2019/04/20 13:00

変化を恐れずに切り取った多彩な表情──tacica、3年ぶりフル・アルバム『panta rhei』リリース

tacica
左から小西悠太(Ba)、猪狩翔一(Gt&Vo)

2005年に札幌で結成されたロック・バンド、tacicaが2019年4月5日にバンド結成14周年を迎えた。2008年にメジャー・デビューを果たしそれ以来、活動休止やメンバーの脱退などを経験しながらも常に変化と進化を繰り返してきたtacicaが、3年ぶりのフル・アルバム『panta rhei』を完成させた。プロデュースに野村陽一郎を、サポート・ドラムに中畑大樹(Syrup 16g、VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)を迎え、新たなバンドの形態をとった彼らの現状の最高傑作が生まれた。OTOTOYではこのリリースに伴い、細部まで完成しつくされたtacicaの楽曲を最高の音質で体感できる〈『panta rhei』先行ハイレゾ試聴会〉を実施。ここに、当日行われたインタヴューと、イベントのレポートをお届けしよう。

>>当日のイベント・レポートはこちらから!!<<

3年ぶりのフル・アルバム、ここに完成!



※音源配信は2019年4月22日(月)00:00からとなります。

INTERVIEW : tacica

tacicaの〈TIMELINE for “sheeptown ALASCA”〉を観るために仙台に行った。もちろんBGMは、先に聴かせてもらうことができた『panta rhei』だ。2011年の3rdアルバム『sheeptown ALASCA』から8年。ライヴで演奏された『panta rhei』の煌々とした存在感に驚きを隠せなかった。バンドが変化を恐れなくなったとき、バンドは最強になる。そんな強さが2019年のtacicaにはあった。tacicaというバンドの存在が、多くの皆様に届くことを願っている。

インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 高久大輝
写真 : 大橋祐希

変化することの大切さに気づけた

──『panta rhei』=“万物は流転する”という言葉をタイトルに据えたのは、どういった意図や意味があったのでしょうか?

猪狩翔一(以下、猪狩 / Gt&Vo) : かっこいいタイトルをつけたいなと思って探していて、これまでもわりと成功してると思うんですけど、今回もうまくいきましたね(笑)。今回、僕らとしては珍しく曲がたくさんあって、アルバムを作るに当たって曲を選べる状態で。ただ前作から3年空いてしまったので、その期間、そのときそのときで考えていることが違っていたんです。そこで『panta rhei』という言葉の意味を考えたとき「変わらないものってないんだな」と腑に落ちて。僕という同じ人間の書く歌詞が、ちぐはぐに聞こえることがあったとしても、“あらゆるものが変わる”という意味のこのタイトルを最初に目にしていたらうまく伝わると思ったんです。

──小西さんは最初にこのタイトルを聞いたときはどう思いました?

小西悠太(以下、小西 / Ba) : 最初聞いたとき、意味はまったくわからなかったんですけど(笑)。説明されると納得でした。アルバムを通して聴くと、猪狩が言いたいことが伝わると思います。

──なかなか普段耳にする言葉ではないですからね(笑)。今回、アルバムでは約3年ぶりということもあって“変化”というのは重要なポイントになると思います。やはりそこに対する意識はありましたか?

猪狩 : 今作には前作『HEAD ROOMS』を作っていたときにできていた曲もあって。その曲(「Lynx」)の歌詞には「ヘッドルーム」という言葉も出てきたりするんです。この3年の間に僕らを取り巻く状況や考えていることも変わっていて。今年結成14年になりますけど、その中でもさらに濃いここ3年間が思いっきり反映されたアルバムになりました。やっぱり1番大きかったのは野村(陽一郎)さん、中畑(大樹)さんと一緒に4人でライヴをするようになったことですね。それまでは簡単にいうと変化を恐れていたところがあったのですが、これをきっかけに変化することの大切さに気づけました。そのときどきで自分たちが思っていることを最大限に発揮できるように選択することはむしろ大事なことだと思えたし、なおかつ聴いている人に「いい」と思ってもらえると感じたんです。

──なるほど。このアルバムの制作にあたっては、やはりサポートの野村さん、中畑さんの存在は大きかったですか?

