2020/12/02 18:00

アップデートを繰り返して、さらなる加速へ──Limited Express (has gone?)、新作『The Sound of Silence』

Limited Express (has gone?)

近年はHave a Nice Day!とのスプリット、2MUCH CREW、ロベルト吉野との合体作をはじめ、常に刺激とユーモアを振りまき続けるバンド、Limited Express (has gone?)が前作『perfect ME』から約1年ぶりとなる作品『The Sound of Silence』を〈Less Than TV〉よりリリース! MVも強烈なインパクトを放つリード曲“Live or die, make your choice”をはじめ、まさかのアルバム・タイトルにもなっているサイモン・アンド・ガーファンクルのカバー(!)まで。困難な世情の中でも失われることなくさらに増した力強さと、前作からの流れを組む強いメッセージが込められた全7曲を収録。OTOTOYでは前回に引き続き、今回もメンバー全員への濃厚インタヴューとともにお届け!

デジタル・ブックレット付き、ハイレゾ版の配信はOTOTOYのみ!

Limited Express (has gone?) - Live or die, make your choice(Official Music Video)
Limited Express (has gone?) - Live or die, make your choice(Official Music Video)

INTERVIEW : Limited Express (has gone?)

Limited Express (has gone?)がミニ・アルバム『The Sound of Silence』リリースした。全曲コロナ禍で制作されたという本作は、コロナ禍における政治や生活、ライヴハウスの状況のみならず、ブラック・ライヴズ・マターまで射程に捉えるなど“いま”の空気がパッケージされた1枚となっている。バンドにとって日常だったライヴができない日々が続いた中で、彼らはなにを考え、楽曲制作に臨んだのか。本作が初参加音源となるサックスプレーヤー・こまどり(compact club)を含むメンバー全員に話を聞いた。

インタヴュー&文 : 須藤輝
写真 : 浦将志

ライヴがなくて精神状態がおかしくなった

──4月の頭にニーハオ!!!!のインタヴューをさせてもらったとき、YUKARIさんは「曲を作ったりアイデアを練ったりすればいいと思っても、全然やる気が湧いてこなくて」とおっしゃっていました。その状況からリミエキの新作リリースへと至ったわけですが、どこかで創作意欲が湧くきっかけなどはあったんですか?

変幻自在、軽やかにしなやかに──“チアパンク”バンド、ニーハオ!!!!

YUKARI(Vo) : どうやったかな… なんか、どう考えてもこの状況が長引きそうやったし、いつの間にかそういうモードになってたんかな?

谷ぐち順(B)(以下、谷ぐち) : いや違うでしょ。精神状態がおかしくなって荒れ狂い始めて「これはもうなにかやらなければダメだ!」みたいになったからでしょ? だから個人練習という形で、2人でスタジオに入って曲のネタを作ったり。

もんでんやすのり(Dr)(以下、もんでん) : スタジオで録ったやつをLINEで送ってくれましたよね。

谷ぐち : スタジオもそうだけど、複数のバンドを掛け持ちしてれば少なくとも月に2、3本はライヴがあるのが当たり前だったから。やっぱりライヴが1カ月ないだけで、俺ですら調子が悪くなりますよ。

YUKARI : みんなそうやと思うけど、やっぱりライヴを基準に生活してるんですよ。例えば来週ライヴがあったら、その日に照準を合わせて体調を整えとかなとかメンタル的にもアゲていかなとか。次のライヴが何月何日っていうので日々の経過を把握してたから、こんなにライヴがないと日付とか曜日の感覚もなくなってきて。

谷ぐち : でもあれなんですよ、リミエキがアルバムの制作とかコンスタントにできてるのは、仁一郎がスケジュールをバンバン入れてケツを叩いてくれるから。ただね、クソムカつくときもあるんですよ。YUKARIは「歌詞が間に合わない」ってキレてたよね。

YUKARI : 最悪ですよ、最悪。マジで。曲はどんどんできますよ。でも「そんな歌いたいことないやろ」みたいな。

左より、こまどり(Sax)、谷ぐち順(B)、YUKARI(Vo)、飯田仁一郎(G)、もんでんやすのり(Dr)

──「そんな歌いたいことないやろ」というのをそのまま歌ったのが“SLACK OFF”ですね。

YUKARI : そうそうそう。なんかもう拷問みたいな。

飯田仁一郎(G)(以下、飯田) : 普段はライヴが多いから、曲作りのペースはゆっくりだったんです。でも今回は「ライヴはできないけどちゃんとスタジオに入ろう」ってなったときに、ライヴの練習がないので、そのぶん曲作りのペースがかなり速かったんですよね。

他人が作った曲はかっこいいと思えない

──メンバー間でどのようなやり取りをして曲ができていくんですか?

