時代の移り変わりを表現する『PORTRAITS』──Rie fuが導き出した流行への回答
1985年、東京生まれ。7歳から10歳までをアメリカ東海岸メリーランド州で過ごし、イギリスの大学ではファイン・アートを専攻。シンガポールでも暮らした経験があり、海外的視点を欠かさないRie fu。画家としても活動している彼女からコンセプチュアルなニュー・アルバムが到着。1970年代のカーペンターズやカントリー・ミュージックを自然に通過してきた彼女が、音楽とアートを融合させたプログレッシヴなポップ・アルバムを制作。感度の高い彼女ならではの強いメッセージ性は、現代にはびこる“インスタ映え”や、社会全体への1つの回答であると考えられる。海外生活を経て、海外から見た日本、そして言葉の美しさを再認識した彼女のニュー・アルバムをOTOTOYではハイレゾ配信のスタートとともにレヴューをお届けする。
音楽とアート、2つの視点で表現するニュー・アルバムが配信リリース!
Rie fu / PORTRAITS
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 270円(税込) / アルバム 1,944円(税込)
【収録曲】
01. Better View
02. Portrait
03. Clue
04. Don't Bother, Brother
05. The House
06. One
07. So Is She
08. Midnight Feast
09. Lonesome Scholar
10. Some Day
【REVIEW】 Rie fu 『PORTRAITS』
友達とランチを食べる。フォトジェニックな料理と自分たちを並べた自撮りを撮ってから。表情が悪かったら取り直して、フィルター選んで加工して。ささくれの傷やニキビはスタンプで隠して、綺麗な部分だけを切り取ったらインスタグラムにアップ。ついでにストーリーにただランチを食べるだけのループ動画を投下。あ、そうだ一応ツイッターにもなんて、以下略。
ポートレイトとはなんなのだろうか。広義的にいえば自撮りもポートレイトで、インスタグラムには飾られたポートレイトが氾濫している。イギリスの大学でファイン・アートを学び、現在はロンドンを拠点に画家としても活動しているRie fuがリリースした最新作『PORTRAITS』には、そんな今日に至るまでの歴史が縦軸で表現されている。
ザ・ビートルズを彷彿とさせるメロディーを下地に、〈“この写真はまるで別人” / “振り返ると物語は変わっていく”〉と歌うM1「Better View」から自身のルーツでもあるカントリー調なM2「Portrait」、M3「Clue」、M4「Don't Bother, Brother」。そこからアルバムはプログレッシブな展開を見せていく。妙な力みが見られない自然体のシンセ・ポップが奏でられるM6「One」、怪しげで不穏なチェンバロとリバーヴのかかったヴォーカルが特徴的なM8「Midnight Feast」、クラシカルなピアノと日本語詞が荘厳なハーモニーを奏でるM9「Lonesome Scholar」、広大な地平線と豊かな自然のなかで佇んで歌っているかのようなM10「Some Day」。
M1からラストに向かって、壮大さが増していく楽曲構成は、絵画が写真的役割だったプリミティブな中世から、カメラが誕生し、携帯が生まれ、写真に加工ができるようになり、撮った写真がオリジナルなものとして扱われなくなってきた歴史を音楽として映しているかのように思える。
つまり、このアルバムで表現されていることは懐古的な批判ではない。時代の移り変わりを受け入れ、楽しみ、そして未来を想像すること。Rie fuが表現したかったことはそういうことなのではないだろうか。(Text by 高橋秀実)
Rie fuの過去作品はこちら
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LIVE SCHEDULE
EVENT SCHEDULE
〈Rie fu プレミアムライブ〉
2017年9月15日(金)@コニカミノルタプラネタリウム“天空”in東京スカイツリータウン®(東京スカイツリータウン イーストヤード7階)
〈Rie fu Live & Dinner〉
2017年9月22日(金)@神戸ザ・ガーデンプレイス蘇州園
PROFILE
シンガー・ソングライター、油彩画家。日本語と英語がミックスされた歌詞や、カレン・カーペンターに影響を受けた歌声が特徴。幼少期をアメリカで過ごし、現地で賛美歌などに触れた事がきっかけで歌に興味を持ち始める。2004年デビューと同時にロンドンに渡り絵画を学び、現地のミュージシャンとも親交を深める。2007年ロンドン芸術大学卒。以後、音楽活動と合わせて定期的に個展を開く等、アートと音楽を繋げる活動を続けている。近年では、ものづくりの過程が垣間みられる工事現場をテーマとした絵画を描く『工事現場フェチ画家』としても制作を続けている。ピアノ、ギターを演奏し、他アーティストとのコラボレーションやCM音楽制作等、活動の幅を広げている。ロンドン在住。
・公式HP : https://riefu.com/
・Twitter : https://twitter.com/riefuofficial