「テイルズ」ED収録、fhánaの9thハイレゾ配信! 使命を抱えたシーンの"異端者"に今作に至る旅の過程を訊く

YouTubeやMySpace時代到来前よりインターネットを拠点に楽曲を発表、“FLEET”として音源をリリースしてきた佐藤純一、クリエイティブサークル”s10rw”を立ち上げ、ニコニコ動画ではVOCALOID曲を発表しているyuxuki waga、そしてネットレーベル・シーンから登場したエレクトロニカ・ユニット”Leggysalad”のkevin mitsunagaというサウンド・プロデューサー3名で結成されたfhána。2012年にtowanaを正式メンバーのヴォーカルとして据え、2013年のメジャーデビュー以降、すべてのシングルでアニメ作品とタイアップしてリリースするという快挙を成し遂げてきた。
2016年に入り、2ndフル・アルバム『What a Wonderful World Line』を発表後、さらに勢いに乗る彼らの次なる作品は、あの人気ロールプレイングゲーム「テイルズ オブ」シリーズのTVアニメ「テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス」のEDテーマに抜擢。【アニメ盤】と【アーティスト盤】で異なるカップリングを収録して32bit float/96kHz、24bit/96kHzのハイレゾ音源で配信がスタート。これまでも作品のハイレゾ配信を行ってきた彼ら、様々なこだわりと意思、そして時代を見通す冷静な視点を持つ4人に初のインタヴューを行った。
fhána / calling【アニメ盤】
【Track List】
01. calling
02. アネモネの花
03. calling -Instrumental-
04. アネモネの花 -Instrumental-
【配信形態 / 価格】
[右]32bit float/96kHz(WAV / ALAC)
単曲 432円(税込) / アルバム 1,728円(税込)
[左]24bit/96kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
単曲 432円(税込) / アルバム 1,728円(税込)
fhána / calling【アーティスト盤】
【Track List】
01. calling
02. Relief (Japanese Ver.)
03. calling -Instrumental-
04. Relief (Japanese Ver.) -Instrumental-
【配信形態 / 価格】
[右]32bit float/96kHz(WAV / ALAC)
単曲 432円(税込) / アルバム 1,728円(税込)
[左]24bit/96kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
単曲 432円(税込) / アルバム 1,728円(税込)
INTERVIEW : fhána
恵比寿LIQUIDROOMで見たfhánaのワンマンライヴ。曲の良さだけじゃなく、バンドとしての強度が非常に高く、アニソンを主体にしたバンドというイメージは一気に塗り替えられた。満員のお客さんを一気にもっていく力は、並大抵のバンドが出せるものではない。なので、僕は今回のインタヴューをとてもとても楽しみにしていた(かなり緊張...)。そして取材をして、fhánaと言うバンドをOTOTOYを読んでいる人に伝えたいと言う気持ちは確信に変わった。彼らは「音楽を作る、そしてみんなに音源やライヴで届けていくってことが使命」ってちゃんと伝えてくれた。その言葉がちゃんと言えるからこそ、LIQUIDROOMで僕は大きく心を動かされたのだろう。まだまだ続くfhánaのストーリー。OTOTOYは、それをずっと追っていきたいと思っている。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
編集補助 : 宮尾茉実
写真 : 関口佳代
ネットで音楽が盛り上がってないですよね。あの頃の楽しさは今はあんまりないかな
──OTOTOYでfhánaをご紹介するのは初めてになります。簡単にどのように結成されたグループなのかを教えていただけますか?
