いろんなひとを巻きこんで、より祭り感を──sora tob sakana、メジャー1stALリリース記念 スタッフ座談会

左から、中西秀樹(ワーナー ブラザース ジャパン sora tob sakanaA&R)、照井順政(株式会社ジ・ズー サウンド・プロデューサー)、小林信介(株式会社ジ・ズー 代表取締役)

神﨑風花、山崎愛、寺口夏花、風間玲マライカによる4人組アイドルのsora tob sakanaが、3月13日にメジャー1stアルバム『World Fragment Tour』をリリース、ハイレゾ・CD音質ともに好評配信中です。メジャーに進出してから初めてのフル・アルバム完成を記念して、オサカナの活動にかかすことのできないスタッフ陣3名の座談会を開催。結成から現在までの気になる裏側を語ります!



World Fragment Tour(全曲試聴)

sora tob sakana スタッフ座談会

2014年に結成され、インディーズでの活動を経て2018年5月にEP『alight ep』でメジャー・デヴューしたsora tob sakana。TVアニメ「ハイスコアガール」の主題歌を含んだシングル『New Stranger』、デジタル・シングル「アルファルド」のリリースや、東京国際フォーラム ホールCでのワンマン・ライヴ、ジャンルレスなアーティストを迎えた主催イベント〈天体の音楽会〉の開催をZepp Tokyoでおこなうなど、これまでの"アイドル"カテゴリにとらわれないフレキシブルな活動でファンを拡大中している中、メジャー初のアルバム『World Fragment Tour』がリリースされた。これを記念して、sora tob sakanaの作品をメンバーとともに作りあげている制作陣から、マネジメントとプロデュースを担当する株式会社ジ・ズー代表取締役の小林伸介氏、同じく株式会社ジ・ズー サウンド・プロデューサーの照井順政氏、sora tob sakanaのA&Rを担当しているワーナー ブラザース ジャパンの中西秀樹氏にお集まりいただき、sora tob sakanaのプロジェクトについてを深く、濃く、時に楽しく語っていただいた。

インタヴュー& 文 : 田尻菜穂子
撮影 : 作永裕範

「あの子は天才肌っぽいからとりあえず繋いどいてくれ」って(笑)

──小林さんと照井さんの出会い、そしてsora tob sakanaのスタートについてから改めてお話をお伺いできますか。

小林 : 7年前くらいにメンズのユニットをやろうと思ってまして、そこであるライヴハウスのスタッフさんに相談したところ、「いい知り合いがいるよ」というところで、照井さんを紹介してもらったんですよ。1回会って話して面白そうなひとだなって思っていたんですけど、その企画自体が頓挫してしまって。それから時間があいてしまったんですが、会社のスタッフに照井さんが当時所属していたレーベル(残響レコード)のファンがいて俺にすごく言ってきたんですよ。(笑)。残響はこういうやりかたで、とか(笑)。

一同 : (笑)。

小林 : っていうことで覚えていて。丁度そのスタッフが別のアイドル・ユニットを担当することになって、ミュージシャンを探してるというところからのお付きあいですね。

小林信介(株式会社ジ・ズー 代表取締役)

照井 : そうですね。

小林 : それは1年くらいやったんですっけ?

照井 : 1年もあったかなかったか… っていうくらいでしたね。

──最初はカヴァー曲を歌っていたんですか?

照井 : そうですね。オリジナルもありましたが違う作家さんが作っていました。

小林 : 運営も別の会社だったんです。

──そうなんですね!

