2018/04/05 15:00

【座談会】7人になったでんぱ組.incの誕生、そして新曲を上野三樹 × 柴 那典 × 宗像明将が語る

でんぱ組.inc(左から、成瀬瑛美、相沢梨紗、藤咲彩音、古川未鈴、鹿目凛、夢眠ねむ、根本凪)

でんぱ組.incに鹿目凛、根本凪が加入し、7人組となって初のシングル『おやすみポラリスさよならパラレルワールド/ギラメタスでんぱスターズ』がリリースされた。「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」は作詞が漫画家の浅野いにお、作編曲はH ZETT Mが担当した新感覚の楽曲となっている。「ギラメタスでんぱスターズ」はヒャダインが作詞、浅野尚志作編曲による"これぞ最新のでんぱ組.inc!"と言わしめるようなナンバー。

そして、同日に昨年12月30日に開催されたワンマン・ライヴの映像作品『ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!』もリリース(OTOTOYではこの模様をレポート掲載)。

今回は大阪城ワンマンの模様を各媒体でレポートされた、上野三樹氏、柴 那典氏、宗像明将氏の3名をお招きして、大阪城ワンマンの感想から新曲に至るまで座談会形式で語っていただいた。

新体制後初シングル!

でんぱ組.inc / おやすみポラリスさよならパラレルワールド/ギラメタスでんぱスターズ 【配信形態】
(24bit/48kHz) WAV / ALAC / FLAC / AAC

【配信価格】(税込)
(左)単曲 324円 / まとめ価格 864円

【Track List】
1.おやすみポラリスさよならパラレルワールド
2.ギラメタスでんぱスターズ
3.Ψ発見伝!

【世界初!?】でんぱ組.inc「ギラメタスでんぱスターズ」MV Full
【世界初!?】でんぱ組.inc「ギラメタスでんぱスターズ」MV Full
12.30大阪城ホールのライヴもBlu-ray & DVDで同日リリース!

「ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」

左〈Blu-ray初回限定盤〉TFXQ-78158 ¥7,000+税  右〈Blu-ray通常盤〉TFXQ-78159 ¥5,000+税
左〈DVD初回限定盤〉TFBQ-18200 ¥6,000+税  右〈DVD通常盤〉TFBQ-18201 ¥4,000+税
【収録楽曲】
01. Future Diver / 02. バリ3共和国 / 03. VANDALISM / 04. ちゅるりちゅるりら / 05. まもなく、でんぱ組.incが離陸致します♡ / 06. くちづけキボンヌ / 07. でんぱーりーナイト / 08. サクラあっぱれーしょん / 09. きっと、きっとね。 / 10. 最Ψ最好調! / 11. でんぱれーどJAPAN / 12. Dear☆Stageへようこそ♡ / 13. でんでんぱっしょん / 14. NEO JAPONISM / 15. 破!to the Future / 16. ORANGE RIUM / 17. ギラメタスでんぱスターズ / 18. Future Diver (2017.12.30 at 大阪城ホール)

初回限定盤特典
・豪華BOX仕様、100Pフォトブックレット (大阪城ホール)、48Pフォトブックレット (2017年9月ロシア・モスクワで撮影)、メンバーによる副音声コメンタリー

上野三樹 × 柴 那典 × 宗像明将 座談会

2017年大晦日前日の12月30日。大阪城ホールのワンマン・ライヴ「JOYSOUND presents『ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!』」にて、でんぱ組.incに新メンバー2人が加わり、7人組になりました。5人から7人への誕生を会場で見届け、その模様をライヴ・レポートとして発信した3名の座談会から放たれた言葉はどれも、でんぱ組.incへの「愛」で溢れていました。

構成 : 田尻菜穂子
編集補助 : 大村桃子

入った瞬間、スペースシャトルが「バーン! 」って

──4月4日に大阪城ホールのライヴの映像とニュー・シングルがリリースされますが、12月30日に現地に行かれて、後日各媒体でライヴ・レポートを執筆されたお3方にお話していただけたらと思います。

柴 : はい。

宗像 : 大阪城はやっぱり何がいちばんよかったって、会場着いて「バッ! 」っとファンが1万人いて、高揚感があったんですよね。

上野 : そうですね。

宗像 : そこで「またでんぱやるんだな」って。受付始まっても関係者受付に全くたどり着けない。

柴 : たどり着けなかった!

宗像 : それでたどり着いたらスタッフさんが宇宙服でいると。

上野 : あはは(笑)

宗像 : 開場時間が押してて、やっと入ったと思ったら巨大なスペースシャトルがステージ上にあるという。あの流れからしてテンション上がりました。

柴 : 僕は大阪城ホール自体あまり行くことなかったんですけど、あの会場周辺がでんぱ組.incを楽しみに来たんだっていう人たちの熱気がすでにあって。

上野 : そうですね。ファンの方同志で記念撮影とかしてましたもんね。

柴 : で、入った瞬間、スペースシャトルが「バーン! 」ってあって、「これか! 」みたいな(笑)

一同 : (笑)

宗像 : スペースシャトルをセッティングしてたらそりゃ開場も押すよなって(笑)

柴 : あのステージセットはかなりインパクトありましたね。

宗像 : 最初、シンセカイセンの子とChu Oh!Dollyの子たちがNASAみたいな打ち上げの画面を操作していた場面も演出としてもすごい凝ってて。あの日は構成が見事でしたね。「Future Diver」で打ち上げ失敗して5人で謝罪会見して。そこからもう1回アンコールで「Future Diver」を7人でやって、成功して笑顔で終わって飛び立つ。飛び立った瞬間に幕が降りて来てそこに映像が出るっていう。

