2018/06/01 00:00

音楽業界の“過渡期”、2018年をどう進む? ──鈴木竜馬(unBORDE代表) × 竹中直純(OTOTOY代表)

左から鈴木竜馬(unBORDE代表)、竹中直純(OTOTOY代表)

2018年5月、ワーナーミュージックとOTOTOYで契約を結び、〈ワーナーミュージック〉全タイトルの配信が順次開始されています。今回、音楽評論家の小野島大を司会進行に迎え、〈ワーナーミュージック〉内レーベルの〈unBORDE〉オーナーの鈴木竜馬と、OTOTOYの代表である竹中直純のトーク・セッションを敢行。Apple MusicやSpotifyなどのサブスクリプション・サービスが音楽配信の主流となりつつある過渡期とも言えるいま、これからの音楽産業はどうなっていくのでしょう。

「時代感」と「エッジ」というテーマで、神聖かまってちゃん、きゃりーぱみゅぱみゅ、WANIMA、tofubeatsなどなど、ジャンルや型にはまらないアーティストたちを発信する〈unBORDE〉のレーベル・オーナー、鈴木竜馬、もともとはプログラマーであるものの、音楽への想いからダウンロード型配信ストアを作り、現在も維持しているOTOTOY代表、竹中直純。そして音楽評論家としてもリスナーとしても音楽配信の黎明期から体験してきた小野島大。3者のそれぞれ異なった視点が交差し合うことで見えてきた、音楽産業が抱える課題、音楽配信のあり方、レーベル、配信サイト、アーティストのあるべき姿とは? 音楽産業の未来へ向けた赤裸々な対談をお届けします。

ワーナーミュージックのタイトルはこちらにて随時追加中!!

>>〈unBORDE〉所属アーティスト作品はこちらから!<<

INTERVIEW : 鈴木竜馬(unBORDE代表) × 竹中直純(OTOTOY代表)

鈴木竜馬(すずき りょうま)


(株)WMJ 執行役員
(株)CENTRO 代表取締役CEO

1969年、東京生まれ。東海大学文学部卒業。1993年にソニークリエイティブプロダクツに入社、97年に退社後、世界各国を旅する。99年にワーナーミュージック・ジャパンに入社。2010年に〈unBORDE〉のレーベル・ヘッド、14年に執行役員に。17年10月に設立された360度ビジネスの新会社CENTROの代表取締役に(ワーナーミュージック・ジャパン執行役員兼任)。

【unBORDE HP】
http://unborde.com
【unBORDE Twitter】
@unborde

竹中直純(たけなか なおずみ)


90年代中盤から坂本龍一を中心としたアーティストのインターネット・ライヴなどの活動を技術とそのディレクション面からサポートし、2000年前後にはMAA(メディアアーティスト協会)で技術アドバイザー的立場から著作権法改正による管理事業者の独占状態を解消する一端を担う。
2002年にはタワーレコード発行のbounce誌の電子化、ECサイトの開発を行い、2005年からは同社グループCTOとしてNapster Japanの立ち上げを行った。2007年のCTO退任後はOTOTOY, 電子書籍のBCCKS, 未来検索ブラジル, digitiminimiなど多方面で開発を続けるエンジニア兼アントレプレナー。

【竹中直純 Twitter
@uhyoppo

インタヴュー&文 : 小野島大
写真 : 大橋祐希

音楽業界の“過渡期”、2018年

──いまこのタイミングで両社の間で包括契約を結ぶに至った経緯をお教えください。

竹中直純(以下、竹中) : OTOTOYとしては、いわゆるメジャーとの包括契約をずっと欲しかったんですよ。でも時期的なこと、それからOTOTOYの前身のレコミュ二だった時代、2004年のDRM全盛期にメジャーから門前払いを食らったという経緯もありまして、ずっとご縁がなかったんですね。

──当時メジャー・レーベルはDRMつき音源の配信を要望していたが、OTOTOYは自社の配信音源にDRMをかけないことを旨としていたからですね。でもいまや状況も変わり、DRMつきの音源を配信するサイトなんてどこにもない。

DRM (Digital Rights Management)
主に音楽や映像などのデータに対して、複製を制限する、あるいは複製されたデータを再生できないよう制限する仕組み。音楽ファイルに鍵をかけることで著作権侵害やファイルの共有を減らすことを目的とした。

竹中 : はい。それに加え、2014年ごろに、システムを音楽配信本来の目的に沿ったものに作り替えようという作業が少しずつ進んで、去年ぐらいに、そろそろメジャーさんと話をさせていただいても大丈夫じゃないか、という内部的な事情もあって、そのタイミングでそろそろまじめに話を聞いていただけないかと、ワーナーさんにお話しはじめたというのが、僕の知る経緯です。

──システムの部分で整いはじめたというのは?

