2020/06/06 17:50

USインディ・ポップ直系のサウンドで熱海まで、Jan flu

数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がグッときた、プッシュしたいアーティストを取り上げるこのコーナー。第13回は、先日EP『Sports』をリリースしたばかりのJan flu。マイペースな活動を続ける彼らですが、そのサウンドはワールドワイドな活動を行う韓国のHYUKOHSay Sue Me、シンガポールのSobsらアジアのインディポップシーンと共鳴するであろう可能性を秘めている、と個人的には思っています。インディ・ポップ、ドリーム・ポップの素晴らしさを思い出させてくれる、情緒あふれるインディサウンドに全身を投げ出してしまいましょう。

第13回 : Jan flu

〈Photo by マスダレンゾ〉

都内を中心に活動する4人組ローファイ・インディ・ポップ・プロジェクト。DIIVやThe Drumsからの影響を強く感じるサウンドは、甘くドリーミーに弾け飛ぶ。USインディ・ポップだけでなく、台頭しつつあるアジアのインティ・ポップにも通づるキャッチーなサウンドを携えるバンドはしかし、歌詞に意味をもたせないという点で上記のバンドと異なるポジションを確立しているのではないだろうか。

多くのインディ・ポップ、ドリーム・ポップの楽曲は、繊細なパーソナリティやハートブレイク、さりげない日常を歌い、うだつの上がらないあの日々をスイートに映し出す。その一方、Jan fluの歌詞は特定の意味を表さず、歌は時にサウンドのひとつにもなる、という点でかなり違っている。意味を持たない歌詞は、サウンドがもつノスタルジーを持って、虚無感の向こう側ではなく、行ったことのないようなビーチやテトラポットに連れ出してくれるのだ。

「行ったことのないどこか」を彷彿とさせる楽曲はどんなイメージを元に作られているのか。全ての楽曲にスポーツ名が冠されたEP『Sports』、その楽曲の成り立ちやタイトルとの関連性、そして前作『AFTER IMAGE』からのサウンドメイクの変化についてなど、作品を中心に、バンドの成り立ちや自分たちのペースで活動を続ける彼らの今後について伺った。

ちなみに、『Sports』は自分にとって、熱海あたりのでかい宿泊施設の中で気の向くまま遊んでいるような気分にさせられる作品だった。あなたはどこに行けるだろうか、聴きながら読んでみてください。

MAIL INTERVIEW : P.Necobayashi(Gt,Vo)、Kubo(Gt)、Junya(Ba)、Takuro Fukuda(Dr)

Q. 自分たちの音楽を知らない人に説明するならどう伝えますか?

P.Necobayashi: 音楽を聴かない人には「スーパーの西友のBGMの様なバンド」と伝えます。

Q. 一番最初の音楽に関する衝撃を受けた体験は?

P.Necobayashi: 「自分がどれだけ頑張っても、この人達にしか表現できないだろう」という圧倒的な衝撃を初めて感じたのがPeople In The BoxPAELLASでした。

Kubo: ギターをはじめるきっかけになった、BEAT CRUSADERSthe band apartですかね。

Junya: ラモーンズのファースト・アルバム(『Ramones』)が原体験です。はじめて聴いたときに、「これで曲が出来ちゃうのか」と衝撃を受けたと共に、「自分も楽器弾けるかも」と思いました。演奏はシンプルだけど、ライブでは音源に無いエネルギーを感じて、自分もそうなりたいと思いましたね。今も自分のプレイスタイルの土台になってます。

Takuro Fukuda: 僕はマキシマム ザ ホルモンです。家で1人で爆音でCDかけて頭振った経験がいまに続いてる感じです。

Q. バンド結成の経緯を教えてください

Kubo: 僕が以前Thomasonsというバンドを組んでいるときに、当時The OXsとして活動していたネコバヤシさんと出会いました。歳や音楽性が近いこともあってバンドぐるみで仲良くしていたこともあり、ネコバヤシさんがJan fluをはじめる際に声をかけてもらった形です。Junya(Ba)はもともとサークルの同期で僕が誘い、Takuroさん(Dr)は当時The SunnysというバンドにいたのですがTwitterで募集をかけたところ名乗り上げてくれました。

The OXs - still nothing (Official Video)
The OXs - still nothing (Official Video)

〈Photo by マスダレンゾ〉

Q. Jan fluを始めるにあたって影響を受けたアーティストを教えてください

P.Necobayashi: 自他共に認めるビーチ・フォッシルズとDIIVですね。そして彼らを排出したレーベル〈Captured Tracks〉のアーティスト達にも勿論、影響を受けています。

DIIV - Follow
DIIV - Follow

Beach Fossils - Clash The Truth
Beach Fossils - Clash The Truth

Q.最近よく聴く音楽ジャンル/アーティストは何ですか?