上野 : 「飛び立ってないの? 」って(笑) 結構びっくりしました。

宗像 : 力技で来たなと思って。で、最後JAXAの文字でみんなザワつくっていう(笑)。

柴 : ザワついた。協力得てたんだ! って。コンセプトがすごいしっかりしてたっていうのがライヴのポイントですよね。宇宙っていう。

宗像 : 12月30日の前から初期の宇宙のコンセプトに立ち返ってるってツイートをしてて。大阪城ホールの最寄駅に着いた瞬間に、「これはPファンクだ!」っていう怪電波を受信したんですよ。

上野 : 大丈夫?(笑)

宗像 : スペースシャトルを見る前から電波を受信してて。頭の中では完全にPファンクのライヴにしか見えなかったです。

柴 : OTOTOYのライヴレポで書いてましたね。

宗像 : 私です。

柴 : そうですよね。あれで「Pファンクだ」って書いてあって、ほんとその通りだって思って。「アフロ・フューチャリズムが秋葉原経由で蘇ったのがでんぱ組.incである」という妄想が、JAXAの協力で形になった。

上野 : 実現した。

宗像 : あそこまで宇宙宇宙してると、完全にそうしか見えないですよね。Pファンクオールスターズも入れ替わりがあるんで、新体制になったこともポジティヴに肯定するっていうニュアンスもちょっとあったんですね。

上野 : ライヴもすごかったんですけど、映像を観て改めて素晴らしいパフォーマンスだなと思って。表情の1秒1秒まで完璧っていう。それをちゃんと映像で捉えられてるのがすごいなって思って観てました。

柴 : 確かにライヴだと表情まではわからない。

上野 : そうなんですよね。

宗像 : 「Dear☆Stageへようこそ♡」では、プレス席からはぺろりんとねもちゃんの顔見えないじゃないですか。それが映像作品で2人がずっとキョロキョロしてる顔が何分か続いていたとわかったんです。

上野 : 「ごめんそこ見てなかった! 」って。

宗像 : そうそう。

柴 : 確かに。

最初のMCから泣いてるっていうのが全てだったかな

宗像 : あと、あんまり言及されないけど、でんぱ組.incって歌上手いなと思いました、本当に。

上野 : 上手いですよね。

宗像 : それは幕張メッセの時も思ったんですけど。ヴォーカルが安定してるグループなんですよ。

上野 : ちゃんと熱気が伝わってきますよね。ねむきゅんが泣きながら歌ってるところなんかも、湿気が入ってる感じで。

柴 : うん。終わった後にみりんちゃんに「パフォーマンスの強度が高いと感じたんだけど、鍛えてた?」って聞いたんですけど、「結構大変でした。色々やりました」って。やっぱり5人になって、彼女たち自身もマイナスを感じさせたら負けだっていうのがあったんじゃないかなって思います。だから、ダンスと歌に関しては相当フィジカルの強度がすごいなと思いました。

宗像 : その辺のリハの様子って「でんぱの神神」で放映されてたじゃないですか。すごいスタジオリハやってて。繰り返し繰り返しやってどんどん、ぺろりんとねもちゃんが追い込まれて行くんですよね。あれだけのスタジオリハやって、バンドリハもやってこそのでんぱ組.incなんだなって感じがしましたね。

上野 : あと、みりんちゃんの「もう引きこもらないぞ! 」ってMCがよかったですよね(笑) 引きこもるか、あのステージかっていう。

宗像 : 2択しかない。

上野 : そうそう! 飛距離がすごいなって。

宗像 : ゲームの配信とかは引きこもりの部類に入るのかな?

柴 : うんうん。

上野 : そのギリギリ感がでんぱ組.incだなと思ったし、すごい好きだなと思いました。

宗像 : 「みなさん、お久しぶりです」って言った後に、「私は1年間できなくて悔しかった」ってはっきり言ったのもよかったですね。

柴 : うん。

上野 : 最初のMCから泣いてるっていうのが全てだったかなって感じもしますけどね。

柴 : そうそう。最後に感極まって泣いちゃうライヴはよくあるけど、最初からってなかなかないよね。

上野 : そう!

柴 : むしろ、最後の方はみんなキャッキャしてるっていう。

宗像 : 最初がクライマックスみたいなところありましたよね。

柴 : うん。

上野 : 最初と最後で2つの物語があるライヴなんてそんなにないですよね。最初は再会というか、またステージに立てた喜びで。最後は「7人でやって行きます!」っていう新しい物語で終わっている。

宗像 : かつ、それを最初と最後に「Future Diver」を配することによって、最初は打ち上げ失敗で、最後に打ち上げ成功という対比を見せたんですよね。

柴 : 「Future Diver」の中盤で掛け声が入るじゃないですか。あそこは最初の5人の時も7人ヴァージョンの演奏だったんですよ。 僕、当日は全然気づかなくて。ファンの人が後ほどTwitterに書いてたんですけど、7人ヴァージョンを聴いて「これだったのか! ってなってグッときた」と。それを改めて映像で観たら「たしかに」って思いました。そういう細かいところまで含めて「Future Diver」という曲が節目に置かれている。それは6人になった時も節目だったし。おそらく、何処かのタイミングで7人ヴァージョンの歌い直しが入るんだろうなってところを含めて、最初と最後にやったこの曲が全部象徴している。

宗像 : そうですね。

上野 : あとはピンキー! がみんなの輪の中からピョンって出てくる振り付けが変わってなくて嬉しかった。

曲に対してちゃんと気持ちを寄り添わせて活動してる

宗像 : あとは生演奏がよかったですね。ビックバンドだから「ファンクだな」って感じる部分もあったし。「ギラメタスでんぱスターズ」が新曲で披露された時は生演奏で情報量が多すぎてBPMも速すぎて何が起きてるかよくわかんなかったんですよ。でも生演奏で聴くと、「きっと、きっとね。」が「ああ、これアース・ウィンド・アンド・ファイアーだなと思って。

