2016/08/25 15:29

北園みなみとKORGが奇跡のコラボ! 「On the Sunny Side Up Street」期間限定フリー・ダウンロード開始

この夏、シンガー・ソングライターの北園みなみが、電子音楽メーカーのコルグとコラボレーションし楽曲を制作。両者の出会いは2015年の冬までさかのぼる。北園みなみ3枚目のミニ・アルバム『Never Let Me Go』で使用されたシンセ機材のラインナップに感銘を受けたKORGが北園に声をかけ、2016年3月にKORG系列のG-ROKSスタジオ内に80年代のシンセ機材を取り揃えた"80’s Room"が誕生したのをきっかけに「北園の音づくりにぴったりなスタジオで新曲を作ってみてはどうか?」というKORG側の熱い思いにより、インストゥルメンタル作品「On the Sunny Side Up Street」が完成。コルグサイトでも北園へのインタヴュー公開とSOUNDCLOUD視聴が可能だが、OTOTOYでは本楽曲を1ヶ月の期間限定で独占フリー・ダウンロードをおこなうとともに、楽曲制作の場となった80’s Roomにて高橋健太郎が北園みなみにインタヴューをおこなった。

2016年9月24日までの期間限定フリー・ダウンロード!

北園みなみ / On the Sunny Side Up Street

【配信形式】
ALAC/FLAC/WAV/AAC/MP3


今回使用された80s Roomのシンセ機材名:
Fender Rhodes Student Model / KORG BX-3 / KORG POLY-SIX / KORG M1 / KORG Wavestation / KORG Kronos / Sequential Circuits Prophet-5 / Sequential Circuits Prophet-600 / YAMAHA CP-80 MIDI / YAMAHA DX7

INTERVIEW : 北園みなみ at 80’ s Room(G-ROKSスタジオ)

京王線の下高井戸駅から徒歩数分のところにあるG-ROKSスタジオは、OTOTOYでも様々なプロジェクトで利用させてもらってきたスタジオだが、この2016年にスタジオは全面的なリニューアルをした。それに合わせて、オープンしたのが”80’s Room”と呼ばれるリハーサル・スタジオで、ここにはコルグをはじめとする各社のヴィンテージ・キーボードが設置されている。  Fender Rhodes Student Model、YAMAHA CP-80、KORG POLY-SIX、M1、Wavestation、 Sequential Circuits Prophet-5、Prophet-600、Oberheim OB-Xa、YAMAHA DX7、YD9000Rなどなど。これらが展示されているのではなく、リハーサル・スタジオを時間単位にレンタルすれば、使い放題なのだ。PC内のソフトウェア・シンセ全盛の昨今だが、音楽史を変えた歴史的な製品群に触れてみるのは、その時代を知らない若いミュージシャンにも貴重な体験になるだろう。鮮やかなイエローのFender Rhodes Student Modelなどは、見ているだけでゾクっとするような美しさを放ってもいる。

 そのG-ROKSの80’s Roomとのコラボレーションで、フリー・ダウンロードの楽曲を制作したのが、シンガー・ソングライター / アレンジャーの北園みなみだ。「On the Sunny Side Up Street」と題された1曲は、80’s Roomにレコーディング機材を持ち込み、スタジオ付属のヴィンテージ・キーボードやシンセサイザーを縦横に使って、制作されたという。曲は明るいインストゥルメンタル作品であり、北園みなみの新境地を強く感じさせるものでもある。

 ちなみに、北園みなみは2012年にインターネット上に現われて、急な注目を浴びたミュージシャンだ。長野県松本市出身、現在26歳の男性である、というくらいしか、本人についての情報はない。女性のような「北園みなみ」というネーミングはもちろん変名。本名は定かではない。また顔写真なども一切、メディアに出たことがない。  しかし、70~80年代のAORやフュージョン、ジャズ、ファンクなどをベースにしつつ、プログレッシヴな感覚も加えたポップ・チューン、その恐ろしく精緻かつマニアックな作曲 / 編曲能力は、すでに一聴して彼だと分かる世界を築きつつある。実像は謎めいていても、サウンドの記名性は高いのだ。  僕は2012年にSoundCloudで曲を聴いて以来、Twitterなどでも彼をフォローしてきた。2014年にポリスターと契約した北園みなみは、その後、3枚のミニ・アルバムを発表。そこではミュージシャンの生演奏も交えるようになり、アルバムごとに世界を広げてもいる。

 今回の「On the Sunny Side Up Street」のフリー・ダウンロードに合わせて、過日、G-ROKSの80’ s Roomで北園みなみに対面。インタヴューをする機会を得た。当然ながら、写真撮影などはNGであり、人物の印象についても書かないことにする。以下、想像を膨らませながら、会話を楽しんでもらえればと思う。

インタヴュー&文 : 高橋健太郎
撮影 : ペータ

バランスに強いこだわりがあるんです

ーー今回の「On the Sunny Side Up Street」という曲は、このG-ROKSの80’s Roomですべて録音されたんですか?

