正体不明のプロジェクト、ariel makes gloomyの謎を解き明かす──2nd ep『oxymoron』をリリース

懐かしくも独特なサウンドに、伸びやかな歌声が心地よい、ariel makes gloomy。彼らが2nd ep『oxymoron』を2018年6月6日(水)にリリース、OTOTOYでも配信をスタートさせた。今作はジャンルに固執しない、ダイバーシティに富んだ作品。同作を聴けば「一体、こんな不思議な作品を制作したariel makes gloomyって何者? 」とリスナーが考えることは自明であるが、その正体は謎のまま。今回、そんなリスナーの疑問に少しでも応えるべく、インタヴューを掲載! 新epと合わせて、お楽しみください。
待望の2nd epを配信中!
ariel makes gloomy/ oxymoron
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム926 円(税込)
【収録曲】
1. focal point
2. twilight
3. gradation
4. place before dawn
INTERVIEW : ariel makes gloomy
メンバーのビジュアルや音楽のルーツもわからない、正体不明の4ピース編成の“プロジェクト"、ariel makes gloomy。はっきり言って、彼らは謎が多すぎる。6月6日にリリースされた『oxymoron』を聴いて、ますますわからなくなった。本文でもふれているが、4曲入りの今作は音楽性の幅が広く、「本当に同じメンバーによるた作品なのか」と疑ってしまうほど。──どうして秘密のベールに包まれているのか、その理由を解き明かすところから話ははじまる。一体、ariel makes gloomyとは何なんだ? その謎を少しずつ解き明かすインタヴューだ。
インタヴュー&文 :真貝聡
写真 : 大橋祐希
顔を覚えていただくよりも、音を覚えていただきたい
イシタミ(keyboard,vox) : すみません、インタヴューの前に儀式があるので、ちょっとお時間いただいても良いですか? (紙の資料を取り出す)
──儀式ですか?
イシタミ : (資料をめくりながら)ariel makes gloomyと申します。この度はありがとうございます。……、申し訳ないことに、私たちは4ピース編成のプロジェクトとなっておりまして。バンドに見えるかもしれないんですが、バンド・サウンドをプロジェクトという名の下に再構築するイメージなので、あくまで「バンドではない」と。
──プロフィールにも書かれてましたよね。
イシタミ : はい。あとリーダーはいなくて、メンバー間は敬語で話しております。…… 私はA型の島根県生まれです。ドラムの佐々木さんはAB型で大阪府生まれ、東京都育ちです。ベースの関さんはB型の埼玉県生まれで、ワダさんがO型で長崎県生まれ、福岡経由です。
──ご丁寧にありがとうございます。
イシタミ:それ以外の情報は特にありませんので、その辺もすみません。もしよろしれば『oxymoron』をもし聴いてくださっていたら、感想をいただければと……。聴いた方のお言葉をいただいて、自分たちが気づくこともあったりするので。もし、真貝さまが聴いていただいてるようであれば……聴いておられなかったら、それでも、大丈夫ですので!
──もちろんお聴きしてますよ(笑)!
イシタミ : ざっくりとした感想でもいただけたら。それを受けて「こういう感じに聴こえるんだ」というのが分かったりするんです。
──その前に、この資料はイシタミさんが作られたんですか?
