今作がJYOCHOとしての始まりーーテクニックと情緒が共存する、日本初世界レベルの2ndミニALに迫る

”だいじろー”こと中川大二朗によるプロジェクト、JYOCHO(読み : じょうちょ)が、2ndミニ・アルバム『碧い家で僕ら暮らす』をリリース。プログレッシヴ~マスロック~ポップスなど様々なジャンルを通過した音楽性に、テクニカルなトラック、温かみ、激情をふんだんに盛り込んだ、情緒感たっぷりな、だいじろーにしかできない独自の世界観を構築した充実作。メンバーにはドラムにhatch(ex DUG OUT)、ベースにシンディ(空きっ腹に酒、LOW-PASS)、フルートにはち(JWE)、そして新たなボーカルとして猫田ねたこを迎えて完成させた本作について、だいじろーにロング・インタヴューで迫った。

世界へ飛び出す2ndミニ・アルバムを配信開始

JYOCHO / 碧い家で僕ら暮らす

【Track List】
1. Lucky Mother
2. 碧い家
3. hills
4. tree,stone
5. ほんとうのかたち
6. 三つに分けること
7. グラスの底は、夜

【配信形態 / 価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 258円(税込) / アルバム 1,234円(税込)


JYOCHO / 碧い家で僕ら暮らす Trailer


INTERVIEW : だいじろー(JYOCHO)

2015年3月に惜しまれつつ解散した、京都発3ピース・プログレッシヴ・ポップ・バンド、宇宙コンビニ。同バンドのリーダーとしてバンドを牽引してきた”だいじろー”こと中川大二朗によるプロジェクト、JYOCHOが2ndミニ・アルバム『碧い家で僕ら暮らす』を完成させた。2016年11月にリリースされた1stミニ・アルバム『碧い家で僕ら暮らす』はリリース直後、日本だけではなく海外からも大きな反響を得るなど、その音楽性の高さを証明してみせた。とても繊細なのに衝動的に制作されていたり、ポップスなのに演奏がテクニカルだったり、成り立たなそうなものが絶妙なバランスで共存しているJYOCHOの2ndミニ・アルバムがどのように完成したのか、だいじろーにじっくりと話を訊いた。

インタヴュー&文 : 西澤裕郎
写真 : 大橋祐希

出来るだけ自分の作った曲に飽きたくない

ーー1st ミニ・アルバム『祈りでは届かない距離 』は、だいじろーさんのソロ・プロジェクト的な印象が強かったんですけど、今作はバンドの印象が強くなりました。今作の制作に至るまでに、どういった意識の変化があったんでしょう?

だいじろー : ジャケットやアートワークからもわかると思うんですけど、生っぽさを出したいと思うようになってきていて。今後、ライヴ活動もしていこうと思っているので、バンドとして見せていけたらなということで、外に向かっていくイメージだったり意識が強くなってきたんだと思います。

ーーJYOCHOというプロジェクトは、宇宙コンビニ解散の後、だいじろーさんが自分の時間を模索する中で始まったわけですけど、前作が周りから反響や評価を経たことで、さらに前進していこうと思ったんでしょうか。

だいじろー : 1stは、今まで自分のやってきた音楽や過去と現状を繋げられるような音を出せたらと思って作ったんですけど、2ndミニ・アルバム『碧い家で僕ら暮らす』は、JYOCHOとして明確に軸となるものを提示できたらいいなと思っていて。なので、今作がJYOCHOとしての始まりなのかなと思っています。衝動的に作った音楽を過去と現在でひっくるめて繋げられたらいいなと。

ーー「衝動的に」という言葉が出てびっくりしているんですけど、JYOCHOの楽曲は緻密にコントロールされて作られていると思っていました。

だいじろー : 僕は曲作りに時間をかけるのがあんまり好きじゃないので、結構衝動的に作るんです(笑)。早い時やったら、1曲作るのに1日かからへん時もあります。自分の曲って自分の好みで作っているから、何回も聴いていたら飽きてくるんですよ。僕は出来るだけ自分の作った曲に飽きたくない。なので、極力自分の作った曲も聴かんようにしています。もちろん時間をあけて聴き直してよくないなと思ったら変えたりもしますけど、基本的はあまり時間もかけないですし、衝動的に作っていますね。

ーー今作に関しても衝動的に作った曲が多いんですか?

