2020/05/27 19:00

O’CHAWANZに訊く、アイドル・ラップの作詞術──新作アルバム『Mellow Madness』

3人組ヒップホップ・アイドル・ユニット、O’CHAWANZ。ニュー・アルバム・リリースに向けて昨年末から今年の2月まで行われたクラウドファンディングでは達成率100%を大きく上回る結果となり、晴れて『Mellow Madness』のリリースを迎えた。広い音楽性を持ちながらも、ヒップホップという枠組みに見事納められた今作ではメンバー自身がほぼ全楽曲のリリックを担当している。しかしながら、ヒップホップとは無縁だったと語るメンバーたち。O’CHAWANZはいかにラップと出会い、今作完成までに到ったのか。初のメンバー全員へのインタヴュー。

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OTOTOYでは後日、音源の配信をいたします。

INTERVIEW : O'CHAWANZ

O’CHAWANZの新作『Mellow Madness』はメロウなサウンドの中にLo-fiなラップが乗る快作だ。ヒップホップの先人たちへの愛とリスペクトがつまった今作は、アイドル・ラップ史に新たな1ページを加えたのではないだろうか。今作で自ら作詞を手掛けているというメンバー3人に、作詞術や参考にしたラッパーについて話を聞くと、それぞれの個性や趣向が明らかになった。この自粛期間中にも、それぞれが貪欲にヒップホップやラップを吸収しつづけているという彼女たち。これからどんどん成長していくであろうO’CHAWANZのライヴを観れる日を楽しみにしている。

インタヴュー&文 : 西田 健
編集補助 : 綿引 佑太

フレーズをパズルみたいに合わせていく

──今作はクラウドファンディングの成功を受けてのアルバム発売ということで、まずは達成おめでとうございます。

しゅがーしゅらら : ありがとうございます! 2019年のクリスマスから今年のバレンタインまで、今回アルバムをリリースするにあたって支援していただきました。

──その結果、もともと目標100万円だったものが、2ヶ月で額が257万円! すごいですよね。ここまでの金額が集まるって予想されてました?

しゅがーしゅらら : いや、もう全然していなくって。100%達成できるのかすら怪しい感じだったんですけど、年明けくらいに達成して、最終的には達成率200%を超えました。

今作『Mellow Madness』に向けてのクラウドファンディングのプロジェクトページ
https://camp-fire.jp/projects/view/218885


クラウドファンディング最終日の配信映像
クラウドファンディング最終日の配信映像
  

──Twitterでは、すでにCDが届いた方々の感想が“Lo-Fi感想文”として上がっていますよね。メンバーの皆さんはチェックされていますか?

しゅがーしゅらら : 毎日全員で検索して見てます(笑)。結構みなさんしっかり書いてもらっててうれしいです。

──クラウドファンディングを経て、5月27日にCDでニュー・アルバム『Mellow Madness』が発売されます。“ハルカゼ”以外の作詞はすべてメンバー自身でリリックを書かれたんですよね。作詞はどのようにしていったんですか?

“ハルカゼ”
“ハルカゼ”
  

しゅがーしゅらら : まず、プロデューサーさんから各曲のトラックとアルバムのコンセプト・テーマを渡されました。今回のアルバムは、“時間”が大きなテーマになっているので、それに沿って各々がリリックを書いていきました。たとえば1曲目の“After Five”は、それぞれが平日の午後5時からの話をイメージしてリリックを書いて、持ち寄ったものを調整しながら一つの作品にまとめていく流れでした。

──話し合いながら書くのではなく、それぞれに書いてきた歌詞をすり合わせていくんですね。

しゅがーしゅらら : 最初は話し合いもなくそれぞれに書いていたんですけど、まとまらずにひっちゃかめっちゃかになったことがあって。それからは歌詞を書く前に3人で打ち合わせをして、共通で必ず入れる言葉を考えたりしました。