柴 : ほう。

宗像 : ほんとにそれしか。「GOGO DEMPA」の時は何も思わず聴いてたけど、超アース・ウィンド・アンド・ファイアーだと思って。その後にねむきゅんが「活動できない間これを聴いて励まされた」って話があって、そこでもがちゃんの名前を口にしたのにも意味がありました。でんぱ組.incも感情を剥き出しにしてる感じがしました。最初泣いてたって話も含めて、いろんなものが剥き出しになっててよかったなって。ぺろりんとねもちゃんが出てきて挨拶する時に、ねもちゃんは最初の段階から会場の反応に嗚咽するみたいな状態になってて。

柴 : 生演奏ってところで言うと、「ちゅるりちゅるりら」とか「破! to the Future」のヒャダイン曲って、基本的にあの人打ち込みで作るから、生演奏を前提に作ってないはずで。だからこそでんぱ組.incの曲って圧縮されて情報量が多くて独特だと思っていたけど、普通に生演奏で全部やる。改めて異常なグループになってるなって思います。やれちゃうんだなって。

宗像 : うん。生で聴くと「サクラあっぱれーしょん」とか高速化したPファンクにしか聴こえなかったですね。「最Ψ最好調!」もラテンじゃないですか。でんぱ組.incの音楽のいろんな要素が再現されてるのがすごいと思いました。

柴 : だから、終わった時の何よりの感想も「やっぱ曲がいいと何やってもいいね」って。

上野 : 柴さん確かにライヴ後の第一声で言ってましたね。「曲いいよね」って。

柴 : 基本、アイドルグループって脱退とか加入とかの物語が注目されがちだけど、観終わった後に「いやー、曲と演奏、ダンスもよかった。いいもの観た。」っていう感想が強くて。もちろん物語もあるんだけどそっちだけで持っていってないというか。

上野 : 私それ言われた時に、それもそうなんだけど曲に対してちゃんと気持ちを寄り添わせて活動してるのがでんぱ組.incなんだなと思った。ちゃんと感情移入しながら、例えばねむきゅんが「今このタイミングで「きっと、きっとね。」を歌いたい」って言ったように、色んな曲に自分たちの気持ちを乗せながら活動してるアイドルっていいなと。

柴 : 確かに。

上野 : メンバーがちゃんと音楽に支えられられてるんだなって思いました。作家の方達がそういうものを彼女たちに書いているというのもあると思いますけど。

宗像 : でも「Dear☆Stageへようこそ♡」で新メンバー出てきた時はびっくりしました。(棒読みで)まさか新メンバーが入るとは。

柴 : これ、僕は本当に知らなかった。「なるほどな」って思いました。

宗像 : でもあの日、ぺろりんとねもちゃんが入ってどうなるんだろうって言う不安が現場にあったんですよ。その時に、ステージを観て僕ははっきりこの2人が必然性があるなって。2人が入ることは理屈としてあってるなって。

上野 : 必然性というのは?

宗像 : やっぱりでんぱ組.incってアニメやゲームのオタクのグループであると。あの2人はでんぱっぽいですね、彼女たちのオタク的な資質とかキャラクターですよね。他の5人にはないものがあの2人にはちゃんとある。だからそういうところで2人のキャラクターとか資質がでんぱ組.incにピッタリあってるなと。かつ、ライヴ中に、セトリに「何時までは曲目出さないでください」って注意書きあったじゃないですか。で、過ぎたらとりあえず2人いるとツイートしておいて。「ねもちゃんとぺろりん似てます」っていうツイートをしておいたら、そこから僕のTwitterの通知が止まらなくなって。あの日、Twitter凄かったじゃないですか。そういう人の感情の揺すぶられ方を見てもファンの人の反発とかいろんなものがあったと思うんです。でもそこにこそでんぱ組.incの伸びしろってまだ全然あるなって思って。

自分なりのストーリーを持ってきた2人が入ってきたのは大きい

上野 : 私、「鹿目凛」って名前見た時に、「あ、知ってる」と思って。グラビアアイドルの子だと思ってTwitterフォローしてたんですよ。アイドルの子だと思わなかったし、後にでんぱ組.incに入るなんて思わなかったからびっくりしましたね。だから、グラビア要員としても期待できると言うか。

宗像 : ねもちゃんもグラビアをガンガンやってるんで。あらたな要素が入ったのはすごいよかったと思うんですよね。

柴 : でも、この色選ぶんだ、みたいな(笑)

宗像 : 緑と薄い緑じゃないっていうMCありましたけど。

柴 : まあ、色は置いておいて、もともとでんぱ組.incに入る親和性があったし、伸びしろってところはその通りだなと思います。ただ、あえてフラットな目で見ると、今いる5人と新加入の2人とパフォーマンス能力の差があった。

宗像 : 間違いなく差はありますよね。

柴 : それは当然だと思うんですけど。これだけでんぱ組.incの歌とか演出が高度なものになってるし、場数踏んできた5人と、入っていきなり1万人の前に立つ2人がいきなり同じことができる訳がないんで。それでも、ただ「頑張ります」だけじゃなくて自分なりのストーリーを持ってきた2人が入ってきたのは大きいなって思いました。

宗像 : あの2人のキーポイントってでんぱ組.incに憧れてアイドルになった2人がついにでんぱ組.incになったと。そこの物語ができてるのはよかったですね。

上野 : あの2人は既にステージ・マナーがあるというか。玄人さんだなって感心しました。私は急に新メンバーとして加入してステージに立っている彼女たちの姿を見て、自分がもしこの立場だったらどうだろうなんて考え始めちゃって。リボンが絡まる悪夢を毎晩見るんだろうなとか(笑)。