P.Necobayashi: 悲しいことに、最近は時間がなくて特定のアーティストを聴くことがなくなりました。プレイリストがほとんどで、最新で聴いたプレイリストは、森の鳥のさえずりを集めた「Birds in the Forest」ですね…。

Kubo: テクノミュージックに興味があって、特にケン・イシイさんの音楽をよく聴いていますね。彼の別名義のFlareを最近はじめて聴いたのですがとても良かったです。

Junya: 最近はあまり時間がなく、昔から好んでた1980年頃の日本、アメリカ、イギリスの音楽をいまも聴いてます。特に最近はコクトー・ツインズをよく聴いていますね。

Takuro Fukuda: フランキー・コスモスをよく聴いてます。ローファイで肩の力が抜ける感じだからこそ曲の良さが際立っているところとか、なんかパッとしなくてイケてない感じがすごく好きです。特にドラムが好きで、音もですけど難しいフレーズは全く叩いてないのに表現力豊かで、かなり理想に近いドラムを聴けるのが大きな理由ですね。

Q. EP『Sports』について、どのように制作されたのか教えてください。

P.Necobayashi: 『AFTER IMAGE』の製作中にはもう“Tennis”の作曲をしていて、そのときからスポーツの名前をタイトルにした曲だけのコンセプトEPを作ろうとメンバーには話していました。曲を作っていた2017、2018年あたりにひたすら語られていた、「オリンピック需要」に違和感があったんです。何でもかんでも「オリンピック需要」で片付けるべき問題じゃないと思うと同時に、逆に僕らも揶揄としてあやかってしまおうと。でも東京2020五輪競技に該当する曲は“Tennis”と“KARATE”の2種目だけなんですよ。僕らには歌詞のメッセージ性がほぼないので、曲調とタイトルで作るイメージ付けを考えて、またマイナースポーツにも敬意を表して、競技名をタイトルとしてつけました。そういう経緯を辿って、僕らとしてのスポーツを定義した結果の6種目、この6種目がJan flu2020五輪なんです! ただ僕らは誰もスポーツしませんし、スポーツ自体は僕らからかけ離れているんですよね。かけ離れたところにあるものは、よく知らないけど、何か憧れるところがあるなと思います。

Q. タイトルから楽曲のイメージを作り上げて製作されたということでしょうか?

P.Necobayashi: 最終的には楽曲と風景のイメージは繋がっていくのですが、製作の流れとしてはイメージ先行ではないです。今作の楽曲製作では、基本的に楽曲を先に作ってからタイトルを考え、歌詞にキーワードや出したい音を乗せていくという順序で進めました。楽曲を作る段階では、「伸びやかなアルペジオ」、「キャッチーなリフ」、「The Drumsを彷彿とさせよう」というようなところからスタートさせています。そうして出来上がった楽曲に、後付けで風景のイメージをつけていく感じでしょうか。例えば、“Tennis”は「伸びやかなアルペジオ」がテニスのラリーやテニスコートを連想させるなと思ってタイトルをつけました。“Gateball”と“KARATE”に関しても同様です。ただ他にも理由はあって、“Gateball”は現代のインディポップ感、若者感の強い曲にゲートボールというタイトルをつけることで意外性が生まれるし、マイナースポーツだから外すようなことはしたくないという思いでつけました。“KARATE”はマイナー調でテンポの速い8ビートを乗せてベースをゴリゴリ弾く曲を作りたいというところから始まり、結果的に強そうな楽曲になったので格闘技の競技名をつけようと考えていました。イメージは「ストリートファイター」ですね(笑)。で、そのときに行った友人の結婚式で、友人の新婦が空手の型を披露していたのにビビッときて、タイトルが決まったという流れです。

