2020/08/21 20:00

幾度目かの変換期を迎えたNOT WONK、70人限定入場のワンマンをレポート

ここ半年であらゆる状況が一変した、せざるを得なかったといった方が正しいだろう。ことライヴにおいては、これまでの形での開催が難しいのが現状。NOT WONKにとって2月ぶりのライヴハウスでの演奏となった8月16日、渋谷WWW Xで開催されたワンマンライヴも、もちろん以前のように行われたのではなかった。入場時には検温がなされ、チケットは自分でもぎる形式。キャパ500人の会場には椅子が均等に並べられていて、決められた上限70人が物静かに集う。“新しい”生活様式にほとんど取りこぼされたライヴハウスはかなり厳重に対策がなされていて、異様な雰囲気からかライヴがはじまるまでのあいだ観客の話し声もほとんど聞こえてこない。新しいスタイル、ニューノーマル、これは一体なんなんだ。会場全体の緊張感がとりとめもない疑問を浮かび上がらせる。WWW Xからいっぽ出れば比較的賑わった街の雑踏が聞こえてくるのに。しかし、この日NOT WONKはそのサウンドとアティテュードを持って、かりそめの“新しさ”を睨みつけながら、バンドが次のフェーズへと向かっていることを明確に示していた。その様子は8月23日(日)23:59までこちらのアーカイブから見ることができる。(配信チケット購入は16:00まで)
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=F5130029

NOT WONK presents 「dividend Tokyo」アーカイブ公開トレーラー
NOT WONK presents 「dividend Tokyo」アーカイブ公開トレーラー

疑い続けるバンドのいまを示す、サウンド/アティテュードの変化

静まり返った会場に、金色のレスポールを片手にふらっと現れた加藤(Vo.)はいつものカラッとした口調で「なんか葬式みたいだな」といって少し笑うと、いつものごとく“Hallelujah“でライヴの幕を開ける。感情の調律を合わせるように、毎度ことなる何かへの「ハレルヤ(神に栄光を)」を捧げるように、丁寧にギターと歌だけで紡がれる曲だ。状況だけ見れば、この日の「ハレルヤ」はライヴハウスでの再会へ向けたものでもあり得たかもしれない。だけど単純な推測はこのバンドにおいて全く当たらないのだ。それはすぐさま“Down the Valley”の轟音サウンドをもって知らしめられた。SOLや苫小牧の屋上からのライヴ配信ではあまり気にしていなかったが、完全にサウンドが変わっているじゃないか。怒りや悲しみを吐きちらすような鋭くも美しいディストーションは美しさをそのままに、壁のように押し寄せてはこちらを包み込む、ふくよかなディストーションサウンドへと変わっていた。WWW Xの音響も要因のひとつだろうけれど、サウンドの音圧が以前より強く感じられたのは、ゴールドのレスポールによるところが大きかったと思う。音圧だけではない。“Subtle Flicker”では甘く妖艶な、加藤のヴォーカルに近しいギターサウンドが声と絡み合い、“Of Reality”の冒頭ではアブストラクトかつソウルフルな演奏を際立たせたかと思えば、後半にかけてのダイナミズムにインパクトをこれでもかと添える。初期のパンクチューンでも骨太なサウンドが際立つが、特にアルバム『Down The Valley』以降の楽曲たちはこれまでになかった魅力を引き出されていた。

「いま言われてる“新しい”って結局、その時々にフィットするように・フィットされるように自分を変えたり相手を変えてもらったりすることを指しているんだろうから、全く新しいことなんかじゃない。そんなことゆっくり考えればわかるだろって曲」というMCから演奏された新曲は、ダイナミズムを大胆に生かした楽曲で、そこまでは近年のNOT WONKのモードでもあった。だけどこの曲が違うのは静と動を流れるように行き来し、同じフレーズに戻ったときそれはまた違うものとして鳴り響くというところだ。あまりにアブストラクトな展開は、瞬間的に価値観が変えられるいまの良い/悪い、新しい/古いのグラデーションを描いているようにも思える。

常に当たり前とされるものに疑問を抱き、解体しようとしてきたバンドは誰もが予想しなかったディストピアのなかで地に足をつけ、とにかくNOT WONKであるという選択をしたのではないか。印象的だったインターバルでのセッションはほぼなくなり、とにかく曲を聴かせる。そしてこれまでも3ピースバンドとしてのアンサンブルの素晴らしさは際立っていたが、演奏面というよりも3人でNOT WONKなのだという印象を特に受けた。それは彼らにとっての「いまにフィットするように・フィットされるように」するための選択で、そのアティテュードに呼応するように観客は思いおもいに限られたスペースのなかで身体を解放していき、“I Won’t Cry”で最高潮を迎える。椅子にすわっている人も立っている人も、握った拳をぶん回すあの光景はあまり見ることのできない類のものだった。

変わること、変わらないことの狭間で

アルバム『Down the Valley』と苫小牧で開催されたDIYのイベント〈Your Name〉(詳細はこちらを見てほしい)には、隣人をよく見ようという態度が貫かれていたが、この日の加藤は観客ではなく指板をよく見ていたし、途中「人がいてもいなくてもライヴをやるつもりだった、今日もみんな座ってているのかわかんないし」とすら話す。自分の血が通った場所で音楽をやる、という態度に変わりがないことは苫小牧ELLE CUBEでの生配信を行なっていたこと、5月に開催される予定だったワンマン〈BIPOLAR〉と同じチームを率いてライヴを行なったことからわかる通り。しかし〈Your Name〉のもう一つの目的でもあった“前を知って、ただの私とあなたになろう”というところからはすでに離れたのだなと感じた。それでも特に突き放された気がしないのは、Who cares?といわんばかりに鳴らされるサウンドに、自分の解放を見出そうとするからだろう。NOT WONKはステージの上でもステージを降りても葛藤し怒り、それを音に乗せて踊らせ、考えさせることができるバンドであり続けてきた。渋谷WWW Xに向かったのも、家で、ELLE CUBEで配信を見るのも、私たちが選んだ選択肢の一つだ。以前に戻ろうとするのではなく、多くの選択肢から選び抜きシンプルに自分であろう。一曲目、加藤が“Hallelujah“に込めた思いはなんだったのか、その意図を汲み取り真似するのではなく自分の「ハレルヤ」を見つけた方がいい。いまのNOT WONKを見ることで、少なくともそのきっかけが作れるんじゃないだろうか。

ちなみに、アーカイブのライヴ映像はずっと彼らと仕事を共にしてきた、佐藤祐紀による映像ディレクションと照明、PA、ミックスによって、魅力を存分に味わえる内容となっているので見逃さないでほしい。

Twitter→https://twitter.com/notwonk_theband

HP→https://notwonk.jimdofree.com/

OTOTOYではアルバム『Down the Valley』をハイレゾで配信中! こちらもぜひ。

この記事の筆者
津田結衣

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この記事の編集者
津田結衣

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