だいじろー : そうですね。ただ、今作は今までで1番考えて作り込んでいるかなとも思います。今作は猫田ねたこさんがヴォーカルなんですけど、最初から僕の中で猫田さんのイメージがしっかりあったんですよ。だからこそ、それに合った楽曲を作りたかった。1stアルバムのヴォーカルをしてくれたrionosさんの場合、バランスがすごくよかったので、僕が衝動的にパワータイプの曲を出してもまとめ上げる能力が確実にあった。猫田さんの場合、いい意味で危うさというか繊細さを感じていたので、それが作曲に影響しているかもしれないですね。

ーーだいじろーさんはヴォーカルの声質に非常にこだわりがありますけど、今回、どういう経緯で猫田さんが歌うことになったんでしょう。

だいじろー : 僕が歌い手を選ぶ基準っていうのがあって、それは聴き手がどっちにも転べることなんです。歌だけでかっこいいとか、かわいいに偏らせたくない。どっちでも転べるフラットな声が好きなんですよね。あと、少年っぽい声がすごく好みなので、僕の中のイメージとしては合うかなと。猫田さんと初めて会ったのは京都GROWLYなんですけど、ソロでたまたま観たのが印象的で。2ndを制作するにあたって、アルバム当初にヴォーカリストや楽器陣をイメージして、そのイメージに当てはめたとき、猫田さんが初めに思い浮かんだんです。

ーー他の楽器陣に関しては、前作とメンバーが変わりませんもんね。

だいじろー : そうですね、現状一緒ですね。

ーー前作では、5人で集まることはほとんどなかったとおっしゃっていましたけど、今作を作るにあたっては一緒にスタジオに入る回数は増えたんでしょうか。

だいじろー : 全然集まらなかったです(笑)。それぞれ住んでいる場所がバラバラなので、普段は個人で練習して、京都のスタジオに集まって練習するっていうのが現状多いパターンですね。

今作で、JYOCHOとしての軸みたいなものを提示できたらいい

ーーここからはアルバムの曲について訊いていきたいのですが、1曲目「Lucky Mother」は、ドラムで始まり、ピアノ、ギター、フルート、ベース、歌が入るという流れで、イントロダクション的に各パートの音を繋げていく構成になっています。各メンバーの音を際立たせるというか、紹介するようなイメージがあるのかなと思ったのですが。

だいじろー : まさにそうです。今作で、JYOCHOとしての軸みたいなものを提示できたらいいなと思っていたので、オープニングじゃないですけど、イントロダクションみたいな楽曲を作りたいと思って作りました。

ーー今作は空間を感じる生々しい音がするので、スタジオに全員入って一斉に録っているのかなとも思ったんですけど、今の話を聞いていると、そうでもないんですよね。

だいじろー : レコーディングは、すべて別々で録っています。猫田さんは東京で録って、他は京都で録っています。

ーーそれが本当に不思議で。各楽器のパートもかなり複雑じゃないですか。それをバラバラで録るにあたって、まず何から始めていくんでしょう。

だいじろー : 録る順番は普通のバンドと変わらないと思うんですけど、ドラムとベースのベーシックを録って、あとは、ギター、フルート、ヴォーカルの順番ですね。本当はあんまりよくないかもしれないんですけど、僕的にはどっちが先でもいいかなっていうのはあったので。

ーー楽曲は譜面にして共有しているんでしたっけ?

だいじろー : 譜面にはしていないですね。例えば「Lucky Mother」やったら、まず僕が打ち込んで歌ってメンバーに投げています。わからないところがあったら1個ずつパートを送るんですけど、みんな耳コピで出来るので譜面に書く必要もなくて。器用な人たちだと思っているので、今のところは問題ないです。

ーー複雑なリズムも全部打ち込みなんですよね。それこそ衝動で出来るように感じないんですけど…。

だいじろー : 無意識に考えているところは考えていると思うんですけど、特に意識はしていないですね。今作に関しては、ドラムもフルートも歌も割と全部そのままです。僕が打ち込みで表現できひんところとか、ここタッピングした方が響きええやろみたいなところはやってもらっているんですけど、好きでお願いしているプレイヤーさんたちなので、僕の好みになるっていう安心感がある。アレンジが必要な箇所もわりとすんなりといきます。特にベースのシンディさんとかは、ちょっと前から京都界隈で繋がっているんですけど、音選びもやっぱり好きだし、そういう基準で選んでいます。

ーーちなみに、ミックスとマスタリングもだいじろーさんがやったんですか?

だいじろー : ミックスとマスタリングはまた別のところでやっていますね。

ーーかなり細かく指示とかもされているんじゃないですか?

