BATHS、シンガーとしての存在感をさらにましたポップな新作──ハイレゾ配信

Photo by Mario Luna

ウィル・ウィーゼンフェルトのメイン・プロジェクト、バスの3rdアルバム『Romaplasm』が到着した。もはや老舗アンダーグラウンド・レーベルとなった〈アンチコン〉からリリースされた本作は、開放感に溢れるポップな作品に、また“ビートメイカー”から一歩踏み込んだ、シンガー・ソング・ライターとしての側面も前面に出た作品となった。OTOTOYでは本作をハイレゾ配信。ダディー・ケヴによるマスタリングもぜひとも堪能していただきたい。さらにはレヴューとともに、こちらもハイレゾ配信となっているジオテック名義『Abysma』リリース時の記事も関連作として再掲してお届けします。


Baths / Romaplasm(24bit/48kHz)

【Track List】
01. Yeoman
02. Extrasolar
03. Abscond
04. Human Bog
05. Adam Copies
06. Lev
07. I Form
08. Out
09. Superstructure
10. Wilt
11. Coitus
12. Broadback

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC
AAC
単曲 288円(税込) / アルバムまとめ購入 2,830円(税込)

REVIEW : BATHS史上、最もひらけてポップなアルバム

文 : 河村祐介



もはや本作を前にして彼を“ビートメイカー”という枠に収めてしまうのは愚かなことだろう。アンビエント~テクノなジオティック名義で今春にアルバム『Abysma』をリリースしたばかりのウィル・ウィーゼンフェルトが、ある意味で彼の表現の本丸とも言えるプロジェクト、バス(Baths)で新作『Romaplasm』をここに発表した。そのサウンドはもちろんのこと、彼のもうひとつの音楽性の魅力、「歌」においても重要な作品となった。

2010年の1stアルバム『Cerulean』でデビュー、英ガーディアン紙のレヴューはその音楽性をして「J・ディラがもてあそぶペイヴメントとプリンスの作品たち」と評した。リリースは老舗〈アンチコン〉から、当時注目を集めていたLAビート・ミュージック・シーンの新たな才能として世に認知された。〈アンチコン〉といえば、1990年代末、オルタナティヴなアンダーグラウンド・ヒップホップ集団“アンチコン”に出自を持つレーベル。ソールなど、いわゆる初期のコア・メンバーたるヒップホップ系のアーティストが何人か抜けているが、現在にいたるまでアンダーグランド・ヒップホップのダーティなビートにはじまり、エレクトロニカやポストロック、エクスペリメンタル・フォークなどその音楽性を広げ続けている。


前述のガーディアン紙のレヴューの「ペイヴメント」という部分に集約されるのだが、ヒップホップのエクスペリメンタルなビートとともに、バスのサウンドにはロック~アシッド・フォーク的なサイケデリアをつねに身にまとっている感覚がある。それはある意味で〈アンチコン〉の正当な系譜というか、レーベルが初期の頃から持っていたサイケデリック感覚と言えるだろう。具体的にいえば初期であればクラウデッドの作品に象徴されるような感覚、または、ラップからその後アシッド・フォークまで展開していったホワイ?の作品の感覚あたりにも通じるものだ。

僕は自分自身にとことん正直でいたかった

陰鬱な雰囲気を持ち、死の感覚が支配する2nd『Obsidian』(2013年)。ここではさらに彼のシンガーソングライター的な特性が前面に現れた。そしてリリースされた本作『Romaplasm』は、ひらけたバス流のエレクトロ・ポップとも言える音楽性を開花させている。アルバムを通してジオテック名義でリリースした柔らかなテクノ・アルバム『Abysma』のダンサブルな開放感も見え隠れする。これまでの音楽性を踏め、さらにポップに広がったサウンドは、〈アンチコン〉サウンドのある種の集大成的な感覚もある。

彼は本作に関してこのようなコメントを寄せている。

「僕は自分自身にとことん正直でいたかった。そう言い切れるぐらい、ここには僕の精神が宿っているし、人生から最高の感情をくみ取っている。僕はそんな感情を映し出したレコードを作りたかったんだ。しかも間接的なやり方でね。このレコードを作っている間、僕はできるだけ何ものにも束縛されない状態でいたかったんだ」


サウンドの開放感はこうした自由な意志からも来るのではないだろうか。それはおそらく彼の内面の部分でも「正直でいたかった」といった部分が反映されているようにも感じる。それはまず端的に歌詞にて現れている。「ABSCOND」や「HUMAN BOG」では、ゲイであることの葛藤が歌われている。さらに本作のハイライトとも言えるエレクトロ・ディスコ「OUT」では、それこそ1970年代〜80年代、ザ・ロフトやパラダイス・ガラージ、そして現在のベルリンのベルグハイン〜パノラマ・バーなどへと継承されているゲイ・ダンス・カルチャーへの賛歌とも呼べる詩的世界が広がっている。「Broadback」(いわゆるガチムチ系の男性、「OUT」のMVの背景にはそうしたゲイ・アート的なイラストが飾られている)も、ある意味でストレートなラヴ・ソングだ。自身のセクシャリティーを肯定し、音楽的表現として昇華させている。ここで歌われているものは、そのコメントからして、彼の人生を象徴する尊厳あるものだ。それがストレートに音楽へと表現させたもの。つまりは彼の人生の賛歌といっていいだろう。本作は彼と同じセクシャリティの多くの人々はもちろん、多種多様な人々にとって自分自身と向き合って人生を謳歌するためのサウンドトラックになるだろう。それゆえに、そのサウンドは風通しが良く、美しく、響いていくるのだと思う。