柴 : たしかに。

宗像 : 普通、デビュー戦で相手が1万人ってなかなかないですよ。「Future Diver」の振り付けで2人が百合みたいにキスしそうになるシーンがあって。その後にゃんこスターを踊るんですよね。一瞬の意味の分からないシーンをひたすらに練習してるのが「でんぱの神神」で流れてて。「ここ難しい」って言ってひたすらに練習してるんです。それをやりながらでんぱ組.incに入るっていうのもよかったし。あとは「でんぱの神神」の時にりさちーが言ってたのがすごい印象に残ってる言葉があって。「でんでんぱっしょん」 って12月で3回やってるんですよね。5人になってからやって、1回1回自分たちが完全燃焼して全部出し切っちゃってる感じがすると。だから新しいメンバー2人が何か新しいものを持ち込んでくれたらいいなって趣旨の発言をしてるんですね。りさちーが出し切ってる感もわかってたし、新しい2人が入ってくることによって、新しい文脈が広がったなと思って。でんぱ組.incにとってもすごいいいんじゃないかなって思いました。

上野 : アンコールで会場いっぱいのオレンジリウムを見たときの2人の感動した表情って、きっと他のメンバーも初心に帰れるものだと思うし。それは客席にいるファンも同じだと思うんですね。なんか、育児みたいな感覚というか。

宗像 : ああ。

上野 : 子供が初めて体験することを間近で見ることによって、自分もまた追体験するじゃないですけど、そういう新鮮さを持ち込んでくれるのかなって感じがしました。

宗像 : 現場では気づかなかったけど、ねもちゃんが歌い終わった時にそばにいた2人が「よく歌ったね」って感じのシーンもあって、いいなって。

上野 : ああいうの、めちゃくちゃ新鮮ですよね。

宗像 : 新鮮だし、やっぱりでんぱ組.incって王者なんですよ。でんぱは格が違う。でもりさちーの発言に照らし合わせると、1回1回で5人なりに出し切っちゃってたと。

柴 : うんうん。

宗像 : そこを考えると5人より今の2人が入った方が絶対的によかったんだろうなって。「歌って描けるポンコツカワウソ」とかが入って、すごいパンチラインだなって思いましたけど。

上野 : ほんとですよ。でもねもちゃん、歌上手いですね。

宗像 : できる子たちが入ってきてますね。これから先輩たちの背中を見てどんどん伸びるだろうし。

上野 : ぺろりんの不安そうな歌声もすごい好きだなって思ったんですけど。

宗像 : いや、ちょっと。緊張してたのかもしれないですね。

上野 : でんぱ組.incってそれぞれの歌声が個性としてはっきりしてるのがいいと思うので、そういう意味でもねもちゃんとぺろりんはちゃんと自分の声を持ってる人たちだなと思いました。

宗像 : 12月30日も出てきたタイミングが「Dear☆Stageへようこそ♡」ですごいよかったです。やっぱり秋葉原ディアステージを象徴する曲だし。「Dear☆Stageへようこそ♡」っていうのがダブルミーニングになってるっていう。

柴 : うんうん。

上野 : でも、あの演出はやられましたね。その前からメンバー以外の女の子たちもステージにいたじゃないですか。だから2人が入っても「そういうものなのかな? これは演出かな」って思いきや、「やられた」って感じがしました。

宗像 : ああそうか。Chu Oh!Dollyとシンセカイカンがいたからあんまり目立たないみたいな?

上野 : そうですね。今までもダンサーとして入ってるパターンもあったんで。

宗像 : うんうん。そうですね。新メンバー入りましたって2人が現れた瞬間に、お客さんもうちょっとリアクションしてもよかったんじゃないかなって思いましたけどね。

上野 : いや、わかんなかったですよ!

柴 : あれはね、結構「え、なんだなんだ? 」みたいな。

上野 : 曲が終わって初めてザワってする感じ(笑) 「今のなんだった? 」みたいな。

柴 : 多分ザワッとしたのはね、「でんでんぱっしょん」の入りの口上で、新メンバーもいるし、仲間だもんって。あれはえいちゃんが言ったのかな?

宗像 : そうですね。えいたそが言いました。

凄まじい新曲(笑)

柴 : その時に「あ、そうかやっぱり本当か」みたいな。「でんでんぱっしょん」の入りもそうだし、今いったように「Dear☆Stageへようこそ♡」もそうだし「ORANGE RIUM」も、曲にちゃんと役割が与えられてるのはでんぱ組.incを観てていつも思うことですね。こういう風に使うとこの曲が映えるみたいなのが全部にあるし。「ギラメタスでんぱスターズ」も大阪城ホールが初披露でしたね。

でんぱ組.inc「ギラメタスでんぱスターズ」LIVE Movie(2017.12.30 at 大阪城ホール)
でんぱ組.inc「ギラメタスでんぱスターズ」LIVE Movie(2017.12.30 at 大阪城ホール)

宗像 : 凄まじい新曲ですよね。

上野 : 凄まじい新曲(笑)

宗像 : 凄まじい新曲ですよ。ヒャダインさんが、新曲の歌詞をその日のうちにメンバーとかスタッフさんがTwitterにあげてるのって僕は初めて見ました。

柴 : 現場では誰が作ったかもわからないし、ぶっちゃけ何を歌ってるかもわからない。とにかくでんぱっぽい圧縮度の高い曲が来たと思って。でも後々歌詞をちゃんと見ると、これは本当に再スタートの曲なんだって。

宗像 : そうですね。嵐のような新曲でしたね。

柴 : 嵐のように去って行ったな、確かに。クレジット見た後に思ったのは、ヒャダインさんが作詞で、浅野尚志さんが作曲。ヒャダインさんの作詞だけやるときのエモさってあるよなって。

宗像 : ヒャダインさんも、メンバーと話してポジティヴな気持ちしかなかったからそれをそのまま書いたって言ってたのが反映されてましたね。あの日のは、1月の武道館ぶりだから11ヶ月ぶりで。

柴 : うん。

宗像 : そこからでんぱが立ち上がるって、すごいしんどいことだと思うんですよね。そこに至るまでのことを考えても、見事にやり切ったなとは思いましたね。あとは、それぞれが感情をむき出しにしてるのが良かったですね。

柴 : うんうんうん。

宗像 : 泣いたり笑ったり。最初は泣いてた5人が最後には新メンバーのお姉さん的になって笑顔でいるっていう。

柴 : ああ、そうそう。

宗像 : そういうドラマも1回のライヴの中にある。

上野 : たしかに。背中を見せていかなきゃいけないってなりますもんね。

宗像 : そうそう。2人が出てからは、もう泣いてる訳にはいかない。

中間管理職としてのピンキー!

