2019/10/30 00:00

The 1975 「People」、世界を驚かせた激情と抵抗

SUMMER SONIC 2019での刹那的な美しさと感動に満ちたライヴで、多くの来場者に彼らがベストだったと言わしめた、The 1975。SUMMER SONICの翌週、彼らの新曲「People」がリリースされた。「起きろ! 起きろ! 起きろ! / 月曜の朝だ / 月曜の朝はあとたった1000回しかやってこないぞ」という歌詞で始まるこの曲は、ラウドでヘビーなビートとサウンド、攻撃的ともいえるミュージック・ビデオで、世界中の音楽ファンの話題をさらった。リリース翌日、彼らはその勢いのまま自身初となるヘッドライナーとしてReading Festivalに挑み、大成功をおさめた。

2020年にリリース予定の4thアルバム『Notes On a Conditional Form』からの、グレタ・トゥーンベリのスピーチをフィーチャーした「The 1975」に続く、2曲目の先行配信曲となる「People」のレヴューをお届けする。

【REVIEW】 マシュー・ヒーリーは歌い続ける。「あきらめるな」と

異形の曲だ。ハードコアやインダストリアルを彷彿とさせる激しいサウンド。叫ぶようなヴォーカル。同時に公開されたミュージックビデオでは曲の攻撃性を強調するかのように拡張現実(AR)効果が多用される。反抗性の象徴でもあるマリリン・マンソンばりのヘア・メイクで唄うマシュー・ヒーリーの顔には、カメラによる顔認証システムで用いられる黄色い「マーカー」が頻繁に被せられる。よく知られるようにイギリスは監視カメラ大国でもある。

2019年のワールドツアーで彼らは、ポップネス、美しさ、きらびやかさ、切なさ、メッセージ、エモーション、それらすべてを包含するライヴを見せつけてきた。8月のSUMMER SONIC 2019での、そんな彼らのステージへの惜しみない称賛は記憶に新しい。それだけにSUMMER SONICの翌週リリースされたこの曲/このMVの衝撃は大きかった。

MV公開の翌日、彼らは自身初となるヘッドライナーとしてReading Festival 2019の初日に登場し、1曲目に「People」を演奏した。そして2曲目以降はこれまで通りのセットリスト。ストリーミング配信でそれをみていて、あれっと思ったのは、そこに違和感がほとんど感じられなかったことだ。異形ではない。馴染んでいた。単に彼らの、あらゆるもの吸収し咀嚼しアウトプットするというこれまでの行為に、新たなメニューがひとつ加わっただけなのか、とさえ思えた。

2019年の夏、さまざまなアーティストを観て何度も感じたのが、すべてを求めすべてを手に入れすべてを実行してみせるという姿勢だ。The 1975はその代表であり、同じく夏フェスで公演を行ったThe Cure、Janelle Monáe、Stella Donnellyらにも同じことが感じられた。歴史と革新、土着とグローバル、ユーモアとシリアス、アイドル性と実力、エンターテインメントとメッセージ、どちらかだなんて意味はない。対概念だけでなく、ジャンルやカテゴリーも。それらを両立させ、すべてを満たし、表現し、魅せる。それはコラージュ的手法の帰結としてだけでなく、その行為自体が「何かをあきらめるべきではない」というメッセージにもなっている。

だから、ロックは死なないし、The 1975は叫び、ささやき続けるだろう。「あきらめるな」と。
(高田敏弘)

PROFILE

The 1975

イギリス・マンチェスター出身。幼なじみである、マシュー・ヒーリー(Vo./Gt.)、アダム・ハン(Gt.)、ロス・マクドナルド(Ba.)、ジョージ・ダニエル(Dr.)の4人組。2013年シングル『Chocolate』でブレイク。その後、『The 1975』、『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It (君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。)』、『A Brief Inquiry into Online Relationships (ネット上の人間関係についての簡単な調査。)』の3枚のアルバムすべてが初登場で全英アルバムチャート1位を獲得。2020年には4枚目のアルバム『Notes on a Conditional Form』をリリース予定。

Official Site:https://the1975.com/
Twitter:https://twitter.com/the1975
ユニバーサル ミュージック ジャパン - The 1975
OTOTOY - The 1975

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