猪狩 : 最初にこのメンバーでやったのが、『HEAD ROOMS』のあとにリリースしたミニ・アルバム(『新しい森』)のときで。その時点でこの4人でフル・アルバムを作りたいという想いがあり、それがいま達成されているという感じです。野村さんはもちろんギター・プレイヤーでもありますけど、バンドを客観視してくれるプロデューサーとしても大きくて。ただたまに内側にも入ってきてくれる、おもしろい人ですね。サポート・ミュージシャンにもいろいろカタチがあると思っていて、その現場、現場でサラッとプロの仕事をする方もいらっしゃると思うんですが、2人はいい意味で真逆なんです。僕としては、おふたりも“メンバーの一員”くらいの気持ちでいます。

今作はほぼ全ての曲が1発録りで。だからこそ、スキルの面はもちろん、精神的な部分でもおふたりは大きな存在ですね。それがこのアルバムには結実していると思います。なんていうか、野村さんも中畑さんも、すごく楽しいんですよ(笑)。年齢はバラバラなんですけど、蓋を開けるとみんな末っ子で、ノリはじめると収拾がつかなくなっていって、それがいいグルーヴを生み出しているのかもしれないです(笑)。

──末っ子バンド(笑)。このジャケットについても聞きたいんですけど、これはどのようにして決まったのですか?

猪狩 : 村井(達雄)さんという方がずっとジャケットを作ってくれていて。さっきバッタリ会ったときに「かっこいいの、ありがとうございます」と伝えたら「今回、めちゃくちゃ大変でした」と言ってましたね(笑)。アートワークは時間がかかるので、早い段階でデモを渡して1回打ち合わせをして。村井さんは毎回間違いないものを作ってくれるので信頼していました。

──小西さんはジャケットを見て、どう思われましたか?

小西 : 打ち合わせの段階で話はしていたんですけど、やっぱりできあがったものを見たときは、間違いないなって。“panta rhei”という言葉の思想には、火は変わらないものとしてあって。だから作品を意識して作ってくれた愛のあるデザインだなと感じました。

──このアルバムの制作を決めたのはいつ頃ですか?

猪狩 : この前にシングルが2枚出て、もう少し早く出せるかと思ってたんですけど。アルバムっていうのは頭にあって、曲はずっと作り続けていましたね。

──となるとレコーディングの時期はバラバラ?

猪狩 : シングルに入ってる曲はもちろん先に録ってはいるんですけど、アルバムの残りの8曲に関してはまとめて録りました。

──もうその頃にはアルバムの全体像は見えていたんですね。

猪狩 : うーん、答えになるかわからないですが、録ってみて化ける曲がたくさんありましたね。「トワイライト」とか「wonder river」、「latersong」とかもそうですね。ミックスまでやって、はじめて気づくこともあって、自分たちもびっくりしました。

自分たちの知らない曲の顔を見たい

──今作で特にこだわった部分はありましたか?

猪狩 : 今回も1発録りが多いから、細かなところよりもみんながかっこいいと思ったものを基準にしていこうと思って。そこの意識共有はしていましたね。あとこの4人になってからすごく録音が早くて。今回のツアー(〈TIMELINE for “sheeptown ALASCA”〉)で販売している『TL2』という再録盤に収録した2曲も、アルバムの新曲といっしょに録ったので、合わせると10曲。それを1日2曲のペースで録音できていたから、5日間とかで録り終わって。それまではプリプロとかをかなり綿密にやったりしていたけど、もちろんそれを大事にしていないわけではなく、いまはバンド感というか、そういうものがすごくいい状態なので、だからこそ本番で録ってみて起こるマジックを期待したい! という気持ちがありました。作り込みすぎてしまうと逆に生まれないような…… 自分たちの知らない曲の顔を見たいんですよね。

──そのようにバンド感を意識する一方で、6曲目「中央線」には打ち込みも入っていますよね。そういった試みにはどういった意図がありましたか?