柴 : ピンキー! もお姉さん感出て来ましたね。

宗像 : 出て来ましたね。

上野 : だから、今後ピンキー! の役割って重要になってくるのかなって思いました。

柴 : おお。

上野 : 先輩と後輩を、中間でうまく立ち回ってグループまとめて欲しいなと思います。

宗像 : 中間管理職的な。

上野 : 中間管理職としてね。

柴 : ピンキー! って面白いのは、でんぱ組.incって基本オタク的なサブカルチャーの趣味を持ってる人たちで、ねもちゃんとぺろりんも基本そういう人たちだけど、全員と話すとピンキー! だけアスリート的な感性がある。ランニングしてたり。

上野 : すごい走り込んだってMCで言ってましたもんね。

柴 : でも、出所はニコニコ動画であるっていう。そういうのも一辺倒じゃないなって改めて思いますね。

上野 : 成長ぶりがすごいですよね。私が初めてでんぱ組.incのライヴを観たのが、もがちゃんとピンキー! が入って9ヶ月後くらい、2012年9月の原宿アストロホールだったんですけど。そのとき結構近くで観れて、ピンキー! が汗だくでライヴ中にしょっちゅうお水飲みに行ってたんですよ。でも今の彼女はほとんど汗かかないじゃないですか。すごいなと思って。もう体質が変わったんだろうなって。

柴 : 僕、『IDOL AND READ』という雑誌で全員のライフ・ストーリーを聞くインタヴューをやってるんですけど。基本、みんな学生時代あんまり人と上手くいかなくて、趣味の世界にいて、みたいなストーリーなんだけど、ピンキー! だけちょっと変な人生で。自我がなかったっていうんですよ。全部お母さんの選択に任せて着る服もやることも決めてて。「自我ができたのってどれくらいですか? 」って聞いたら「『サクラあっぱれーしょん』が出たときくらいかな」って。

上野 : いいなー! ある意味人間味のなさってピンキー! の魅力だと思ってて。これだけ人間味丸出しのグループの中でそういう存在がいるっていうのは注目視しちゃう。

柴 : そうなんだよね。ピンキー! は7人の中では変っていうのかな。いわゆる、枠にはまらない7人が集まってる中でも、また別の枠にはまらなさがある。個人で言うと。ピンキー! 論になっちゃった。

上野 : 中間管理職としてのピンキー! (笑)

宗像 : メンバー1人1人の話になると、僕はえいたそが泣かなくてよかったなって。

柴 : ああ~。

宗像 : 1月20日の武道館の時にえいたそが泣いたじゃないですか。えいたそが泣くなんて初めて見たんですよ。そのぐらいの事態なんだなって思って。解散しなくてよかったなと思ったし、大阪でえいたそがえいたそをやり切ったっていうのはよかった。

上野 : たしかに。そうですね。

宗像 : りさちーはりさちーで、歌で引っ張って行く人だなと思ったし。シャウト1つ煽り1つ素晴らしいなと思いました。ねむきゅんは、もう冒頭から泣いて。あと、「きっと、きっとね。」の終わった後の長いMCもよかったです。

上野 : 泣きながら歌ってましたからね。

宗像 : うん。それも含めてすごいよかったし。で、みりんちゃんはリーダーではないんだけど、何かものを言うときは、やっぱりみりんちゃんがまず発言する訳じゃないですか。「みなさん、お久しぶりです! 」って言った瞬間に「あれ、12月の1日の「DEARSTAGE SHOWCASE 2017 WINTER」と16日の「聖なる☆ディアステージ」はどこに行ったんだ」と思ったけど(笑)。

柴 : (笑)

宗像 : それはさておき、自分がやりたかった、悔しかった、でもこれからツアーでみんなに会いに行きますってストレートなメッセージをガンガン発してて。そう言うところがよかったですね。

柴 : なんかみりんちゃんはね、MCとか見る度に妙に戦国武将感を感じるんですよね。

上野 : 戦国武将(笑) なんか分かる気がする。

柴 : なんかわかんないけど、あの人の意思決定で物事が進んでるんだって感じが。自信たっぷりな感じというか。センターってこういうことなんだって。

宗像 : 大多数の人はそんな頻繁にライヴを見に行けない。普段、メンバーの行動や発言をTwitterで見てる人もいると思うんですよ。でんぱ組.incって、Twitterで感情をときどき出すから、そういうところで今の時代にあってるなって思う部分もあるし、あんまり隠さない人たちだなと思ってて。色んなことをくぐり抜けてたどり着いた大阪城ホールのライヴ、12月30日は生きてる人たちのドラマを見せつけられた。それを音楽と共に見せつけたっていうのがすごいですね。生き様と音楽が合致しているっていう。

上野 : 元々特殊な物語から始まってるグループだからその物語からは逃れられない。でも、ファンの人たちは、もうこの先いろんなことがあっても絶対ついて行く人たちだと思うし、それだけの絆が出来上がってる感じはします。

宗像 : みりんちゃんはやっぱり、Pファンクにおけるジョージ・クリントンの立ち位置なんです。あの人がファンク大統領であって。

柴 : ああ。

新しい幕開けって感じがしました

宗像 : そういうのもすごい感じたし、解散しなくてよかったっていうのはすごいありますね。そして「ギラメタスでんぱスターズ」を含んだ新曲もリリースされます。

柴 : これは両A面なんですね。

宗像 : 「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」の話に行きたいと思うんですけど。なんで司会してるんだろう。

柴 : (笑)