別名義Geoticの『Abysma』もOTOTOY特別パッケージで配信中

こちらは今春にリリースされた、ジオティックとしてのアルバム『Abysma』。リリースはエレクトロニック・ミュージックの名門、昨年グラミーにノミネートされたティコなどを擁する〈Ghostly International〉。これまで彼が本名義でアンビエント的なアプローチで展開してきた穏やかなメロディのシンセに、緩やかなグルーヴがミックスされたカラフルなテクノ・アルバムとなっている。日本先行となる本作をOTOTOYでは独占ハイレゾ&特別版のライナーノーツ&インタヴューPDF(LAビート・シーンに深い造詣を持つ原雅明の執筆・質問作成による)で配信注。


OTOTOY限定、ハイレゾ&原雅明による特別ライナー&インタヴュー付き

Geotic / Abysma(24bit/44.1kHz)

【Track List】
01. Sunspell
02. Actually Smiling
03. Nav
04. Billionth Remnant
05. Laura Corporeal
06. Vaulted Ceiling, Painted Sky
07. Perish Song
08. Valiance

【配信形態 / 価格】
24bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 288円(税込) / アルバムまとめ購入 2,000円(税込)

アルバムまとめ購入で原雅明によるOTOTOY限定の特別ライナーノーツ&撮り下ろしメールインタヴュー収録のPDFが付属します

REVIEW : 心が躍るアンビエント・ダンス・ミュージック


文 : 寺島和貴


ジオティック、そしてバスことLA在住のビートメイカー、ウィル・ウィーゼンフェルドから春の訪れを報せるような新作『Abysma』が届いた。彼がGeotic名義でこれまで発表してきた作品では、主に深くリヴァーブの効いたギターによって奏でられるビートレスなアンビエント・ミュージックが展開されてきた。しかし、本作では“アンビエント・ダンス・ミュージック”と銘打ち、これまでの深く沈み込んでいくような酩酊感とは異なり、全編を通じて4つ打ちを基調とした開放的な楽曲が並ぶ。

アンビエントという言葉を擁しているように、「Perish Song」では、リバーヴの効いたシンセサイザーやピアノがタイトなビートに覆いかぶさるように重なり、アンビエント特有の浮遊感を醸し出している。また、「Billionth Remnant」で散りばめられているグリッチは、エレクトロニカにも通ずる瑞々しさを演出している。その一方で、「Valiance」では力強いビートとメランコリックなアルペジータの絡み合いがほのかな熱をもたらしてアルバムの最後を飾るという、統一感がありながらもバラエティ豊かな8曲が出揃っているのだ。

とは言え、彼のダンス・ミュージックはパーティーのための音楽ではない。曰く、彼にとっての音楽体験とは、部屋か車で一人で聴くものだという。きっとこの作品も、ひとり澄み渡った春の空のもとで、心を躍らせながら聴くのが最も気持ちいいのだろう。

ところで、本人が監督・編集を手掛けたリードトラック「Actually Smiling」のミュージックビデオだが、海に入るためには髪を長くしなければいけない…のかな?



Geoticをリリースしたレーベル〈Ghostly International〉とは?

モータウンとテクノの街、デトロイトから車で30分ほどの郊外にある、ミシガン大学のお膝元、学園都市のアナーバーに位置するレーベル。サム・ヴァレンティによって1999年に設立。テクノ〜ハウスの寄りのダンサブルなサブ・レーベル〈Spectral Sound〉とともに、マシュー・ディアー / オーディオン、ジェームス・T・コットン / ダブリー、ルシーン、ゴールド・パンダ、そして先日のグラミーにもノミネートされたティコ(Tycho)などをリリースし、2000年代以降のエレクトロニック・ミュージックの重要レーベルとなる。また2000年代後半以降は、スクール・オブ・セヴン・ベルズのリリースなど、ロック〜ポストロック的なサウンドのリリースも行なっている。(河)

PROFILE

Baths / Geotic

LA在住、ウィル・ウィーゼンフェルド(Will Wiesenfeld)のプロジェクト。音楽キャリアのスタートは, 両親にピアノ教室に入れてもらった4歳まで遡る。13歳の頃には、すでにMIDIキーボードでレコーディングをするようになっていた。ある時、Björkの音楽に出会い衝撃を受けた彼は直ぐにビオラ, コントラバスそしてギターを習得し、新たな独自性を開花させていった。2010年、彼のビートメイカーとしての、代表的な名義であるBathsでリリースした1stアルバム「Cerulean」は、インディーロック〜ヒップホップリスナーまで巻込んだ。Geoticは、メインのBathsと並行して、これまで自身のbandcampを中心にコンスタントにリリースを続けてきたアンビエントに特化したプロジェクト。本名義のアルバムは、自身のbandcamp以外のリリースは本作が初となる。本人曰く、2つのプロジェクトの違いは「Bathsはアクティブに聴く、Geoticは受け身で聴く」。

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レヴュー

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