「血肉」から「人間」へ──Yahyel、自らの感情を深く掘り下げる2ndアルバムをハイレゾ配信

yahyel

2016年11月に1stアルバム『Flesh and Blood』で鮮烈なデビューを果たした5人組yahyelが2ndアルバム『Human』をリリースした。「人類」をタイトルに掲げる今作は、ライヴで以前から披露され、シングルカットもされた「Iron」「Rude」、YouTubeで既にMVが公開されている「Hypnosis」「Pale」を含む10曲入りアルバム。自らを「宇宙人」と皮肉交じりに名乗る彼らは前作からの1年半を通して何を描こうとしていたのか? とにもかくにも要注目な本作をより楽しんでいただくため、OTOTOYではハイレゾ配信を行うとともにレビューを掲載します。

要注目。2ndアルバム

Yahyel / Human

【配信形態】
(ALAC、FLAC、WAV(24bit/44.1kHz) / AAC)
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
単曲 288円(税込) / アルバム 2,571円(税込)

【収録曲】
1. Hypnosis
2. Nomi
3. Rude
4. Battles
5. Polytheism (feat. Kim Ximya)
6. Acedia (Interlude)
7. Body
8. Iron
9. Pale
10. Lover


yahyel - Hypnosis (MV)


REVIEW : Yahyel『Human』

前作『Flesh and Blood』における彼らのコンセプトは、国籍や年齢、性別といった彼らの音楽に付帯する「雑音」を削ぎ落とし、「個」を浮かび上がらせることであったという。出自とそれについて回る先入観、それらをすべて取り払ったあとに残った血肉としての人間。「yahyel」(※ニューエイジ思想家バシャールによる造語で、2015年以降に人類が初めて接触する宇宙人を指している。なお彼らがyahyelとして活動を開始したのも2015年だ)という名前も、日本という土地で彼らのサウンドを押し出していく上で、どうしても「日本人離れ」「海外の猿マネ」といった国籍・人種観のまとわりついた評価がされがちな様子を皮肉ったものであった。とにもかくにも、彼らは余計なものを散々纏った人間をひん剥き、裸の血肉にすることに成功したのだった。さすれば次には、遮るものが取っ払われた状態でいかにそのヒューマニズム、感情、人間らしさといったものを発露するか、ということなのである。

Humanというタイトルが象徴する「感情」の表現のため、今作では池貝のヴォーカルがかなり主役としての役割を強めている。ジェイムス・ブレイクからの影響を公言し、90年代のリズム・アンド・ブルースにそのルーツを求めることのできるポスト・ダブステップのサウンドを踏襲する彼のヴォーカルは、とりもなおさずブルージーであり、エモーショナルだ。

ダブステップの登場以降既にお馴染みのハーフステップ・ビートにハネたリズムを作り出すシンセのリフが踊り、後半部分から顔を出す金属質なビートがアクセントになるM2「Nomi」は、今作でも最もポスト・ダブステップの影響を色濃く感じさせる一曲だ。虚空に独りつぶやくようなヴァースから一気に溜め込んだ感情のエネルギーを爆発させるようなドロップに移る構造もダブステップの流行以降よく知られるようになったものだが、そうしたダンス・ミュージックのマナーと呼応するようにして、か細いファルセット・ヴォイスから唸るような低音まで、池貝のヴォーカルが次々に処理を変えながら彼の内面をえぐり出す。

ドロップの構造とヴォーカルの呼応によって感情の発露を表現する楽曲は「Nomi」の他にもいくつか見ることができるが、それが最も極まっているのがM8「Iron」だろう。ほとんど最小限のビートで進行する前半部分から徐々に現れるシューゲイズ的な音の洪水がカタルシスを予感させ、ついにはスクリレックスを思わせるようなピッチの変調を含むベース・ドロップが目眩を起こさせながら爆発する。


yahyel - Iron (MV)

いくつかの曲がアウトロらしいアウトロを持たずに突如として終りを迎えることも注目すべきポイントだろう。ダンス・ミュージックマナーでいうところの「DJのためのアウトロ」は存在せず、あくまでヴォーカルを主役として、少しの残響を残して幕を引くところも、今作における彼らのコンセプトを強く感じさせる。

今作『Human』から前作『Flesh and Blood』を引いた部分、つまり血肉を人間として立ち上がらせるための意思や感情といったものについての表現を深化させるための手法として、彼らは前作でも取り扱っていたポスト・ダブステップのサウンドをヴォーカルとドロップの構造に焦点を絞って解釈し直したのだった。ついに感情をもって裸の血肉は「人間」となり、立ち上がった。今後彼はどこを彷徨い、どこに行き着くのだろうか。今後も目が離せない。

……ところで、こんな構図を「宇宙人」が描いているというのもなかなか皮肉屋の彼ららしい、とおもう。(text by 井上裕樹)

レーベル Beat Records  発売日 2018/03/07

※ 曲名をクリックすると試聴できます。

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/44.1kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 288円(税込) / アルバム 2,571円(税込)
【ご購入・視聴はこちらから】
https://ototoy.jp/_/default/p/96869

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Mount Kimble / Love What Survives

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ブレインフィーダー所属、サイケデリックかつエロティックなサウンドで知られるビートメイカー・ラパラックス。2017年リリースの本作はグライムやUKベース・ミュージックの影響も見られ、彼の音の探求の果てしなさをうかがい知ることができる一枚です。


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LIVE SCHEDULE

「Human」リリースツアー

3月29日(木)
@LIQUIDROOM (SOLD OUT)

3月31日(土)
@京都METRO
OPEN 18:00 / START 18:30 前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: 京都 METRO 075-752-4765
http://www.metro.ne.jp

4月5日(木)
@札幌DUCE
OPEN 19:00 / START 19:30 前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: WESS 011-614-9999
http://www.wess.jp

4月6日(金)
@名古屋 RAD HALL
OPEN 19:00 / START 19:30 前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: JAILHOUSE 052-936-6041
www.jailhouse.jp

4月7日(土)
@大阪 (詳細後日発表)
TBC

4月8日(日)
@高知CARAVAN SARY
OPEN 18:30 / START 19:00前売¥3,000(税込/1ドリンク別途)
INFO: 088-873-1533
www.caravansary.jp/sary/topsary.htm

★2/5(月)〜CARAVAN SARY店頭、ぴあ、LAWSON、DUKE TICKET

PROFILE

Yahyel

yahyel は2015 年3 月に池貝峻(vo)、篠田ミル(sampling)、杉本亘(syn)の3 名によって結成、ライブ活動の本格化に伴いVJ に山田健人、ドラムに大井一彌を迎え現在の5人体制を整えた。2015年5月に自主制作EP『Y』、2016年1月には、ロンドンの老舗ROUGH TRADEを含む全5箇所での欧州ツアーを敢行。2 月に両A 面7インチ「Fool / Midnight Run」、9 月には「Once / Flare」を限定CD で発売すると同時に売り切れ店舗が続出、11月には満を持してデビュー・アルバム『Flesh and Blood』をリリースした。現在のインターネットをはじめとする音楽を取り巻く環境の変化を、ごく自然に吸収してきた世代が台頭する中、ここ日本でも際立ってボーダーレスな存在としてさらなる活躍が期待される。

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この記事の筆者
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