イシタミ : そうですね…… そんな感じです。すみません。

──いやいや、ご自身の資料を用意してこられる方はいないのでうれしいです。『oxymoron』の感想は後でふれさせていただくとして。ariel makes gloomyは音楽のルーツとか、誰が作詞してるかなど、あえて伏せているんですよね。
佐々木 悠介(drums / 以下、佐々木) : そうですね。誰がどの曲を作っているとか、音楽のルーツとか、それよりも自分たちの出している音楽を第一に聴いていただきたい、事前情報よりもまず音を聴いていただきたいのはあります。
──アーティスト写真も顔を見えづらくして。
イシタミ : 全員が他のプロジェクトもやっていることもあって、“ariel makes gloomyのアーティスト写真では"わかりづらいのかもしれません。イメージ図なんです……。
──僕はこのままで全然アリだと思いますよ。いまって、アーティストもSNSで個人的に情報を発信されてるじゃないですか。そういういろんな情報が飛び交うなかで、音楽だけを聴いてもらうために「なるべく余計な印象を与えない」というのはポリシーを感じます。
イシタミ : いまは情報が多いな、と思っていて。それは良いことなんですけど「本当に知っていただきたいのは何か?」と言ったら私達の場合は曲だなと。それに先々のことで恐縮ですが、顔や情報は出そうと思えばいつでも出せるなあとも思ったりしています。まずは顔を覚えていただくよりも、音を覚えていただきたいのが願いです。
──作品についてふれると『oxymoron』は1曲曲の世界観が色濃くて「これ、同じ人達なのか」みたいな楽しさがありました。
佐々木 : ありがとうございます。率直にうれしいです。ある観点、たとえばジャンル的な解釈をしようとすると、バラバラだなと感じる方もあるかもしれないとは思うんですけど、歌のメロディは一貫してキャッチーかなと感じています。だからこそ、楽器のアレンジは振り切って出来るってところがありますね。

ワダ トシアキ(guitar / 以下、ワダ) : 自分達としては、バラバラだなとは思っていないというか。バラバラにしたいとも思ってないです。その曲に対してどういうアレンジをするのかというところで考えてます。
──確かに、歌モノとして成立するほど耳馴染みの良いメロディじゃないですか。それなのに「こういうテクニカルな演奏をするんだ」という意外なアプローチがおもしろかったです。
佐々木 : 自分の中のイメージで思い切ったアプローチのアレンジをしても、最終的にまとまるなという不思議な信頼はあります。4人で演奏することがariel makes gloomyなんだというか。
関 悠介(bass / 以下、関) : 僕は歌に寄り添う演奏というよりも、メロディアスなフレーズとリズムを出していくタイプのベーシストなんです。ariel makes gloomyでは、その演奏がなじむ部分もあるし、それをプラスに出せるセクションもあったりして。好きなように演奏しても、歌とマッチして不思議と全体のアンサンブルが組み立てられている。そこが4人の世界観になっているのかな、と思います。
ワダ : 「focal point」という曲は、もともと歌モノっぽい展開だったんです。だけど、ドラマチックな展開になれば良いな、という気がして思い切ったコード進行に変えました。「gradation」もここまでやって大丈夫かな、と思うような弾き方をしています。
いろんな側面を感じられるのがariel makes gloomy
──ありがとうございます。今作で2作目になりますが、曲のストックはあるんですか?
イシタミ : ある方かなとは思います。EPだったら何枚か出せるくらいアレンジ済みの曲はあって。
──数ある楽曲の中から4曲に絞ったんですね。
イシタミ : そうなんです。
──率直な疑問なんですけど、曲があるならEPじゃなくて、ミニ・アルバムでも良かったんじゃないですか。
イシタミ : その通りなんですけど、4ピース編成なので「4」という数字がいいなと思っておりまして。レーベルと相談して、1stと2ndはEPという形にさせていただきました。
佐々木 : 結果的に4曲がピッタリな気がしています。
──収録曲を選ぶときの基準は何だったんですか?
佐々木 : いろんな側面を感じられるのがariel makes gloomyかなと感じていて、だからこそで「幅広さ」が伝わる作品にしたくて偏りが出ないように選曲しました。聴いていただいた方に「引き出しが多いですね」と感じていただけたらうれしいですね。

イシタミ : まず「twilight」をリード曲に決めました。「gradation」と「place before dawn」は、2作目のEPで出しておいた方がもともとの性質として「こういう音の表現パターンもあること」を伝えられるな、と。「focal point」に関しては、前作の「slowmotion」で知ってくださった方が「「slowmotion」的な感じの曲が1曲もない」となったら申し訳ないな、と思って楽しんでいただけたらいいなと思って選びました。前から『oxymoron』というタイトル名は決まっていたんですけど、その言葉を必要以上に意識しないで「2作目に入れるなら、どういう曲を聴いていただきたいか」で選んでます。
──なるほど。インタヴューをお受けになってライターの方々からの反応で、ご本人たち的に意外なものはありました?
ワダ : 人によって興味を持ってくださる曲がさまざまで。「twilight」以外の曲をリード曲に感じておられる方も多くて、そこが意外でしたね。

イシタミ : 何がリード曲だと思いますか?