Q. 『AFTER IMAGE』からの音色の変化が顕著ですが、サウンドのこだわりは何ですか?

P.Necobayashi: 『AFTER IMAGE』は僕の趣向を詰めに詰め込んだ作品で、良くも悪くも癖の強い作品になりました(笑)今回は、「Jan fluとしての自然さ」がポイントになっていると思います。僕らが普段鳴らすサウンドで、無理はしないように。サウンドとしてはステレオ感が強く、クリアになっているんじゃないでしょうか。

Kubo: 今回レコーディングの方針として小規模な環境下で自分たちだけで制御できるように進めよう、という意図がありました。時間的束縛もほとんどなかったので、かなり肩の力が抜けたサウンドメイクができたようにおもいます。いい意味でのラフさ、生っぽさが出るようにみんなで意識して録音に臨みました。ギターに関していえば今回はアンプから出力せずに、ラインで録ったものだけを使っています。これははじめての試みだったのですが、結果としてクリアなサウンドに繋がったのかなとおもいます。

Q. 東京で活動されていますが、交流の深いバンドを教えてください、また認識しているシーンがあればそれについても教えてください

Kubo: 今年の1月にスリーマン・イベントをしたYank!さんとLuminous101さんは公私ともに仲良くさせてもらってますね。

Takuro Fukuda: 東京で活動をしてて個人的には仲のいいバンドや友達はたくさんいるのですが、Jan flu的にとか、シーン的に交流の深い人たちというとYank!やLuminous101になると思います。あと、東京ではないのですが、僕はGeGeGeというバンドでもドラムを叩いておりまして、よくお世話になる松本市の〈Give me little more.〉というライブハウスや、いまは移転してしまったんですが金沢の〈メロメロポッチ〉というライブハウスなどを中心に、同じ趣味趣向を持った人たちが集まっていて。小さいながらも熱いムーブメントが起きていたのを感じていました。

〈Photo by マスダレンゾ〉

Q. 東京周辺、もしくはシーン内で刺激を受けるアーティストや活動はありますか

Junya: 先ほど名前挙がった、Yank!さんのベースラインや音が特徴的で、印象に残ってます。ベースの在り方を考えさせられますね。

Takuro Fukuda: 刺激を受けるというとやっぱりインディー・シーンではWaaterやUsを中心とした〈SPEED〉の人たちのことは意識せざるを得ないし、とにかく新しい風を吹かせているなと感じます。彼らはロックの定義を更新し続けていてすばらしい。それを受けて何か違うことをしないとと焦ります。

Q. この先どのような活動を行なっていきたいですか?短期的、長期的な目標を教えてください

P.Necobayashi: 僕らとしては、いつも話していますが、中長期な目標として「細く長くの継続的活動」を目指しています。メンバーそれぞれライフスタイルが変化してくなかで、「Jan flu」という名は残し続けたいと思っているので。
個人的にやりたいこととしては、犬ちゃん達に配慮できる仕組みができたら、「野外ドッグランでの演奏」がまず一つ。もう一つは、アフターコロナにおける、新しいアーティスト活動の形を僕らで提示したいです。

MUSIC VIDEO

Jan flu / Lacrosse (Official Music Video)
Jan flu / Lacrosse (Official Music Video)

Jan flu / Invisible beach, and the skying (Official Music Video)
Jan flu / Invisible beach, and the skying (Official Music Video)

Live At Mannish Recording Studio : Jan flu - MRPF Studio Live Session Vol.04
Live At Mannish Recording Studio : Jan flu - MRPF Studio Live Session Vol.04

PROFILE

Jan flu

〈Photo by マスダレンゾ〉

2016年8月に結成した、Lofiインディ・ポップ・プロジェクト。ディスクユニオン主催のオーディション「DIVE INTO MUSIC.オーディション2017」に合格ののち、2018年7月に1stアルバム『AFTER IMAGE』をリリース。下北沢を中心に精力的なライブ活動を行い、2020年6月3日、EP『Sports』をリリースした。

Twitter : https://twitter.com/Jan_flu
Instagram : https://www.instagram.com/jan_flu_official

Release Info

new EP
『Sports』

2020/6/3 発売

01. Fishing
02. Lacrosse
03. Gateball
04. Tennis
05. Billiard
06. KARATE

この記事の筆者
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