しゅがーしゅらら

──みなさんがそれぞれ歌詞を組み立てていくときの流れを教えてください。

いちこにこ : 私は、まずトラックを聴いて、楽曲のテーマに沿ったストーリーを自分の中で組み立てるんです。その後、曲を流しながら即興で歌ったボイスメモのリズムとか、メロディーを土台に作詞していきます。単語をポンポン出したり、いくつかフレーズを作ってみたりして、それをパズルみたいに合わせていく感じです。

しゅがーしゅらら : 私は、トラックや曲のテーマに似ているなと思う曲を自分でピックアップして聴いてみて、歌詞のイメージを膨らませています。自分がリリックのなかで言いたいことの流れを大まかに書いてみて、出来た隙間を埋めていく感じです。

りるはかせ : 私もららさんと似ていて、もらったトラックを聴いたときに思い浮かんだ曲をなんとなく参考にしながら歌詞を書いていく感じです。後になって気づいたんですけど、テーマというよりはBPMが近い曲を自然と選んで聴いていました。

りるはかせ

“Night City”
“Night City”
  

これはサンプリングするしかないと思って

──O'CHAWANZのみなさんは普段からヒップホップをよく聴かれるんですか?

しゅがーしゅらら : 音楽活動をはじめた最初のグループでもラップしていたんですけど、当時はアニソンしか聴いていなかったのでラップとかヒップホップに興味を持てなくて(笑)。O'CHAWANZになって作詞するようになってから、「知識が足りない」「自分をヒップホップに寄せなきゃだめだ」と思いはじめてしっかり聴くようになりました。いまはちゃんと楽しんで聴けています。

りるはかせ : 私も最初は全然(ヒップホップを)聴いていなくて。プロデューサーさんから「これ聴いてみて」ってヒップホップの音源リストが送られてきて段々聴きはじめました(笑)。自分で作詞をしはじめたあたりから、なにか参考にするものが必要だなって感じて聴きこむようになりました。

いちこにこ : 私は、もともとアイドル・ラップが好きでライヴにも行ってたりしました。でも、アイドル以外のラップに触れたことがなかったので、O'CHAWANZに入ってから本格的に聴きはじめました。私の場合は、いろんなものを吸収しようという気持ちが大きいので、これが一番好き! というアーティストを見つけるより、Twitterで流れてきたものを片っ端から聴いて、気に入ったのをダウンロードするっていう聴き方をしてますね。

いちこにこ

──今回、実は歌詞をサンプリングすることにも挑戦されていますよね。

りるはかせ : そうなんですよ! “After Five”という曲のなかで、RHYMESTERさんの“After6”の歌詞をサンプリングしています。

──けっこう思いきってやってみた感じですか?

りるはかせ : “After Five”のデモをもらった時にRHYMESTERさんの曲をよく聴いていて。「これはサンプリングするしかない!」と思って入れちゃいました(笑)。ヒップホップはサンプリング文化だとよく言われていますし、自分がよく聴いている曲の「このトラックの元ネタはこれだよ」とか、「この歌詞はこの曲からとっているんだよ」みたいなことを聞くと楽しいなって思うので。聴いてる人にも、なにからサンプリングしてるんだろうって考える楽しみがあるといいのかなって思ってます。

RHYMESTER “After6”
RHYMESTER “After6”
  

──さきほどRHYMESTERさんの名前が上がったんですけど、ほかに参考にしていたりよく聴いたりするラッパーの方はいらっしゃいますか?

しゅがーしゅらら : 私が一番参考にしているのはPUNPEEさんです。プロデューサーさんから送られてきた曲のリストの中に“夜を使い果たしてfeat.PUNPEE”があって。これは聴きやすいぞと。私はアニメが好きだったのでPUNPEEさんの声にハマっちゃって、そこからアルバムを聴くようになりました。アルバムも物語性があったり声優さんの声が入っていたりして、私にはとても聴きやすいです。

“STUTS - 夜を使いはたして feat. PUNPEE”
“STUTS - 夜を使いはたして feat. PUNPEE”
  

いちこにこ : いちばん好きなのはビブラストーンさんです。言いたいこととか思ってることを思いっきり腹から声を出してラップしているところが好きなんですけど、今回のアルバムとは雰囲気が違うので(笑)、いただいた参考リストと個人的に好きなchelmicoさんの曲から今作に近い雰囲気の曲を最近は聴いていましたね。

