これは、音楽で行う「心のリハビリテーション」──Made in Me.が標榜する「ゼノミクスチャーロック」というスタイルに迫る!
ゼノミクスチャーロックというスタイルを標榜し、独自のサウンドをかき鳴らしてきたバンドMade in Me.が最新作『Re:Habilis』をリリース。「リハビリテーション」から着想を得たというタイトルの今作に、彼らをどのような想いを込めたのか。これまでの歴史をたどりながら、今作の制作秘話について、聞きました。
Made in Me.最新アルバム『Re:Habilis』、ハイレゾ配信中
INTERVIEW : Made in Me.
横浜/町田初のゼノミクスチャーロックバンド・ Made in Me.が、満を持して全国デビュー。2015年に3ピースでスタートしたバンドは、2016年にゆかり(Syn/Vo)がドラマーとして加入し、それからじゅんちゃい(Gt/Cho)が、ゆかりがシンセ兼ボーカルにパートチェンジして、ドラマーとしてDAIKIが加入するなどメンバーを増やし、横浜と町田を拠点に様々な界隈のクリエイターとタッグを組んでアートの可能性を広げ続けてきた。 2021年は年始から3ヶ月連続でデジタルシングルをリリースし、6月にはコドモメンタルINC.への所属を発表。9月には下北沢7会場にてサーキットイヴェント「Re:Habilis FESTIVAL」を開催しSOLD OUT、11月に新曲と既発曲の再録を含むキャリア初のフルアルバム『Re:Habilis』をリリース。その数日後に渋谷WWWにてワンマンライヴを開催と、バンドの活動のなかで大きなうねりを迎えている。彼らのターニングポイントにフォーカスしながら、彼らの持つマインドとアルバムの核心に迫っていった。
インタヴュー&文 : 沖 さやこ
写真 : 宇佐美 亮
ジャンルで対バン相手を選ばないバンドを集められるのはMiM.しかいないよね
──彦さんのコーンロウ、お似合いですね。ちょっといかついですけど(笑)。
彦(Vo/Gt): あははは、トライバルな感じではありますよね。タトゥーも彫ってないから、最初はこういう髪型するのも抵抗あって。でも周りの後押しもあってやってみたらみんなから「めっちゃ似合ってるじゃん!」と言ってもらって、運気上がるかなと思ってます(笑)。髪がまとまってラクっすね。
──さて、2015年に結成してから自主で様々なクリエイティブな活動を起こしてきたMade in Me.(以下MiM.)は、このたびコドモメンタルINC.に所属し全国デビューを果たします。じゅんちゃいさんは、ひと足早くコドモメンタルINC.にプロデューサーという立場で所属していましたよね。
じゅんちゃい(Gt/Cho): そうですね。コドモメンタルに所属しているétéのオキタユウキからべろべろに酔っぱらった状態で電話があって、「コロナ禍に入ってからビートメイクしてるんでしょ? なんか一緒に作ろうよ」と言われたので、作って送ったんです。それをオキタがコドモメンタルの社長に聴かせたら、社長がすごくビートを気に入ってくれて。そこで僕がプロデューサーというかたちでエージェント契約の話を頂いたんです。
──そこからMiM.が所属に至るまでの経緯というと?
じゅんちゃい : そこからしばらくして、社長から「一緒にやりたいことリスト」をもらったんです。そのなかに「ミクスチャーバンド売り出す」という項目があって……それMade in Me.じゃんって(笑)。冗談交じりに「うちのバンドどうですか?」と言ったら、「あれ? 自主でやりたいスタンスじゃないの?」と訊かれて。ちょうど僕らも自主では到達できない厳しさを感じていたタイミングだったんですよね。そしたら社長が「じゃあやろうか」と言ってくれて、こんなにサクッと決まるもんなんだなと(笑)。それが今年の5月です。
U sucg :):(Ba/Cho): それで6月に決まっていた自主企画のスリーマンで発表しましたね。Re:Habilis FESTIVAL(※通称ビリフェス。2021年9月に下北沢7会場にて開催されたMade in Me.主催のサーキットイヴェント)も自主で活動していた頃から動き出していたので、所属が決まってからコドモメンタルが僕らの手が回らなかった部分を次々サポートしてくれて。自主でも開催はできていたと思うけど、あの手助けがなかったらヤバかった。至らない点が多い状態で終えてたと思いますね。
──コロナ禍であの規模のサーキットイヴェントを、自主で踏み切ろうとしていたんですか……!?
