2016/12/09 18:28

【REVIEW】BOMIとTokyo Recordingsが作り上げた唯一無二の音楽、BOMIの核心に迫る『A_B』完成!

BOMIが2年ぶりとなるフル・アルバムを『A_B』をリリースする。今作はBOMIが自らの半生を見つめ直し、自伝的にまとめるというコンセプト・アルバムとなった。水曜日のカンパネラ「ナポレオン」の製作や、宇多田ヒカルの『FANTÔME』に参加するなど目覚ましい活躍をした、小袋成彬率いるTokyo Recordingsをプロデューサーに迎え、今までのBOMIとはまた違った表情をした作品となった。そんな本作をハイレゾ配信すると共にレビューで紹介する。

BOMIの半生が綴られた「自伝的」アルバム!
BOMI / A_B(24bit/48kHz)
【Track List】
01. ハロー・ザ・ワールド
02. A_B
03. 記憶
04. スーパーガール
05. Good night!!
06. ロンリーロンリー
07. 初恋
08. 旅立ち
09. They don't know
10. ふたつの街
11. 空を辿れば

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
アルバム購入のみ 2,154円(税込)

REVIEW : BOMI『A_B』

このアルバムにおいて重要なことは、今作がBOMIの半生を振り返った自伝的アルバムであるということ。そして、そんな内省的な作品にも関わらず、作詞は全編にわたりTokyo Recordingsの小袋成彬(OBKR)が行っているということだ。BOMI本人が自身の半生を1万字の文章でまとめ、それにインスパイアを受けて小袋が作品に落とし込む、という一風変わった形で作品が作られた。私はその方法が非常にうまく作用しているように思う。

彼女の生い立ちは、非常に稀有なものであるようだ。
「生まれは、ニューヨーク。女優の母親(当時22歳)と、学生で留学中だった父親(当時21歳)のあいだに誕生した。そして、2歳半のときに両親が離婚し、一旦は母親の母国である韓国に、母親と一緒に引っ越すも、3歳になると父親側の家族に日本へ連れて行かれ、養子に入る。その後、血のつながりのない「母」と「祖母」と共に、18歳で上京するまで大阪にて暮らしていた。」(作品資料に記載されていたものを引用)


音源は今ほとんど聞くことは出来ないが、活動初期は、頭をベリーショート…というより丸刈りにし、本名の「宝美(ぼうみ)」として、自分の壮絶な半生を、切実で叙情的な歌を歌いあげてきた。これまでのインタビューによれば、そうやって「とにかく自分が生きていることを主張」してきたという。

しかし「その種の切実な悲しさや寂しさは10年も20年も続くもの」でなく、「歌っていくうちに悲しいフリをしていた」こと、「自分はいつまでも尾崎豊じゃいられない」ということに気付き、当時のBOMIの等身大なアウトプットとして、今まで私達が聞いてきたような明るくポップな歌を歌うようになったのだ。

「月曜のメランコリー」2015年リリース アルバム『BORN IN THE U.S.A.』収録
「月曜のメランコリー」2015年リリース アルバム『BORN IN THE U.S.A.』収録


「ビューティフォー」2013年リリース アルバム『ビューティフォーEP』収録
「ビューティフォー」2013年リリース アルバム『ビューティフォーEP』収録


そんな思考の変化を経て、今のBOMIはどうなのか。一聴してこの『A_B』は、サウンドから歌詞、歌い方まで、今までのBOMIとは全く違ったものになっている。そこにはやはりTokyo Recordingsという存在の介在が深く関係しているようだ。

「ふたつの街」アルバム『A_B』(今作)収録
「ふたつの街」アルバム『A_B』(今作)収録


「A_B」アルバム『A_B』(今作)収録
「A_B」アルバム『A_B』(今作)収録


「BOMIちゃんの今の話そのものがドラマみたいだから、それをアルバムにしてみたら、BOMIちゃんにしか歌えない歌になるんじゃないかな」。BOMIがTokyo Recordingsの小袋と出会い、交流を深める中で自身の半生を語った時の、小袋のこの反応が、自伝的アルバムというコンセプトのきっかけになったという。私たちがそうであるように、小袋という「他人」からみたら、彼女の半生は「ドラマみたい」なのである。むしろ、そういう客観性やある種の俗っぽさを通すことで、M6「ロンリーロンリー」の<気づけばママが二人 パパもいない>という歌詞や、M3「記憶」での韓国語での親子の会話のサンプリング(内容は「私の子どもはどこにいるのかな~」といったこと)といった、自分の人生を直接的表現で吐露するという、今までのBOMIには出来なかったことを可能にしたのではないか。結果的にそれはわかりやすい詞を求める今時の聴者の耳にも届くものとし、そして同時に外国人差別等、BOMIの身の回りで起きたことを中心とする社会への問題提起ともなっている。

Tokyo Recordingsはこれまでに、日本のメジャーシーンに対抗するような、汎用性の低い、他とは違う、「自分たちの音楽」を信じて活動してきた。
綿めぐみや今回のBOMIのプロデュースの際にはKendrick Lamarの「To Pimp a Butterfly」のような切実なリアリティーで、主張の強い、自分たちだけにしか奏でられない音楽を作りたいと繰り返し言ってきた。そしてその異物をポンと売ってしまうようなレーベルを運営したい、とも。


綿めぐみ(Tokyo Recordings所属)「災難だわ」2014年リリース アルバム『災難だわ』収録
綿めぐみ(Tokyo Recordings所属)「災難だわ」2014年リリース アルバム『災難だわ』収録


Tokyo Recordings


>>Tokyo Recordings official website 「LEARN MORE ABOUT US」



全てのものが複製されている現代で唯一複製出来ず、最後の「アウラ的芸術」と成り得るものは、人間自身の存在、すなわち人生ではないか。このアルバムは、BOMIという強烈な個人の人生の音楽でありながら、多くの人にも聞いてもらいたいといった思いも見事に昇華された、商業的芸術のひとつの在り方だと思う。(text by 柳下かれん)

LIVE INFORMATION

CINRA×Eggs presents 『exPoP!!!!! volume92』
2016年12月22日(木)
会場 : TSUTAYA O-nest
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
料金 : 入場無料 (without 2Drinks)
予約 : http://expop.jp/92.php

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PROFILE


BOMI(ボーミ)

2012年6月に日本コロムビアよりミニ・アルバム『キーゼルバッファ 』でメジャーデビュー。リード曲「キューティクル・ガール」が、スペースシャワーTVが主催する、その年最も輝いていたミュージックビデオ"Music video award50”にノミネートされる。ファースト・アルバムからは楽曲「エクレア」を映画「今日、恋をはじめます。」に提供し、好評を博す。これまでにフル・アルバム2枚、ミニ・アルバム4枚(デビュー前のタワーレコード限定版を含む)、昨年にはお面(グッズ)での配信シングル『Y.O.U』を発表している。2015年はOTOSATA ROCK FESTIVAL、ROCK IN JAPAN、SUMMER SONICなどのフェスへ出演。

>>BOMI official website

[レヴュー] BOMI

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