佐藤純一(以下、佐藤) : それぞれ音楽活動をしていた男性3人(佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunaga)で結成したのが最初です。いくつかの共通点のひとつが、インターネットで主に活動していたというところ。僕は2004年頃から、まだYoutubeやニコニコ動画がなかった頃から自分のホームページで曲を発表して、それが切っ掛けとなって2006年にFLEET(フリート)というバンドで、今もお世話になっているランティスからメジャー・デビューをさせていただきました。2006年は、ニコニコ動画のサービスが始まった年でもあって、その後すぐに初音ミク等も世に出てきたんです。yuxukiくんは、学生の頃FLEETのカヴァーをしてくれていて、Twitterでリプライをくれたんです。それで繋がり、彼がニコニコ動画にアップしていたボーカロイドの曲とかを聴いていいなって思っていました。そのとき僕は、ボーカロイドとかアニメに興味があったのもあって、自然と仲良くなりましたね。2009年くらいにはyuxukiくんからボーカロイドのイベントに誘われて遊びに行ったりして、すごくおもしろいシーンなんだなって思っていました。
──kevinさんとは?
佐藤 : その頃ニコニコ動画界隈とは別のところで、マルチネレコーズ等のインターネット・レーベルが盛り上がっていました。kevinくんは、ALTEMA Records(アルテマレコーズ)からLeggysalad(レギーサラダ)と言う名義で曲を出したりしていたんです。そんなkevinくんを、共通の知り合いから教えてもらいました。
──3人が一緒に出会うタイミングはどこだったのでしょう?
佐藤 : この3人全員が出演するイベントがあったんです。それが、当時池尻にあった2.5Dの開局記念イベント。その会場の下見の帰りにkevinくんがメイド喫茶に行ったことがないっていうから秋葉原のメイド喫茶に行こうってなったんです。アニメやゲームのロケ地とかにもなったりしてるCafe Mai:lishっていうメイド喫茶なんですけど(笑)、その頃この3人で音楽をやったらおもしろいんじゃないかなって考えていて、メイド喫茶で一緒にバンドやろうぜって話を持ちかけました(笑)。(※メイド喫茶ではメンバー全員が『CLANNAD』好きであったため、「だんご大家族」のオルゴールを鳴らしながら議論を進めたという)
──元々は、バンドをやろうと思っていた?
佐藤 : フレキシブルなサウンド・プロデュース・ユニットをイメージしていまいた。ブロードバンドになる前のネット世代、ニコニコ世代、ネットレーベル世代っていうインターネット三世代で新しい音楽を作るというコンセプトで、ストーリーとしてもおもしろいなって思っていました。だから、正式メンバーでヴォーカルが入って、メンバーがガチッと固定されてしまうのは当初のコンセプトから変わってきちゃうなと思っていました。でも最初の自主制作で作った『New World Line』というミニ・アルバムのゲスト・ヴォーカルにtowanaも参加してくれていて、彼女が自分たちの作る曲にすごくはまったんです。その後、何度かライヴでも歌ってもらった時の感じもすごく良くて、正式メンバーになってもらいました。そこで、プロデューサー・ユニットでありつつもバンド色を強くしていこうと変わっていった感じです。

──それは、いつごろ?
佐藤 : towanaがメンバーに加わり2013年にメジャー・デビューをして徐々に。もちろん、正式メンバーに入ってもらった後も、各々は楽曲提供とか作家として活動もしています
──インターネット三世代とおっしゃっていただきました。佐藤さんがおもしろいなと思った三世代の共通している部分っていうのはどこでしょうか?
佐藤 : J-ROCKと言われるバンド界隈で活動していた僕にとっては、ニコニコ動画やボーカロイド周辺のシーンでの元となる曲を誰かが作って、それを誰かが歌ったり、絵をつけたりとかしながら曲が皆に共有され育っていくっていう2次創作の文化が、とてもおもしろく新鮮に見えたんです。当時は、まだメジャーな会社とかもあまり入ってきていなかったので、ごった煮の文化祭的な盛り上がり感やわくわく感、DIYのおもしろさがあったんです。そんな中ネットレーベル界隈では、アルバムをMP3でフリーでリリース、それをみんながシェアして盛り上がっていたんです。共通していたのは、新しいカルチャーだったことと、そのごった煮の空気感。ただ、その時インターネット界隈は、バンド、ニコニコ動画、ネットレーベルはそれほど交わっていなかった。そんな中、fhánaは全部にアクセスできるからおもしろいし、だから大きいことができるんじゃないかって思ったんですよ。
──そのおもしろさは、今も続いている?