宗像 : これはH ZETT Mさんが作ってますけど。すごいですね、思いっきりジャズだし。

柴 : H ZETT Mさんがでんぱ組.incに曲を書くのはこれが初めてですよね。

宗像 : でんぱが思いっきりジャズの系統をすると。その1つ前の「最Ψ最好調!」はラテンで、今度はジャズになるのかっていう驚きもあったし。新しい幕開けって感じがしましたね。

柴 : H ZETT Mさん自体もいろんなアウトプットがある人ですけど、でんぱ組.incに曲を提供するならここのチャンネルを開けるみたいな、そういう新しい回路が開いてる感じがある。H ZETT Mのソロでは出てこないタイプの曲だろうし。例えば東京事変でやるって言ってもこういう曲調にはならないだろうし。

でんぱ組.inc「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」MV
でんぱ組.inc「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」MV

上野 : そうですね。

柴 : これはなんでしょうね? っていう。

上野 : H ZETT Mさんの鬼才っぷりがいい感じにでんぱに馴染んでるっていうのがすごくいいなって思いました。

柴 : ああ、そうですね。馴染む。

宗像 : 今のチャートには似たようなものがいないよっていう感じのものが出来上がってますよね。これが1曲目に入ってるのもすごいなと思うし。

柴 : でんぱの曲ってどこがサビかわからないんだけど、オクターブでメロディーが上に飛ぶところがあるじゃないですか。あれとかも、ピアノでやるのは難しいことじゃないけど、あれを声で、しかも相当張った声で歌うのって結構大変だし、そういうポップソングはなかなか無い。

宗像 : うん。

上野 : しかも、それを軽やかにやってますよね。

宗像 : 僕この曲で浅野いにおさんの作詞家としての評価が爆上がりして。なんでこれがいいかっていうと、単純に詩がいいっていうのもあるんですけど、歌詞のリズムが跳ねてるんですよね。曲のリズムが跳ねてるのに対して歌詞のリズムもちゃんと跳ねてる。この人漫画家なのにすごい技量だなと思いました。

柴 : たしかに。あ、そうだ漫画家だこの人。

上野 : 完全にプロの作詞家としての仕事ですよね。

柴 : そうなんですよね。言葉のリズムも〈きっと、なんか、やっぱ、しっぱい、だった〉とか促音を使って作っている。それが跳ねたビートに合っている。

宗像 : そうですね。〈楽観、発汗、傍観〉この辺の韻踏んでる感じとか。あらゆる手を使って音を跳ねさせている。そういう意味では歌詞も音楽的によくできてる。MVだとよくわかんないけど、ぺろりんが謎の生き物になってて。

上野 : 最後の歌詞の〈欠けても増えても 私もあなたも絶対なの〉って。

宗像 : これ、すごいですよね。〈ワールドエンドなんだそれ〉というのも、世界は終わらないし、私もあなたも絶対なのって言う。この3行のためにこの曲があるような感じですよね。

柴 : うん。

上野 : まさにグループのいろんな物語を表しているような。

宗像 : いにおさんだから、いろんなでんぱ組の活動を吸収してますよね。あとはヒットチャートに入れようとするもので、ジャズに傾倒したものはなかなか無い。ジャジーはあるけど、これはジャズそのままなんですよ。

柴 : ジャズがヒットチャートに入る時に多いのは、お洒落の回路を通っている例なんですよね。たとえばアシッド・ジャズやクラブ・ジャズがそうだった。でもこの曲はそうじゃなくて。でんぱ組.incがお洒落じゃないっていうと違うんだけど。

上野 : ちょっとすっとぼけた感じになるんですよね。

柴 : そうそう、すっとぼけた感じになる。まさに。

宗像 : あと、この場に出てでんぱ組.incが新しい方向に行ってるのがいいなと思いましたね。でんぱ組.incって「萌きゅんソングを世界にお届け」って大阪で言ってて。「まだ萌きゅんソングって言ってるんだ」って逆に新鮮だったんですよね。萌きゅんソングレベルじゃないだろやってることは、って。

柴 : でも、萌えきゅんソングっていうコンセプトを崩してないから、ラテンをやってもジャズをやってもヒップホップをやっても「萌えきゅんソングです」になるんですよ。どんなジャンルの音楽を持ってきてもああなるっていうのは、「萌えきゅんソング」というワードの発明が音楽的に効いてきてるのかもって思いました。何やっても許される感。

宗像 : そうですね。「萌きゅんソング」って言っても、具体的にさっぱりわからないですから。それが音楽的な自由度に繋がってるところはありますね。

柴 : そうそう。だからでんぱ組.incは曲に発明があるので。

宗像 : ぺろりんがMVでビームみたいなの浴びせられて、それが溶けるとぺろりん舌を出すっていう、ぶりっ子担当をちゃんとやっているんですよね。彼女がMVでキーになる存在になっているのが新しい感じだなと思いました。初回限定盤Aのジャケットがメンバーの顔が全然ないっていう。

柴 : たしかに、アイドルグループとしては異常(笑) これ、何の説明もなく手にとったら「何の商品だろう」って。

宗像 : あはは(笑) そうですね。

柴 : 初回限定盤Bのジャケットもメンバーは書かれてるけど、何の説明もなくこれを手にとったら「一体何の商品だろう」ってなりますね。

初回限定盤A
初回限定盤B

宗像 : 「ギラメタスでんぱスターズ」もすごい曲でしたね。この曲ってさっきから話が出てるみたいにものすごい情報量が多いんですけど、サビになると急に1音が伸びるんですよ。浅野さんがすごいと思うのは、そこのメロディーがすごく美しい。「ギラメタスでんぱスターズ」のサビが忘れられないというファンの方の声も聞いていたんです。あれだけ情報量が多くてもサビを耳に残すってやっぱりすごい曲だなと思いましたね。