じゅんちゃい : (笑)。僕ら売れてないけど、いろんなバンドに信頼されている自負はあったんですよね。その無形財産をライヴイヴェントというかたちで表したかったんです。それで「下北沢で2会場借りてやりたいね」という話をしていたところにコロナ禍に入ってしまって。それでもやっぱり諦めきれなくて、2021年の2~3月から開催に向けて動き出したんですよね。だからバンドにお誘いを掛けたのも4月だし、いろいろぎりぎりだったんですよね……(苦笑)。
──その短期間で当日あれだけのイヴェントに出来たことは、チーム全員が高い意識を持っていることを証明していたと思います。MiM.が町田Nutty'sで企画していたイヴェントの空気感がそのまま下北沢に立ち上るような、クリエイティヴかつエンターテインメント性とユーモアに富んだ1日でした。
彦 : 僕ら的には「みんな欠けてるところはあるかもしれないけど、一緒に何かを作れるはずだよ」みたいなことが伝えられるイヴェントにしたかったんですよね。「このバンド知らないけど、MiM.が呼んだならかっこいいのかも」と思ってコネクトしてもらえたところもあったと思うし、参加してくれたみんなめちゃくちゃ楽しんでくれて「愛に溢れたイヴェントだね」と言ってくれて。出てくれたバンド全員いいやつらだから、それが伝わる1日になったと思いましたね。
じゅんちゃい : ジャンルで対バン相手を選ばないバンドを集められるのはMiM.しかいないよね、というのもコンセプトではありましたね。
彦 : 果歩バンドとHOTVOXが一緒に出るイヴェントなんてなかなかないよね(笑)。そういうところでも尖ったオリジナリティが出せたかなと。
──MiM.は下北沢Shangri-Laで大トリを務めましたが、バンド史上最大キャパの会場で、バンド史上最大規模の自主企画を締めくくるのはいかがでしたか?
彦 : Shangri-Laのトップバッターのレイラのリハを観ていた時は「こんなにこのハコ小っちゃかったっけ?」と思ったんですけど、いざ自分がステージに立ったら全然違いましたね。フロアは満員で、全然知らない人もたくさんたくさん観てくれていて。夢見心地で感極まってました。いつでも泣けるわ!ってくらいヤバくて最高でしたね。
じゅんちゃい : 転換中はどの会場も、自分たちで作った「近未来SFの世界っぽいBGM」を流してたんですけど、それにリラックス効果がありましたね(笑)。緊張を和らげてくれた(笑)。
彦 : そうそう(笑)。ビリフェスが終わってから、入場規制になった後も外にたくさん人が並んでくれていたのを聞いたり、「観たかったけど、お客さんを優先して自分は身を引いたよ」と言ってくれた友達がいたり。そういう気遣いや優しさを知って、本当に感無量でした。余韻が1週間経っても取れなかった。めっちゃくらっちゃいましたね。
ゆかり(Syn/Vo): あんなにたくさんの人が観に来てくれると思わなかったです。「終電DJ」でみんなが手を上げてくれて、全然泣ける感じの曲じゃないのに「3人の時からやってる曲を知ってくれてるんだ(※MiM.は2016年6月~2018年11月の期間、彦、U sucg :):、ゆかりの3ピース編成で活動。当時ゆかりはドラムを担当していた)」って泣けてきましたね。純粋にめっちゃうれしかったです。
DAIKI(Dr): 普段は音源を作ってそれを届けることが多いですけど、「人が存在する場所を作るってすげえ~!」とあらためて思いましたね。
──お話を伺って、MiM.が自分たちの足で道を切り開いていくなかで、コドモメンタルINC.との歩幅が合ったんだろうなと思いました。
彦 : じゅんちゃいがコドモメンタルとエージェント契約をしていて、U sucg :):もコドモメンタルINC.所属のアーティストのデザインをいろいろと担当していたので、ふたりが絶大な信頼を置いていたんですよね。もともと僕は「○○のレーベルや事務所に所属したい」という意識が薄いし、コドモメンタルINC.の社長は強面だから「この人に自分の主張ができるのかな?」と勘ぐったりもしてたんですけど、会ってみたらふたりが社長を信頼する理由がわかったんです。
U sucg :): : 社長もアーティストだから、作り手の気持ちをわかってくれるんですよね。作ったものに対する言葉の掛け方が本当に素晴らしくて。感激がすごく大きかったんです。
