2020/09/03 18:00

令和の楽曲派アイドル、963は時とともに進化する──セカンド・アルバム『tick tock』

963(左からぴーぴる、れーゆる)

ぴーぴるとれーゆるから成る、福岡発の2人組アイドル・ユニット963(くるみ)がニュー・アルバム『tick tock』をリリース。制作陣にはKenichiro Nishiharaや新城賢一、三浦康嗣をはじめとする前作から、諭吉佳作/menやikkubaru、あゆ巫女ら新進気鋭のアーティストを招き、新たなサウンドにも挑戦。ヒップホップやインディーの風が吹く、10代後半の2人のリアルを映し出した1枚に。今回のインタヴューは最新作についてはもちろん、2人の素の表情を垣間見れるような内容となっております。カメラマン・宇佐美亮によるフォトギャラリーで写真もたっぷり掲載中。作品とともにぜひ、お楽しみください。

2ndアルバム『tick tock』配信中!(歌詞カードブックレット、限定フォトデータ付き)

INTERVIEW : 963

963(左からぴーぴる、れーゆる)

前作から2年。満を辞してリリースされた963のニュー・アルバム『tick tock』にすっかり心を奪われてしまった。聴きごたえ満点のトラックに心地良いふたりの歌声が乗る、極上のポップ・アルバムに仕上がっている。前作のローファイなヒップホップな流れを踏襲しつつも、スキルや表現力のレベルアップを感じる作品だ。楽曲から感じる切ない印象とはほとんど正反対なほど明るく元気なメンバー、ぴーぴるとれーゆるに話を伺うと、これまでの驚くべき活動スタイルや制作の裏話を訊くことができた。これからもますます注目のふたりから、もう目が離せない。

インタヴュー&文 : 西田 健
写真 : 宇佐美 亮

週末はずっと福岡から東京に通う生活をしていました

──まず、963は福岡のローカル・アイドルとして活動をスタートされたんですよね?

ぴーぴる : そうですね。いまもずっとローカルって言っているんですけど、最近はほぼ東京での活動の方が多いですね。2年前くらいに転校して来て、そこから東京民です!

──それまでは東京と福岡を行き来して活動されてたんですか?

ぴーぴる : そうですね。963の活動をはじめてからは週末はずっと福岡から東京に通う生活をしていました。

──え!? かなり大変じゃなかったですか?

ぴーぴる : わたしが963をはじめて今年で5年が経つんですけど、毎週来てたらもう慣れました(笑)。平日は中学校に行って、金曜日の夜に東京に来て、日曜の夜にライヴがあれば月曜の早朝の便で福岡に帰って学校に行くっていう生活をしていました。飛行機で通っていたので、マイルがすごい溜まっていて(笑)。

──すごい生活ですね。東京に来てから生活は変わりましたか?

ぴーぴる : 福岡で通っていた学校はすごい田舎にあったので、寄り道するところがなかったんですけど、東京にはタピオカ屋さんがいっぱいある(笑)。友達と「帰りにタピっていかん?」って、そういう話ができるようになって、東京のJKになったんだなって思いました。

──れーゆるさんは2年前に963に加入されたんですよね。

れーゆる : そうです。陸上の大会で東京に来ていたときにスカウトされて、お母さんに相談したら「いいんじゃない、やってみれば?」って軽い感じでOKが出て(笑)。

──実際に活動してみてどうでしたか?

れーゆる : わたしはいまも大分在住なんですけど、このスタイルにも結構慣れましたね(笑)。相方のぴーぴると険悪な雰囲気にならないので、楽に活動できています。喧嘩が多いと「辞めようかな」って思うかもしれないけど、全然そんなタイプじゃないから。

ぴーぴる : 平和主義だからね(笑)。

──おふたりはめちゃめちゃ仲良いですよね。963はライヴの本数がすごく多いですよね。

ぴーぴる : いまはこういうコロナ禍の状態になってライヴの回数は減ったんですけど、配信ライヴとかも含めてたくさんやってます。毎回来てくれるお客さんもいるので「すごいな」と思いながら私たちは歌っています。お客さんが反応してくれたりすることで安心することはありますね。

れーゆる : お客さんのありがたさは感じますね。

──対バン形式のライヴもたくさんやってらっしゃいますが関係の近いアイドルさんはいらっしゃいますか?

