国境もジャンルも飛び越えた新しい旅──シタール弾き語りのSSW、minakumariが新アルバムをリリース

minakumari(Photo by Kohei Murayama)

日本語、ヒンディー語、英語を用いた歌詞とスウィート・ボイスを、幻想的なシタールの音色に乗せて奏でるminakumari(ミナクマリ)が、2018年4月16日に新アルバム『shanti, shanti, shanti!』をリリースした。シタール弾き語りという、稀有なスタイルのアーティストとして知られる彼女の5枚目のフル・アルバムとなる今作は、前作に引き続き清水ひろたか(コーネリアス、オノヨーコバンド)をプロデュースに迎え制作された。国境もジャンルも飛び越えた新しい旅へと誘われる今作リリースにあたり、minakumariへのインタヴューを掲載。

待望の5thアルバム発売!!


minakumari / shanti, shanti, shanti!

【価格】
2,600円(税込)

【収録曲】
1. 蜂蜜
2. 幸せの水
3. Dream Surfer
4. Quiet
5. Soul Maker
6. アーカシュ
7. サンスクリット
8. 黒猫
9.MINAKAR

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※OTOTOYでの配信は6月上旬からになります。ご了承下さいませ。


“shanti, shanti, shanti!” トレーラー

INTERVIEW : minakumari

minakumariはかなり特異な立ち位置にいるミュージシャンだ。シタール奏者だがシンガー・ソングライター、という時点であまり類例がないし、音楽性もフォークトロニカからインド音楽までを横断する奔放なもの。インドで古典音楽の修行をした経験を持つが、その作品は古典にどっぷりではまったくなく、コンテンポラリーでモダンな響きを帯びている。また、CHARA、新居昭乃、RIP SLYME、ゴンザレス三上(GONTITI)のライヴやレコーディングに参加する一方で、ジェームス・イハ、ハナレグミ、七尾旅人、mabanua、ASA-CHANG、U-zhaanとのセッションに参加するなど、プレイヤーとしての柔軟性としなやかさも持ち合わせている。清水ひろたかをプロデュサーに迎えた5thアルバム『shant,shanti,shanti!』は彼女が敬愛するフアナ・モリーナにも通じるカラフルな音響が特徴。コケティッシュなヴォーカルも魅力的で、聴く度に新たな発見がある秀作に仕上がっている。2012年にはフランスでコンサート・ツアーを行うなど、活動の幅を着実に広げている彼女に話を聞いた。

インタヴュー&文 : 土佐有明
写真 : 大橋祐希、Kohei Murayama

インド音楽って宇宙と一体になる音楽って言われていて、その世界を感じるから感動して涙が出るのかな

──minakumariさんはアジア・アフリカ語学院のヒンディー語学科を卒業されてますが、なぜヒンディー語を勉強しようと思ったんですか?

私、(自由な校風で知られる)自由の森学園を卒業してるんです。うちの学校は他の人と違ったことをしたいっていう生徒が多いんですけど、私もそうでした。卒業後、アジア・アフリカ語学院に見学に行ったら、ヒンディー語の先生に捕まっちゃって。「インド、これから来るよ」って言われて、そのままヒンディー語科に入学しました(笑)。

──なにかきっかけになるできごとはあったんですか?

高校生の時にピースボートに乗ったんです。学校を休んで行かせてもらったんですけど、そのときに訪れた東南アジアで常識を全部覆されて。当たり前のことが当たり前じゃないというか、自分が当然だろうと思ったことが世界的に見たら当然じゃなかったんです。当時16歳だったからびっくりすることばかりでした。ベトちゃんドクちゃんにも会ってきたし、カンボジアがまだ当時地雷が埋まっていたことにも驚いたし、貴重な体験をしました。田植えとか、ボランティアみたいなこともできました。いまでもキラキラの思い出です。私は人に「あんまり空気が読めないタイプ」だと言われるのですが、特にインドは空気を読む必要がないし、いま思えばそこはすごいラクでした。辛いこともあったけどやっぱり毎日楽しかったなと。大切なインド人の親友もいるし、インド好きです。

Photo by 大橋祐希

──インド音楽に興味はあったんですか?

