11年の時を経て鳴らされる音楽──Gotch&井上陽介をプロデュースに迎えたソフトタッチの新作を先行配信

左から佐野史紀(Vo&Gt)、星野誠(Dr&Cho)、渡辺大介(Ba&Cho)、山田真一(Gt&Cho)

サニーデイ・サービスやASIAN KUNG-FU GENERATIONなども所属したインディ・レーベル〈アンダーフラワー〉から、1枚のフル・アルバムと2枚のEPをリリースし、2003年にその活動を終了させたロック・バンド、ソフトタッチ。「タッチ」の通称で親しまれた彼らが、11年ぶりとなるフル・アルバム『リビルド』をリリースする。

今作には、Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)と井上陽介(Turntable Films / Subtle Control / Peg&Awl)がプロデュースとして参加。これまでのソフトタッチの音楽に、さらに幅広い発想が取り入れられたアルバムとなっている。OTOTOYでは今作を、CDリリース(9月12日)に先駆けてハイレゾ配信開始! メンバーも「過去・現在のソフトタッチを詰め込めた作品」と語るように、まさにソフトタッチのベスト盤とも言える今作を完成させた彼らに話を訊いた。

11年ぶりのフル・アルバムを先行ハイレゾ配信開始!

INTERVIEW : ソフトタッチ

〈どこへ行くのだろうか〉〈どこから来たのだろうか〉——『リビルド』に収録されている「Circle」のサビを聴いて「自分は何者なのか、この先どこへ行きたいのか」そんなことを考えさせられた。ソフトタッチの音楽は、過ぎていく日常の尊さを歌っている。「過去を受け入れて進め」スピーカーの向こうで佐野史紀が僕にそう訴えているようだ。──今回はバンド結成から現在までのヒストリーを踏まえつつ、11年ぶりのアルバムで彼らが表現したい音楽はなんなのか、いまのソフトタッチに迫った。

インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 溝口裕也

“リアルな希望”を求めるようになったのかな、と思います

──YouTubeに投稿された「Circle」が本当にすばらしかったです。…… 救われた感じというか、気持ちがラクになりました。

佐野史紀(以下、佐野) : ああ、ありがとうございます。聴いた方からも「肯定された気分になったよ」と言われて、心がざわつきましたね。作品って、自分が好きに発しているものじゃないですか。それを他者が聴いて、なにか感じてもらえるのがうれしいですね。

──曲を聴いた後、この感じはなんだろうと思って。そしたら是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』が頭をよぎったんですよ。映画のように、漠然とした理想や夢じゃなくて、現実を知った上でいまの希望を表現しているからこそ響いたんです。

『海よりもまだ深く』
笑ってしまうほどのダメ人生を更新中の中年男、良多(阿部寛)。15年前に文学賞を1度とったきりの自称作家で、今は探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。元妻の響子(真木よう子)には愛想を尽かされ、息子・真悟の養育費も満足に払えないくせに、彼女に新恋人ができたことにショックを受けている。そんな良多の頼みの綱は、団地で気楽な独り暮らしを送る母の淑子(樹木希林)だ。ある日、たまたま淑子の家に集まった良多と響子と真悟は、台風のため翌朝まで帰れなくなる。こうして、偶然取り戻した、一夜かぎりの家族の時間が始まるが……。(※公式ページ参照)

佐野 : あぁ、まさに仰る通りだと思います。『リビルド』は“リアルな今っぽい感覚”というのを追求したいのがあって。気づいたら、少し前までの僕はやり過ごす気持ちが強かったんですよ。だけど4人で集まって話をしているうちに、「あと何回、こうやって音楽をできるのかな」と考えるようになった。それから意識がシフトしましたね。恐らくそれで“リアルな希望"を求めるようになったのかな、と思います。

──終わりが来たとしても、それを悲観的にならずに受け止める。

佐野 : そういう視点を持てるようになりましたね。


ソフトタッチ/Circle

──今作は11年振りのリリースということで。そもそも「ソフトタッチとは何か」という話からいきたいと思います。

星野誠(Dr&Cho / 以下、星野) : よろしくお願いします。

──2000年にインディーズ・レーベルの〈アンダーフラワー〉から『Positive Thinking』でデビュー。同期には、今作のプロデューサーを務める後藤正文さんのASIAN KUNG-FU GENERATIONもいたわけですけど。当時のシーンは、ほかにどんなバンドがいましたか。