りるはかせ : 私はCreepy Nutsさんが好きなんですけど、曲もいいしラジオもすごくおもしろいのでヒップホップの入り口としておすすめです。ラジオではヒップホップのいろんな曲を紹介されるのですごい勉強にもなるし、作詞の面でもR-指定さんの韻を踏む感じを参考にしています。海外のラッパーの曲を聴いても、日本語じゃないのでどういう風に韻を踏んでいるのか難しくて。やっぱり参考になるのは日本のヒップホップです。

Creepy Nuts“よふかしのうた” MV
Creepy Nuts“よふかしのうた” MV
  

ワンマン・ライヴを盛大にやりたいです。

2月29日に行われたライヴの様子

──なかなかライヴができない状況が今後も続きそうですが、この自粛期間を通して、得たものなどありますか?

しゅがーしゅらら : 「3時のおちゃわんず」というZoomを使った生配信をはじめました。これまでも収録して編集したラジオをYouTubeに載せたりはしていたんですけど、こんな状況にならなければ生配信するチャンスもなかったのかなって思います。それに、意外とたくさんの人に観ていただいたことにもびっくりしていて。やってよかったなと思います。

休日の3時に生配信している3時のおちゃわんず
休日の3時に生配信している3時のおちゃわんず
  

──今の状況が収束したら、やってみたいことはありますか?

りるはかせ : 私はせっかくこの機会に配信イベントを始めたので、「3時のおちゃわんず」関連のイベント、公開収録とかできたらおもしろいかなって思います。

いちこにこ : やっぱりライヴがしたいっていうのが大きいです。クラウドファンディングのときに、達成率が200%を越えたらワンマン・ライヴをやるというストレッチゴールがあったんですよ。実際それも達成できたのでワンマン・ライヴを盛大にやりたいですね。

しゅがーしゅらら : まだ、アルバム曲を人前で披露したことが全然ないのでライヴはもちろんやりたいですね。あと私自身、いちこちゃん、はかせちゃんのラップを音源でしか聴けていないので2人がラップしている姿をみるのが楽しみです。

ーワンマン・ライヴがお預けになっている状態ですもんね。

いちこにこ : そうなんです。曲数も増えてパフォーマンスの幅も広がったと思うので、絶対楽しいだろうなって思います。

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OTOTOYでは後日、音源の配信をいたします。

過去作もチェック!

新→古

PROFILE

O’CHAWANZ

2017年より都内のアイドル現場を中心に活動する文化系ヒップホップユニットO’CHAWANZ。
2ndアルバムとなる今作はLo-Fi HipHop をテーマに、メンバーが紡ぎ出す日常的で等身大なリリックを Jazzy なLo-Fi Beats にのせ、肩の力を抜いて家聴きできる Mellow&ラグジュアリーなヒップホップアルバムに仕上げている。
メンバーは、しゅがーしゅらら・いちこにこ・りるはかせ。
自らリリックを手がけるクレバーな3人の適度な緩さと不意に飛び出すシュールさがオリジナリティとキャラクターをつくり出している。
リアルともファンタジーとも捉えられる独自な視点と力み過ぎないリリックをドープなビートからキャッチーなトラックに軽やかに乗せていく音楽スタイルは、ヒップホップやラップに馴染みがないリスナーにも聴きやすいPOPさを醸し出す。
また、ライブ活動だけにとどまらず、キャラクターを活かしたYouTubeラジオ番組「ラララ・エレガンシュタイム」やシュールな動画作品「O’CHAWANZ SWiTCH」にも挑戦している。

【公式HP】
http://ochawanz.com/
【公式ツイッター】
https://twitter.com/O_CHAWANZ

この記事の筆者
西田 健

1990年生まれ。熊本出身の九州男児。2019年までイベント業界で働きながら、福岡親不孝通りにてJ-POP、アニソンのDJ活動を行う。その後上京し、OTOTOY編集部にてアイドル、アニメ関連を中心に担当。映画、深夜ラジオが好き。

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