だいじろー : あまり出してないと思いますけどね。

佐々木プロデューサー : いや、だいじろーはめっちゃ出している方です(笑)。音の質感も粒感もすごく一音一音、指示を出しています。

だいじろー : そうなんや(笑)。今作は、ミックスで詰めて、マスタリングで質感を損なわずにレベルを揃えるっていうイメージで作っています。特に素材感を活かすというか、生々しく作ったんです。それを損なわずにマスタリングをしてもらって、いろんなスピーカー、イヤモニとかで聴いて判断しました。

ーー2曲目の「碧い家」に関しては、どうやって歌っているんだろうっていう疑問がわくぐらい、歌うのが難しい曲ですよね。

だいじろー : 僕もそれは思いますね(笑)。「碧い家」に関しては、これこそ衝動で作ってしまっているから、完成して、一晩寝て、次の日に「もう1回確認しよう」と思ったら、全然乗れへん音楽になっていて。でも、それはそれでいいなと。拍子も全然規則性ないし、全部バラバラ。でも出来たもんはしょうがないから、ある程度歌のイメージ歌を乗せて猫田さんに投げたら、黙って練習してくれはってて。次にスタジオ一緒に入った時にはしっかり歌っていました。そういう力がすごくある方で、なんでもやりますみたいなのがすごいなと思っています。

ピュアな視線で見てみようという挑戦だったりする

ーー前回と一緒で、すごく高度な演奏をしているのに、それが表に出すぎないところがJYOCHOの特徴だと思います。JYOCHOのバランス感によってポップスに聴こえるけど、聴けば聴くほど、とてつもないことをしている。

だいじろー : 特に今作はそうだと思います。歌物なんやけど、しっかり聴いたら、めちゃくちゃ裏返っているとか。

ーー下手したらテクニカルな部分ばかり表に出ちゃうこともあるのに、本当に角がないというか聴きやすい。前回のインタヴューで、1番大切にしている部分は企業秘密だとおっしゃっていたんですが、それも今作には関連しているんですか。

だいじろー : もちろん関連しています。テクニカルに持っていくことも出来るし、めっちゃ歌物も作ることも出来るんですけど、それやったら自分じゃなくてもいいやっていうのがあるので、自分が出来るものを作られたらいいなと思っています。

ーー3曲目「hills」ですが、全曲の中で、1番生々しさや空間性を感じる楽曲でした。広い部屋で音を鳴らしている感じがするというか。

だいじろー : 基本的に、それはすべての曲で意識しています。1曲目から7曲目まで、音源が近くで鳴っているような曲作りを目指したんです。「hills」に関しては、アコースティックなので、より温かみがあって生っぽい感じがするんじゃないかな? アコギはマイクで生で録っているから、そういう印象は強いかもしれないですね。

ーー4曲目「tree,stone」の冒頭では波のような音がしますけど、これはだいじろーさんによるフィールド・レコーディングですか?

だいじろー : そうですね。京都の清滝っていうめっちゃ好きな川があるんですけど、家からめっちゃ近くてたまに浮かびに行くんです(笑)。言語化できない感情とか意識、シーンや景色が自分の中で多くて。そういうのって言語化するのが難しいんですけど、音楽やったら出来る時があるんですよ。それをJYOCHOとして表現していくのが僕の中のコンセプトでもあります。「tree,stone」は、それを音にしようと思って作った曲。あと、京都の清滝ってめちゃ心霊スポットなんですよ。前に大きなトンネルがあって、深夜通ったらめっちゃ人が追ってくるらしいんです。

ーーえぇ?! だいじろーさんは見えたことがない?

だいじろー : 全然見えないんです(笑)。

ーー(笑)。もともと清滝は、だいじろーさんにとって特別な場所だったんですか。

だいじろー : そうですね。蛍がめっちゃ見える場所で、幼い時からよく遊びに行っていたし、シンプルに場所として好きですね。

ーー5曲目「ほんとうのかたち」はシンプルな曲ですけど、こういう曲を入れるっていうのはどういう効果を狙っているんでしょう。

だいじろー : アルバムの流れとして意識はしていて、ストンと落ちる時があってもいいかなと思ったんです。「tree,stone」を作った時に、その後に続く歌が入ったらいいなと思ったのと、猫田さんの声を聴いていたらアコースティックで1曲聴かせたいなと思うようになって書いた曲です。前回にも、rionosさんの歌だけで聴かせたいと思って書いた曲が入っています。