もんでん : だいたいスタジオで誰かが「こういうのやりたい」と言ってリフを弾いて、そこからみんなで合わせていく感じですね。

YUKARI : その過程で揉めるから、最近は元ネタを持ってきたひとのイメージに寄せるようにはしてるかな。

谷ぐち : 以前よりは揉めなくなったんじゃない?

飯田 : 揉めますよ。元ネタは谷さんと僕が持ってくることが多いんですけど、そうすると1回目のスタジオでYUKARIチェックがある。そのチェックはまず否定から入るので、そこから戦いが始まり、それを乗り越えてきた曲たちが日の目を見る。まあでも、歌がちゃんとハマるメロじゃなきゃ納得できないとか、そういうこだわりはシンガーとしてあって然るべきなので。

YUKARI : 違うよ。ただ気に食わへんだけ。

飯田 : その気に食わへん状態が、次のスタジオまで継続しているのか、もしくはいったん家に帰ったときに気に食うようになってるか…。

YUKARI : 録音してるときも気に食わへん状態が続いてるやつもあったで。ミックスまで終わったのを聴いてやっといいと思えた。

谷ぐち : ひどい話ですよね。曲が気に食わないと家に帰ってきてもずっと機嫌が悪いんですよ。

YUKARI : なんかね、ひとが作ったものはかっこいいと思えないんですよ。

谷ぐち : それもすごいよね。俺なんて逆にひとの作った曲のほうが好きだな。自分のやつって、もう自分の手法で飽きてるから。今回のアルバムでも一番好きなのは仁一郎が持ってきた“悪魔は囁き天使は導く“だし。

YUKARI : その曲が最後まで嫌だったんですよ。なんかツイン・ヴォーカルの感じとかが、ミクスチャー・バンドみたいやなと思って。最終的に気に入ったからよかってんけど。

谷ぐち : YUKARIは仁一郎の曲が気に食わないんですよ。俺が作る曲のほうがYUKARIの中ではまだマシなんだよね。特に今回は一緒に作ったから俺はつらい目に遭わずに済んだけど、仁一郎はかわいそうですよ(笑)。

酔っ払ってサックスをなくした

──こまどりさんは本作が初参加音源になるわけですが、それも含めてリミエキというバンドはいかがですか?

こまどり(Sax) : 初めてリミエキのライヴを観たのはたしか2004年ぐらいにNUMBERSとECDと対バンしたときで、それ以前から音源は聴いてて「かっこええな」と思ってたから、いまその中に自分がいるという状況がなんかよくわからないですね。でも、入った以上は必死こかんとあかんなと。さっきの“悪魔“もチキンレースに参加しているような感じで。

谷ぐち : どういうこと(笑)?

こまどり : 突っ走るんやけど、最後は崖から落ちんようギリギリで止まるように。

YUKARI : 落ちてるよね?

飯田 : (笑) こまどりくんが入ってよかったですね。最初は九州ツアーに参加してもらったんですよ。

谷ぐち : こまさんは獅子舞もやるひとで、だから俺はずっと「面白い獅子舞のひと」という認識だったんだけど、あるときCompact Clubのライヴを観たら「あれ? 獅子舞のひととよく似たやつがサックス吹いてる。しかもめっちゃかっこいいじゃん!」って思ったら本人だったの。それをよく覚えてて、九州ツアーに同行してくれないかって声をかけたんだけど、めちゃめちゃ急だったよね?