竹中 : たとえば「予約」というシステムです。デジタル配信で「予約」にどういう意味があるのかとか、そういうことがOTOTOYはよくわかっていなくて、システム的に対応してなかったんですね。音楽制作側の細かい都合とか、アーティストさんの思いみたいなことに──できるだけ汲みたいとは思っていたんですが──システム・サイドが対応しきれなかった。でもそれは結局損失でしかないので、2014年からそれらに対応できるようシステムの変更をはじめて、ようやく準備が整ったということです。

OTOTOYでは楽曲の予約配信も可能
予約注文に関してはこちらから。
https://ototoy.jp/feature/preorder

──なるほど。しかし、いまや音楽配信の主流はOTOTOYのようなダウンロード販売から、SpotifyやApple musicのようなサブスクリプション型(以下、サブスク)もストリーミング形式に移っています。そのあたりの現状はどう認識されてますか。

鈴木竜馬(以下、鈴木) : うちはメジャーの中でも外資系じゃないですか。そういう意味でかなりダイレクトに海外のマーケットの状況が関係してくる。月に1回は外国人がやってきて、あれこれ言ってくる。この3年ぐらい、かなり強烈にエデュケーションというか、「これからストリーミングが中心になる」と言ってくるわけですよ。確かにヨーロッパあたりの数字を見ると、人口に対してどれだけの人たちがサブスクに課金しているか、北米の状況も含め、明白なんですよ。向こうでの波は必ず日本にも来るよ、と言われ続けてきたわけです。

でも日本は相変わらずフィジカルが強いし、3年ぐらいはなかなかそういう状況が来なかった。依然としてダウンロードの数字も配信全体の7〜8割はキープしていたんです。ただ、いま現在、確かにそういう状況が訪れている。あ、こういうことなんだって、いい意味で食らってるんです。いわゆるロングテールというもののビジネスのあり方とか考えさせられて。

竹中 : なるほど。

鈴木 : いま日本のサブスクの再生単価って、だいたい1回1円ぐらいなんですよ。ということは100万回聞かれて100万円。そこから様々な印税を分配して、原盤投資した自分たちにどれぐらい還ってくるんだよ、という思いがあって、日本のメジャー・レーベルとしては全然理解できなかった。エド・シーランやブルーノ・マーズは海外で億の単位で再生されているけど、そりゃ億も行けば違うだろうよ、と。でもこの3年ぐらいで本当に状況が変わってきた。事実、iTunes Storeの売り上げが今年に入ってガクッと落ちたんです。えっそれで1位が取れるの、という数字に落ち込んできた。その一方でサブスクリプション・サービスに出している楽曲が従来の100万から500万、ものによっては1000万ぐらい回るようになった。1アーティストで1000万回級の楽曲が3〜4曲はまってきたりすると、いわゆるゾーンに入ったようにどんどん伸びていくわけです。

──今年になって急激にダウンロード販売の数字が落ちて、サブスクが伸びてきたと。

鈴木 : そもそも音楽を配信で聴く習慣を持つのは、音楽のリテラシーが高い人だと思うんです。1億2、3千万の人口の中で、1割に満たない人しか課金してない。米津玄師が100万(DL)行ったって凄いことだと思うけど、そんな大ヒットでも1億3千万中100万人しか買わないようなニッチなビジネスだから、音楽なんて(笑)。でも音楽を好きな人はダウンロードからサブスクに間違いなく移行してきてる。過渡期、過渡期と言われてるけど、その「過渡期」は、この2018年じゃないかと思うぐらい、急激に変わってきてますね。外国人からすると「ほら言わんこっちゃないだろ」ってくる。確かにそういう状況が来てるな、というのがJust Nowです。