れーゆる : O'CHAWANZさんとかは結構一緒にやってるから仲良いですね。

ぴーぴる : しゅがーしゅららさんは、963の活動がはじまったときから知り合いです。963がはじめて東京に呼ばれたときに共演して、そのとき以来の仲ですね。あとは3776さんとか。私も長いこと活動してるので(笑)。

──歴史を感じますね。最近はライヴ以外にも雑誌などでのグラビアなどの活動もされています。これまでのファンの方からの反応はありました?

れーゆる : 最初はファンの方、誰もがびっくりしたんじゃないかな? わたしたちは普段制服を着ているから、その反動が大きいのかもしれない。

ぴーぴる : SNSのフォロワーがすごく増えましたね。雑誌に出るたびに増えていきました。もともと963が好きな人には楽曲派が多くて、ライヴじゃなくて曲そのものを楽しむファンの方が多かったんですけど、そこにプラスして雑誌を見てくれた方たちがフォロワーに加わった感じがします。

れーゆる : 雑誌から入った方たちにも、曲をぜひ聴いてほしいですね。

「これ、うちらが歌って大丈夫?」 って(笑)

ぴーぴる

──963はラップの曲が多い印象なんですけど、普段はラップを聴かれたりはするんですか?

れーゆる : わたしはK-POPばっかり聴いています。ラップ調の曲もありますけど言語が違うので、リズム感は鍛えられるのかなって。

ぴーぴる : わたしはLiSAさんのファンクラブに入ってるくらいロックなアニソンがすごい好きで、963に入るまでラップには縁がなかったんです。963に入ってラップに触れるようになってからは“人間発電所”とか“今夜はブギーバック”とかを聴くようになって、「あ、ラップもいいな」って思うようになったかな。あとはDAOKOさんとか。あとはステージでカヴァー曲を披露するために聴くようになったものもあります。

──なるほど、いままでどんな曲をカヴァーされたんですか?

ぴーぴる : BUDDABRRANDさんの“人間発電所”とかDAOKOさんの“水星”をやっていました。お客さんがざわざわしてておもしろかったです。

DAOKO “水星”
DAOKO “水星”
  

──2020年8月29日にはニュー・アルバム『tick tock』がリリースされました。今作はどのようなアルバムになりましたか?

れーゆる : ファースト・アルバムを越えためちゃくちゃいいアルバムです!

ぴーぴる : もう、ベスト・アルバム! 本当に作曲陣の方たちがすばらしい曲ばかりです。「わたしたちじゃなくて、曲を作ってくれた方たちがいいから」っていつも紹介してますね(笑)。

“アイマイビーユアガール”
“アイマイビーユアガール”
  

──ここからはスタッフさんにも話を伺っていきますが、作曲陣もさまざまな方が参加されていますよね。今作はどのような形で作り上げていったんでしょうか。

スタッフ : 音源の制作を発注するときに「いままでの楽曲をあまり聴かないでほしい」ということと、高校生2人組が歌っているということも除外して「いまあなたがいちばんやりたい音楽をください」ということを必ず伝えています。ラップじゃなくてもいいし、ゴリゴリのラップでもいいから。だから仮歌を聴くときはいつもドキドキしますよ。

ぴーぴる

──作曲陣でそれぞれ作り方とかは違いますか?

ぴーぴる : Kenichiro Nishiharaさんの曲は「好きなように歌って」みたいな感じだから、ガッチリ「そこ違う」っていう感じではなくて「めっちゃいい! じゃあ、もう1回」みたいな感じで、特に「こう歌って」っていう指示がなかったんですけど、“STARGET”を作ってくださった新城賢一さんや、“SEED”を作ってくださったyouheyheyさんは「ちょっと違う、ここはもっとこういう感じで」って言ってくれて時間をかけて向き合ってくれましたね。

──先行配信された“lumen”は諭吉佳作/menさんが作詞、kabanaguさんが作曲されています。どのような流れで制作が進んでいったんですか?

スタッフ : kabanaguさんがツイッターで「作曲したい」とツイートしていたので、作詞作曲をお願いしてみたんです。いざ送られてきたデータを聴いたら諭吉佳作/menさんが仮歌を歌っていて(笑)。実は963は何年か前に諭吉佳作/menさんと共演していて、少し交流があったんですよ。そんな背景もあったのでびっくりしました!