北園 : いいえ、ドラムとベースは自宅で録音しました。ドラムは打ち込みで、ベースは生です。それからここで鍵盤類とギターを。サックスはG-ROKS内の他のスタジオで録音しました。

——サックスは生のサックスなんですね。音源を使った打ち込みなのか、どっちかなと思っていました。

北園 : EQ(イコライザー)で上を少し削ったので、サンプリングぽい感じになっているのかもしれません。

——その他のパートはすべて80’s Roomの鍵盤類なんですね。

北園 : そうです。

——北園さんは世代的に実機をいじり倒すよりは、最初からソフトウェアだったんじゃないですか?

インタヴュアーの高橋健太郎

北園 : そうですね、DAW(Digital Audio Workstation、略称DAW)から入って、ずっとDAWでやっています。

——生の鍵盤類でレコーディングするというのは、どんな体験でしたか?

北園 : 1台ごとに使った時間は1時間使ったか使わないかくらいでした。録音の時だけ使いました。面白かったのは、ヤマハのCPだとかDX7だとか、普段からサンプリングやモデリングの音源を使っているものの実機を触った時の差ですね。ああ、こんなに再現されていない、別物なんだなと思いました。

——実機のつまみ触っての音作りはまどろっこしくありませんでしたか?

北園 : ソフトだとプリセットが沢山あるじゃないですか。実機はいちから音を作らなくてはならなくて、それもマニュアルを読まないと分からなかったりするので、音作りはマニピュレーターの小池実さんにお願いしました。

——ここにあるような実機が使われている70~80年代のレコードを参考にしたりしましたか?

北園 : 参考音源としてボブ・ジェームスのアルバムを持ってきたり、あとはうちでシミュレートしたソフトウェアで作った音源をマニピュレーターさんに聞かせたりもしました。

——これまで作ってきた作品はほとんどが歌ものですよね。今回はインストゥルメンタル作品ですけれど、その分、シンセサイザーの音色は重要ですよね。

北園 : シンセと生楽器が並行して鳴っているものが好きで、自分の中ではそのバランスに強いこだわりがあるんです。どちらにも寄り過ぎないバランス。音色的にも生楽器とシンセで分離したのも好きじゃない。そのこだわりはありつつ、インストということで、何か新しいことに挑戦した感じはありました。

ーーミックスはどこでやったんですか?

北園 : 祐天寺のスタジオメックで、エンジニアの谷明巳さんにお願いしました。

ーー仕上がりを聞いた印象は?

北園 : 今までとは違うものができた感じがします。他人が作ったみたいに聞こえないでもない。自分の中にもいろいろな波があって、その波の極端なところで作られたもののように思います。

名古屋にいた最後の時期から宅録を始めました

ーー北園さんのキャリアですけれど、2012年頃にネット上で注目されて、僕もその頃からフォローしているんですが、ずっと松本で創作活動をしているんですよね?

北園 : 2012年に松本に戻ってきてから、ずっと松本です。それ以前は名古屋にいました。

ーー名古屋でも音楽活動をやっていたんですか?

北園 : 音楽の専門学校に行って、一時期はジャズ・ミュージシャンになろうかという夢もあったんですが。

ーー楽器は何だったんですか?

北園 : コントラバスです。それで名古屋のジャズ・シーンでちょっと忙しくしていた時期もあったんですが、その界隈があまり居心地が良くなくて、それで名古屋にいた最後の時期から宅録を始めました。

ーー以後は100%宅録?

北園 : そうですね。でも、ポリスターからCDを出すようになって、生のミュージシャンとやるようになって、宅録からは少し離れた感じになりましたけれど。

ーー北園さんの音楽は70~80年代のフュージョンだったり、スティーリー・ダンのようなジャズ的な洗練もあるロックやポップだったりにルーツがあるように思えるのですが、そのへんって完全に生まれる前の音楽ですよね。

北園 : そうですね。

ーーどうやって、そういう音楽に出会ったんですか? 両親の影響?

北園 : いえ、両親はそういう音楽にはまったく興味がなくて、ネットの影響ですね。中学校時代、YouTubeの始まりくらいの頃にネットで知りました。あとはレコード店のサイトで試聴したり。

ーーそれでコード解析などして、学んでいった?

北園 : そうですね。耳コピして、編成だとか、コードだとかを当てていくという。

ーー生まれた時代を間違えたというような感覚はありますか?

北園 : そうですね、売れる売れないで言ったら、完全に間違っていますよね。70年代だったら、もうちょっと仕事があったんじゃないかと。もっとも、ネットがない時代だったら、全然知られずに終っていたかもしれないですが。

——ライヴをまったくやらない、それ以前に顔すら見せないというのは、戦略的に考えてのことなんでしょうか?

北園 : いいえ、こだわりでも戦略でもなくて、ただ出たくないからです。自分でもライヴは滅多にいかないんです。家で聞くだけで。ジャズのライヴだったらちょっと楽しいかもしれないけれど、でも、それはその場かぎりものだって、自分で演奏してたから知っていますし。

内容の良い音楽は譜面もきれいに見える

ーー昨今の「今ジャズ」みたいなものはどうですか?