上野 : 私は〈ギャラ ギャラ〉の時のりさちーの印象がすごい強くて。ちょっと謎にいいんですよね、あのシーン。

宗像 : ヒャダインさんが〈新しいって最高だ〉という言葉をちゃんと入れている。後半に行くにつれて加速している感じが曲調としてありますね。すごい練られてますね。浅野いにおさんもヒャダインさんもよくこの作詞ができるなと思います。

柴 : そうですね。

宗像 : これだけ符割が細かい2曲それぞれすごいよくやったなと思います。

柴 : この曲の歌詞も、書けって言われても書けないですよね。なんていうのかな、〈(ギャラギャラ)〉とかね。

宗像 : あはは(笑) 〈ギャラギャラ〉ってなんなんだって。

柴 : それは単に掛け合いだとしても、〈ワクみがとまんねぇんだ〉とかね。

上野 : 〈チキってんの〉とかね。

柴 : その辺がヒャダインさんの作詞家としての安定した異常さ。

上野 : 安定した異常さ(笑) たしかになぁ。〈生ごみ〉って歌わないですもんね。

宗像 : そうですよね(笑) でもいろいろあるけど「ギラメタスでんぱスターズ」てサビが好きですね。サビが美しい。あと、サビはどんな歌詞だっけって思い出せない。冷静に考えると歌詞がめちゃくちゃ長いんですよね。あの長さほぼヒップホップです。

上野 : リフレインも少ないですもんね。

宗像 : そうなんですよね。

柴 : でんぱ組.incとヒップホップということで言うと、これは完全に僕の妄想だけど、『ブラックパンサー』とこの間のでんぱ組.incの大阪城ホールは共にアフロ・フューチャリズムである。

宗像 : でもそれは言えますね。

柴 : ケンドリック・ラマーとマーベルがやってる『ブラックパンサー』が正当なるアメリカのブラック・ミュージックの進化である一方、秋葉原を経由して何かがおかしくなっているアフロ・フューチャリズムがここに花開いている。

エモーショナル過ぎないのが、今大事かも知れない

宗像 : 僕もOTOTOYのレポートで「PファンクだPファンクだ」って怪文書みたいなレポート書いたんですけど、アキバ系って元は何かと考えるとやっぱり高速化したファンクなんじゃないかって結論になる。でんぱってUSのヒップホップみたいにずっとトラップ鳴らすとかはやってないからわかりにくいかもしれないけど、割と欧米の音楽の潮流に乗っている。でも、秋葉原を経由して何かおかしくなってるので、そこがわかりにくいところなのかも知れない。

柴 : ほんと世界的に新しいと僕は思ってるんですよ。何が新しいかわからない時代だけど、少なくとも他に無い。

宗像 : 無いですよね。「ギラメタスでんぱスターズ」にしても「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」にしても、かなり独自進化をしている。マダガスカルで独自進化した生き物みたいに秋葉原で独自変化をしている。それが意外と同時代的だってことは気づかれにくいんだけど。

柴 : 変な時代だなぁ。

宗像 : こういう音楽を最先端でやってるのがアイドルだっていうのがね。でも、でんぱ組って枠組みを最大限に使って面白い音楽作っているっていうことは言えますよね。今のアイドルシーンにでんぱ組.incがいないとダメなんですよ。今年の1月3日の「ニューイヤープレミアムパーティー2018」にでんぱ組.incが出て、楽屋裏にでんぱ組.incがいるだけで、イベントの重要性が違ってくるんですよ。やっぱりアイドルシーンにでんぱ組.incがいるかいないかは結構大きい。2017年の不在は結構大きかった。2017年はでんぱ組.incの存在は重要だなと思った1年でした。代わりがいないし。

柴 : うん。

宗像 : 「Ψ発見伝!」が1月30日にデジタル・リリースしたシングルですよね。これはエヴァー・グリーンなポップス。僕がいちばんでんぱ組.incのエヴァー・グリーンなポップスとして好きなのが「檸檬色」なんです。それよりはでんぱ組.incっぽいんだけどエヴァー・グリーンよりですごい好きなのと、あと、これは生のストリングスなんですよね。そういうことを今やれるのもでんぱ組.incくらいですね。

柴 : たしかに。

宗像 : 音源的には、7人になっていちばん最初にリリースされた音源ですよね? 配信で。これ、「普通だな」と思う人もいるかも知れないけどいい曲だと思うし。こういう曲をでんぱ組.incが歌うことも大事だと思う。

柴 : そうなんですよね。こういうタイプの曲。「檸檬色」もそうだし、ここでこの曲をやるから映える、みたいなね。

宗像 : この新曲3曲を合わせてポジティヴなリセットをかけている。だから、この3曲はベストだなと思いました。

上野 : エモーショナル過ぎないのが、今大事かも知れない。フラットな感じ。メッセージあるけど軽やかな感じで。

柴 : なんででんぱ組.incがでんぱ組.incたり得ていて、でんぱ組.incっぽいことをやりたい人がいっぱい出て来ているのにでんぱ組.incだけがユニークさを保っているかと言うと、これは曲でしかないと思うんです。もちろん、人のユニークさとか物語もグループも当然あるんだけど、結果それが全部曲のオリジナリティとして形になってるし、これだけの作家さんが「でんぱ組.incにしか書けない曲」を書いている。ヒャダインさんも、この歌詞を他のグループにそのまま持って行く訳はないし、いにおさんもH ZETT Mさんもそうだし。メンバーもスタッフもそうだし、作曲家や作詞家のクリエイター陣も含めて、全員にとってでんぱ組.incっていう枠があると発揮されてしまうエネルギーがあるんだっていうのを改めて痛感しました。それは大阪城ホールでも思ったし、新曲聴いても思った。

上野 : 〈夢で終わらんよ〉って歌詞だったり、マイナスからのスタートなめんなみたいなのって、こういういろんな出来事を乗り越えて強くなるものだと思うし、聴き手もより感情移入していけるものだと思うので。そういう物語性の特殊さはでんぱ組.incにしか無いし、これからも応援していきたいグループだなと思いました。