──僕の中では「gradation」ですかね。
一同 : おぉ……。
──もちろん個人的な趣味も込みですよ。
イシタミ : なぜか「twilight」とおっしゃってくださった方は今のところいらっしゃらないです……。
一同 : (笑)。
佐々木 : 僕らは全員一致でリード曲は「twilight」だな、と感じていたんですけど。
イシタミ : 録音が終わった後に時乗さん(時乗浩一郎 / ベルウッド・レコード プロデューサー)から「MVは「focal point」でも良いんじゃないかなぁ」とお言葉いただいて。
佐々木 : それもわかるなあと思いつつ、どうやって理解していただこうかと4人で話し合いましたね(笑)。
イシタミ : 4人それぞれの意見をまとめた時にその意見が一致していることにまずは安心しつつ、「すいません……リードは「twilight」なんです。この曲でMVを作りたいと思っているのですが…」というやりとりはありました。
佐々木 : 一番キラキラしたイメージなんですよね。
関 : この4曲のバランスからみて「twilight」かなあという感じです。
ワダ : 「twilight」が一番、華やかだなあと。
イシタミ : 4人全員の納得がないと進めない形にしているので、そこは自分達の感覚を信じてみました。
──1曲ずつの存在感がはっきりしているからこそ、好みが分かれるんだと思います。
イシタミ : エンジニアのたりおさん(太田タカシ / TARIO_WORKS)が「どの曲でMVを作るのか、どの曲を自分達のリードとして表明するかで見え方がかなり変わってくる。それがariel makes gloomyの特徴だから、ちゃんと自覚しておいた方がいいかも」というアドバイスを『carbonium』の時からいただいていて。聴く方に、どういう風に見ていただきたいかを含めて考えていかなければいけない、と思いました。
──そこはariel makes gloomyの対外的な見え方を大事にする姿勢と通じますね。
イシタミ : そうですね、そういう着地になってくると思います。
「4ピース編成でできること」を追求していきたい
──OTOTOYははじめての出演なので、ariel makes gloomy自体の話もしたいんですけど。ご共通の知人を介して知り合ったんですよね。
イシタミ : そうです。だから友人関係というよりは、もう少し「個の集合体」というイメージです。
──最初からいまの音楽性だったんですか?
イシタミ : そうですね。時間の経過と共に変化していったものではなくて、最初からこの形です。全員にコンポーザー観点があるので、曲や音に対してどういうアプローチをしていくのか、最初からそれぞれがビジョンを持っているんです。だから、話し合って「こういうやり方でいくんで」みたいな感じではなくて。もうちょっと自然な感じです。
──男性陣はariel makes gloomy参加前から、女性ヴォーカルと一緒に音楽をされているじゃないですか。その中でイシタミさんの「声」について、どう受け止めてますか?
佐々木 : イシタミさんは声が伸びる印象があって。歌声や声質がスッと入ってくるかなあと感じます。
イシタミ : ちなみに私、ヴォーカルじゃなくてボックスなんです。やっぱり、キーボード / ボックスが自分のパート名でして。できれば鍵盤だけにしたいんですが、そうするとわかりにくくなる感じなのでってくらいなので、気を遣っていただいて申し訳ない……。
──気を遣って言ったわけじゃないと思いますよ。
ワダ : 僕は男性ヴォーカルバンドも経験していますし、女性ヴォーカルの案件もやらせていただいています。イシタミさんは、高音域が艶やかな感じがしました。
関 : 僕は女性ヴォーカルのバンド経験がずば抜けて多くて。そもそも、音楽を聴くときも女性ヴォーカルばかりかもしれないです。改めて考えると、そこにベースを合わせるのが楽しいということに気づいて。基本的に高い音域で歌ってくれるから、自分の演奏範囲も広くなる。…… そういえば、はじめてイシタミさんと会ったのはライヴだったんですよ。そのときの印象が良い意味で「変わっているな」と(笑)。

──どこを見て、そう思ったんですか?
関 : ライヴを観ているときにそう思いました。
イシタミ : (OTOTOYスタッフに向かって)思わないですよね?
OTOTOYスタッフ : (笑)
──OTOTOYのスタッフさんは「MCが独特でおもしろかった」と言ってました。
イシタミ : 正直、独特とは思っていなくて、どちらかというと特別無理していないというのが1番近いです。いつもとかわらない感じと演奏する感じをそのまま出しているという形です。それは大切にしています。
──『こえのおてがみ』(音楽フリーペーパー『CLOSER』のWEB版で配信した、イシタミのラジオ)をお聴きして、僕もイシタミさんは変わった方だと思いました。この番組をメンバー皆さんはご存知ですか?
