多区から~」みたいな言い方がいいなと思っていて。それをétéでやるならば、東京のどこかの場所に限定するのではなく「東京」をRepして戦いたかったんです。

ヤマダ:東京の人間からしても、いろんな地方からいろんなものが集まってくる雑多な感じと、「標準語」みたいな日本のルールが併存しているような、混沌としたイメージはずっと持っていますね。

小室:僕は千葉の人間なので、東京にはいまも憧れがあるんです。でもいざ東京に行くとうるさいなあと感じたり(笑)。

──「東京」の捉え方、人によってまったく違うので興味深いです。

オキタ:たしかに。だから「東京」という曲がたくさん生まれるんでしょうね。

──いつかétéも、いかがでしょう?

オキタ:いや~、さすがにもう擦られすぎじゃないですか(笑)。僕らは「トーキョーニュースクール」だけでいいです(笑)。

──2021年11月にリリースされた『IUTORA』は、3月に配信された“Gate”を含む4曲入りEPです。春にはもう今作の構想が練られていたのでしょうか?

オキタ:2021年の頭にはどの曲もあったんです。春先にデジタルシングルをリリースしたいと思っていたので、《そして次の春》という歌い出しで、2020年のことを書いた「Gate」がちょうどはまったんですよね。『IUTORA』はヘヴィーミュージックに振り切った盤を作ろうと思っていたので、“pray”と“Gate”が軸になっていきました。

été - Gate(Official Live Video)
été - Gate(Official Live Video)

──なぜヘヴィーな要素に振り切ろうと?

オキタ:2020年1月にEP『episode』をリリースして、春から夏にかけて全国ツアーを回るつもりだったところに4月以降のライヴがすべて中止になってしまって。想像以上に世の中が混沌として、ステイホームの影響から衝動的でシンプルなバンド・サウンドはどんどん勢いを失ってしまった気がしたんです。でも衝動的で暴力的な感覚は、ヒップホップ、ハイパー・ポップ、インターネット・カルチャーでは引き続き受け継がれていて──それはつまり、バンドが必要なくなっていたということなんですよね。

──たしかに。2020年にはその風潮はありましたね。

オキタ:つまらん音楽は淘汰されてしまうから、そうなることは予想できて。それならいまétéは、ここに存在しない、緻密で構築的かつヴァイオレンスな音楽を作って、その風潮にカウンターを食らわせたかった。ひとりで家で聴くには重くて激しすぎる表現をやりたかったんですよね。それが指針になっていったんです。

──敢えて家で聴くには不向きと思われる音楽性を選択したと。

オキタ:自分なりのベッドルーム・ミュージックは、ソロで出したEP『Blindness』でやりましたしね。バンドでそれをやってしまうと、「じゃあ今までやっていたことは何だったの?」ということになる気がして。これまでバンドでやってきたことをやっていきたかったんです。でもこれまでの音楽は、ライヴで再現できることを念頭に置いて制作するというか、「ライヴ」が大前提にありすぎた気がしていて。「好きで音楽をやっているなら、もっといろんな表現ができるんじゃないかな?」と思ったんです。「ここでこう鳴らす」が前提にある音楽は純粋ではない気がしたんですよね。

──たしかに。そうですね。

ヤマダ:そのおかげでライヴで演奏するのはものすごく大変でしたけどね(笑)。

──あははは。“pray”は今オキタさんが話してくださったことが、明確に音に表現されていると思います。

ヤマダ:“pray”や“We are”のデモを聴いたらドラムやギターの割合が多すぎて、「今まで俺が弾いていたベースでは通用しなさそうだな」「ベースの弾き方やフレーズ、音をもっと変えないと、曲に負けちゃうな」と瞬間的に思いましたね。今の時代にも合っているし、étéとしては『episode』の文脈も感じるし。最終的に完成したものを聴いて、必然的な変化だと思いましたね。

オキタ:もともとétéの楽曲にヘヴィー・ミュージックの要素は散りばめていたからね。でも今回は最もその濃度や純度が高い。だからふたりは、これまでの経験だけではカヴァーしきれなかったところは多いかも……(笑)。

小室:BPMが高いので、普通に叩くだけでも難しくて(笑)。でもリズム隊ふたりがそこをまったく通っていなかったのが良かったと思うんです。それがあったら、コテコテのテンプレートみたいなフレーズを入れてしまう可能性があった。メタルっぽいドラムだけど、いわゆる「メタル」なフレーズは入れていない。それがいい化学反応になったかなと思います。「どうすれば自分のアイデンティティを残して面白いことを入れられるかな?」と考えていきましたね。

ヤマダ:ヘヴィー・ミュージックでベースの音を聴き分けられない人って結構いるんじゃないかなと思うんです。でもベーシストとしてはそういうものにしたくなくて、徹底的に向かい合いました。サビでめちゃくちゃ激しいフレーズを弾いたり、高い音のフレーズを作ったり、いろいろ試行錯誤しましたね。

オキタ:良いベースになったんじゃないですかね?(笑)

ヤマダ:何その感想!(笑) すごく満足してます。自分なりのヘヴィー・ミュージックのアプローチが見つかった気がしているし、今後いろんなやり方ができそうだなと思っているところです。

ヤマダナオト(Ba)

──どれだけ自分の色を出せるかに掛かっていると。

ヤマダ:いつもétéは殺らなきゃ殺られる感じですね(笑)。

──タイトルの『IUTORA』は「言う虎」から来ているんですよね。これは「諕ぶ」と書いて「さけぶ」と読むことも関連しているのでしょうか?

オキタ:じつは関係がないんです。アートワークをしてくれたMade in Me.のU sucg:):くんがデザインとして「諕」を使ってくれたんですよね。

──へええ、そうだったんですね。リリックに「純文学」という言葉があって、ラップに込められた思想や攻めた音楽性などに「叫ぶ」という意味合いが強い気がしたので、てっきり「諕」から「言う虎」や「IUTORA」、3曲目のタイトル「言ゥ虎pia」が出てきたのだと。

オキタ:違うんですよね(笑)。「言う虎」という言葉に行き着いたのは、「言ゥ虎pia」のリリックでリチャード・ブローティガンの『西瓜糖の日々』と中島敦の『山月記』を引用したからです。2作とも人語を話す虎が出てくるんですよね。「言う虎」という響きが「ユートピア」に近いところもあって、いいんじゃないかなって。

この記事の編集者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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