猪狩 : いまメンバーがふたりで、ドラムが不在の状態じゃないですか。それは結構デメリットに見られてしまうけど、そこをメリットとして見ていこうと。これも、野村さんの提案ですね。あと「中央線」はミックスも野村さんにやってもらったんです。2曲ピアノが入っている曲もあります。いままでは、バンドが演奏しているものだけを収録するという変な縛りもあったけれど、今回は取っ払って。これもさっき言った変化の部分ですね。

──野村さんの存在はやはり大きいんですね。では野村さんご本人にも伺いたいです。今回プロデューサーとしていちばん表現したかったことはどこにありますか?

野村陽一郎(以下、野村 / プロデュース) : 今回のアルバムを作るにあたって、2人であることを強みにできると思ったんですよね。それで打ち込みのドラムも提案してみました。あと個人的に猪狩くんの声のファンでもあって、本当にいい声で…… まぁ皆さんご存知だと思うんですけど(笑)。それをエレキ・ギターの前だけで歌う必要はないんじゃないかなと思っていて。たとえばピアノとヴァイオリンと小西くんのベースという編成で「キャスパー」とかを聴いてみたくて。ただやっぱりバンドなので、まずはいままでのtacicaを聴いていたファンの方からの拒絶反応が起きない範囲で新しい提案をさせていただいたという感じです。

野村陽一郎

──中畑さんにもお聞きしたいのですが、今作を作る上で意識した部分、特にtacicaだからこそ意識した部分があれば教えてください。

中畑大樹(以下、中畑 / サポートDr) : 決して無責任なわけではなく、特に意識したことはなくて。僕はやれることが少ないので、やれることをただやるという感じですね。このバンドを手伝わせていただくようになって3年くらいになるんですけど、いっしょに音を出す中で、作品のイメージをぼんやり共有できていたとは思います。あと、これまではtacicaのふたりと野村さんが比較的詰めた段階で曲を持ってきてくれていたので「それに沿うように」という部分が大きかったですが、今回は僕の解釈が入る余地があるカタチで曲が来たので、それが強く出ているかもしれませんね。「WAKIME」とかはかなり僕の個人演技です(笑)。

猪狩 : 中畑さんはドラムもめちゃくちゃかっこいいんですけど、タンバリンがすごくうまくて。やばいですよ!

中畑 : 他の現場で、タンバリンはあんまりやらないですけどね(笑)。

猪狩 : タンバリンのDVD出して欲しいです(笑)。

中畑大樹

──(笑)。ではアルバムの中で「特にここを聴いてほしい」というポイントはありますか?

猪狩 : 難しいなあ、全部…… 全部いいんですよね……。

小西 : さっき話した通りピアノが入ったりだとか、いままでにない要素がいろいろ入っているので、前からtacicaを聴いてくれている方も違った一面を楽しんでもらえると思いますね。

次を作るに当たって何らかのスキルアップやレベルアップをしたい

──「WAKIME」のMVはどういったイメージだったのですか?


tacica 『WAKIME』(Music Video Short ver.)

猪狩 : これは相模原で撮影して。「群青」、「ordinary day」、「煌々」とかを撮影してくれた監督さん、ディレクターさんたちなので、繋がっていて。歌詞に“本能”という言葉が出てくるんですけど、“本能の部屋”という設定で、自分の外側と内側を行き来するというイメージですね。

──なるほど。そして現在tacicaは〈TIMELINE for “sheeptown ALASCA”〉というツアーの最中です。今回のツアーは、2011年の『sheeptown ALASCA』と、最新アルバムを前半と後半でやるという、すごくおもしろい企画ですよね。これにはどういう意図があったのですか?