小林 : イチからプロジェクトを立ち上げるのではなくて、作り替えていこうかという企画でした。それは後にサカナに繋がるんですけど、結構アイドルに寄せて、照井さんの曲とアイドルに寄せたものを作っていたんです。

照井 : そうですね。そのユニットが解散すると決まって、それまではオーダーを受けてアイドルに寄せて作っていたんですけど、最後は「解散するから1曲照井さんの好きなようにやってください」と。それで最後「銀河鉄道」という曲を書いて。それが結構めちゃくちゃな曲だったんですけど、局所的な評価をいただいて。

小林 : サカナっぽいよね。

照井 : そうですそうです、サカナの原型みたいなのがそこで一応出来て。だからむしろ振り切ったほうがいいんじゃないか? って手応えはあったりしつつ、そのあとそのユニットは解散してしまったんですよ。

小林 : そのあと、バンドのマーケットに寄せたアイドルを作ろうかってところで、社内で企画が作られたんです。名前も初めから意識したものを作ろうと。何がバンドっぽいかな? みたいなところから、"sora tob sakana"という名前になって…。 バンドっぽいじゃないですか?(笑)。

一同 : (笑)。

小林 : 7、8年前くらい。

照井 : だから僕もにゃんにゃん何とかだったらきつかったですけど…(笑)。

一同 : (笑)。

──照井さんのバンド、”ハイスイノナサ”に似てませんか? 語呂感と言うか。

照井 : そうかもしれないですね。”なんとかのなんとか”とか、”SEKAI NO OWARI”とか。

小林 : あと、中野さんのところの。

中西 : ”凛として時雨”ですかね。

小林 : あーそうそう。結構いっぱい調べました。

──調べて決定したのは小林さんですか?

小林 : そうですね。英語にするか迷ったんですけど、”フライングフィッシュなんとかバンド”みたいな候補も出てて。

照井 : ”飛魚”って言うのもあったって言ってましたよ。漢字で。

小林 : ”魚”をテーマで作ろうかなと思っていたんですよ。

──今となってはいちばんしっくり。

照井 : そうですよね。僕は名前を決める話しあいには全く参加していなくて、出来てた所にはいってきたんですけど、違和感はあまりなく。それに”tob”の”u”がないのがいいですよね。

照井順政(株式会社ジ・ズー サウンド・プロデューサー)

小林 : そうですね。

照井 : 字画を気にされた話は聞いて。あと画数。

小林 : 画数(笑)。あとオシャレかなって(笑)。

照井 : ”u”が入ってると野暮ったいですよね。

──小林さんは照井さんの音楽のどこに惹かれたのでしょうか。

小林 : 音楽に惹かれたっていうよりも、人柄や雰囲気だったんですよ、最初に喋った時。で、「あの子は天才肌っぽいからとりあえず繋いどいてくれ」って(笑)。

一同 : (笑)。

──小林さんの直感で?

小林 : そうです。

──小林さん自身も以前に音楽活動されていたので、肌感はわかるんじゃないですか?

小林 : そうですね。ただ、このジャンルがいちばん好きとかあまりないので。(笑)。人柄です、纏った空気感がいちばん大きかったですね。

──照井さんは小林さんと仕事を始める時どんな気持ちだったのでしょうか。

照井 : 当時の僕はアイドル業界のことをほとんど知らなかったので、正直少し怪しさを感じているところもありました(笑)

小林 : (笑)。

照井 : だけど実際に会ってお話したらすごいちゃんとしていて、一緒にやってみたいなと思いましたね。

「これ、大丈夫かな? 」と思いながらすりあわせていきました

──そして、インディーズでの展開が始まる、と。

照井 : そもそもレーベルというか、自主でやってましたもんね。最初。

小林 : そうですね。予算も限られてたんで、やりたいことってよりもまず動かさないことには何も始まらなかったので、研修生グループ(ふらっぺidolぷろじぇくと研修生)から5人選びました。最初は正規ユニットと研修生の間くらいのイメージでスタートさせたんです。

照井 : サカナも最初のオリジナル曲は僕ではないひとが書いていて。僕がサカナに本格的に参入した時は始動してから半年くらい経っていて固定のファンもいる状態だったので、最初からバンドっぽ感じではなかったんです。

──中西さんは、以前sora tob sakanaのメジャー・デビュー関係者向けコンベンションの時に、”インディーズの頃から存在を知っていた”とお話されていましたが、詳しくはどの辺りからだったのでしょうか。

中西 : 照井さんがはいる前の曲をやっていた時はもう見てましたね。照井さんプロデュース前の「DASH!!!!」という曲もライヴで見ていましたし、シャム(SiAM&POPTUNe、2017年12月30日に活動休止)が赤坂BLITZでワンマン・ライヴをおこなった前座で歌っていたのも見ています。ですが、その当時は照井順政っていう作家自体は自分の中では認識してないわけですよ。sora tob sakanaというグループからはいってきたので。”なんか面白そうなグループだな”くらいな感じでした。

中西秀樹(ワーナー ブラザース ジャパン sora tob sakanaA&R)

──アイドルのライヴはよく見られているんですか?