こまどり : 連絡をもらったのはツアーの半月前ぐらいですね。自分は連休を取りづらい仕事をしてるのでいったん断ったんです。でも次の日、職場で上司になんとなく探りを入れてみたら、奇跡的に休みが取れて。

谷ぐち : しかもこまさんは九州出身なんですよ。

こまどり : 地元が福岡で。だからそういう星の巡り合わせというか。

谷ぐち : そこから即スタジオ入って練習して… そのときだったかな、こまさんはお酒を飲むとダメになっちゃうから、ライヴの前は1週間ぐらいお酒を抜くって言ってて。意識高いなと思ったんだけど、〈福岡UTERO〉での1本目のライヴの打ち上げでビール・ジョッキを持ってるの見て「あれ? 明日はオフだけど、明後日またライヴあるのに?」って。

こまどり : 一仕事終えたし、実家まで歩いて帰れる距離だったので。

谷ぐち : そしたら翌朝、いきなり電話がかかってきて「酔っ払ってサックスなくした」って(笑)。でもね、あんまり困ってる感じじゃないんですよ。「ECDのTシャツは着てたから助かった」とか言ってて。こちらとしては「いやECDのシャツも大事だけど、明日ライヴどうすんの?」みたいな。

こまどり : 結局、思い切ってローンを組んで現地調達して。

谷ぐち : しかも、なくしたサックスのローンもまだ払い終えてないんだよね?

こまどり : いや、それはこないだようやく払い終わりました。

「こんな時代やった」というのを歌詞に入れ込みたい

──前作にあたる6thアルバム『perfect ME』から、YUKARIさんの書く歌詞は意味を、もっといえばメッセージ性を持つようになりました。今作ではそのメッセージの鋭さが増したように感じたのですが、この状況がそうさせた部分もあるのでしょうか?

YUKARI : うーん、どうなんかなあ… でも、“これはファンタジーじゃない”は間違いなくそうですね。この曲は3月末に〈小岩BUSHBASH〉でやった最初の配信ライヴで初めて披露するために作った曲で、もともと観客を入れてやる予定だったのが、コロナの感染拡大を受けて配信という形になったので。実は歌詞の相談や説明をメンバーにすることもないし、メンバーからも特にいいも悪いも言われないんですけど、“ファンタジー”に関してはこまさんとか順ちゃんが「いまの歌だね」って言ってくれたんですよ。

こまどり : 3月の時点で“これはファンタジーじゃない”を初めて聴いたとき、自分はフェラ・クティの“Zombie”という曲を勝手に思い浮かべたんです。この曲はフェラとその仲間たちが共同生活を送る「カラクタ共和国」に攻め込んでくる軍隊をゾンビに見立てて、そのゾンビを操ってるのは政府とか権力だって皮肉ってるんですけど、そんな感じを“ファンタジー”でも出したくて、ちょっと“Zombie”を意識しながら吹いてみたり。

YUKARI : やっぱり『perfect ME』を作ってるときから「いま歌える歌」と言ったら変やけど、時間が経っていまが過去になったとしても「そういうことを歌わなきゃいけない時代やった」っていうのを歌詞に入れ込みたくなったんですよ。例えば“フォーメーション”のフェミニズムっぽい歌詞にしても、それが過去のものになったらいいなと思うし。今回の“BOMB THE PROMPTER”とかもそうなんですけど。

──“BOMB THE PROMPTER”の歌詞を読めば、自ずとあのひとの顔が浮かびますもんね。

YUKARI : ですよね。ただ、レコーディングの何日か前に辞任するってなって「いま辞めるんかい!」ってめっちゃ悔しかったんですよ。だから歌詞を変えようかなと一瞬思ったんですけど、それもたぶんこまさんが「いまのままがいい」って言ってくれて。

こまどり : 彼がやったことはなかったことにはならんから、後世に残したほうがいい。

谷ぐち : 俺も“BOMB THE PROMPTER”はあの歌詞になってよかったなと。そうじゃないとただのポップパンクみたいなんだもん。

──ラモーンズっぽいですよね。

YUKARI : それ、たぶんYUKARIが「それは嫌や」ってめっちゃ言ってたフレーズのことやな。

谷ぐち : 俺も「ありえないな」と思いつつ「でも逆にいいかも」と思って作ってたんだけど、やっぱり「この曲ちゃんと着地すんのかな?」って不安で。でも、YUKARIがわりとストレートに政権批判みたいな歌詞をつけてくれたから、いいバランスになった。