佐藤 : そのおもしろさは発展していて、今のfhánaはインターネット上のシーンだけじゃなくて、アニソンやJ-ROCKやJ-POP、海外の音楽シーンなど、もっと広いフィールドで、いろいろなシーンにアクセスできるようになってきていると思います。でもインターネット自体に関して言えば、ちょっと難しい状況になっているかなって。
──と言うと?
yuxuki : ネットで音楽が盛り上がってないですよね。新しいサービスが出てるわけでもないし。あの頃はおもしろくなりそうだなって感じだったんですけど、その時の楽しさは今はあんまりないかなって。
──それはインターネットというものに対して?
yuxuki : インターネットでの創作シーン全般ですかね。現状、僕が感じる限りでは、例えば音楽なら、聴く側のシステムが変わったと思うんですよね。ニコニコ自体は落ち着いてしまった感があるし、SoundCloudとかは音楽のただの置き場みたいになってるし、かといってYouTubeは、目新しさがあるわけでもない。当時は、ネットでの創作がどう進んでいくのかわからないおもしろさがあったと思うんですよ。今はこれから何かが起きる期待とかも特にないし。あと、ある意味動画サイトとかでタダで音楽を聴けるようになったのは、良い面も多い半面、若干悪影響が出てしまっている気もするんですよね。若い子をはじめとして、音楽が無料で聴けるものだと思いはじめる人が出てきて、お金を払わなくなっちゃったから。だからインターネットでの創作シーンの発展や現状が、想像していたより楽しくないなって。
佐藤 : ネットが微妙になってきてるのは、インターネットが特別じゃなくなったからだと思います。昔は、当然ですけどまだ新しいものだったんで、もともと感度の高い人たち、リテラシーの高い人たちがネットにはより多く集まっていて、クリエイティヴな雰囲気だったと思います。今は誰もがスマホでインターネットにアクセスしていて、しかもそれがインターネットだとは意識もせずに当たり前のように使えるものになったことにより、ただのインフラになってしまった。そうするとあらゆる種類の人たちがネットを利用しているので、お行儀の悪い人たちによるヘイト的な発言とか炎上騒ぎとかが目立つようになって、居心地も悪くなったと思います。昔は、世界中の誰もが情報を発信できて、情報を得るもことができて、繋がり合うことができるインターネットは素晴らしい、という理想みたいなものがあったし、僕も素朴にそう思っていました。そのおかげでfhánaは結成できたわけだし。でも今は負の側面が表に出てきちゃっている時期だと思うんです。それにこれってインターネットの話だけじゃなくて。グローバル化によって人も情報もお金も全てが繋がったことによる弊害や反動が、世界的に目立つようになってきていて、どんどん保守的になっていってますよね。経済だったり、政治だったり、今までのシステムでは立ち行かなくなっていて、次のパラダイムにシフトしていくような時代の変わり目のタイミングなのかもしれないですね。
思いもよらないオーダーもあるんですけど、自分が想像していたよりもおもしろいものができるミラクルが起きるのがいい
──なるほど。4月にリリースした2ndアルバム『What a Wonderful World Line』で描きたかった世界は、まさにそのような考え方が反映されている?
佐藤 : そうですね。2ndアルバムのコンセプトは、「灰色の世界に色彩を与えよう、人生に意味を与えるのは自分だ」というパーソナルな部分と「多様性を肯定しよう」っていう社会的な部分の2つの柱がありました。アルバムをリリースして数ヶ月経って、その社会的な情勢不安はさらに深刻になっているように感じます。
──その考えは、今回発売する9thシングル『calling』でも続いていますか?
佐藤 : 関係はしていますが、ダイレクトにその考えを歌っているわけではないです。このシングルは、タイアップ(TVアニメ「テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス」ED主題歌)として大きなテーマとのリンクがまずあって。そこにfhánaの今の言いたいこととか状況を当てはめていくのが、基本的なfhánaの曲の作り方なんです。
──具体的には、どのように当てはめていくのでしょうか?