中西 : そうですね。アイドルやその周辺のオタク文化も見てきて、さらには仕事柄アニメのフィールドに居るので、そっちの目線でも見てました。だから、なにも違和感なくスッとはいって、新しい子がでてきて、なにか面白そうだなって。

小林 : 「DASH!!!!」ってオリジナル曲を作ったんですけど、今までやってきたこととあまりかわらなかったんですよ。その状況の中で、照井さんの話がまた出てきたんです。一緒にやるんだったら「銀河鉄道」っていう曲がよかったよねって話になっていたので、ブラッシュアップして突っ切っていこう、”アイドルってこうあるべきでしょ”っていうことのアンチテーゼをやろうと思って、照井さんに話があったんだと思います。

照井 : そうですね。最初は僕もベタ付きでメンバーのアテンドからチェキから物販から全部やってたんです。

──え? スタッフ側ですか?

照井 : 現場を知らなったので手伝いつつ、曲も作って。これまでの楽曲からいきなり、わけわからないことをやっても難しいだろうなって思いつつ、バンドをさんざんやってきていたので違うことがやりたいマインドがありました。事務所のかたはもっとぶっ飛んでくださいって感じで、俺はアイドルに寄せたいなって感じで、お互いねじれた関係性でした(笑)。

一同 : (笑)。

照井 : それもいいところにまとめていこうって感じでした。

──小林さんとは定期的にあわれていたんでしょうか。

照井 : 会社の方とは常にあっていたので、そこからの情報共有はしていましたね。しばらく小林さんにはあってませんよね?

小林 : ちょうど僕も社長業に専念すべく現場離れるところだったので、会社の担当に任せてました。

──インディーズのリリースが増えるにつれて認知度がどんどん広がっていったと思うのですが、そのときの状況はいかがでしたか?

照井 : 自分の中で基本的にはうまくいったなって感じだったんですけど、もうちょっとバンドファンの反響があって、アイドル・ファンはそんなについてこないのかなと思っていました。でも、アイドル・ファンって音楽好きな人が元々多いのがわかってきて、そういったかたが最初に支持してくれて。逆にバンドファンは低年齢の子が歌っていることのフィルターがかなり強力みたいで、なかなかそこを飛び越えてくれる人は少ないなって感じました。

──当時は年齢も低かったですもんね。

照井 : そうですね。13歳くらいだったので。

──かなり難しいリズムや歌だったりと、小林さんから見たら狙い通りだったのでしょうか。

小林 : 小さいころから王道以外の曲も聴いていったらどう育っていくのかはちょっと楽しみではありました。

照井 : めちゃめちゃ気にしてたんですね、難しくしすぎたらダメなのかな? とか。でも、小林さんはどちらかというと「もっと無茶して」という感じだったので、俺は「これ、大丈夫かな? 」と思いながらすりあわせていきました。

──デモを作って戻されたりっていうのはありましたか?

照井 : 初期はあったんですけど、基本的にはあまりなかったです。

──見ている側はすごいことしているな〜と、他のアイドル・グループより抜きん出ているなと感じていました。

照井 : 彼女達は踊るとか歌う基礎はあるんですが音楽的な素養は特になくて、だから逆に出来ちゃったんですよね。中途半端に他の音楽を知ってると逆にわけがわからなくなってたかな? と思うんですけど、なにも知らないから"こういうもんなんだ"って素直にやってました。今になって"難しい"っていい始める感じなんですよね。

──そうなんですね。

小林 : 最初はメンバーから”もっと普通の曲やりたいです”っていわれたことあるけどね(笑)。

一同 : (笑)。

照井 : それはそうでしょうね(笑)。

──そういわれた時はどう話すんですか?

