友達が「この曲いいよね?」って
──理芽さんが所属しているKAMITSUBAKI STUDIOは、ヴァーチャルのシンガーやボカロP出身の方が多数所属している、おもしろいレーベルですよね。理芽さんにとってKAMITSUBAKI STUDIOの魅力は、どういうところだと思いますか?
理芽 : 客観的に見ても、KAMITSUBAKI STUDIOってすごいレーベルなんですよね。プロデューサーさんはじめ、アーティストさんも他とは違ったところをみているし、こだわってくださるので、自分たちもそれについて行きたいと思えます。新しくて、未知なことに挑戦することも多いので、それが成功するかもしれないし、成功しないかもしれないという葛藤もあるなかで、いろんなことを追求してやっていけるチームなんじゃないかなと思います。
──活動を始める前からVTuberの世界には興味があったんですか?
理芽 : 声をかけてくださったときに、はじめてその存在を知りました。当時は、自分からは絶対手を出さない感じの存在だったんです。でも、自分がやってみたらキャピキャピしてるんじゃないかとか、そういった固定概念が吹っ飛びました。ヴァーチャルのあり方の多様さを知って、そこから良さも感じるようになりましたね。
──活動をはじめた当初は、どんな感覚でしたか?
理芽 : ヴァーチャル・シンガーの「理芽」という存在が産まれて、「これは本当に自分なのか?」って言うクエスチョンと、自分がこんなことやってるんだという嬉しさが入り混じっていました。自分もある意味聞き手のような感覚でした。
──2019年の12月20日には、はじめてのオリジナル曲“ユーエンミー”を発表されました。それまではカヴァー曲を多く歌われてきましたが、オリジナル曲を歌ってみてどうでしたか?
理芽 : はじめてのオリジナルだったので、「どういうテイストの曲を歌うんだろう」という皆さんの期待や反応が楽しみでした。やっぱりデビュー曲って自分の名刺みたいなものだし、皆さんからの第一印象がきまる曲だと思うので、思い入れはすごくあります。レコーディング自体がはじめてで、声が全然うまく出せなくて。まだ自分の歌声が形成されていない時期の曲なんですけど、それはそれで自分の成長の証を知れる曲になっているかと思います。
──それから2020年1月3日に発表した“食虫植物”という曲がTikTokでバイラルヒットします。YouTubeのミュージックビデオの再生回数は2021年の7月の時点で再生回数3000万回を突破していますが、ヒットしたときはどんな感覚でしたか?
理芽 : 一時期はTikTokを開くたびに流れてきていましたし、びっくりしましたね。実は、“食虫植物”は自分のオリジナルのなかでも再生回数がいちばん低かったんですよ。だから、「これ、自分の曲だよね?だよね?」って自分の曲だと信じきれてない部分が正直ありました。いちばん驚いたのが、まわりの友達が「この曲いいよね?」って言ってきたことがあって。すごく嬉しかったですし、こんな身近な人にまで自分の歌が届いてるって言うのが本当に不思議な気持ちでした。
──先日2021年5月15日には初のワンマン・ライヴ〈ニューロマンス〉が行われましたが、感想はいかがですか?
理芽 : ワンマン・ライヴというもの自体がはじめてだったので、なにも正解がない状態での試みだったし、自分自身とてもワクワクしていました。でも終わってみて、お客さんに新たな自分というか、魅力を見せられたんじゃないかなって思っています。とても良かった…良かったっていう言葉しか出てこないんですけど(笑)。それくらい、印象に残るライブになりました。
──今回、ARライヴというやり方でしたが、やってみてどうでしたか?
理芽 : ヴァーチャルという存在のなかで、そこに本当にバンドメンバーの方と自分が目の前にいるような感覚を皆さんにはしっかりと体験してもらえたような気がしています。
──普段の活動と、ライヴで歌うことの違いは感じますか?
理芽 : 普段の活動では、自分対自分の戦いみたいな感じで歌っているんですけど、ライヴではひとりじゃないということがとても心強くて。バンドメンバーの方だったり、5月のワンマンは無観客でしたがこれまで出させてもらったイベントではお客さんの声だったり、応援の力だったり。普段の音楽活動では得られないパワーをライヴでは感じられます。そこで受け取った気持ちもすべて出せるっていうのがライヴの良さだなって自分では感じています。
──ワンマン・ライヴを経て、変化や成長を感じることはありますか?
理芽 : レコーディングだったら微調整ができたりとか、何回も何回もリテイクして良いものを生み出すじゃないですか。でもライヴは一発勝負な部分があるので、そこで100%以上のものをいちどに出さないといけない。そういう部分をライヴから学びました。それを生かしながら、レコーディングのときにも、ライヴを想定しながら、どういう表現がお客さんに伝わるかなとか、そういうことを考えられるようになりました。毎回同じような歌い方や声の出し方だったら、違いを楽しめないんじゃないかなって思えるようになったので、自分でもそういう変化を見つけていけたらいいなと思います。