2017/03/24 12:00

"特別感謝活動年"に放つ初ハイレゾーーKAN、弦楽四重奏と作ったセルフ・カヴァー・アルバムをリリース

シンガー・ソングライターのKANが、昨年芸能生活29周年を迎え"特別感謝活動年"とタイトルをつけ勢力的な活動の後半戦に、弦楽四重奏とともに作られたセルフ・カヴァー・アルバムをリリースした。彼自身初のハイレゾ音源作品にもなる。「愛は勝つ」「まゆみ」などの超名曲や、ビートルズのカヴァーも収録。数々の名曲を生み出してきたKANクラシックスの集大成を、ハイレゾでじっくり聴いていただきたい。

KAN / la RINASCENTE
【配信形態】
24bit/96kHz ALAC / FLAC / WAV / AAC

【価格】
単曲 540円(税込) アルバム 3,240円(税込)

【Track List】
01. Menuett für Frau Triendl
02. 世界でいちばん好きな人
03. CLOSE TO ME
04. いつもまじめに君のこと
05. 月海
06. キリギリス
07. Here, There and Everywhere
08. 愛は勝つ
09. まゆみ
10. 彼女はきっとまた
11. 星屑の帰り道

REVIEW : "特別感謝活動年"を華やかに彩るセルフ・カヴァー・アルバム

1987年にデビュー、1990年にリリースされたアルバム『野球選手が夢だった。』の収録曲だった「愛は勝つ」はその翌年に国民的ヒット曲になり広く浸透。以後これまでにも数々の名曲・迷曲を発表し、今もなお色あせない極上のポップスを奏で続けているKAN。昨年2016年で芸能生活29周年(KANは素数がすきなため、素数区切りでの付番や催しをおこなうことが多々ある)を迎え、"特別感謝活動年"と題して、2017年の今年も"後半戦"として記念活動をおこなっている。

その最たる活動が音源のリリース数だ。前作から実に約6年ぶりとなるオリジナル・アルバム『6x9=53』を2016年2月にリリース。その4ヶ月後の2016年6月に、2005年からスタートした彼のライフワークともいうべきの、全国をピアノ1台で弾き語るツアー『弾き語りばったり』シリーズの最新ライヴ・アルバム『弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば』をリリース。そして、"特別感謝活動年の後半"という微妙な位置づけをした今年2017年3月に、弦楽四重奏とともに作られたセルフ・カヴァー・アルバム『la RINASCENTE』をリリース。と、活動年の1年ちょっとで3タイトル。まさに"特別感謝活動年"と銘打ったからこそのペースともいえる。次作がいったい何年後のリリースになるのかも、ある意味、逆に楽しみなところだ。

最新のアーティスト写真

その最新作品『la RINASCENTE』(読み : ラ・リナシェンテ)は弦楽四重奏とともに作られた、セルフ・カヴァー・アルバムだが、まず何といってもドナルド・フェイゲンの『THE NIGHTFLY』をパク、いや、オマージュしたジャケット写真のインパクトだろう。ターンテーブルにタバコにマイクの構図は、譜面にえんぴつ、手回しのえんぴつ削り、そして察するに… 長年愛用していたと思われるガラケー、ソ連からの独立国、トルクメニスタンと書かれた分厚い本。それらを配置したということは、KANの人生ならびに音楽を作るうえで必要としてきた道具たちなのかもしれない。

作品内容についても簡単にふれておこう。弦楽四重奏用に編曲・リアレンジした9曲は90年代から00年代までの曲で構成されている中、1曲目はアルバムの始まりにふさわしい弦楽四重奏のための書き下ろし新曲「Menuett für Frau Triendl」。タイトルを訳すと察していただけると思うので、ここでは割愛する。初めて自分で弦のスコアを書きレコーディングした、思い出深い曲だという3曲目の「CLOSE TO ME」は、イントロのピアノが弦楽器が持つ繊細な重厚感を引き締めていたり、KAN自身が最も収録したかった曲のひとつ、5曲目の「月海」は、弦フレーズがまさに波のようにゆらいだりうねったりして、悲しい歌詞にぴったりと寄り添う名曲に仕上がった。唯一の他アーティストカヴァー曲となった7曲目。ビートルズの「Here, There and Everywhere」はKANいわく「オリジナル至上主義」とのことで、弦のラインの流れ上、ほんの一部だけコードを変えただけのほぼ完全コピーで演奏されたとのこと。そして、8曲目の「愛は勝つ」はいつものテンポよりゆったりと、じっくりと演奏されており、楽曲と歌詞の持つ力強さをさらに引き立たせている。10曲目の「彼女はきっとまた」に関しては、初出音源がほぼ打ち込みサウンドで作られということで、打ち込み音がどうアレンジされたのかが聴きどころだ。

カヴァー・アルバムは初出音源をどうアレンジしたのか聴き比べるのも楽しみなところ。セルフ・カヴァーならなおさら、初出音源との細かい違いを発見したくなってくる。弦楽四重奏とKANが織り成すとびきり上品なハーモニーを、クラシックには最適なハイ・レゾリューション・サウンドで楽しんでいただきたい。(text by 田尻菜穂子)

DISCOGRAPHY

KAN / 弾き語りばったり ♯19 今ここでエンジンさえ掛かれば

2014年10月から2015年6月にかけて行われた単身弾き語りツアーの全国28公演中、ライヴ・レコーディングした5公演からの選り抜き音源をパッケージング。

KAN / 6×9=53

前作から約6年ぶり! 素数年53歳のKANが素数周年に繰り出す、根本要、佐藤竹善、TRICERATOPS、桜井和寿 、馬場俊英、塩谷哲が参加した16作目のオリジナル・アルバム。

KAN / カンチガイもハナハダしい私の人生

ゆっくり時間をかけてじっくり練られた15作目は、定番の8ビートポップはもちろん、テクノ・シャンソン・ビッグバンドジャズなど、あらゆる音楽世界に手を広げた大作が並ぶ"ひとりワールドワイドアルバム"。

KAN / 桜ナイトフィーバー

ストック/エイトケン/ウォータマンのサウンドを強く意識した80年代調のビートに、 KAN作品特有の流麗なストリングスが美しい、とことんポップなディスコナンバー。 和田唱(TRICERATOPS)による痛快なスペシャルゲストギターソロも必聴。

LIVE SCHEDULE

Concerto col Quartetto da Muroia

2017年4月2日(日)@ティアラこうとう 大ホール

Daiwa Sakura Aid presents
芸能生活29周年記念 特別感謝活動年 Final Kegimental Live
【ロックンロールに拿捕されて】

2017年4月14日(金)@中野サンプラザ


>>オフィシャル HP

[レヴュー] KAN

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