小林 : ほかとは違うし、いい曲だから信じようよって。みんなと一緒じゃつまらないじゃんって。そんなことを言ったような記憶があります。

──話して納得はしていましたか?

小林 : してないです(笑)。

一同 : (笑)。

照井 : まあ、その場の矛は収めるけどって感じですよね。

小林 : みんな意外と我が強いんですよね。こうだからこうだって、でも、まあまあまあまあと。

照井 : あと周りが気になりますよね。周りの知り合いのアイドルがこんな待遇だとか、こんな曲やって可愛い衣装だとか、隣の芝生は青く見えたり。すごく順風満帆にきてるとしても、本人たちは常に周りのほうが羨ましく見えちゃうというか。

強烈でした、あのリキッドは

──インディーズ時代、さらに上を目指せると思ったタイミングはどこだったのでしょうか。

小林 : やはり、リキッドルーム〈sora tob sakana 単独公演「月面の音楽隊」〉(2017年4月30日@恵比寿LIQUIDROOM)を埋めた時ですかね? 決定的だったのは。

照井 : バンドセットが出来たのも大きかったです。

小林 : あれもめちゃくちゃ迷ったんですよ。当時、所属していたレーベルさんからの提案で。グループとして周年でもないし、なにかのタイミングでもなくて。1回やってみませんか? って提案されたんですけど、それにしては重すぎて。

──かなりですよね。

小林 : 埋められなかった時のリスクがかなり大きかったんです。そこまで実績もなかったので、2週間くらい悩みました。

照井 : 個人的にはバンドでやりたいのはずっとあったので、やれる機会があるならなと思ってましたけど、埋まるかと言われると確かに難しいところでしたよね。

──でも結果的にはパンパンで、バンドのメンバーも豪華で、もの凄い熱量の高いライヴでした。

照井 : そうですね。豪華でしたね。まとめるのがめちゃめちゃ大変でしたけど。みんな僕より年上の一流の個々のミュージシャンだったので(笑)。


夜間飛行(band set)

──そうですね(笑)。バンドのメンバーはどうやって決めていかれたんでしょうか。

照井 : 基本的にレーベルのかたと相談しながら決めていきました。

──話しあって決められたんですね。

照井 : 下地はレーベルからの提案だったんですけど、全員がっちり決まった状態でこの人でやりましょうって感じではなく、興味を持ってくれていたミュージシャンが何人かいて、じゃあやるんだったらギターは大竹さん呼びたいですねとか、そういう感じで。

──中西さんは見にいかれてましたか?

中西 : もちろん見にいきました。あの日のライヴが結構決定打で。

──自分の中で?

中西 : 自分の中の決定打だったんですよ。お話しした通り、ライヴ・イベントは数年前からいかせていただいていて、アルバムも素晴らしい内容でした。ただやはり、僕の仕事としてアニメーションとの掛けあわせがどのくらいできるかに意識があったので、そことのハマりかたに答えが全然見えなくて、どうしようどうしようと勝手に自分の中で宿題になったまま2年くらい経っていて。そして、リキッドのライヴ、多分「夜間飛行」で… 最終的に決めたんじゃないかな? 正式にお声がけしよう、レーベルとして一緒にやらせていただけませんか? と思ったのがその日でした。それくらい強烈でした、あのリキッドは。

──そうですよね。かなりすごかったですもんね。

小林 : ライヴが終わってからメジャーからのお話は何社からかいただいたんですよ。

──その前からも話はあったんですか?