──今後もサブスクリプションへの依存度はどんどん高くなっていく。

鈴木 : めちゃくちゃ高くなると思いますよ。そこでレーベル・サイドとして考えなきゃいけないのは、CDをプレスして3,000円で売るというシステムに於けるメーカーの利益ってめちゃくちゃ大きいし、そこに旨みがあった。でもストリーミングではなかなかそこまで利益はあがらない。1000万回かかればビジネスにはなるけど、全部が全部そこまで行くわけじゃない。なので原盤制作費のかけ方については、相当考えていかなきゃいけない。僕はバンドとか生音でやってるアーティストが得意でいろいろやってきましたけど、ここにきてデスクトップ・ミュージックの人たちにいろんな意味でチャンスが一杯出てきたと思いますね。サブスクのマーケットが無視できないとなったときに、そこに対応せざるをえない。制作費にしろ宣伝費にしろ。いままでとは違う脳みそを使っていかないと。そういうことが、いわゆるシングル・マーケティングみたいなとこになってると思うんです。

竹中 : なるほど。

鈴木 : いずれにしろ無視できないどころか、バコーンと脳みそ入れ替えなきゃダメなところに全メーカーのA&Rがきてる。たまたま僕は目の前の自社のアーティストでそれを実感してるんですけど、これを実感できないA&Rは取り残されていくだろうなって思います。ウチに限らず、めちゃくちゃ危機感として感じますね。どんなエデュケーション受けても、体感しないとわかんないですよ、やっぱり。

今後のダウンロード配信はどうなっていく?

──そういう状況の激変の中で、ダウンロード販売は今後どんな位置づけになっていくとお考えですか。

鈴木 : フィジカルも含め、アーティストによってはある程度あり続けるかなと思いますね。アナログ盤のマーケットも成立してるわけだし、Format by Format、Artist by Artistというところもあって、ストリーミングで聞くだけじゃなく、ちゃんとダウンロードしてじっくり聴きたいという層もいるかもしれない。ただフィジカルの場合はモノが目の前にあるけど、デジタルの場合ダウンロードして保有して聴くのとストリーミングで聴くのは、さして差はないと思うんです。

2016年に、unBORDEレーベル5周年を記念して12組の所属アーティストが結集したunBORDE all stars
2016年に、unBORDEレーベル5周年を記念して12組の所属アーティストが結集したunBORDE all stars

──データを聴くという行為としてはそうですね。

鈴木 : なので、ハイレゾは別ですけど、(ダウンロード販売は)しんどい状況になっていくかなと思いますね。実際欧米はそうなっているし。

──おっしゃるように、圧縮音源のダウンロード販売の未来はないと思うんです。ただハイレゾに関しては、「いい音で聴きたい」という層は確実に存在するし、OTOTOYが力を入れているのもハイレゾの販売ですね。そこにダウンロード販売の需要があると思います。

鈴木 : そうですね。アナログとハイレゾには似たところがある。アナログはブツですけど、その音が欲しいからみんな求める。ハイレゾもその音を求めるわけじゃないですか。本当に音楽を好きな人の需要がそこにあると思いますね。ただこれまでのダウンロード販売はどうなっていくか。フィジカル(CD)よりも先行きはわからないな、と。

竹中 : そうかもしれません。

鈴木 : いまの時代は、音楽に触れられるという意味ではめちゃくちゃいい時代だと思うんです。僕はそれはサブスクでもいいと思っている。いままでは100万人しか音楽に接しなかったけど、いまは誰もが1台、2台と、デバイス(スマートフォンなど)を持つ時代になっている。誰でもすぐ音楽が聴ける。こないだRadikoの人と話したんですが、スマートスピーカーのおかげでラジオの利用者が急激に増えているらしい。やっと生活の中に音楽が入ってこれる環境が整ったと思うんです。実際欧米諸国の音楽産業は「V字」という言葉でも生易しいぐらい、急激に業績を伸ばしている。特に〈ワーナー〉や〈ユニバーサル〉、〈ソニー〉のようなカタログを持ってるオールド・カンパニーの鼻息の荒さはすごいですよ、自分がなにかやったわけでもないのに(笑)。