彦 : 自主で進んでいく世界線を期待していた人もいるかもしれないんですけど、いろんな偶然が重なってこういうことになって。ここからまだまだやっていけるなという自信が湧いてきてますね。相変わらずへんてこな進み方してますけど(笑)。
ゆかり : あれよあれよと決まっていって、今でも実感がそんなになくて(笑)。でもコドモメンタルINC.に入っていなければできなかったことが次々と実現していて、ありがたいです。
DAIKI : 僕がMiM.に入ってすぐコロナ禍に入ってしまって、1年間ちまちまインターネットで発信してきて。それでもなんとか事を起こしていこうとするなかで、こういうふうに話がとんとんと進んでいくのは、ある種自分たちが計算どおりに進ませているというか(笑)。動いたら動いただけのことが起きるんやなと思ってます。だからもう、攻め攻めで行くしかないっすよね。
狙ってこういうアルバムにしたわけじゃない。だから「べくってる」っすね
──バンドにとって初の全国流通盤であり初のフルアルバム『Re:Habilis』は、ビリフェスと同じ名前が冠としてつけられています。「リハビリテーション」から着想を得たワードだと思うのですが、これを掲げるに至った経緯とは?
彦 : コロナ禍に入って鈍っちゃった感覚が取り戻せたらな、と思ったんです。五感を振るわせることもそうだし、人が集まることで生まれる熱量や温度を感じるのは家だと難しい。俺らはバンドがあるけど、コロナ禍であってもなくても普段の生活でそういうものに触れることは難しいなと思うんです。たくさんある娯楽のなかでも、音楽は多方面に触手を広げられるぶん、いろんなものを幅広く融和させられるんじゃないかなって。せっかく音楽をやっているんだから、俺らが音頭を取って心のリハビリテーションをしてみようと。きっと、みんな思っていることの根本は同じなんです。でも個の性が強すぎるぶんいがみ合いが起きてしまう。
じゅんちゃい : だから「リハビリテーション」でもあり「チューニング」でもあるんですよね。心のチューニングをするためにも音楽でリハビリしようや、っていう。
彦 : でもチューニングという言葉は音楽の世界にいる人や音楽が好きな人にしか伝わらないじゃないですか。だから「リハビリテーション」という言葉を使ったんですよね。僕はリハビリを受けたことがないし、世間的にも事故などをイメージさせる言葉ではあるけれど、それをバッドな意味で捉えたくなかったんです。あらためて意味を調べてみたら「再び適した状態にする」という素晴らしい言葉でもあるし、「リハビリ」という言葉を使うことに勇気が必要な自分もいたし。でもそれをアートや表現という場で使いたくて「Re:Habilis」という言葉にしたんですよね。みんなが「Re:Habilisって何? リハビリ? なんで?」ってなるくらいがちょうどいい。
──その思想からビリフェスの立ち上げに至ったということですね。
彦 : そのリハビリテーションを、まず非言語的に感じてもらいたかったんです。ビリフェスで流してた近未来SFの世界っぽいBGMもその一環ですね。今の世の中の状態だと、ディスカッションしても衝突しちゃう。まずは口げんかもできない状態からお互い踊っていったら、違う思想を持っている同士でも「考え方は違うけどこいつといると楽しいし、いっか!」って気持ちになる(笑)。そこから始めたいなと思ったんですよね。結果、自分的にも思い入れのある言葉になって。
──必然的にアルバムのタイトルにもなっていったと。
彦 : 今回初めて全国流通することになって、制作やレコーディングからリリースまでの間が今まででいちばん開いてるから、ぶっちゃけ自分のなかの旬を過ぎてるなと思ったりもしたし、「アルバムのタイトルも同じ言葉でいいんだろうか?」と恐る恐るなところがあったんです。でもじゅんちゃいが考えてくれた曲順でこの10曲を聴いたら、「あ、リハビリしてもらったわ」とすごく腑に落ちたんですよね。
──過去曲を交えたアルバムは過去の歩みのダイジェストやベストアルバム的な面を担いがちですが、『Re:Habilis』はこれからMiM.が進んでいくために現在のモードを示している印象がありました。
彦 : 間違いないですね。新曲が4曲収録されてることも大きいかな?