インドの音大を出た先輩から練習用のシタールをいただいたので、当時ギタリストとしてやっていた「CATCH-UP」というガールズ・バンドのレコーディングでザ・ビートルズみたいにインドの楽器を入れようと思って。でもそのときはうまく弾けなくて、それをきっかけにインド音楽に興味を持って、卒論もインド音楽について書きました。どうにかシタールを弾けるようになりたいと思って先生を探して、加藤貞寿先生に習うようになりました。それで、その先生の師匠のモニラル・ナグ氏が来日したとき、コンサートを観に行きました。とにかくナグ氏のライヴが素晴らしかったんです。宇宙とかインドの歴史とかすべてを背負っているような壮大なものを感じ、弟子入りしたいと思って、加藤先生とナグ氏にお願いしてそこからインドに渡りました。

──なるほど。

そしたら、先生はベンガル人だったのでベンガル語をしゃべる方だったんですね。ヒンディー語は公用語なので通じるのだけれど、できればベンガル語でレッスンを受けた方が良いと聞いたので、むこうでベンガル語の専門学校に1年くらい通いました。U-zhaanがすぐ近所に住んでたので仲良くしてもらいました。当時は古典音楽を勉強していたので、まさか歌を歌いながらシタールを弾くとは思ってなかったんですけど。

──レッスンはどんな風でしたか?

すばらしかったです。レッスンを受けているだけで感動して涙が溢れることが、ときどきありました。インド音楽って宇宙と一体になる音楽って言われていて、その世界を感じるから感動して涙が出るのかなって。もちろん、自分の状態もありますけどね。シリアスになってるときにグッとくるメロディを聴いたら、心が動くし、涙がとまらないこともありますよね。私はたった2年しか住んでいないのですが、U-zhaanをはじめ、長年インドにレッスンに通い続けている日本の方々を本当尊敬します。私の留学は長くはなかったのですが西洋音楽と違うリズムのおもしろさとか、五線譜で表せない音階とか、心から感動するコンサートをみる機会があったりとか、とても勉強になりました。今年もインド行きたいな。

──インドでは紅茶の専門学校に行っていたんですよね。

はい。紅茶の専門学校があるって聞いて、行ってみたらすごくおもしろかったです。日本人初の卒業生です。まず、どうやって紅茶の木を育てるのかっていうところから勉強するんですよ。ダージリンはほとんどオーガニックで作ってるんですけど、そういう栽培方法からはじめて。あと、紅茶って発酵させているんです。なにも発酵させていないものが緑茶、半分発酵させているのがウーロン茶、90パーセント以上発酵させると紅茶になるんですけど、どういう風に発酵させるのかっていう製造過程を勉強して。紅茶のテースティングのトレーニングもしました。1日200杯とか。授業はとっても楽しかったけど、夏場、気温が46度の時でも昼の2時から4時まで毎日停電があって、そうなると扇風機が止まるのでもう暑くて暑くて。

Photo by Kohei Murayama

──minakumariさんは、もともとギターを弾かれていたわけですけど、ギターにはない“シタールならではのおもしろさ”ってどんなところでしょう?

私のシタールは弦が20本あって、1本外して19本の弦を張ってあるんです。で、上に張ってある6本の弦をはじきます。下に張ってある弦は時々しか弾かないんですけど、上の弦を弾いたとき、その音に下の弦の同じ音が共鳴して、ほんのちょっと遅れてピヨーンって音が鳴るんです。弾いたあとから高い音が戻ってくるから、ひとりで演奏してるけれどふたりとか三人で演奏しているような音がします。とても気持ち良い音色です。倍音で眠たくなるし(笑)。

──シンガー・ソングライターでシタールを弾く人が珍しいと思うんですけど、シタール1本でいこうとは思わなかったんですか?

U-zhaanや、MONOの後藤さん、CHARAちゃんが、「曲を作るなら自分で歌ったらいいんじゃない?」って言ってくれたのがきっかけで、本格的にシタールの弾き語りをはじめてみました。いつかシタール1本で古典音楽を表現できる演奏家にもなりたいです。

──新作について、何か事前にテーマとかキーワードはありましたか?