佐藤 : そうですね。歌詞に関しては、基本的には作詞の林くん(※)と僕がやり取りをして制作します。あとはプロデューサーやタイアップ先のアニメサイドの方ですね。林くんは、元々メカネロってバンドをやっていて、僕がFLEETをやっている時に出会ったんです。曲も歌詞も良いなと思っていたので、FLEETで「Cipher」というVocaloidの曲で歌詞を書いてもらったら、その仕上がりがとても良かったので、fhánaを結成した後も、基本的には全てお願いしています。
※林英樹 : 楽曲の作詞を担当。fhánaの全楽曲の作詞を一任されている。
──なるほど。
佐藤 : 歌詞の作り方は、タイアップ先からこんな歌詞が良いですとメンバー皆に共有されて、林くんには原作や脚本をちゃんと読んでもらいます。その上で、僕としてはこんなことを考えているってことを、文通のようにメールで林くんとやりとりするんです。そして段々話が膨らんである方向に進んでいくんです。
kevin : 僕らはメールで話が膨らんでいく様を眺めながら共有している感じですね。

──曲の制作は?
kevin : 曲に関しては、僕やyuxukiさんも制作します。それも基本メールでデータをやりとりしながら制作します。
佐藤 : 基本的に曲の方を先に、その時に作りたいものを自由に作る感じですね。
yuxuki : 最初のメロディ、コード、リズム等のデモは、誰か一人が作って、そこにみんなが意見を言ったり、参考音源を送ったりしながら制作していきます。
──fhánaは、全ての曲において世界観が核としてあって、それに対して曲が先に出来て、さらに歌詞が育っていく?
佐藤 : とはいえ、ケースバイケースですね。アニメとのタイアップ曲なら設定資料集や脚本を読んだり、イラストを見たりして、また「calling」なら、「旅の休息」の場面の曲をバラードで作ってくださいっていうようにタイアップ先からの指定があったりして、基本はそのアニメの世界感に合うように曲を作ろうって考えます。ただし先方のオーダーに応えつつも、その時の自分達のやりたい音楽的なアイデアとかを掛け合わせていきます。それによって化学変化が起こるのがfhánaのおもいろいところかなって。先方からの思いもよらないオーダーもあるんですけど、いろんな引き出しを開けて、そこから掛け合わせて自分が想像していたよりもおもしろいものができるミラクルが起きるのがいい。他にも楽曲のテーマが決まっていてそこから作り始めることもあれば、アルバムの大きなテーマだけが決まっていてそれを考えながら作曲する場合もあるし、テーマとかは考えずに音楽的にそのとき作りたい曲を作ることもある。そして1つ1つの楽曲の意味やストーリーを最終的にまとめ上げる作業を最後にするんです。
──アルバムとして?
佐藤 : そうですね。だけど、その時は既に一つ筋道が見えているので、辻褄を合わせるために頭を使うわけではなく、過去に作った歌詞や曲が不思議と上手い具合にテーマに添って筋が通り収束していくんです。
ライヴをするとfhánaとしてどう歌に向き合っていけばよいか、少しずつわかってくる
──なるほど。towanaさんは佐藤さんと林さんのメールのやりとりを見ながら、その歌詞の世界を歌うことで表現しなければいけません。気をつけていることは?
towana : メールでのやりとりは追っているんですけど、最終的な歌詞が届くのはレコーディングの当日だったりするので、そこから録音の時間まで何度も歌うことくらいしかないですね。だから最初のうちはそこですごい苦労していたんですけど、何曲も歌っていくうちに勘所が掴めてきたというか、ここでこういう歌い方をすればこういう風に聴こえるなっていうのがわかってきました。

──僕は今回のアルバムを聴いた時に、towanaさんの歌の表情がどんどん豊かになっていると感じました。"わかってきた"というポイントがどこかにあったのでしょうか?