小林 : いや、そのあとですね。実際いただいたのは。

──他のレーベルさんもリキッドのライヴでかなり衝撃を受けたんですね。

照井 : 動員もあったんじゃないですか。

小林 : リキッドがソールド・アウトするのは登竜門的としてあるので。

中西 : リキッドにいたお客さんの層を見た時に、フジロックやサマソニにいくようなイメージ・スタイルの音楽ファンが結構いたんです。それを見た時「アイドルファンだけじゃない」というか、このグループにはいろいろなタイプのファン層を獲得できる何かがあるんじゃないか? という、マーケティング的な見方も働きました。

──確かに、お客さんの層ってわかりやすいですよね。

中西 : 純粋に、音楽を聴きにきてますよっていうスタイルでライヴを見ているお客さんもいっぱいいたし。小林さんと照井さんが狙った層に音楽が届いてる感じはしました。

──照井さんはリキッドを埋めて得たものはありましたでしょうか。

照井 : 埋められてよかったなというのはありましたよね。あとはサカナをバンドでやったのが初めてだったので、生演奏での手応もありましたし、バンド・メンバーをまとめられた個人的な達成感もありました(笑)。

一同 : (笑)。

照井 : あと、ステージが1個あがったんだみたいな実感はありましたよね。

──照井さんのバンドのお客さんとは違う層で。

照井 : そうですね。自分がやってたバンドがバンドの中でも変わってるっていうか、独特で、ノリノリになったりって感じではないですし。そうじゃない形でのよさを目指したかったんですよね。フェスの予定調和的な一体感とかがちょっと嘘くさいなって思う瞬間もあったり。

一同 : (笑)。

照井 : そういうのもあって、自分のバンドではお客さんも割と集中して聴いてくれる感じだったんですが、サカナバンドでは笑顔で踊ってくれていたりして。だからすごい単純に楽しかったですね。

──フロアから客席はゆとりをもって見れていたんですね。

照井 : 自分でやってたバンドがすごく難しかったので、結構真剣にやるって感じになりがちだったんです。サカナの曲は難しいですけど、分配してあるし、結構余裕をもってやれましたね。お客さんの反応が面白いからたくさん見てました。

照井さんやsora tob sakanaを持ってくるのは必然だった

──そして、ライヴが終わってからメジャーへのお声がけが中西さんから正式にあって。

中西 : まあでも、警戒されましたよ。小林さんからは(笑)。

一同 : (笑)。

中西 : 小林さんとは以前ご挨拶させていただいたことはあるくらいで、ちゃんと膝付きあわせてお話するのは初めてででした。ただ僕自身、これをいうのも変な話なんですけど、レコード会社じゃないわけですよ。どう考えてみても映画の会社じゃないですか?

──自社でレーベルも持たれていますが。

中西 : そうなんですけど、音楽主体ではないんですよ。ノウハウもそうだし、リソースもそうだし、やっぱり他の音楽専門でやられているレーベルさんよりはいききらないところもある。とはいえ、やっぱりうちの武器としてはアニメーションの映像と音楽を掛けあわせて発信できます。というところと、海外に対してのアプローチは会社として積極的にやってます。というのがあって、あとは僕が4年前から追いかけてますっていう情熱ですよね(笑)。そういうところを小林さんにお話しして、YESなのかNOなのかわからないけど、まずはお願いしようと思って。

──小林さんはその当時どんな思いだったのでしょうか。

小林 : レコード会社に求めることの最低条件が、"A&Rがサカナのことが好きであること"は絶対条件だったんですよ。まずは好きで一生懸命やってくれるってことがまずは最低条件。じゃないと、そんな大人とメンバーも関わらせたくないし、照井さんも関わらせたくないし。で、もうひとつが海外展開と新しい層の開拓。このふたつが命題としてあったので、中西さんと話した時に変な常識に囚われないでいろいろと考えていただけて「本当にやってくれるんですね?」って何回も確認したりして(笑)。

中西 : ありましたね(笑)。

小林 : タイアップの件がなかったらメジャーにいった意味がわからないってなるのと、海外にも行きたかったのでチャンスが広がる可能性があるかなって思いつつ。自社リソースだけでは出来ないところを組める意味があったのが、中西さんでした。