人間ってどうやったら楽しく幸せになれるのかって生きていると思うのです。お金をたくさん手に入れたいと思ったり、名声を手に入れたいと思ったり、健康になりたいと思ったり、人それぞれだと思うのですが、私は音楽で自分自身を幸せにして、聴いてもらった方にも幸せな気分になってもらえたらと思っています。世の中にというよりは地球に何か役に立つことをしたいと思っているときに作ったアルバムなので『shant,shantishanti!』=平和、幸福×3! それがテーマです。

ライヴ・ツアーで何度も一緒にセッション演奏していただいている清水ひろたかさんにプロデュースしてもらうのは、2作目となります。曲はたくさん作ったんですけれど、選んだのは3分の1くらいです。遊びごごろ満載でいろいろなタイプの曲が入ったので全曲楽しんでいただけると思います。私の良いところををぐーっと引き出し、全身全霊で1曲、1曲に魔法をかけてもらって、楽しい作品になりました。


アルバム『shanti, shanti, shanti!』収録曲「幸せの水」

演奏中は海の中を自由に泳いでいるような、優しく水に包まれているかのような不思議な感覚でした

──普段どんな音楽を聴かれるんですか?

フアナ・モリーナが好きです! 中学生の頃はボサノヴァやブルースを聴いてたし、そのあとはオルタナティヴ・ロックですね。エレクトロニカが好きだったこともあるし、ハードコアとかノイズ聴いてたこともあるし。もちろんインド音楽も。ヒップホップとかソウルは通ってないけど、清水さんが好きだからその影響もあります。

──しかし、シタールを弾くけど古典音楽をやっているわけでもないし、音楽的には様々な要素が入り混じっていて、本当に独自の立ち位置ですよね?

U-zhaanにも「よく続けてるね、でもそのまま突き進めば?」って言われたので、「よし!」って思いました(笑)。シタールを弾いて歌ってる方はいらっしゃるみたいなのですが、自分と同じようなスタイルの方は思いつかないですね。

──ライヴではシタール弾き語りなんですよね?

はい。シタール弾き語りです。シタールの音色と声色が似ていると言われる、ハナレグミのたかし先輩にも言われたことがあります。音域が歌と近いからでしょうか。いつも共に奏でているから似てくるのでしょうか。シタールってコード感が出しにくい楽器なのでコード感を出したい曲の時はギターを弾いてます。

──スタジオ・ミュージシャン的な仕事もされてますが、そういう場では何を求められていると思いますか?

シタールが入ると一気にインドの雰囲気が出るのでそのイメージに沿って演奏できたらと思ってます。「この曲、なにか飛び道具的に民族楽器の音色が欲しかったのかしら」というときもありました。

──何か印象に残っているスタジオ仕事はありますか?

ゴンチチのゴンザレス三上さんのアルバムで、録音がはじまってるのか、はじまってないのか、わからない状態でセッションが始まってて、それが全て録音されて、そのまま使っていただいたことがあります。ゴンさんがひらめいてギターを弾き出してそれについていって、そのうちの1曲が使われたんです。「お茶と正座」という曲なんですけど、演奏中は海の中を自由に泳いでいるような、優しく水に包まれているかのような不思議な感覚でした。

Photo by 大橋祐希

──次作ではどんなことをやってみたいですか?

カセット録音とかもいいかなって。ヴェスタックスの大きいレコーダーが家にあるから。あとは、ライヴで再現できるようなシンプルな編成で作ってみたいというのもあるし、逆にヨシダダイキチさんのシタール・ターみたいにシタール10人分くらい重ね録りしてみたいというのもあります。

──新作はライヴでやることを前提とせずに作ったんですね。

そうですね。でも、レコ発ライヴはバンド編成でやるので再現したいと思います。これまでのライヴも素晴らしい演奏者に支えられて表現することができました。今作のレコ発ライヴも東京 大森の圓能寺で映像と一緒に開催予定です。Tomoya Kishimoto君の全方位プロジェクションマッピングを使って。映像の素材自体は風景とか植物とか自然のものが多いです。観た人を別世界へ連れて行ってくれるのでぜひ皆さんに体感してもらいたいです。

minakumariによる『shanti, shanti, shanti!』セルフ・ライナーノーツ

ライヴではインドの古典楽器シタールの弾き語りというスタイルですが、アルバムでは様々な楽器が入り、シタールだけどシタールでないような不思議な音使いの曲もあり、楽しんさてんこ盛りになっています。