U sucg :): : “残夏Fire”が最新のモードですね。“東京回廊”は新曲と言いつつ母体を作ったのは3年くらい前だから。
じゅんちゃい : でも新曲4曲のアレンジを作ったのは今年だしね。
DAIKI : “風体//Rewind”はリマスタリングして、あとの過去曲は再録して2021年ヴァージョンにしてるし。
U sucg :): : もともとミニアルバムの予定だったから、この10曲はミニアルバムの候補曲だったんです。第三者の意見を取り入れたくて社長に聴いてもらったら、全曲OKもらっちゃって(笑)。だから結果的にこういうアルバムになった……という感じなんですよね。
彦 : 狙ってこういうアルバムにしたわけじゃないんだよね。だから「べくってる」っすね(笑)。
U sucg :): : 出た「べくってる」! 懐かしい~。
じゅんちゃい : (※DAIKIに向かって)「べるってる」は「成るべくして成った」って意味ね(笑)。
DAIKI : なんとなく察した(笑)。
──ははは。MiM.のバンド人生、ずっとそうですよね。コドモメンタルINC.への所属はもちろん、ドラマーだったゆかりさんがシンセヴォーカルに転向したことや、2018年にじゅんちゃいさん、2020年にDAIKIさんが加入したことも。
彦 : ほんとそうっすよね。脱退や解散のニュースが多いなか、俺らピクミンかってくらいメンバーが増えてる(笑)。でも3人の時も、4人の時も、5人の時も全部しっくりくるんですよ。メンバーが足りないと思ったこともないし、いつもバランスがいい。だからもう……最高だよね!(笑)
一同 : あははは!
のらりくらり活動しているMiM.がうらやましくもあった
──新曲4曲は標榜する「ゼノミクスチャー」を明確に体現する、型破りなミクスチャーロックで。1曲のなかの展開も多いですし、劇的に情景が変わっていくけれど、それをあんまり感じさせないんですよね。あくまでも天然もので、奇を衒ったミクスチャーではないなと。
彦 : うんうん。“残夏Fire”もいろんな夏を通り過ぎていくようなイメージだし。
U sucg :): : “東京回廊”は「DAIKIくんならこのドラム叩けるんじゃね?」ってところからイメージを膨らませたのが始まりですね。彼はツインペダラーなので。
じゅんちゃい : ハードコアやメタルの部分を踏襲しつつ、「サビを盛り上げずに落としてみたらどうなるんだろう?」「サビでシュンッと音を減らすのかっこいいよね」という話からああいうアレンジになって。
彦 : そうそう。“東京回廊”のサビは、夜の摩天楼の雲がスッと消えていくイメージだね。それがいつの間にかラウドな要素に変わっていく。今年の3月に出した“合金Coffee”でもブレイクダウンを入れたりしてたけど、“東京回廊”ではそれを叩きつけられたかなって。本筋のメタラーからは「メタルじゃねえじゃん」と言われるかもしれないけど、あっと言わせられるというか。
DAIKI : “東京回廊”のドラムの喧嘩力は強いから。俺自身ナードというよりは荒いほうが好きやし、ちゃんとぶちかませてるんじゃないかって。
彦 : 資本主義に対してのアンチテーゼを歌った曲で、どんどん何かがおかしくなっている激昂をメタルの部分で担いつつ、儚さや「もっとこうじゃない?」という思慮をMiM.は語りたかった。少しでも何かの中和になってくれたらいいなと思っていますね。
U sucg :): : 神奈川県のバンドが、外から見て歌う「東京」回廊ね(笑)。
彦 : そうそう(笑)。SFが好きだから、サイバネティックで近未来的かつ荒廃としてる、ディストピアだわーとテンションあがりつつも、「このままじゃだめでしょ」と思う。どこまで作用するかわからないけど、せめてもの気持ちで「回廊」と呼んであげている、ぐらいの感覚。「中道(ちゅうどう)ってどこなん?」と思いながら歌い上げる曲ですね。
