2017/05/22 13:29

新編成で送りだすYogee New Wavesの2nd──やつらの新たな“波”をとらえろ

1st『PARAISO』で高い評価を受けたのち、メンバーの脱退や加入などを経て、ついにYogee New Wavesが2ndアルバム『WAVES』を完成させた。約2年半振りのフル・アルバムは、そう、とにかく2017年の夏、この国のインディ・ロックを象徴をアルバムのひとつになるだろう。これまでシングル・カットされてきた楽曲も含めて、全曲捨て曲なしの11曲が詰まったアルバムだ。OTOTOYでは本作をハイレゾ配信するとともに、アルバムまとめ買いで歌詞PDFが付属する。ということで、また記事では、Yogee New Wavesのことが好きすぎるOTOTOYスタッフ、23歳、鈴木雄希による熱血のロング・レヴューをお送りしよう。

アルバムまとめ買いで歌詞PDF付き

Yogee New Waves / WAVES(24bit/96kHz)
【Track List】
01. Ride on Wave
02. Fantasic Show
03. World is Mine
04. Dive Into the Honeytime
05. Understand
06. Intro (horo)
07. C.A.M.P.
08. Like Sixteen Candles
09. HOW DO YOU FEEL?
10. SAYONARAMATA
11. Boys & GirlsⅠ (Lovely Telephone Remix)

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 260円(税込) / アルバムまとめ購入 2,000円(税込)

REVIEW : Yogeeが僕らの世代にもたらしたもの


text : 鈴木雄希


ああ、最低だ。さっき編集部の西澤先輩に誘われて、ラーメンを食べたまではよかったんだ。だけど、帰り道、目の前にあるのはパンクした自転車。僕はこれにのってオフィスまで帰らなきゃならないのに、ラーメン屋から出てきたら、とにかくパンクしていたのだ。OTOTOYのオフィスまできっかり歩きなら、20分はある。今日は5月なのに30度近くありやがる、暑い。でも、今日はそんなことで僕はめげない。だって、会社に帰ったらYogee New Wavesの新作がある。

Yogee New Wavesは僕にとって最高のバンドのひとつだ。前の作品の『PARAISO』は自分の音楽体験をひとつ更新した、そんな作品だった。新作『WAVES』は、だから、自分にとってはとてもとても楽しみにしていた作品だ。目の前のパンクした自転車をひきづって、15分の道を押して帰ったとしても『WAVES』はきっとまた僕の音楽体験をひとつ別のものにしてくれるんじゃないかと思っている。このラーメンで膨れて若干気持ちわるくなった胃をもってしても、恐らく。

1stの『PARAISO』は、3年経った現在でも僕のなかでしっかりと輝いている。例えば収録曲の「Good Bye」、ああ、いまでもそのサウンドは、こんな暑い初夏の日、空気に漂うように頭のなかに自動再生される。なんと言っても角舘健悟のその声、メロディとともにその“言葉”を伝える、どこかブルージーな声質、そしてその後、シティ・ポップ・リヴァイヴァルを牽引するバンドのひとつとなったそのサウンド。柔らかにレイドバックしたグルーヴは、僕がそれまで聴いていた、ありふれたロック・バンドとは違った魅力に満ち溢れていた。さらに言えば、そのサウンドに巣食っているこの国のポップ・ミュージックの歴史の厚み、そこをたどる上でもひとつの象徴的な一点だった。例えばその後にリリースされた、サニーデイ・サービス『Dance To You』も僕のような世代からみれば、ヨギーの存在がなければ聞こえ方が違っていたかもしれない。いや、本当に。

さらに豊かになった音楽性を示し出す新作


そして1st『PARAISO』からの大きな違いといえば、メンバーの脱退(ギターの松田光弘、ベースの矢澤直紀がそれぞれ2015年5月、2017年1月に脱退)と、新たな加入(ギターの竹村郁哉、ベースの上野恒星が2017年1月に正式加入)を経て新体制となったことだ。結論からいえば、やっぱり、目の前のパンクした自転車を乗り捨てて、走り出したいぐらい最高の作品になっていると僕は思っている。全体的な感想を言えば、どこかガレージ・ロック感というか、エッジーなギターが引っ張っているそんな感覚が気持ちいい。まさにYogeeの王道とも言えるゆったりしたとした「Ride on Wave」ではじまり、アルバム全体を聴き、僕の耳にまずはとまったのは「Understand」だ。ポップでアップテンポの楽曲は新たなバンドの光る未来を指し示しているようで、バンド自体の新たな道を差し示しているかのような歌詞も印象的だ。このアルバムの中盤部分は、まさにロックンロールで、アクティヴな感覚の歌詞「World Is Mine」にしても、サイケデリックなギターが暴れる「Dive into The Honeytime」の突き抜けた疾走感にしても、バンドの新たな魅力を垣間見せてくれるようだ。これまでよりも言ってみればワイルドな新たな側面を表現しているかのようだ。