ワダ : いやぁ、僕は存在だけしか(笑)。
──簡単に言えば、イシタミさんが1人で喋るラジオ番組なんですよ。第1回目の放送は前半に故郷・島根の話をして。それは良かったんですけど、後半に昔ばなしの『桃太郎』を語ったんです。
佐々木 : (笑)。
──しかも、うろ覚えだから要所要所がテキトーで「キジが…… えーと、たしか…… 鬼的なものを……」みたいな。「この時間は何なんだろう」と思って(笑)。
イシタミ : (唐突に)あ、でも、私が通ってた学校の校歌で、ずっと気になっていることがあって。1回も学校名が出てこないんですよ。島根県の中学校なのに、いきなり鳥取県の大山について歌うんです。そこがすごく好きで……。
──いま、なんの話しをしてるんですか(笑)。
イシタミ : だって、島根の学校なのに鳥取のことを歌ってるんですよ。私、気になって改めて思い出しました。歌詞が〈明日の希望を胸に秘め〉なんです! 中学生なのに。そこは明日の希望を胸に秘めないで、“明日の希望を高らかに"が私の考える中学生らしさなんです。
──あぁ……。
イシタミ : そういう意味で〈明日の希望を胸に秘め〉というのは、私の精神性に近いと思いました。思っていることはあるけど、それは実際の行動として出していくってことかなと解釈しています。
佐々木 : そこに着地すると(笑)。
──話しを音楽に戻しますけど、前作『carbonium』に続き『oxymoron』と、すばらしい作品をいいペースでリリースされて。これからのariel makes gloomyはどこへ向かっていくのでしょう。
イシタミ : 「コンスタントな楽曲制作をしていきたい」ということはメンバー全員でいつも意識しています。「それが1番だと思う」と多くの方に言っていただけて、ありがたい状況です。…… ありがたいな、と思いつつ、それはとても難しいこともわかっているので。また真貝さんとお会いできたらうれしいな、と思いますけど……。 今日で最後かも知れませんし……。
──急にネガティヴ!
イシタミ : やっぱり「いまは永遠ではない」と思います。だから、今日は皆さんインタヴューに来てくださっているのに、期待に応えるお話ができているか…… 心配です。
──僕はだいぶおもしろいですよ。
イシタミ : 2作目ですけど「どこにでも行けるから、どうしよう」と自分で勝手にかけたプレッシャーを感じつつ、できることは限られているので、やっぱり曲を作るしかないなと考えています。
関 : はい。できるなら、ずっと音楽と向き合っていきたいなと……。たまに、もし音楽ができなくなってしまったら、どうなっちゃうんだろう?と思う時があります。
ワダ : いろいろありますしね…。
佐々木 : …… ただ、長く音楽を続けたいのは4人の共通認識ではあります。
──あ、話を戻した!
佐々木 : (笑)。
イシタミ : 継続ほど難しいものはないと思っています。苦しさを感じることもあるかもしれないけど、それでも曲を作り続けて4ピース編成でできることを追求し続られればいいなと思っています。その結果、多くの方に聴いていただくことができたら幸せです。
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【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム926 円(税込)
【配信ページ】
過去作もチェック!
ariel makes gloomy / carbonium
"ポストロックとエモ、ポップの精神を備えたariel makes gloomyの1st EP。独自の世界観を持ちながらも、振り幅大の楽曲を4曲収録。
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LIVE SCHEDULE
CLUB251 25th ANV. EVENT:25市(ニーゴーイチ)〜25日の革命〜
2018年7月25日(水)@下北沢CLUB251
時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
出演 : カヨ、THE ANREG、wannabies、PARKLIFE、コシミキヤ
【詳しいライヴ情報はこちら】
https://amgamg.net/schedule
PROFILE
ariel makes gloomy
ariel makes gloomy(アリエル メイクス グルーミィ)は4ピース編成のプロジェクト。 ポストロックとエモ、ポップの精神性を持ちながら活動している。 2017年1月に現在の形となった。
イシタミ(keyboard,vox) / 佐々木 悠介(drums) / 関 悠介(bass) / ワダトシアキ(guitar)
【公式HP】
http://amgamg.net
【公式ツイッター】
https://twitter.com/amgamgnet