YUKARI : でも、そういう政治的な主張や思想を歌詞に織り込むことは、メンバーは嫌じゃないのかなってちょっと思います。

もんでん : いや、全然ありです。むしろやりたい。

こまどり : そういう歌詞が、演奏するときの気持ちにも直結しとりますから。

飯田 :僕はいまのYUKARIちゃんの歌詞を新鮮に感じていますし、それはバンドをやる理由としてもすごくいいんです。やっぱり音楽は当然そうあるべきやし、絶対にその気持ちは忘れてはいけない。だからYUKARIちゃんにもそこはちゃんと歌ってほしいと、強く思います。

YUKARI : でもリミエキはずっと、楽しい時間を過ごすためだけに音楽をやってきて、なんなら歌詞なんてなくてもいいぐらいの感じだったんですよ。それが、最近になっていろいろ歌いたいことがあることに気づいちゃったわけですけど、そうやって気づいて変わったいまの自分も、気づかずにいたかつての自分もどっちも恥ずかしくない。そういう気持ちで歌詞を書いてます。

“Live or die”があったから、アルバムにして出そうと思った

──リード曲の“Live or die, make your choice”の歌詞はメッセージ性のみならず、物語性までありますね。映画『SAW』のパロディでありつつ「自分の居場所はライヴハウスだ」と宣言しているような。

YUKARI : そうなんですよ。以前から物語っぽい歌詞を書いてみたいと思っていて。曲名もジグソウのセリフから取ってるし、ちゃんとオチまでつけられたので、特別な位置づけの歌詞かも。あと、私は次のフレーズに食い込むような、もしくは前のフレーズから引っ張るような節回しをしたり、ブレスの位置をちょっとズラす癖があったから、そうなりそうなときは「またやってる」って注意されたよね。「ここの歌詞は全部8文字で揃えよう」とか。

谷ぐち : “Live or die”は遠藤ミチロウさんみたいな感じのヴォーカルにしてほしかったんですよ。だからレコーディングでも「ここからここまで四角く歌って」ってしつこく言ってた。

YUKARI : だからこの曲は、自分的には歌詞にしても節回しにしても新しいことをやれたかなって。でも、そもそもなんで『SAW』になったんやろ?

谷ぐち : 共鳴(谷ぐちとYUKARIの息子)がいちばん好きな映画だからじゃないの?

YUKARI : そうか、レゴで逆トラバサミ作ってたもんな(笑)。

飯田 : いつもスタジオでいろいろ揉めるんですけど、最初にみんなで合わせて“Live or die”の原型ができたとき、もんさんと「これがリードだよね」っていう話をした記憶があって。これがあったからアルバムにして出そうってなったぐらい、手応えを感じましたね。

YUKARI : いま話してて思ったんやけど、“Live or die”もこの状況下のライヴハウスに乗っかった歌詞になってるし、やっぱりそれがずっと頭ん中にあったんかもな。

谷ぐち : コロナ禍で作ったんだから、やっぱりね。

YUKARI : その「コロナ禍で制作された」みたいな文句って、ダサいなと思ってるんですけど、まあそうですもんね。ただ、絶対にみんなを元気づけるとかじゃないよね。そういうのは死んでも嫌やもん。

困ったことがあったらうちにおいでよ

──僕は個人的に“悪魔は囁き天使は導く”にグッときたといいますか、自分の価値観やものの見方を更新していかないとヤバいなという気持ちにさせられて。例えばジェンターやフェミニズムの研究者のかたを取材すると、自分がいかに男性中心主義的なものの見方をしていたかを思い知らされることがよくあったんです。

YUKARI : “悪魔”はブラック・ライヴズ・マターの1件からできた曲なんですけど、やっぱり世の中の流れが変わってきてるというか勢いが出てきてるから、それに乗り遅れたくないし、そのためには知識を蓄えて自分をアップデートしていくしかないっていう。