towana : ん〜〜2ndアルバムを作ってる時だと思います。1stアルバム『Outside of Melancholy』の時は、時間のない中での初めてのアルバム制作だったのでとにかく必死でやっていました。それが終わってから3枚シングルを出して、2ndアルバムを作っている時に、自分でも表現の幅が広がったなって。
──それはなぜ?
towana : 1stアルバムを出した直後に初めてワンマン・ライヴをやらせてもらって、その後にツアーがあったので、ライヴの経験がとても大きいと思います。ライヴをすると目の前に聴いてくれるお客さんがたくさんいるので、fhánaとしてどう歌に向き合っていけばよいか、だから歌をこういう風に歌いたいっていうのが少しずつわかってきた感じです。
──なるほど。シングル曲「calling」に関して、歌で気をつけたことはなんですか?
towana : これは、「休息」と「使命」がテーマになっています。テーマも大きいし、メロディーの刻みも大きいので、より大きな気持ちで歌うことを意識しました。
──大きなテーマ?
佐藤 : 使命ですね。「テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス」の主人公の青年スレイは、大きな使命を持って旅をしているんですけど、それについて歌っているんです。でもそのアニメの世界だけじゃなくて、fhánaの旅っていうのは音楽を作る、そしてみんなに音源やライヴで届けていくってことが使命なんですよね。この曲の歌詞のやりとりをしていたのが、2ndアルバムを作り終えたツアーの途中だったんですけど、2ndアルバムのテーマがさっきも言った通り、「灰色の世界に色彩を与えよう、人生に意味なんか無い。だから意味を与えるのは自分だ」や「様々な人種、いろんな文化を理解することや、人と人が完全に分かり合うことなんか到底出来ないけど、それでも上手くやっていこう、多様性を肯定していこう」のように、虚無感からスタートして一周回って希望に転ずるみたいなことで、それは、痛みを伴うけれども、自分たちで選んで掴み取ったものなんです。そして僕らの旅は続いていくっていう、大きいっていうのはそういうことでもあります。
──「テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス」の世界とfhánaの世界を被せることができている?
佐藤 : そうですね。1stアルバムは箱庭的に自分の好きな音楽を詰め込みましたっていうものだったけど、リリースして、ツアーをして、お客さん、スタッフ、アニメの制作スタッフ達とふれあって、自分たちの好みの世界を表現するだけじゃなくて、社会的な責任を感じてきたと言うか、そこに重きを置くように変わってきて、これはなんとなくやっているわけにはいかないぞって思うようになりました。
どことも完全に馴染まないおもしろさがfhánaにはあると思います
──なるほど。アルバムを作ったりライヴを行うことで、佐藤さんもtowanaさんも変わってきたとおっしゃっていますが、kevinさんは、楽曲を作ることに関して変化したことはありますか?
kevin : 僕に関してはあまり変わってないですね。もともとの楽曲の作り方も変化していないですし、アニメの世界観に合った音作りをすることは1stアルバムから一貫して変わってないですね。僕は「こういう音気持ちよくないですか?」って提案するようなポジションの事が多くて、今回もそういうアプローチで制作をしています。またメールでの歌詞のやりとりに関しては、直接提案したりしないで、おもしろい読み物として読んでいる感じですね。ただもちろんその構築された世界観に対して、それに合う音で作りたいなとはいつも思っています。

──yuxukiさんは?