ASIAN KUNG-FU GENERATION/遥か彼方

佐野 : 少し上の世代だとShortcut Miffy!、LOVE LOVE STRAWがレーベルの先輩にいらっしゃいました。同じ世代ではSUMMER RHYME、ザ・ガールハントもいて。

渡辺大介(Ba&Cho / 以下、渡辺) : レーベル関係なく言えば、ART-SCHOOLもいたよね。

佐野 : そうだね。Syrup16gやLUNKHEADもいた。

渡辺 : その辺りのシーンにいました。

──もともとソフトタッチは現在の日本語詞ではなく、英語詞を歌われてましたよね。

佐野 : そうです。メロディアスを重視し、ギターの歪みを活かした轟音サウンドは初期から変わってないです。コーラスも大事にしているので、強い口当たりなんですけどメロディは甘い感じが僕の認識です。

星野誠(Dr&Cho)、佐野史紀(Vo&Gt)

──バンドのルーツはなんでしょう。

佐野 : 海外のギター・ロックやオルタナティブが好きで。イギリスやアメリカのカレッジ・チャートを賑わせていたようなインディ・ポップ・バンドがベースになってます。中でも、4人共通で好きなのはティーンエイジ・ファンクラブとかウィーザーですね。

──ポップであり、泣ける要素も含んだメロディアスさは、そこからきてるんですか。

佐野 : ああ、確かに。その影響はあると思います。

「やっぱりここがホームタウンだな」と再確認できました

──デビュー後、アルバム1枚、EP2枚リリースして2003年に解散されました。なにが理由だったんですか?

佐野 : 僕らは「常に新しい音楽を生み出したい」というのが念頭にあって。1990年代から2000年代への移行したとき、ソフトタッチでは難しいと思ったんです。それが解散の理由ですね。

星野 : :そういうことなので、円満な解散でした(笑)。

渡辺 : 解散しても4人でやりたくなったら、また集まればいいか、くらいのテンションだったんですよ。佐野が「1回、リセットしたい」と言ったときに、僕はこのメンバーなら声をかければいつでも集まれると思って。「じゃあ、とりあえずリセットしようか」ということで、すんなり解散しましたね。

──その後、皆さんはどうされていたのでしょうか?

佐野 : 佐野と星野は新しいバンド(BEDTOWN)を組みました。


BEDTOWN/国道沿いに並ぶファミリーレストラン

渡辺 : 僕は仲の良かったバンドさんに「ソフトタッチがなくなったなら、ウチでベースを弾きなよ」と声をかけていただいて。桂田5をはじめ、いろんなバンドを転々としながら、ずっと音楽活動は続けていました。

山田真一(Gt&Cho / 以下、山田) : (僕は)表立った音楽活動はなかったんですけど、その間は仕事をしながら大学へ通って。教職課程を履修したり、会社員として働いたりしながらいまに至ります。

──10年前に一度、ソフトタッチは再結成をしていたそうですね。

佐野 : 30歳の節目にもう1度集まろう、と。そのときはライヴを1度やっただけで終わりました。やはり生活の基盤というのが別の問題としてあって。メンバー間で「継続は厳しいんじゃないか」という話になり……。

星野 : :それぞれ仕事をしていたり、山ちゃんは学校へ通ったり。各々に別の生活があったので、当時はソフトタッチを続けるのは厳しかったですね。

──その後、2016年に改めて再結成されました。

佐野 : もはや再々結成ですよね(笑)。それは、佐野がみんなに会いたくなって。

一同 : (笑)。

佐野 : それで、みんなに連絡をして。

山田 : 再結成のきっかけは些細なことだったよね。

渡辺 : 解散した理由があんな感じだったので、集まる時も気負いなく。4人で飲みながら決定しました。

──音を鳴らした瞬間はどんな手応えがありました?