さらにこれらのバンドの新機軸を感じさせるサウンドと「Intro(horo)」(これはLPのB面のはじまりってこと?)をはさんで、『PARAISO』の最後に弾き語りで収録されていた「Camp」のバンド編成ヴァージョン「C.A.M.P」と、ある種、現在の体制への移行期とも言える時期のシングル収録の「Like Sixteen Candles」が続き、どこか「Intro(horo)」を挟んで、バンドの“いま”と“これまで”をも表現しているかのような感覚もある。女性コーラスを起用し、真夏の夜に吹く、一筋の心地良い海風のような涼しげな「HOW DO YOU FEEL ?」、アコギとエレキのそれぞれグルーヴが爽やかに絡み合う「SAYONARAMATA」、そしてローファイな電話口の声のような処理がなされた角館の声が、ブルージーにドラムマシンと会話するように歌う「Boys and Girls (Lovely Telephone remix)」。うん、やはりこのアルバム掛け値無しの傑作になっていると思う。ゆるぎない、角館の歌声の魅力、そして『PARAISO』で彼らが振りまいた日本語ロックの魔法はそのままに、さらにサウンド面でも厚みを増した、そんな作品ではないかと思う。

あ、もうパンクした自転車のことも気にしちゃいないのだ、たぶんこのアルバムの記憶ととともに最高の2017年の夏の思い出になるに違いない。

OTOTOYで配信中の過去作品

Yogee New Waves / CLIMAX NIGHT e.p.


彼らの才能を知らしめたEP。はっぴいえんどから、サニーデイ・サービスやフィッシュマンズなど1990年代にいたるまでの、この国のポップ・ミュージックのオーガニックな響きを継承する2014年の1枚。

Yogee New Waves / PARAISO (24bit/48kHz)


「CLIMAX NIGHT e.p.」で話題となった後の、待望の1stフル・アルバム。いわゆるシティ・ポップ・リヴァイヴァルを牽引したタイムレスな1枚。OTOTOYではスペシャル・コメンタリー付きのハイレゾ版を。

Yogee New Waves / Fantasic Show


7インチ・シングルの中から、すでにライヴでも評判を呼ぶ新曲「Fantasic Show」の配信。ギターのカッティングとワウが印象的なファンキーで最高のダンス・チューン。マスタリングを手掛けたのは、ゆらゆらなどを手がけた名匠、中村宗一郎。

Yogee New Waves / Sunset Town e.p(24bit/48kHz)


1stから2ndへ、激動のバンド・キャリアをあゆむ彼らの通過点となった2015年のシングル。「Night is Coming」は浮遊感漂う8分に及ぶ長尺曲で新たな側面も見せた。2ndと1stを結ぶ、ある種の重要作。

PROFILE

Yogee New Waves

角舘健悟
粕谷哲司
上野恒星
竹村郁哉

2013年6月に活動開始。2014年4月にデビューep『CLIMAX NIGHT e.p.』を全国流通でリリース。その後『FUJI ROCK FESTIVAL'14』《Rookie A GoGo》に出演。9月には1st album『PARAISO』をリリースし、年間ベストディスクとして各媒体で多く取り上げられる。2015年2月に初のアナログ7inchとして新曲『Fantasic Show』を発表。12月には2nd e.p『SUNSET TOWN e.p.』をリリース。2016年はRISING SUN FES、GREENROOM FES、森道市場、STARS ON、OUR FAVARITE SHINGSなど多くの野外フェスに出演。2017年1月にBa.矢澤が脱退し、Gt.竹村、Ba.上野が正式メンバーとして加入し再び4人編成となり始動。 5月17日に2ndアルバム『WAVES』をリリース。

Yogee New Waves アーティスト・ページ

この記事の筆者

Yogee New Waves

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