前作『REHENA』に引き続き、清水ひろたかさんのプロデュースで作った5作目、遊び心が満載すぎて、いままでで最もバラエティーに富んだ仕上りになりました。ハイクオリティCDで作った立体的な音で聴くたびに新しい発見があると思います。

1曲目「蜂蜜」はリズムもギターもシタールもマジックがかかったメランコリズムな1曲で、とっても気に入っています。2曲目は、「人間の体の半分以上が水で出来ています」…… そんなことを思って作った曲。ロシアのアナスタシアで出てくる水の風景も浮かぶような“幸せの水”。雪解けの中で撮影したmusic videoもぜひ見てください。ドラマティックな4曲目「Quiet」は、自分がこの世から去る時、こんな幸せな気持ちに満たされて眠りにつけたらいいなと思ってかきました。5曲目"Soul Maker"ではエレクトロ・ファンクネスで聴いた瞬間、笑ってもらいたい!

また、7曲目「サンスクリット」は、アイスランドのpascal pinonも思わせるフォーキーなサウンド、さらにノイズギターがおもしろいんです。8曲目「黒猫」では国境を縦横無尽に、アルゼンチン、タンゴとシタール。こちらのmusic video(アニメーション)、とっても可愛いので見て欲しいです。さらに、インドの音階(サレガマパダニサ)に合わせて歌う9曲目"MINAKAR"は、春爛漫、ウキウキする仕上がりに。


minakumari/黒猫

夢の中を歩いているような無限に広がる風景、アルバム『shant,shantishanti!』は、“平和”、“幸せ”の歌。ジャケットでは私がチャイカップ(煮出しミルクティー)の上に片足で立ってポーズしています。また、歌詞カードの絵は4曲目「Quiet」をテーマにパステルで描きました。通常の録音に比べてより、たっぷり時間をかけて制作したので、何度でも聴いて新たな世界を旅していただけたらうれしいです。

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LIVE SCHEDULE

ミナクマリ Live2018年5月8日(火)@東京 二子玉川・蔦屋家電
2018年6月3日(日)@東京 板橋・慈光寺 LIVE

「シャンティ シャンティ シャンティ!」ミナクマリ×清水ひろたか Live Tour
2018年6月16日(土)@新潟 新発田・金升酒造
2018年6月17日(日)@山形・称念寺
2018年6月19日(火)@秋田 横手・CAMOSIBA
2018年6月20日(水)@青森・cafe0371
2018年6月21日(木)@青森 野辺地町・柴崎牧場拓心館
2018年6月22日(金)@秋田・エレファントトーク
2018年6月23日(土)@山形 鶴岡・orphans
2018年6月24日(日)@宮城 名取・熊野那智神社
2018年6月26日(火)@米沢・スタジオ八百萬
2018年6月27日(水)@宇都宮・storehouse
2018年6月29日(金)@東京 目黒・蟠龍寺
2018年7月01日(日)@山梨 北杜・Night Market
2018年9月1日(土)山形 白鷹町・あゆーむ

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PROFILE

minakumari

シンガー・ソングライター&シタール奏者。岡山県倉敷市生まれ。ガールズ・バンド「CATCH-UP」のソングライター&ギタリストとしてデビュー。3枚のアルバムをリリースする。アジア・アフリカ語学院ヒンディー語科卒業。インドに留学し、インドディプラスティー(紅茶)専門学校卒業。インドのコルカタにてシタール奏者、モニラル・ナグ氏に師事。

帰国後、CHARA、新居昭乃、リップスライム、ゴンザレス三上(GONTITI)のライブやレコーディングに参加。また、ジェームス・イハ、ハナレグミ、七尾旅人、mabanua、ASA-CHANG、U-zhaanとのセッションに参加するなど、数多くの場で活躍している。2012年、フランスでコンサート・ツアーを開催。NHK 朝の連続ドラマ小説『まれ』の劇中で、2ndアルバム『Rang』中の楽曲「I am here」が起用される。

2017年、4thアルバム『REHENA』(LP)アナログ盤がリリース。2018年4月、5thアルバム『shanti, shanti, shanti!』が発売。幻想的なシタールの音色に日本語 / ヒンディー語 / 英語の歌詞をスウィート・ヴォイスに乗せて奏でる、新しくもどこか懐かしい童話のような歌世界。

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この記事の筆者
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