悲しいかな、日本人の生活習慣として、音楽って後から入ってきたものだと思うんです。でも向こうの人は花を買うのと同じ感覚で音楽を買っている。生活の中に根付いてるんです。もともとそういう下地があるところに、スマートスピーカーの登場やサブスクやスマートフォンの普及で、シカゴだろうがイーグルスだろうがプリンスだろうが、いつでもどこでも聴けるようになった。音楽って、ただかけておくだけでも接することができる、すごくいいものだと思うんです。そしてそういう環境、インフラがいまや整っている。それはもっと声高に強調してもいいと思うんです。

──なるほど。

鈴木 : はじめてハードのおかげでソフトが生きる時代になってきたっていう印象があるんですよ。こんな事態誰も予測してなかったけど、でも我々がやりたかったこと、実現したかった環境が現実に見えてきてる。

竹中 : はい。

鈴木 : ただ本質的なところは忘れちゃいけないと思ってる。ただ垂れ流しをされたいがために曲を作るわけじゃない。どう聴く人の心にひっかき傷を残すか、という思いで作っていることは変わりない。米津玄師君も、うちのWANIMAもサブスクは出してない。(山下)達郎、(竹内)まりやというレジェンドも出していない。うちは出してない人がまだ一杯いるんですけど(笑)、その人たちはその人たちのポリシーがある。さっき言ったようなインフラの整備や環境の整備は無視はできないけど、本質を突き詰めていくことに関して手を抜くことはしてるつもりもないし、したくもない。自分が本当にいいと思う、心を引っかかれたアーティストとディールして、心ひっかくような曲を作ってもらって、それを聴き手に届ける、という本質は失ってはいけないと思ってるんです。でも100万人にしか届かなかったものが、もしかしたら1千万人に届けられるチャンスが、いま来てることは確かで。そのせめぎ合いですね。

竹中 : たくさんの人に聴いてもらいたいっていう意味でサブスクリプションは意味があると思うんですが、ただ気になるのが、いまの報道のされ方が「欧米でビッグなビジネスになっていて、音楽業界が2000年代以降の縮小傾向から一転してV字回復してる」みたいなところばかり語られてる気がするんです。

鈴木 : そうですね。

竹中 : アーティストにとって、あるいはお客さんにとってなにが良いのか、語られてない気がするんです。

鈴木 : ほんとそうですね。音楽業界がV字回復してるよって言われても、お客さんにとってみれば「あっそう」でしかない。そうじゃなくて、いままでCDプレイヤーがなければ聴けなかったものが、スマホを1台持っているだけで音楽に触れられる接点があるということは、どれだけ豊かなものを享受できているのか、そういうことをもっと語った方がいい。ほとんどの人はふだん音楽と接点のない生活をしている。でも「いま貴方はすごく素敵なデバイスを持っているよ、西城秀樹さんが亡くなって、彼の曲を聴きたいと思ったらいつでも聴けるんだぜ、そういういい時代なんだよ」ってことを、もっと伝えた方がいいと思いますね。

〈unBORDE〉所属の新星SSW、あいみょんの最新作「満月の夜なら」
〈unBORDE〉所属の新星SSW、あいみょんの最新作「満月の夜なら」

竹中 : 昔タワーレコードで働いてたとき、「日本人の心の中にある音楽好きの部分を、音楽OSとしてもう1回インストールし直そう」みたいなキャッチフレーズを使ったことがあるんですけど……。

鈴木 : ああ、18歳ぐらいで(音楽を聴く習慣が)止まっちゃうから……。

竹中 : そうそう。それで(感性が)固くなっちゃうんですよ。柔らかいまま死ぬまでいろんな音楽に触れるということが、日本だとちょっと難しくなってる。たとえば神社で鐘を鳴らしたり柏手を叩くのって、神様に注目してもらいたくて鳴らすわけじゃないですか。それは音楽じゃなくて「音」だけど、それが欧米だとゴスペルだったりする。神様に聴いてもらいたいときに補助的に使う。

鈴木 : レクイエムみたいなのもそうですね。

竹中 : そうですね。それは個人の死者の魂を癒やすために使う音楽。でも日本だとお経ぐらいしかないんです。そもそも日本人って音楽を軽視してるんじゃないの、と(笑)。もちろん個人によって違うんですけど。