──実際に音源のデータを聴いてみてどうでしたか?

ぴーぴる : 諭吉さんは歌が上手いからラップも上手くてすごかった。それを自分にものにするのが大変でしたね。

れーゆる : “lumen”は諭吉さんが歌った仮歌で完成されてるんじゃないかって。「これ、うちらが歌って大丈夫?」 って(笑)。

──今回、アルバム全体でみると前作よりラップや歌の技術面でも難しいことをされてますよね。

ぴーぴる : 前作は全部ユニゾンで歌っていたんですけど、それがもったいないとの声をもらったので、今回はちゃんとパート分けをしてます。でも、曲のキーが一気に高くなりました。ラップが少なくなったんですけど、そのぶん歌ものが多くなって、まぁ、大変です。

れーゆる : 音域が前作よりも広くなったんですよ。

お母さんが毎回観に来てくれる

れーゆる

──なるほどおふたりが実際に歌ってみて難しいと思った曲はありますか?

ぴーぴる : “信号機の赤”は本当にキーが高いですね。ずっと高いまま、低いところがなくて。あと難しい曲でいうと“わたしたち幾何学”は、タタタ、タタタ、というリズムに音程を合わせるのがすごい大変で。

れーゆる : わたしは、“ホシノフルマチ”がずっと苦手でしたね。歌詞がパッと入ってこないんですよ。いつもサビ前で間違えてて。「これはやばいな」って思ってずっと聴き込んでました。

“ホシノフルマチ”
“ホシノフルマチ”
  

ぴーぴる : あとは、ふたりとも“GAME”には苦労してましたね。これは滑舌問題。

れーゆる : うちら滑舌悪いからね(笑)。

ぴーぴる : 結局全部、難しいですね(笑)。でも、結果としていいものができたのでよかったなって思っています。

“GAME”
“GAME”
  

──今作の中で好きな曲はありますか?

ぴーぴる : “あれは突然の眩しい光”が好きです。この曲の作詞をしていただいたRyo Maruokaさんから送られた仮歌には最後の方にハモリがあったのに、アルバムの中では消えてるんです。その幻のハモリはライヴだけで聴けるので、ぜひライヴに来てほしい(笑)。

──特別感がありますね。れーゆるさんはいかがですか?

れーゆる : “わたしたち幾何学”と“ばたふらい・だんしんぐ”はどちらもikkubaruさんとあゆ巫女さんに作っていただいた曲なんですけど、この2曲のゆったりした雰囲気が好きでずっと聴いています。余談なんですけど、お母さんのイチオシは1曲目の“信号機の赤”でした(笑)。

れーゆる

──お母さんにも聴いてもらっているんですか?

れーゆる : そうですね。お母さんはこういう“信号機の赤”っぽい曲が好きなんです。

ぴーぴる : うちのお母さんも聴いてるみたいです。車の中でもお家の中でも、朝起きたら必ずかかってる。

れーゆる : はははははは!

ぴーぴる : 福岡でライヴをするときは毎回観に来てくれて、ファンの方にも知られてるくらいなんですけど。お母さんはめちゃくちゃダンスが下手なのに、どうにか覚えようとして来るんです。ライヴのときはいちばん後ろの席に居るんですけど、踊ってる姿が見えるんですよね(笑)。でも、リズム感がないから全然踊れてない。(笑)

れーゆる : おもしろいじゃん。

ぴーぴる : やだよ、もう(笑)。

──では最後に、今作『tick tock』を聴いてくれた方にメッセージをお願いいたします。

ぴーぴる : 全曲良曲なので耳が痛くなるくらい、たくさん聴いてください! お願いします!!

れーゆる : 今回のジャケットは井上五味葛太郎さんが書いてくださったもので、ファースト・アルバムとはまた違った世界観となっていますので置いて飾っておくもよし、しまっておくもよし(笑)。ジャケットで気になった方も買ってみてください。よろしくお願いします!!

編集 : 綿引佑太

『tick tock』のご購入はこちらから


この記事の筆者
西田 健

1990年生まれ。熊本出身の九州男児。2019年までイベント業界で働きながら、福岡親不孝通りにてJ-POP、アニソンのDJ活動を行う。その後上京し、OTOTOY編集部にてアイドル、アニメ関連を中心に担当。映画、深夜ラジオが好き。

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