2017/11/15 00:00

フューチャー・ソウルの新たなページをめくる『ar』──活動再開の吉田ヨウヘイgroup、最新作を配信開始!

1stアルバム『From Now On』を2013年にリリースして以来、インディ・シーンの注目株として陽の目を観ていた突如、2016年2月に活動を一時休止。同年10月に活動を再開させた吉田ヨウヘイgroupが、『paradise lost, it begins』以来およそ2年5カ月ぶりの4thアルバム『ar』をリリースした。音楽に深い造詣のあるメンバーのセンスや技術が嗜好に寄り添うように体現された本作は、フューチャー・ソウルが盛り上がりをみせる現代の音楽シーンに一石を投じる作品となっている。アルバム全12曲、すべての楽曲で異なる表情を写す吉田ヨウヘイgroupの現在のフェーズが伺える最新作を、OTOTOYでは配信とともにレヴューを掲載する。

吉田ヨウヘイgroupの約2年半ぶりの新作を配信開始!

吉田ヨウヘイgroup / ar

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 2057円(税込)

【収録曲】
01.piece 1
02.トーラス
03.メビウス
04.piece 2
05.フォーチュン
06.Do you know what I mean?
07.分からなくなる前に
08.1DK
09.chance
10.サースティ
11.シアン
12.拡がった現実

吉田ヨウヘイgroup / Do you know what I mean? (short ver.)
吉田ヨウヘイgroup / Do you know what I mean? (short ver.)

【REVIEW】 フューチャー・ソウルで映える、吉田ヨウヘイの声

リード曲らしいリード曲がない。 これはあくまでもポジティヴな意味で、聴き手が12人いればアルバムのなかで好きな曲が、12人とも異なる可能性すらあるんじゃないかと思う。ジャズ好きが聴いても、ロック好きが聴いても、ソウル / ファンク好きが聴いても好きになれる間口の広さは、あらゆるジャンルを飲み込むフューチャー・ソウルの特徴かもしれない。

Anderson .Paak、The Internetに代表されるフューチャー・ソウルのムーヴメントが巻き起こった昨年。吉田ヨウヘイgroupの最新作『ar』はそのフューチャー・ソウルを日本流に再解釈したアルバムである…。一般的にはこれで説明が終わりかもしれない。ロックやソウル、ファンク、エクスペリメンタル、ジャズをクロスオーバーさせ、ポップスとして昇華する。日本で言えばWONKやCRCK/LCKS、yahyelとともに括られ、各CDショップで展開されるに違いない。

吉田ヨウヘイgroup / トーラス
吉田ヨウヘイgroup / トーラス

しかし、本作をそんなにあっさりと語り終えて良いのだろうか。 確かにブラックミュージックをルーツにしたグルーヴィーなサウンドとネオ・ソウル的なメロディーはフューチャー・ソウルそのもの。ただ、そのどれとも異なる独自性が吉田ヨウヘイgroupにはあると思う。それは何か。

個人的に思うのは、近年の日本のインディ・シーンで開花しているはっぴいえんどフォロワー的なノスタルジックなメロディー。キセルや森は生きているから派生したオーガニック・サウンド。さらには残響系的なポストロック。そしてなにより、この3つに加わる吉田ヨウヘイのヴォーカルがオーガニックなサウンドと相性が良い。

海外的で聴き手を選んでしまうフューチャー・ソウルだが、吉田ヨウヘイのヴォーカルが組み合わさることで、歌詞が日本語詞ということもあり、日本人にも馴染みやすく聴こえてくる。どうしても濃度の高いサウンドに目が向きがちになるものの、吉田ヨウヘイgroupが吉田ヨウヘイgroupとして成り得ているのはヴォーカルとしての吉田ヨウヘイやクロの存在が大きいであろう。

吉田ヨウヘイgroup / フォーチュン(short ver.)
吉田ヨウヘイgroup / フォーチュン(short ver.)

聴き手が12人いればアルバムで好きな曲が12人とも異なる可能性すらある。そう前述したが、その根本となる12曲12色を支配するのはヴォーカルの吉田ヨウヘイであり、吉田ヨウヘイgroupのグルーヴなのだ。(Text by 高橋秀実)

RECOMMEND

WONK / Castor

日本が誇るフューチャー・ソウルの新旗手WONKの最新作。1st アルバム『Sphere』から1年、海外ツアーや各所国内フェスへの出演・媒体露出など、様々な活動を経て既に貫禄を見せるWONKが放つ、世界の音楽シーンに呼応する最先端のポップ・アルバム。全9曲収録。

CRCK/LCKS / Lighter

一躍東京ミュージック・シーンのブライテスト・ホープとして脚光を浴びるポップスバンド”CRCK/LCKS(クラックラックス)”が待望の2ndEPをリリース。今もなお更新され続けるポップ・ミュージックの最先端を是非お聴きください。

yahyel / Iron

昨年リリースしたデビュー・アルバム『Flesh and Blood』で一気にその名を轟かせ、今年に入ってからはWARPAINT来日ツアーでオープニング・アクトを務め、〈VIVA LA ROCK 2017〉や〈SYNCHRONICITY’17〉など出演したフェスでのステージが軒並み入場規制となるなど、その勢いをさらに加速させているyahyel(ヤイエル)の最新曲がリリース!

LIVE SCHEDULE

〈『ar』発売記念 インストア・ライヴ(観覧フリー)〉
2017年12月02日(土)@HMV Record shop 渋谷
ミニライブ&サイン会

〈Spitz × VINTAGE ROCK std. presents「新木場サンセット 2017」〉
2017年12月13日(水)@新木場STUDIO COAST
出演 : 吉田ヨウヘイgroup / スピッツ / KEYTALK / 空気公団 / GLIM SPANKY

〈ギリシャより愛をこめて Vol.1〉
2017年12月16日(土)@京都 西院ネガポジ
出演 : 吉田ヨウヘイgroup / ギリシャラブ

〈吉田ヨウヘイgroup 4th Album 『ar』 Release Event〉
2017年12月20日(水)@渋谷 WWW X
出演 : 吉田ヨウヘイgroup / People In The Box / CRCK/LCKS

PROFILE

吉田ヨウヘイgroup

2012年4月に結成。1stアルバム『From Now On』を2013年3月にリリース。2014年6月に〈Pヴァイン〉より2ndアルバム『Smart Citizen』を、2015年6月に3rdアルバム『paradise lost, it begins』をリリース。これまでに〈Club Snoozer〉、〈FUJI ROCK FESTIVAL 2014〉(ROOKIE A-GO GOステージ)、〈One Music Camp 2015〉等のイベントに出演。2016年2月から一時活動を休止、同年10月に再開。2017年11月に4thアルバム『ar』をリリース。

>>>吉田ヨウヘイgroup公式HP
>>>吉田ヨウヘイgroup公式Twitter

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[レヴュー] 吉田ヨウヘイgroup

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