2018/04/12 13:00

【REVIEW】京都発の大注目バンド“ベランダ”──ポップの旗手としての資質を裏付ける、初の全国流通盤

京都のオルタナティヴ・バンド、ベランダが待望の全国流通盤をリリース。昨年1月にリリースしたミニ・アルバム 『Any Luck to You』 は、 ライブ会場と一部店舗のみでの販売にもかかわらず半年で約900枚を売り上げたほか、くるり岸田やASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文など多くのアーティストからも高い評価を得た。そんな彼らが、親しみやすいメロディの中に、どこか懐かしい空気感を漂わせるその世界観を維持しつつも、さらに表現の幅を広げた2ndミニ・アルバム『Anywhere You Like』をリリースした。彼らにとって初の全国流通盤となる今作をレヴューとともにお届けしよう。リード曲となる「エニウェア」を期間限定で無料配信するので、まずは彼らの世界観を体感してみてはいかがだろうか。

リード曲を期間限定フリー配信!
ベランダ / エニウェア

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信期間】
2018年4月18日23:59まで

※会員登録なしでもダウンロードしていただけるようになりました。詳しくは下記から
https://ototoy.jp/news/88118
初の全国流通盤を配信中
ベランダ / Anywhere You Like

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム価格 2,000円(税込)

【収録曲】
1. 2017
2. その目で
3. エニウェア
4. IZUMIYA
5. しあわせバタ〜
6. 水辺
7. (ever)lightgreen
8. ハイウェイオアシス

ベランダ / エニウェア
ベランダ / エニウェア

【REVIEW】ベランダ 『Anywhere You Like』

誰もを虜にするようなキャッチーなメロディで多くのリスナーを魅了してきた男女混成バンド、ベランダ。彼らの楽曲を聴いていると、いつも何気ない日常の素晴らしさを考えたくなる。シンプルだがすぐれた情景描写が光る言葉選びに、時によって形を変えるアンサンブル。それはどこか初期のくるりを彷彿とさせる。王道ともいえるギター・サウンドは胸をくすぐり、柔らかな日本語ロックの魅力を再確認させてくれる。

前作『Any Luck to You』でそのセンスの良さとメロディメイカーとしての実力を知らしめたベランダ。邦訳すると“何かいいことをあなたに”となるタイトルにも表れているように、歌心溢れる音楽とピュアな世界観はどこか懐かしいような安心感を私たちにもたらしてくれる。純朴で優しさに溢れたことばのひとつひとつが、そっと胸の奥に残り続けるのだ。

そのヒット後にリリースされた今回のアルバム。素朴な歌の良さを武器にしていた彼らは、今作でさらに表現の幅を広げた。美しいメロディラインはより洗練され、演奏はメロウにも激しくも変化する。一貫してキャッチーさがあるのに、どこかフォーキーで、ずっと聴いていたくなるような引力を持っている。絶妙なバランスともいうべきそれは「良い音楽」を突き詰め続ける彼らだからこそ生み出せるものであろう。

小さな悲しみを描いても、愛にあふれた世界を描いても、どこかのどかで、清涼感がある。ベランダのすごいところはそこだと思う。近年は言葉遊びのような歌詞、言葉遊びのようなバンド名も多いが、そこであえて真正面からことばについて考え、歌を届け続けている。その明確な意思と、織りなされたハーモニーが、聴き手の日常にそっと溶け込む。その手腕は見事としか言いようがない。特にそれが際立っているのはM6「水辺」。〈ただ 今日じゃなきゃダメな気がした〉という最後の言葉が、なぜか頭に残り続けるのだ。

ベランダ / 早い話
ベランダ / 早い話

思えばはじめて「早い話」を聴いたときもそうだった。刺激的でもない、激しく共感できる鋭い言葉でもない。それなのに〈たまには慣れないことしよう〉と歌いかけるフレーズが、なんとなく頭に引っかかり続けていた。「その目で」のような爽やかなギター・サウンドを響かせたと思いきや、「しあわせバタ〜」のような遊び心あふれる曲もある。ただ共通しているのは、無意識に言葉に惹きつけられてしまうこと。こんなに日本語は美しかっただろうか。普段、こんなに言葉に着目して聴いていただろうか。そんな風にまで思わせてくれるのは、やはりベランダの持つ圧倒的なポップ・センスによるものだと思う。

簡素だけど緻密に選り抜かれた歌詞の魅力、穏やかながら芯のある王道のギター・サウンド。もともとポップの旗手としての資質を備えていた彼らだったが、いよいよそれを裏付けるようなアルバムを出されてしまった。今後がますます楽しみである。(Text by 阿部文香)

『Anywhere You Like』のご購入はこちらから

レーベル YUMBE RECORDS  発売日 2018/04/11

01.

※ 曲番をクリックすると試聴できます。

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム価格 2,000円(税込)
【配信ページ】
https://ototoy.jp/_/default/p/101029

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LIVE SCHEDULE

『Anywhere You Like』 Release Tour “Anywhere We Like”
2018年6月3日(日) @京都 Livehouse nano
時間 : OPEN 18:30/START 19:00

2018年7月1日(日) @東京 下北沢BASEMENT BAR
時間 : OPEN 18:00/START 18:30

2018年7月7日(土) @愛知 名古屋Club ROCK'N'ROLL
時間 : OPEN 18:00/START 18:30

2018年7月14日(土) @大阪 十三ファンダンゴ
時間 : OPEN 18:00/START 18:30

>>MORE LIVE INFORMATION

PROFILE

ベランダ

大学の軽音サークルで出会った髙島颯心(Vo / Gt)と金沢健央(Dr / Cho)が前身バンド「ほいほい」を解散後、2014年4月に「ベランダ」を結成。1年間、ギターやベースにサポート・メンバーを迎えて活動し、2015年7月、中野鈴子(Ba / Cho)の加入により現在の体制に。サポート・メンバーに田澤守(Gt)を迎え、活動中。

【公式HPはこちら】
https://verandah-band.jp
【公式ツイッターはこちら
https://twitter.com/verandah_

この記事の筆者
阿部 文香

1996年生まれの大学生。駒澤 零(こまさわ れん)って名前で絵も描いてます。Twitterは@ren_ren0824。

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