──MiM.の音楽は自分たちの居心地のいい空間ではあるけれど、逃避的な意味でのそれではなく、つねに現実と向き合っているんですよね。現実という逆風を凌ぐ盾や、現実に自我を飲み込まれないための抵抗でもあるし、それこそ先ほど彦さんがおっしゃっていたような融和を求める思いも孕んでいる。
じゅんちゃい : たしかに。そうかもしれない。
──音楽が生まれる根幹は憂いや苦痛だけど、どの曲もそれをユーモアで突きつけているような印象があるんです。
彦 : ああ、うれしいっすね。誰かに「彦と言えばユーモアだよね」と言われたことがあって。ユーモアという言葉は昔から好きだけど、自分がそうなのかはあんまりわかってなかったんです。でも「ってな?」みたいなお茶目さ、ギャグ感、トリックスター的な感覚は持ってるかなって。
──ミクスチャーロックはそういうメンタリティと相性がいいですよね。アルバムという作品のフォーマットで10曲が集まっているぶん、バンドの個性が濃く立ち上っている気がします。MiM.はすべての辻褄が合っているんですよね。生き様がテンプレ的なバイオグラフィではないから、常識破りなミクスチャーロックになるのは当然というか。
じゅんちゃい : ほんと独特な歩みのバンドですよね。僕が前のバンドにいた時は「なにモタモタやってんだあいつら」と思ってたし。でも着々と計画を遂行していくことの難しさも感じていたから、外から見てのらりくらり活動しているMiM.がうらやましくもあった。
彦 : のらりくらりで始まったバンドが、ゆかりが加入してから「この3人でどんな音楽を作っていこう?」とがむしゃらに活動するようになって、それが『solitaire』(※2018年春リリース。ライヴ会場と一部店舗にて限定販売)につながっていって。今は各々のマンパワーやキャパシティも上がって、支えてくれる人が増えて、気張り方が毎度毎度更新されていってる感覚がありますね。28歳になってもまだまだ立ち入ってないツルツルな箇所が山ほどあるし、メンバーには引き出しを増やしてもらってる。そういうものを1個1個ちゃんと見て、これからもフレッシュでいたいですね。
可能な限りで、各所に祭りを巻き起こしていきたい
──既発曲も装い新たに。“夜汽車”は既発ヴァージョンよりもテンポが落ちて、貫禄が増しましたね。ライヴで何度も演奏してきたからこその、粘っこいグルーヴと緩急が心地よいです。
DAIKI : “夜汽車”は僕が加入する前、制作に携わるようになったひとつめの音源なので、そこから2年3年経つなかで「もっとかっこよくできるな」という気持ちも湧いてきたし、2年近く正式メンバーとして一緒に演奏したからこそのアンサンブルも生まれてきたから、さらにライヴ感のある音源にできるなと思ったんです。“夜汽車”は収録する予定ではなかったんですけど、出来も良かったしこれは入れるべきだと。
彦 : “夜汽車”から“20th Century Boyz”で短尺で吐き捨てて終わるっていう最近のライヴの流れね(笑)。アルバムではその2曲を、最後と最初に持ってきたんです。ライヴによく来てくれる人は、リピートして聴いて楽しんでもらえるかなって。
U sucg :): : 本当は全曲録り直したいよね(笑)。もともと1曲でいろんなアレンジを作れるくらいの気持ちなんですよね。このメンバーは全員、「これはこうでないといけない」みたいな凝り固まった思考がないんです。
──信念や美学は貫かれているし、音楽的な追及に余念はないけれど、曲作りの視点がそれぞれの楽曲でまったく違うのはそういう性質が関わっているのかもしれませんね。どこか柔らかさは感じるアルバムなので。
彦 : あははは、エッジーで尖った感じに受け取ってもらうことが多いんですけど、このサウンドからそういう優しさの部分が伝わってくれるならめっちゃうれしいっすね。フルアルバムで良かった。この10曲が揃ってなかったら、このアルバムどうなってたんだ?