yuxuki : fhána自体が特定の音楽をやるようなバンドじゃないので、逆に自分の今興味あるジャンルの曲が作れるっていうユニットでもあるんですよ。だからオルタナの曲を作っても、クラブっぽい曲を作ってもいいんです。それが全部fhánaの曲になるので、fhánaを通じて音楽っていろいろあって楽しいんだよっていうのを伝えたいなってずっと思っています。あとは、ライヴを通じてお客さんの反応を見るにつれて、どういうふうに曲を楽しんでもらえるかって考えるようになりました。今作のカップリングの「アネモネの花」(yuxuki作曲)も最初からクラップを入れてみたりとか。
──あれは大胆なアレンジですね。
yuxuki : ここは一緒に楽しみたいなっていう場所ではそれを想定した曲づくりをしています。2ndアルバムの曲でも皆でコーラスができる部分を入れてみたりとか。そういうのはツアーを経たことで1stアルバムから変わったところです。
──なるほど。
yuxuki : 結果的にお互いないところをくっつけ合わせる感じがおもしろいですしね。僕は「こういう音楽を取り入れてみようか」っていうアレンジ面での提案をする係みたいな感じです。
佐藤 : 役割を整理すると、僕は絵を描いて大きい世界観を構築していき、yuxukiくんは新しい音楽とかに感度が1番高いので、新しい風を吹き込んでくれる。kevinくんは彼にしか出せない音をつけてくれる。towanaはヴォーカルなのでアイコンであり、キャッチーな部分でもあるし、もちろんビジュアルだけじゃなく、歌でfhánaの世界を表現してくれます。
──fhánaの世界っていうのは、towanaさんから見てどんな世界なの?
towana : fhánaは異端な感じがしますね。少しひねくれているというか。
佐藤 : 結成の話に戻りますが、結局、どこにでもアクセスできるっていうことは、どこでも少し浮いていると思うんです。例えば、アニソンのイベントに出ても、J-ROCKのイベントに出ても浮く存在なんだとは思うんですよね。かといってインターネットのシーンにいても、ニコニコって感じじゃないし、ネットレーベル的なトラックメイカーでもないしなって。でもそんなどこにいっても浮いてるけど、どこにでもアクセスできる、そういう在り方がむしろおもしろいなと思ってて。
──僕はfhánaがアニソン・バンドとして表現されることがあった時に違和感を感じたんです。リキッドルームでのライヴを見た時に、もっと強度なバンドとしての強さを感じたから。
佐藤 : 決してアニソン・アーティストでくくられるのが嫌とかではないですが、どことも完全に馴染まないおもしろさがfhánaにはあると思います。と同時に、皆アニメ自体大好きなので、ただクライアントワークとして作ってるんじゃなくて、愛情を持って作っています。様々な視点を持っている所がfhánaのとてもおもしろいところですね。
過去作
LIVE INFORMATION
Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-
2016年8月27日(土)@さいたまスーパーアリーナ
PROFILE
fhána
佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaという男性3名のサウンド・プロデューサーと、女性ヴォーカリストのtowanaによるユニット。
“FLEET”としてYouTubeやMySpace時代到来前よりインターネットを拠点に楽曲を発表、メジャーからも音源をリリースしてきた佐藤純一、クリエイティブサークル”s10rw”を立ち上げ、ニコニコ動画ではVOCALOIDをメイン・ヴォーカルに据えて楽曲を発表しているyuxuki waga、そしてネットレーベル・シーンから登場したエレクトロニカ・ユニット”Leggysalad”のkevin mitsunagaという、サウンド・プロデューサー3名で結成。新たに物語を書き換えるべく結成された。3人の共通項は「ビジュアルノベル」・「アニメ」・「インターネット」。2012年秋には、ゲスト・ヴォーカルだったtowanaが正式メンバーとして加入し、4人体制へ。
2013年8月にシングル『ケセラセラ』でメジャー・デビュー。同曲は、7月より放送開始したTVアニメ『有頂天家族』のEDテーマ曲のタイアップとなっている。以降、デビューして3年以内にシングル8作連続タイアップを果たしている。2015年2月4日には、1stアルバム『Outside of Melancholy』をリリース、そして2016年4月27日に、待望の2ndアルバム『What a Wonderful World Line』をリリースした。
彼らの音楽/作品性は、iTunes Store が“今年ブレイクが期待できる新人アーティスト”を選出する特別企画「NEW ARTIST 2014」にも選出されるなど、シーンを問わず各界から注目を集めており、今もっとも勢いのあるアーティストとの呼び声が高い。