鈴木 : 僕もそう思います。それはある種の諦めでもあるんだけど、でもそんな風土の中でも、こんなに素晴らしいスマートフォンという文明の利器が出てきた。同じように試聴機代わりとか音楽との接点という意味で僕が評価してたのがYouTubeなんですね。

竹中 : はいはい。

鈴木 : YouTube是非論っていうのが昔からずっとあって、各メーカーごとにいろんなポリシーがある。これもartst by artistなんだけど、接点としてYouTubeで触れてくれることで、そのアーティストの良さが伝えられれば、その人のアルバム購入への導線になりうる…… と、5年ぐらい前は言ってたんだけど、いままるっきり同じ状況かといえばそうではないですけど。ただYouTubeがなければ、日本人の中からもっと音楽が消えてっちゃったかもしれない。

竹中 : かもしれないですね

鈴木 : あと、海外にも飛び火させることができるってメリットがある。せっかくYouTubeに乗っけてるのに日本国内でしか見せないという様な事例は、ほんとに意味がないと思うんですよね(笑)。

海外でも絶大な人気を誇るきゃりーぱみゅぱみゅ
海外でも絶大な人気を誇るきゃりーぱみゅぱみゅ

竹中 : (笑)。スマホは全世界ほぼ同じものを使ってるわけじゃないですか。ただ日本では電波が有限なんで、音楽だけ聴きたい人にはYouTubeだとパケ死するかも、みたいな問題があります。そこがもうひと革命が必要な部分かもしれないですね。それも5Gとか次世代通信になれば、音楽と映像のパケット料的な差は考えなくても済むようになるかもしれない。

鈴木 : なるほどねえ。

竹中 : ただし日本ではスマホの通信量の超過した1GB分を1,000円とかで買うじゃないですか。でもその原価はものすごく安いわけです。キャリアがそのボロすぎる商売を適正に改めない限りは、5Gになってもその次になっても、消費者からお金を搾り取るみたいな構造は変わらない。コンテンツを作る方々は、音楽を自由に聴いてもらいたい、映像を自由に見てもらいたいという思いだけど、そういう経済の部分で逆行するような力が常に働き続けると思います。そこが悔しい部分ではありますよね。事情はわかるんですよ。会社は儲けた方がいいわけでね。さっき話に出たように、欧米の音楽業界が急激に成長しました、と声高に言うから、いろんなレーベルが「じゃあストリーミングをやってみようか」という気になる。門を外からこじ開けられるみたいなことが起こっている。だから経済は大事だとは思うんです。でもあんまりフェアじゃない感じがしますね。

鈴木 : 通話料もとられて、データ通信量もとられるという(笑)。

竹中 : いろんなところでお金を発生させるのは商業行為としては普通だと思いますけど、でもやっぱり高いですねえ。いまはひとり1万円ぐらい使ってる人が多いじゃないですか。でも電気代は家族全員で普通1万円台じゃないですか。そのへんまで落ちれば、あまり意識しないで済む気がします。

鈴木 : うちの子供ってまだ2歳半なんですけど、もう普通にYouTube見てますからね。アイコン選んでパーっとめくって見てる。これでおとなしくさせるしかないときがあって、カミさんがパケ死するんです(笑)。せっかく音楽や映像を豊かに楽しめる環境が整いつつあるのに、そういう別のストレスもある。

竹中 : ありますね。あと、コンテンツのプラットフォームが消えるかもしれないという不安もある。具体的にはYouTubeが100年後もあるかどうか、ということも不安材料のひとつになると思います。YouTubeが潰れたとしても、(代わりになるようなサービスが)なにかあるだろうとは思うんですけど、けどそのときにCDやデータとして自分の手元にあれば、自分の責任で管理できるみたいな感覚は、僕らみたいな昭和世代の人間には確固たるものとしてまだ残ってるんじゃないかなと思います。

鈴木 : 音楽に限らずそうですね。いろんなものがすべてクラウドにあがってるけど、それがすべて吹っ飛んだときにどうするんだってことはありますよね。

この記事の筆者
小野島 大

 主に音楽関係の文筆業をやっています。オーディオ、映画方面も少し。 https://www.facebook.com/dai.onojima

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