じゅんちゃい : まあ俺たちは「べくってる」から(笑)。このアルバムをきっかけに僕らを知ってくれる人が多いなら、昔の曲も入れたいもんね。
彦 : そうだね、まさしく「べくってる」。いろんな人に届いてほしいです。
──2021年11月26日に渋谷WWWで開催されるワンマンでも、新しい発見や刺激が多そうですね。
じゅんちゃい : 今までやったことがない場所で、MiM.がチャレンジできる場所がWWWだろうなと。アートの先端を行く人たちがライヴをしてきているハコなので、俺たちなりの面白いことができたらいいなと企んでいるので楽しみにしていてほしいですね。あと、ワンマンが終わった後は全国でライヴもできたらいいなと考えていて。社長も「動員とか気にせず、全国に挨拶するつもりで好きにやってこい」と言ってくれているんです。だから全国で、これまでお世話になったバンドに恩返ししたいし、ご当地で新しい出会いがあったらうれしいし。ビリフェス、全国リリースに続き、初の試みが目白押しなんです。
U sucg :): : 自主での活動でいちばん限界に思っていたことが、僕らの音楽が届いてほしいところに届かないことだったんです。レーベルマネジメントに入って、今までできなかった機会をたくさんさせてもらっていて――だからいつでも「はじめまして」の気持ちが大きいですね。今までMiM.を知らなかった人に届いてほしいんです。
──自主で活動するなかで「これがやりたいのにできない」という悔しさが生まれたぶん、やりたいこと、やるべきことは明確になっているでしょうしね。
U sucg :): : そうですね。自分たちなりに取捨選択をしてきたなかで、出来ること、やりたいことを伸ばせる場所にやっと来ることができた。だから届くところまで届いてほしいし、自分たちが現状どこまで飛べるかをしっかり確認できたらと思いますね。
DAIKI : いろいろ考えててすごいなあ。俺「全国」って聞いて、飯と酒のことで頭いっぱいやった(笑)。
一同 : あははは!
U sucg :): : 旅の醍醐味だね(笑)。行ったことがない街にも俺らのことをプッシュしてくれてる人がいて、そういう人たちに会いに行けるのもうれしいですね。
──『Re:Habilis』をきっかけに、リハビリの先に行けそうですね。
彦 : そうっすね。「音楽産業」とか「ロック」とか、土壌のあることばかりをやりたいわけじゃなくて、社会実験的でありたいし、世の中の物事の捉え方を柔らかくしたい。何事も捉え方をミスってるから、そもそもの話が進まないんじゃね? とも思うんです。日本人は繊細なのに、その繊細さを逆の意味で使っている気がする。持ちつ持たれつが繰り返されていけばうまくいくはず。
じゅんちゃい : そういうものを重んじることができるバンドでいたいよね。
彦 : うん、そうだね。異端児がいることで停滞したものに対流が生まれるし、マインドの貿易があることでいがみ合いが減るとも思う。自分の武器でぶっ倒すことは簡単だし面白くない。せっかく同じ時代に生きてるんだから「敵なのにかっけー!」くらい言えるようになりたいっすね(笑)。俺は喧嘩を売りたいわけじゃなくて焚きつけたいだけ。感性が合わない相手との関係性も諦めたくない。
DAIKI : 「「仲良くしたい」ってことね。(笑)
彦 : そうそう。ライヴもみんなに「俺ステージ降りたら出来ることほとんどないんだけど、あなたはどんなことができるの?」と訊きたいだけだから、みんなも「彦、お前全然部屋の片付けできねえらしいな?」くらいのテンションで俺たちのところに来てほしいんです。可能な限りで、各所に祭りを巻き起こしていきたいですね。
編集 : 西田健
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Made in Me.ディスコグラフィー
PROFILE
2015 年結成。横浜・町田を拠点に活動をするミレニアルロックバンド。
2018 年〜「100 曲サブスク配信」を継続中。全ての音楽の源泉となるのは、彦 (Gt&Vo) によるサウンドライティング能力。全ての音源を DIY でディレクションする、DAIKI (Dr)、じゅんちゃい (Gt) によるサウンドプロデュース能力。全てのアートワークを担当するのが U sucg:):(Ba)、そして透き通る声質に芯に響く唯 一無二の歌声であるゆかり (Syn&Vo)。メンバーそれぞれがバンドの「核」を担う存在。
■公式HP https://www.made-in-me.com/
■公式ツイッター https://twitter.com/mim_band