北園 : 「今ジャズ」にも伝統的なタイプとそうじゃないのがあると思いますけど、複雑化して、ポリリズミックになってるものですか? ジャズって形態では珍しいのかもしれないけれど、100年前からあったものじゃないかとも思いますね。それがジャズにくだってきただけじゃないかと。基本的に心地いいものしか聞きません。

ーー最近、聞いたもので新鮮だったのは?

北園 : ネットで聞いただけですけれど、メタファイヴは音が良いなと思いました。他だと、内容に関してビックリするようなものは特にないですね。最近またケニー・ランキンを聞いていたりします。

ーー基本、コンポーザー、アレンジャーとして活動していきたいということなんですね。

北園 : どうやらそうですね。表に出たい訳じゃないですし、裏方の方が気が楽ですね。

——でも、歌まで歌っちゃって、姿をあわらさないとういのは…。

北園 : 何かの間違いだったんですよ。2012年頃に異常なことが起きてしまって。北園みなみというふざけた名前もそこらへんの本から取っただけだったし。2012年にああいうことにならなければ、別の活動状況になってたんじゃないでしょうか。

ーーそれでポリスターと契約して、ミニ・アルバムを3枚作ることになった。ひとりでDAWで作っていたのが、生のミュージシャンと作るようになって、変わったことはありますか?

北園 : 初めはミュージシャンって、誰とやっても同じようなものだと思っていました。それが思った以上に大差があることに気がつきました。

ーー完璧にアレンジしてあるものを演奏してもらっても違いが出ると?

北園 : そうですね。それぞれの人のアクとか。それが分かってからは、2割くらいはミュージシャンに委ねるようになりました。でも、それも無理があると気づいて、3枚目では全部譜面を書きました。

ーー3枚目はオーケストレーション主体で大きく変わりましたね。

北園 : 無茶なことをやって、結果どうなるか分からなかったんですけれど。

ーー3枚目は聞きやすくなりました。1、2枚目は情報量の詰め込み方が凄くて、常に何か起っていて、比べると、全体の流れがスムーズになった。

北園 : 自分ではぎごちなさを感じるところもあるんですが、それを除いたら、試みたことは上手くいったと思います。音もよくなったと思いますし。

Never Let Me Go digest
Never Let Me Go digest

ーーオーケストレーションは独学ですか?

北園 : そうですね。本読んだり。ドン・セベスキーの…

ーー「コンテンポラリー・アレンジャー」ですか? 僕もこの1冊持ってれば、ストリングスやホーンのアレンジはできるようになると言われて、買いました。

北園 : ドン・セベスキーも癖のある編曲家ですけれどね。

ーーでも、「コンテンポラリー・アレンジャー」読んで、いいアレンジは譜面自体がアートのようだと思うようになりました。

北園 : それはありますね。額飾して飾りたくなる。内容の良い音楽は譜面もきれいに見える。

ーー波形もそうだったりしますね。

北園 : 波形もあります。ヴォーカル編集とかしていると、ひしゃげた波形のパートとかはたいてい駄目ですね。

ーー今回のようなインスト作品はもっと作らないんですか?

北園 : いいミュージシャンをたくさん集めてやりたいと思ったりはします。

ーーそういえば、今回のギターは誰が弾いてるんですか? Twitterに譜面を上げて、ギタリスト募集していましたよね?

北園 : 外園一馬さんというギタリストです。まさにTwitterで募集したのを見た人が彼なら、と紹介してくれた人がいて。

ーー僕も譜面見て、弾いてましたが、難しかった(笑)

北園 : 外園さんは日本を代表するギタリストになるんじゃないでしょうか。ギタリストとしてのスター性も備わっていて、細かな指示に応えたバッキングもできるし、がんがん前に出てくる弾き方もできる。

ーーポリスターから3枚のミニ・アルバムを出した次は、もう考えているんですか?

北園 : 今年の6月くらいから次作をちょっと書き始めたんですけれど、インスト主体にしたいなとは思っていないですね。

ーー歌もある。

北園 : 両方ありますが、より僕はいない。存在感をなくそうと。

ーーどこにむかってるんでしょう?

北園 : 無にむかってます。何もないところに(笑)

DISCOGRAPHY

北園みなみ / Never Let Me Go

1st「promenade」& 2nd「lumiere」と対を成す双子のミニアルバムのリリースを経て、独自の音楽的発展を極めた、テン年代のウィンターソングの新基軸ともいえる最新作。

北園みなみ / lumiere

夢と無意識の向こう側で聴こえる色彩のラプソディ。「promenade」と対を成す、双子のミニ・アルバム。

北園みなみ / promenade

夢や無意識を呼び覚ます解体と構築魔法が解けた現代に鳴り響く超現実主義(シュールレアリズム)。1stミニ・アルバム。

PROFILE

北園みなみ

作詞、作曲、編曲、各種楽器の演奏をこなすシンガー・ソングライター。 2012年夏に、SoundCloud上に発表した音源が話題となり、現在の活動を始める。 他アーティストへの楽曲提供、作編曲家としての活動も行っている。

北園みなみ official HP

KORG 

G-ROKS HP

[インタヴュー] 北園みなみ

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