星野 : :昔と同じ感覚もありつつ、4人とも社会経験を積んだ後なので落ち着いた雰囲気を感じたりして。それは仕事だけじゃなくて、音楽経験も相まってですけど。

渡辺 : そうだね。大人になったんだな、と思いながらも昔の延長線上にきたって感覚です。「あぁ、ソフトタッチってこうだったよね」と。出会って20年近く友達をしているので、各々がどういう人柄なのか、どういうクリエイターなのかをお互いにわかっている。だからこそ音を鳴らす時もすごく自然でした。僕はいろんなバンドで弾かせていただいたのもあって、「やっぱりここがホームタウンだな」と再確認できました。音的な居心地も良かったし、人としての居心地も良かったです。

僕は“この世の喜び"を歌いたいんです

──そして、遂に11年ぶりのアルバム『リビルド』がリリースになります。「out of the window」から全てがはじまったそうですね。

渡辺 : ソフトタッチをもう1回やろう、という話になったときに佐野が「新曲を作ったんだよ」と聴かせてくれたのが「out of the window」でした。それを聴いて「またソフトタッチがはじめられるんだ」という、うれしい気持ちが湧き上がったのを覚えてます。

──2016年に、佐野さんが「out of the window」のデモ音源を自身のフェイスブックに投稿。それを聴いた後藤正文さんが「協力させてください」とコメントをされて。

佐野 : まさかでしたね。後藤さんとは、その後にメールのやり取りをするようになりました。Gotchのライヴを観に行ったときに「レコーディングをやろう」と改めて言っていただいて。それから本格的にアルバム制作に入りました。

──プロデューサーを迎えたことで、音作りに変化はありました?

佐野 : ヴォーカルで何テイクか歌わせてもらうんですけど、テイクの選び方というのが後藤さんはビターなんです。佐野が選ぶと甘いニュアンス、というんですかね。感覚の話だから言葉で伝えるのが難しいんですけど、とにかくビターなテイクを採用されたのが印象的で。今回の作品作りで大きく表れているんじゃないかな、と思いますね。

山田 : レコーディングで印象に残っているのが「リビルド」。「アレンジを変えてみよう」と後藤くんから提案してもらいました。普段使わないようなエフェクターを使ってみたり、新しい試みができてすごく楽しかったですね。

山田真一(Gt&Cho)、渡辺大介(Ba&Cho)

星野 : :もともと僕らの演奏はストレートな表現が多かったと思うんです。今回は、昔できなかった引き算が出来るようになった。それは後藤くんと共同プロデューサーの井上陽介くんがうまく引き出してくれました。「このままでも良いんだけど、これにスプーン一杯のスパイスを足してみたら」と。

渡辺 : そうだね。僕らだけだと、勝手を知っているので出てくる発想も限られてくるんですよ。そこで「こういうこともできるんだよ」とアイデアをもらって、アレンジの面ですごく選択肢が広がりました。

──改めて『リビルド』はどんな作品でしょうか?

佐野 : みんなが共感というか、共鳴し合える音楽作品になったんじゃないかなと思います。

渡辺 : 新たなソフトタッチというより、結成からの延長線上にあるアルバムだと思っていて。僕がイチファンだったら「おかえり、ソフトタッチ!」と言えるような1枚です。でも、延長線上と言いつつ、解散しないで続けていたら『リビルド』はできなかったと思ってます。それは僕らが11年間という期間で、社会に揉まれつつも、やっぱり音楽が好きでソフトタッチをやりたい上で構築されたアルバムなので。だからこそ単純な延長線上ではなくて。シームレスだけど、決して横並びはない斜め上な感じ。僕は過去・現在のソフトタッチを詰め込めた作品だと思います。

──ソフトタッチのベスト盤。

渡辺 : 本当にそんな感じですね。

──共鳴という話がありましたけど、作品の幹になっていることはなんでしょう。

佐野 : “この世の喜び"ですね。喜びは、ただ楽しいだけかと思ったらそうじゃない。悲しみがあるから、喜びが存在する。そういう悲しみもあった上で、包み込むように喜びを作品として表現したい、と思って作りました。

──年齢を重ねると、喜びを感じる場面は変わるものですか?

