2017/07/05 00:00

人と人とを交差させ、響かせる。──『SYMPHONY』が掘り起こす、あの頃の記憶

2015年にリリースしたシングル「HURTS」以降、注目を集め続ける京都在住の4ピース・バンド、Homecomings。昨年、2013年の“ROOKIE A GO-GO”出演から3年ぶりに〈FUJI ROCK FESTIVAL〉の舞台に立ち、観客の盛り上がりがフジロック随一とも言われる“レッドマーキー”への出演を果たす等、ライヴでの活躍が目立っていたなかで、待望の新作『SYMPHONY』をリリースする。本作で、彼らは殻を破ったと言えるだろう。バンド最高の名曲と評される「HURTS」を超える名曲が誕生した。新曲4曲 + REMIX1曲のミニ・アルバムではあるが、今年を振り返ったときに鮮明に覚えているアルバムになっているはずだ。容易く語られがちなセンチメンタルやノスタルジーに、これが本物だと言わんばかりの、心の機微を捉える名曲づくしのアルバムを、OTOTOYでは独占ハイレゾ配信のスタートとともにレヴューをお届けする。

〈FUJI ROCK FESTIVAL'16〉を経て成長したホムカミのミニ・アルバムが完成!

Homecomings / SYMPHONY

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 378円(税込) / アルバム 1,404円(税込)

【収録曲】
01. PLAY YARD SYMPHONY
02. SLACKER
03. PAINFUL
04. WELCOME TO MY ROOM
05. PLAY YARD SYMPHONY(BUSHMIND remix)

Homecomings/SYMPHONY trailer
Homecomings/SYMPHONY trailer

【REVIEW】 Homecomings

無敵感。なぜあの頃はあんなに根拠のない自信だけで生きていけたのだろうか。身勝手で、不遜で、大人になった気になって達観して。学校という小さなコミュニティのなかでは自分が全て正しい世界。羞恥心と自尊心だけは一人前に持っていて、傷つくことに対しては人一倍敏感で。夢も目標もなく、漠然とした”楽しい”だけを求めて無茶をして、刺激がないと退屈だと嘆いて時間をゴミ箱に捨てていく日々。それでもなぜか自分には自信があって、この先成功しかないと思い上がっていた。

『SYMPHONY』を聴いて、そんな幼かった自分の記憶がつい蘇ってしまった。当たり前だが、人には人それぞれ思い出があって、お互いの思い出が繋がることなんてことは滅多にない。しかし、この『SYMPHONY』は、お互いのまだ子供だったときの記憶を感覚的な部分で交わらせ、思い出を美化させて倍音で響かせてくれる、文字通りの”交響曲”たちなのだ。

M1「PLAY YARD SYMPHONY」のキックとスネアがまるで跳ねているバスケットボールのように聴こえる〈The basketball bouncing down the basement stairs〉” 地下室の階段を跳ねるバスケットボール”のサウンド。遊んでいるのか、練習しているのか。そんな風景が頭に浮かぶ音像に、バンド初のストリングスアレンジが加わることでまるで広い運動場のような壮大なスケールを感じさせる。運動場でバスケ。秘密の場所に屯っておしゃべり。放課後、コンビニに寄って買うアイス。いろんな人の思い出を想像させてくれるこの楽曲は、ホムカミのいままでのアンセムであった「HURTS」を超える名曲だと断言できる。

Homecomings/PLAY YARD SYMPHONY
Homecomings/PLAY YARD SYMPHONY

M2「SLACKER」は”よう怠け者どの”ではじまるキャラクターになりきった歌詞が魅力的。彼女のことを慕う怠け者が描かれ、何もできずに自堕落に毎日を過ごす自分もどこか不思議とカッコ良く見えてくる。M3「PAINFUL」では、ホムカミならではの行間を辿っていくアメリカ文学のようなロマンチックな歌詞から思春期の甘酸っぱさが感じられ、M4「WELCOME TO MY ROOM」では1stアルバム『Somehow, Somewhere』収録の「DANCING IN THE MOONLIGHT」を彷彿とさせるホムカミ節全開のモータウン・ポップが印象的。全体を通して切なさや悲哀、羨望や憂いを主人公的思考で運命的に捉えてしまう学生のある種の無敵感が歌詞に滲み出ている。

これまで日常のある部分を切り取ってきたストーリー・テリングなHomecomingsの音楽は、ついに僕達の思い出にまで手を伸ばし、共感だけには留まらない、心の機微さえも精密に捉えた音楽に深化を遂げたと言っていいだろう。そして『SYMPHONY』は少し大人になった僕に、あの頃あった無敵感が”幼さ”と同居していたことを気付かせてくれる。(Text by 高橋秀実)

Homecomingsの過去作品はこちら

LIVE SCHEDULE

EVENT SCHEDULE
〈Homecomings presents "BOWLER'S DELIGHT"〉
2017年7月5日(水)@東京 渋谷 O-nest
2017年7月16日(日)@宮城 仙台 enn3rd
2017年8月18日(金)@京都 京都 磔磔
2017年8月27日(日)@石川 金沢 vanvan V4

TOUR SCHEDULE
〈Homecomings "PLAY YARD SYMPHONY" TOUR〉
2017年9月7日(木)@愛知 名古屋 TOKUZO
2017年9月8日(金)@大阪 梅田 シャングリラ
2017年9月9日(土)@東京 渋谷 WWW
2017年9月15日(金)@福岡 the voodoo lounge
2017年9月16日(土)@広島 BANQUET(SPACEO92)

Homecomingsのライブ詳細はこちらから

PROFILE : Homecomings

2012年結成。京都在住、女の子3人+男の子1人の4ピース・バンド、Homecomings。通称ホムカミ。

シングル『HURTS』のリリース以降知名度が急上昇。昨年5月には2ndアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』をリリースし過去作が全てロング・セラーを記録している。海外文学やUSインディーに影響を受けたサウンドと歌詞は一級品。なかでも歌詞はインディ・ロック・シーンで卓越したものとなっており、たびたびそのステーリー・テラーぶりから海外文学と同等レベルと評される。ギター・ポップと形容されることが多いが、近年では洋楽志向のインディーからオルタナまで幅広い層に向けたギター・ロックが彼らの魅力となっている。

今年2月にはイラストレーターのサヌキナオヤ氏と新たなイベント〈New Neighbors〉をスタートさせ、映画『アメリカン・スリープオーバー』を上映。映画を見終わった後にライヴを行う、音楽 × 映画の斬新な企画にチケットはソールド。好評を博した。そして本作のジャケットはサヌキナオヤ氏がイラストを担当。デザインは映画「アメリカン・スリープオーバー」のパンフレットデザイン等も手掛ける佐川まりの(gucchis free school)が手がけるなど、繋がりが産んだ作品となった。

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