ーー6曲目「三つに分けること」ですが、今作の中で1番演奏面でここがこうだってポイントがなかなか出てこなくて、逆にメッセージ性みたいな部分が際立つものになっているのかなって思ったんですけどう。

だいじろー : この曲に関しては、1番抽象的かなと思いますね。意味までは言わないですけど、「ほんとうのかたち」のテーマと、「三つに分けること」のテーマは自分の中でリンクしていて。気づいていただいたかわからんないんですけど、「ほんとうのかたち」のアウトロと、「三つに分けること」のイントロって実はギターのフレーズが繋がっている。キーは違うんですけど一緒のことをしているんです。そういう仕掛けや発見も全体的に散りばめているので、おもしろいかなと思います。

ーー曲と曲が有機的な繋がりを持っているんですね。

だいじろー : たとえば「碧い家」と「hills」もギターのフレーズとか、色んな要素で実は繋がっているんですよ。でも、これは僕も綿密に計算してやっている訳ではなく、遊びでやっているので気づかなくてもいいと思っています。テーマ的にもそうやし、こんなんあったら楽しいかなって感じですね。

ーー7曲目「グラスの底は、夜」は、MVにもなっているリード曲です。


JYOCHO『グラスの底は、夜』Official Music Video

だいじろー : イントロを作った時に、この曲はリードにしたいと思っていたんです。「グラスの底は、夜」と「碧い家」、両方リードのつもりで作ったんですけど、この曲に関してはサビメロから作ったということもあってか、1番顔になるような楽曲になったかなと思いますね。

ーー本作は、超自然的な感じだったり、終末から新しく何かが始まるようなイメージもあって壮大さを感じます。今作のテーマは、どういうものなんでしょうか。

だいじろー : タイトル通り『碧い家で僕ら暮らす』というテーマにしたんですけど、自分が住んでいる地球で普通に生きていて感じたことだったり、シンプルにいいなと思ったこと、そういうものをもうちょっとピュアな視線で見てみようという挑戦だったりするんです。自分の意識や頭の中を突き詰めていくと、必ず他の人が関わってくるので、それについて考えていることも曲に入れました。今まであまり自分のことに関しての曲は書いたことがないし、書きたいとも思わなかったんですけど、やっとそういう感情が自分の中に芽生えてきて。それがいいことなのか悪いことなのかっていうのは自分でもわからないんですけど、特に「グラスの底は、夜」とかは、自分のことを書いています。

ーーそこはこれまでと1番違う大きな変化ですよね。さらに待望のライヴを予定されています。どんなイメージでライヴをしようと考えていますか?

だいじろー : ライヴに関しては、毎回あまりイメージしないようにしていて。その場所場所でライヴをしたいというのもあるし、そこまで決め込んでも器用に表現出来るタイプじゃないから。あと、すぐふざけるので(笑)。ちゃんと空気感を作ってもダメなんですよ。嘘っぽくなるというか。なので、しっかりと普通にやります。その時に出したい音も変わるし、その場の空気を感じながらやれたらなと思います。

前作も合わせてチェックしよう!

JYOCHO / 祈りでは届かない距離

【Track List】
01. family
02. 安い命
03. furusato
04. 故郷
05. 太陽と暮らしてきた
06. あの木には私にはないものを
07. 365

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 258円(税込) / アルバム 1,234円(税込)

>>リリース時のインタヴューはこちら

LIVE INFORMATION

”Next Music from TOKYO ” Canada tour
2017年10月6日(金)@Toronto LIVE@ The Rivoli
2017年10月7日(土)@Toronto LIVE@ Lee's Palace
2017年10月8日(日)@Montreal LIVE@ Divan Orange
2017年10月11日(水)@Vancouver LIVE@tba

JYOCHO『碧い家で僕ら暮らす』リリース・ツアー
2017年10月22日(日)@京都GROWLY
2017年12月3日(日)@渋谷O-Crest
チケット一般発売 : 9月16日(土)10:00〜

PROFILE

JYOCHO (読み : じょうちょ)

2016年、京都にて始動。超絶テクニックを誇るギタリスト"だいじろー"こと中川大二朗(ex.宇宙コンビニ)が始動したプロジェクト"JYOCHO"(じょうちょ)。12月、1st mini album『祈りでは届かない距離』をリリース。プログレッシヴ~ポップスなど様々なジャンルを通過した音楽性に、テクニカルなトラック、温かみ、激情をふんだんに盛り込んだ、まさに情緒感たっぷりな、JYOCHOにしかできない独自の世界観を構築する。

>>JYOCHO オフィシャル・サイト

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インタヴュー

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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