──かと思えば“WELCOME TO MY HOUSE”のような、「うちにおいでよ」と言うだけの曲もあり。

谷ぐち : 『perfect ME』を作り終わったときにひとつのスタイルができたような手応えがあったので、それをぶち壊す感じの曲を作りたかったんですよ。だからめっちゃショートカットで速いカントリーみたいにして、歌詞もちょっとバカっぽい。

YUKARI : もともと自宅のことを書くつもりはくなかったんですけど、映画『MOTHER FUCKER』もあり、私たちの家の中の状況を知ってるひとが周りに結構いるじゃないですか。だったら「マジで来て」でいいんちゃうかと。

映画『MOTHER FUCKER』予告編
映画『MOTHER FUCKER』予告編

飯田 : あの歌詞は僕もびっくりしました。スタジオではもっとかっこいい感じの歌詞に聞こえてたんですけど、レコーディングするにあたって歌詞を送ってもらったら谷ぐち家の案内になってて。

YUKARI : これは後付でいま考えたんですけど、コロナでいろいろあってメンタルが弱ったひとも、うちに来たらいいよみたいな。

谷ぐち : 俺は最初からそういうふうにも聞こえると思ったよ。まあ、スタンスとしてはいつもの僕らと同じですけどね。

“The Sound of Silence”の歌詞を深読みされたら面白い

──アルバムの最後にはサイモン・アンド・ガーファンクルの“The Sound of Silence”のカバーが収録されていますが、なぜこの曲をカバーすることに?

谷ぐち : 単純に俺が好きな曲だからなんですよ。例えばLemonheadsがSuzanne Vegaの“Luka”をカバーしたように、めちゃくちゃいいメロディの原曲を、ちょっとルーズなバンド・アレンジでやるのはどうかなって。だからフォーキーな曲がいいと思ったんだけど「あまりにも突飛すぎる」という話になったんだよね。でもそこでなぜかYUKARIが「それいいじゃん」って。

YUKARI : なんかいけると思ったんですよ。バンドの音がイメージできて。

谷ぐち : そこで歌詞を調べてみたら「あ、いいんじゃね?」みたいな。

YUKARI : すごく抽象的なんだけど、いまの状況と重なっているように読めなくもない。不思議とほかの収録曲と一緒に並べてもおかしくなかったんだよね。

──僕は歌詞ありきで選んだのかなと思ったのですが…。

YUKARI : 違うんですよ。シンプルにこの曲がやりたかっただけ。私がちっちゃいときにお父さんが車の中でよくサイモン・アンド・ガーファンクルをかけてたのも思い出したりして。

谷ぐち : しかもそれをアルバムのタイトルにまでしてね。

YUKARI : だから「深読みされたら面白いね」ぐらいの感じなんですけど。

──まんまと深読みしちゃいました。例えば、明らかにおかしいことがあるのにそれを見て見ぬふりする社会みたいな。あるいはBLMにおける「Silence is Violence」というスローガンが思い浮かんだり。

谷ぐち : その解釈、いただきます。

──バンド・アレンジにしても、僕はテンポを速くしてパンク・ヴァージョンみたいになるのかなと思ってしまったのですが、めちゃくちゃ正攻法で。

YUKARI : たぶん“Live or die”が8ビートのストレートなグルーヴの曲やったから、その流れもあって私的にはあの“The Sound of Silence”のアレンジに乗りやすかった。でも、仁一郎は苦労したよね。

飯田 : 大変でした。爆音で鳴らすとか自分らっぽくこねくり回すほうがよっぽど簡単なんですよね。ちっさい音でやる人たちの凄さを改めて感じたし、音楽とまっすぐ向き合って勉強にもなりました。

おばあちゃんになっても走り回っていたい

──11月に〈小岩BUSHBASH〉で行われたライヴのMCで、谷ぐちさんは今回のミニ・アルバムについて「コロナ禍において制作され、我々自身が感染することで完成した」とおっしゃっていました。ご自身がコロナに感染してしまったことで、考え方が変わったりは?