佐野 : 年齢なのか分からないですけど、変わりましたね。些細な人の仕草に気づくというか、「うれしいことをするなぁ」みたいな(笑)。昔だったら自分のしたいことを優先するタイプだったんですよ。

星野 : :佐野は我が強かったよね。

一同 : (笑)。

渡辺 : 確かに変わった気がする。

佐野 : 憧れと等身大の自分、あとは客観性ですかね。「他者からこう思われてる」というのを受け入れるか、どうするか悩む自分がいて。そういうのをひっくるめて、やり過ごしていられないな、というのがいまの自分たちだと思います。「共同幻想」のサビで〈そして共同の幻想よ 今を見せてくれ〉と言えるようになったのが、なんていうか…… うれしいんですよね。ああいう言葉になるモードは、なかなかないので、書けてうれしかった。

──『リビルド』はアーティストとして、人間としもキャリアを積んだ4人が歌うから、説得力や言葉の重みを感じられるアルバムだと思うんですよ。それでいて、メロディがキレイだから歌詞がスッと入ってくる。

佐野 : ……(沈黙)。

──…… すいません。

星野 : アハハハハ! 違うんです。褒められてないから、照れてるんです(笑)。

──(笑)。リリース後はライヴも控えているんですよね。

渡辺 : 11月30日に下北沢BASEMENTBARでリリース記念ライヴをします。僕らも気合が入ってるので、ぜひ足を運んでいただきたいですね。

佐野 : 音源とライヴは違った印象になると思うので、楽しみにしてください。

『リビルド』のご購入はこちらから



LIVE SCHEDULE

〈LIVE LIFE〉
2018年9月23日(日)@下北沢GARAGE
時間 : Open 18:00 / Start 18:30
チケット : 前売 2,500円 / 当日 2,800円(+D)
共演:ソフトタッチ / SUMMY / and more…

〈border〉
2018年9月29日(土)@渋谷HOME
open / start 18:30
チケット : 前売 2000円 / 当日 2300円(+D)
出演 : ソフトタッチ / クララズ / ArtTheaterGuild / 金子駿平
DJ : Yuki Nakajima(SPIRO) / Yuka Takei(SPIRO)

〈Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2018 〜20th Anniversary〜〉
2018年10月6日(土)
時間 : OPEN 13:30 / START 14:00
会場 : knave / club vijon / hillsパン工場 / SUN HALL / FANJ twice / DROP / VARON / BEYOND / AtlantiQs / Pangea / BRONZE / CLAPPER / -Eggs STAGE- BIGCAT / CONPASS / OSAKA MUSE / FootRock&BEERS / RUIDO / JANUS / soma / FANJ
※BIGCATのみ13:00開場予定。変更になる場合もございます。
詳細 : https://minamiwheel.jp

〈解放 #3〉
2018年11月30日(金)@下北沢BASEMENTBAR
時間 : OPEN 19:30 / START 20:00
チケット : 前売り 2,500円 / 当日 3,000円(+1D)
出演 : ソフトタッチ / 桂田5(opening act)
詳細 : http://toos.co.jp/basementbar

【その他詳しいライヴ情報はこちら】
https://soft-touch.info/live

PROFILE

ソフトタッチ

1998年秋昭和音大の仲間を中心に結成。略称「タッチ」
2000年冬1stアルバム『Positive Thinking』でデビュー。
2002年春1st EP『セイリョウカンベットタウン』発売。
同年秋2nd EP『エンドマークタワー ep』発売。
2003年春解散。
2007年春『セイリョウカンベットタウン』と『エンドマークタワー ep』を重ねた2in1アルバム『SOFTTOUCH』発売。
2016年夏活動再開。
2018年、Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)主宰のレーベル〈only in dreams〉より、Gotch と井上陽介(Turntable Films / Subtle Control / Peg&Awl)がプロデュースを手掛けた3rdアルバム 『リビルド』 を11年振りにリリース。

【公式HP】
https://soft-touch.info
【公式ツイッター】
https://twitter.com/softtouch_info

この記事の筆者
ライター真貝聡

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この記事の編集者
鈴木 雄希

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