宗像 : でんぱ組.incって去年武道館で「ライヴの予定がしばらくありません」ってみりんちゃんが泣いて、えいたそまで泣く事態になって。僕忘れられないのは、そのあとオタクの友達に捕まって、「どうなってるんだ?! 」って言われて、俺も知らねえよって(笑) 。

一同 : (笑)

宗像 : みんな「どうなちゃうんだろう」ってなって、そういう状況からここまで立ち直るって普通のグループではなかなかないだろうし、去年はでんぱ組.incにとっていちばんの危機だったと思うんですよ。結局、でんぱ組.incが活動していないと、でんぱ組.incの穴が空いたままなんですよ。シーンに空いたその穴をでんぱ組.inc自らが戻って来てちゃんともう1回ゼロからスタートさせた。新しいメンバーも迎えて、曲、歌詞、MVにヴィジュアルと、クリエイティヴも含めてここまでちゃんとパッケージとして素晴らしいものが出来た。やり直してくれたのは、変な言い方になっちゃうけど感謝してるって気持ちになっちゃうんですよね。あとは2017年は、ここ10年でいちばんでんぱ組.incが好きになりました。だから、〈夢で終わらんよ〉って「Future Diver」の先を見せて欲しいですね。まだまだ続くと思うんで。音楽的にもどんどん裏切って欲しいですね。多分この人たちはJ-POPのフィールドの中で定型化したものをやらない事を許される数少ない人たちだと思うんで。それができるのがアイドルの強みだし、でんぱ組.incを最大限に僕らに突きつけて面白がらせて欲しいなって思います。

でんぱ組.inc Live Blu-ray & DVD「ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」Trailer
でんぱ組.inc Live Blu-ray & DVD「ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」Trailer

でんぱ組.inc DISCOGRAPHY

ALBUM

WWDBEST 〜電波良好!〜

でんぱ組.inc初のベストアルバムが発売決定!代表曲はじめ初収録の新曲まで網羅した最強ベスト!!

夢眠ねむソロ・インタビューはこちら

GOGO DEMPA

ゆず 北川悠仁×ヒャダインによる夏のアンセムチューン「おつかれサマー!」、漫画家・浅野いにお作詞による「あした地球がこなごなになっても」、でんぱ組.incらしさの詰まった三ヶ月連続配信シングル「破!to the Future」「ファンファーレは僕らのために」など豪華シングルを含むアルバム。

特集ページはこちら

WWDD

玉屋2060%による4つ打ちキラーチューン「サクラあっぱれーしょん」、でんぱ組.incの原点であるDearStageを舞台に清竜人が作り上げた「Dear☆Stageへようこそ♡」、ヒャダインによるカップヌードルCM曲「ちゅるりちゅるりら」、ファンタジー感溢れる最新シングル「でんぱーりーナイト」に加え、アルバム新録曲も多数収録。

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WORLD WIDE DEMPA

「でんぱれーどJAPAN」や、瑛太主演のフジテレビ系ドラマ「最高の離婚」でも二週連続で披露し話題となったドキュメンタリーソング「W.W.D」、かせきさいだぁプロデュース「冬へと走りだすお! 」、そして最新楽曲「W.W.DII」までのシングル作品5枚を含むアルバム。

SINGLE

『でんぱーりーナイト』リリース記念! "初レゾ"体験! 特集ページはこちら

LIVE INFORMATION

『JOYSOUND presents でんぱ組.inc コスモツアー 2018 〜惑星探査〜』

2018年4月14日(土)@札幌市教育文化会館・大ホール
2018年4月28日(土)@茨城県立県民文化センター・大ホール
2018年4月30日(月祝)@江戸川区総合文化センター
2018年5月2日(水)@広島・JMSアステールプラザ
2018年5月3日(木祝)@NHK大阪ホール
2018年5月4日(金祝)@一宮市民会館
2018年6月16日(土)@仙台サンプラザホール
2018年6月17日(日)@栃木総合文化センター
2018年6月23日(土)@TOKYO DOME CITY HALL
2018年6月30日(土)@静岡市民文化会館・中ホール
2018年7月1日(日)@日本特殊陶業市民会館・フォレストホール
2018年7月7日(土)@河口湖ステラシアター(〜七月七日は七夕まつり編〜)

PROFILE

でんぱ組.inc

古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、藤咲彩音、鹿目凛、根本凪、の7人組ユニットで、ディアステージに所属し、様々な活動を展開。メンバーはもともと、アニメ・漫画・ゲームなど、自分の趣味に特化したコアなオタクでもある!また、東京コレクションやミキオサカベをはじめとして、様々なクリエイターとのコラボレーションを活発に展開し、国内のみならず海外からも注目を集め、台北やジャカルタでのファッションイベントにも参加。さらに日本代表として、2013年にはJAPAN EXPOに日本代表として出演。2014年度は東アジア文化都市2014横浜親善大使を務めた。TOY’S FACTORYの新レーベルMEME TOKYOに所属。マイナスからのスタートなめんな!というキャッチフレーズで話題になり2014年5月には日本武道館で1万人動員、2015年2月に国立競技場代々木第一体育館2days単独公演を大成功させた。シングル『あした地球がこなごなになっても』でミュージックチャート1位を獲得。2015年はワールドツアーも敢行。MTV「ワールド・ワイド・アクト賞」の日本部門「ベスト・ジャパン・アクト」のウィナーに。2016年12月21日にはベストアルバム『WWDBEST 〜電波良好!〜』をリリース。2017年1月に、アリーナツアー「幕神アリーナツアー2017 電波良好Wi-Fi完備!」6公演を開催、二度目となる日本武道館公演も行う。2017年12月30日「JOYSOUND presentsねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」大阪城ホール公演で、鹿目凛、根本凪が加入し新体制となる。

>>でんぱ組.inc Official HP

[インタヴュー] でんぱ組.inc

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