谷ぐち : いや、さほど変わってないです。もともと感染することも想定してライヴ活動をやっていたし、そうしないとライヴハウスなりバンド・シーンなりが動いていかないし。だからリスクを覚悟して率先してやっていく。それがバンドの決断だったので。

YUKARI : 感染してしまったひとへの指針にもなればいいなとも思っていて。誰が感染してもおかしくない状況で「こういう選択肢もあるよ」と。もちろんライヴをやらないという選択肢もあるんやけど、うちらが選んだのはやるほうやから、それをなるべく正しい方法で全うしたいんですよね。

谷ぐち : だから俺もね、MCで言うべきかか悩んだんだけど、感染したことに一切触れないのも変かなって。

YUKARI : 相談とかもしてもらえるような立場でもありたかったんだよね。うちらがカバーできる範囲なんて、すごい狭いかもしれないけど。

──ただ、YUKARIさんとしては、以前のようにフロアを縦横無尽に駆け巡るようなパフォーマンスはできないという状況もありますよね。そこにジレンマなどは?

YUKARI : あります。こないだの〈BUSHBASH〉でもギリギリ踏みとどまった瞬間が何回もあったし。でも、いままでずっと自分を抑えきれへんくてフロアに突っ込んでいってたんやけど、それを客観視するいい機会かもなって。前のめりになって、自分の体ごと歌をぶつけるみたいなのとは別の方法論を編み出せれば、また以前の状況に戻ったときに割増されたパフォーマンスができるような気がする。

谷ぐち : アルバムの中心になった“Live or die”も、YUKARIのヴォーカルが真ん中でどっしり構える感じだから、それがいまのライヴでのパフォーマンスとも合致するんですよ。だからいいタイミングなのかもしれない。

YUKARI : あと、そろそろ貫禄が出てきてもいいんちゃうかと思うところもちょっとあって。まあ、私はおばあちゃんになっても走り回っていたいし、その気持ちは絶対に変わらないと思うんですけど。

編集 : 高木理太

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過去作はこちらにて配信中

新→古

LIVE SCHEDULE

"The Sound of Silence" RELEASE PARTY Special 3stages ONE MAN SHOW

2020年12月27日(日)@秋葉原クラブグッドマン
1部 OPEN 11:30 START 12:00
2部 OPEN 14:30 START 15:00
3部 OPEN 17:30 START 18:00
各回 前売り 2000円 / 当日 2500円

チケット
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Limited Express (has gone?) HP

PROFILE

Limited Express (has gone?)

2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、世界15カ国以上を飛び回る。その後、memory labより2nd album、best albumをリリース。DEERHOOF、WHY?、MY DISCOなどの海外バンドともツアーを回るなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンで活躍するバンドへ。ステージ狭しと駆け回るボーカルYUKARIの存在感と、それぞれ他のフィールドでも活躍する各メンバーによる激しいパフォーマンスは常にフェスやライブハウスの着火剤。Have a Nice Day!、2MUCH CREW、ロベルト吉野などとコラボを重ね、2019年8月「フォーメーション」7インチ、10月には6枚目のアルバム『perfect ME』をアンダーグラウンド・パンク・レーベル、LessThanTVよりリリース。

■HP:http://www.limited-ex.com

この記事の編集者
高木 理太 (Rita Takaki)

1993年生まれ、志田未来と同じ生年月日。10代の悶々とした時代にハードコア・パンクを聴いて、グッと音楽にのめり込み、今も悶々としながら日々音楽を掘る日々を過ごしています。お酒はほどほどにしたい。

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ゆるめるモ!プロデューサー、田家大知が見つめるその先──白熱のトーク・イベントの模様をライヴ・レポート!

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ヒップホップ・ライター・斎井直史による定期連載──「パンチライン・オブ・ザ・マンス」 第23回

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ふたりはスティーリー・ダンに似てるかも──【対談】FRONTIER BACKYARD × 西寺郷太(NONA REEVES)

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ヒップホップ・ライター・斎井直史による定期連載──「パンチライン・オブ・ザ・マンス」 第20回

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ヒップホップ・ライター・斎井直史による定期連載──「パンチライン・オブ・ザ・マンス」 第19回

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ロックンロール独立リーグ、新章突入──DEATHRO、2ndアルバムを1週間先行配信 & インタヴュー掲載

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ヒップホップ・ライター斎井直史による定期連載──「パンチライン・オブ・ザ・マンス」 第18回

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