猪狩 : 『sheeptown ALASCA』は、自分たちのなかで節目になったアルバムなんです。それを演った後にまだ発売もされていない最新作の曲を演って、その比較を楽しんでもらって。それと、アルバムを発売してツアーを周るというルーティーンから逸脱してみたかったというのもあります。あと、全部通してセットリストが決まっているツアーってなかなかないじゃないですか。普通はツアーを回る中でいろいろ変えていくと思うので、そういう縛りもおもしろいかと思います。

──音的にもまるで違うバンドのように聴こえますよね。

猪狩 : 実はこの2枚って、録音してくれているエンジニアさんが同じで。『sheeptown ALASCA』と『jibun』を出した後、そのエンジニアさんから一度離れて、4人になって『新しい森』からまたそのエンジニアさんに戻ったんですよね。今作では2曲は別のエンジニアさんに録音してもらっていますけど、概ね同じエンジニアさんに録ってもらっています。もちろんエンジニアさんも僕らも技術だったり、考え方などで成長していると思うので、その対比を楽しんで欲しいですね。

──やはり自分たちでもその違いは実感されていますか?

猪狩 : もちろん毎回同じことをやろうとは思っていなくて。次を作るに当たって曲然り、音然り、何らかのスキルアップやレベルアップをしたいんです。だからこそ今回また同じエンジニアさんとやると決まったときに、なおさら自分たちがどう変わったのかがわかるなと思って、ここもある種の挑戦だったのかなと。

──小西さんは今回のツアーをどのように感じていますか?

小西 : 昔のアルバムといまのアルバムで、芯は変わっていないのですが、アレンジや曲調、伝えたいことも変わっているので、昔から聴いていただいているファンの方にはやっぱりその対比を楽しんで欲しいですね。あと、新しいアルバムの曲をはじめて聴いてもらってどういうリアクションがもらえるか、毎回楽しみにしています。

『panta rhei』のダウンロードはこちらから



※音源配信は2019年4月22日(月)00:00からとなります。

前回の特集ページはこちらから

〈「煌々/ホワイトランド」先行ハイレゾ試聴会〉イベント・レポート


https://ototoy.jp/feature/2018091202

LIVE SCHEDULE

TIMELINE for “sheeptown ALASCA”
2019年4月21日(日)@新木場 STUDIO COAST
時間 : START 17:00 / OPEN 18:00

TOMOE 2019
出演 : tacica / THE NOVEMBERS / People In The Box

2019年5月25日(土)@仙台 CLUB JUNK BOX
時間 : OPEN 17:30 / START 18:00

2019年5月31日(金)@福岡 BEAT STATION
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00

2019年6月02日(日)@大阪 梅田CLUB QUATTRO
時間 : OPEN 17:15 / START 18:00

2019年6月09日(日)@名古屋 BOTTOM LINE
時間 : OPEN 17:15 / START 18:00

2019年6月14日(金)@東京 マイナビBLITZ赤坂
時間 : OPEN 18:15 / START 19:00

【詳しいライヴ情報はこちら】
http://www.tacica.jp/live

PROFILE

tacica

左から小西悠太(Ba)、猪狩翔一(Vo / Gt)

2005年に札幌で結成されたロック・バンド。2007年リリースのデビュー・ミニ・アルバムが軒並みインディーズ・チャート1位を獲得し、2008年メジャーに移籍。その後もメディア露出が無いにも関わらずシングル、アルバム共にオリコンTOP10入りを記録。「彼らの楽曲を自分の人生の歌、生きる指針として愛する」ような、深い部分で繋がるリスナーを増やし続けている。リリース・ツアー以外にも企画ワンマン・ツアーも不定期に開催し、2017年3月は新企画として〈TIMELINE〉と銘打ち、アルバム再現ツアーを東名阪で行い、全公演SOLD OUTを記録。2018年春にはバンド初の「アコースティック×エレキ」ライヴを開催した。そして2019年春にアルバム再現とニュー・アルバム『panta rhei』の先行再現を行う〈TIMELINE〉第2弾〈TIMELINE for “sheeptown ALASCA”〉を開催予定。4月24日には7枚目となるフル・アルバム『panta rhei』をリリース。

【公式HP】
http://www.tacica.jp
【公式ツイッター】
https://twitter.com/tacica_official

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