中西 : タイアップに関しては、sora tob sakanaっていうずっとあたためていたものをどこかで出したいって気持ちはあったんで、タイミングを伺っていました。とはいえ、うちだけでどうこうってお話ではないからプロジェクトに関わっているみなさんが首を縦に振っていただけるような状況作りや環境作りを頑張ってしていこうみたいなところはありました。進みだしたら進みだしたでなかなかうまくいかないこともいっぱいあって、そこは日々是正していきました。

──ワーナーさん的にはアイドル・グループをリリースさせたいということよりは、アイドル関係なく”sora tob sakana”に魅力があったから、という思いが強かったのでしょうか。

中西 : そうですね。音楽的なプロジェクトを会社として事業部として立ちあげようぜ、っていうのはあまりないんですよ。各A&Rが見つけてきて、自社がやっている映像作品との掛け合わせとか海外展開もある程度見据えて、ビジネス的にもしっかりというのが軸としてあって。さらに、新しい才能を見つけてくるのはこういうお仕事をしている以上は絶対必要なことだと思っていて、そこに照井さんやsora tob sakanaを持ってくるのは必然だったかなと感じています。逆に言うと、社内の人たちはアイドル文化含めてわからないし、そのシーンに対してそこまで明るくはないわけです。ただやはりそこは僕の中で、アイドルうんぬんより「照井さんの音楽でねじ伏せてやろう」みたいなところはありました (笑)。

──会社側にはどうやってプレゼンされたのでしょうか?

中西 : ある程度一定の収支、そこで勝てるかどうかの算段をつけつつ、同時にクオリティがこれだけいいものだから、ということを示して、あと将来的な可能性も入れて考えてsora tob sakanaをプレゼンしました。新しいものを始める時ってやっぱり大変なので、リキッドルームでのワンマン・ライヴがソールド・アウトしたのは、僕的にはバックアップになったかな。ライヴでこれだけ動員があったので、これからも増えていきますよ! ということも言えますし。

小林 : インストア・イベント(リリース・イベント、略してリリイベ)を沢山しませんよ、というのも中西さんに最初に伝えていたんです。

──アイドル・ファンとしては「リリイベ沢山やらないの?」って思ってしまいますけど。

小林 : やり過ぎ? 本末転倒というか、音楽を売るっていうよりも女の子をぐるぐる回して数字をあげていくっていう商法はずっと最初から断ってたんですよ。

──そうなんですね。

中西 : それで消耗されてしまうならやりませんでいいですねって感じでした。リリースはリリースで大事な作業ではあるし、ファンの皆さんにリリースしましたよという感謝をお伝えするリリイベというのは大事なものですけど、それが主体になってしまうのもおかしいというか。そのやり方じゃなくても他にもあるよねみたいなところあるし(笑)。

小林 : 沢山やらずとも、ファンの皆さんには感謝の気持ちは伝えられると思うので。

照井 : ビジネス的な収支を考えたら、リリイベを繰り返せばその時の売り上げにはなると思いますけど、ブランディング的にサカナの方向性とやっぱ全然違うことになっちゃって。

中西 : そうですね。

照井 : 長い目でみたら結局損だって思うんですね。お金の面で言っても。その辺の商法に関しては共感してますね。

中西 : そうですね。OTOTOYさんのインタビューだからこれだけはいっておこうって思って。2年前あたりからマーケットの状況がドラスティックにかわってきたことを突きつけられていて。CDに加えて配信やサブスクリプションでも動いて欲しいところがひとつのミッションとしてあります。しっかり伸ばして、そこでもいいねって言ってもらって、新規のリスナーを獲得できるようにしていこうと全員共通で取り組んでる最中です。

照井 : 来年、再来年あたりには一般的な意識がかわる時期なのかなって思っていて。

中西 : CDは特典をつけたり発売形態を多様にできるし、配信やサブスクリプションは気になったら手元ですぐ楽しめたり、それぞれのありかたで生き残れていけたらハッピーなことだと思います。

小林 : 今回、特典映像のBlu-rayは配信で高画質高音質は見れないですからね(笑)。

中西 : そうなんです。

照井 : 手元に残る形として、こうやって実際見ていると「いいな」ってなりますね。個人的にはそこまで物にこだわる派じゃないんですけど。

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