ライヴ・バンドの頂点を極める──AZUMA HITOMIら新たに結成した3ピース、サンナナニのライヴ音源配信
AZUMA HITOMI、U、ひぐちけいの3人からなるロック・バンド、サンナナニ。それぞれがシンガー・ソングライターやバンド・メンバーとしてすでに実力を発揮するなか「ライヴ・バンドの頂点を極めるべく結成した」という彼女たち。結成わずかながらサウンド & レコーディング マガジンの國崎晋も絶賛するその真髄がいかんなく発揮されたライヴ音源の配信が、このたびスタートした。
ライヴ音源は六本木VARIT.のオープン記念として組まれた、チリヌルヲワカとの2マンライヴ時のもの。AZUMA HITOMIがかねてからリスペクトしているというGO! GO! 7188のギター&ヴォーカルのユウが率いるチリヌルヲワカとの対バンとあって、その演奏の熱量は並々ならぬもの。ハイレゾで収めたその臨場感を聴いてほしい。なお、1曲目「ひとりじゃ」は無料配信! 迷わずゲットしてみてはいかがだろうか。
サンナナニ / 37°2 LIVE ~ MAY.2016 ~
【Track List】
01. 「ひとりじゃ」2016.5.26 @ ROPPONGI VARIT. (無料配信)
02. 「一生懸命シティ」 2016.5.26 @ ROPPONGI VARIT.
【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
単曲 200円(税込) ※M02のみ
INTERVIEW : AZUMA HITOMI、U
アナログシンセやペダル鍵盤、全自動キックマシンなど、大量の機材に囲まれた“要塞ライヴ”で知られるギーク系シンガー・ソングライター、AZUMA HITOMI。近年では矢野顕子のトラックメイキングを担当したり、シンセカルテット=Hello, Wendy! に参加するなど活動の幅を広げているが、このたび、U sus Uでヴォーカルとドラムを務めるU、そしてチェルシーをはじめ数々のバンドでセンス抜群なギターを披露しているひぐちけいの3人で、ロック・バンド=サンナナニを結成した。シンセベース+ドラム+ギターという一風変わった編成から繰り出されるサウンドは、クラシック・ロックのエッセンスをたたえながらも清々しいまでのフレッシュさにあふれている。そんな彼女たちのあいさつ代わりといえるライヴトラックが2曲配信されたので、結成のいきさつから目指すサウンドまでをインタヴューしてみた(残念ながらひぐちけいは欠席……)。
インタヴュー&文 : 國崎晋(サウンド & レコーディング マガジン)
「シンセベーシストとして行ける!」と確信を得たので3ピースのロック・バンドを始めた
──AZUMAさんとUさんは元々知り合いだったんですか?
AZUMA HITOMI(以下、AZUMA) : いいえ。1年前くらいに渋谷のO-nestでUさんがやっているU sus Uっていうユニットと対バンして、そのときUさんが話しかけてくれたのが最初です。
──UさんはAZUMAさんのことを知っていた?
U : はい…… っていうかAZUMA HITOMIが出るから、その日のO-nestに出ることにしたんです。
──へー、それはなぜ?
U : なんかイケてる感じだったから(笑)。実際にO-nestで会ったら、カワイイし、歌にパンチがあるし、本番までずっと練習してるし(笑)。で、話しかけてみたら意外としゃべりやすい人だった。
──確かにAZUMAさんって近寄りがたい雰囲気ありますよね。
U : そうなんですよ~。
AZUMA : えーっ、そんなに? まあ、普段は私から話しかけることはほぼないですからね(笑)。
──対バンしたとき、AZUMAさんはUさんにどんな印象を持ったんですか?
AZUMA : 優しいドラムをたたく人だな~と。すごく男気ある一方で母性がある感じ。それで一緒にやりたいなと思って、猛烈にアタックして仲良くなりました(笑)。
──その時点で一緒にバンドをやろうという構想が?
AZUMA : いや、バンドを組むっていうよりはドラムがすごくいいから何か一緒にやりたいな~という感じで。
──Uさんはそのときどう思ってました?
U : まあ、バンドを組むとまでは考えてなかったけど、ただ、速攻スタジオには入りましたね。
──スタジオに入って何をやったんですか?
U : 私の曲とかHITOMIちゃんの曲とか…… でも、8割はトーク(笑)。スタジオ終わった後のカレー屋さんでも延々。話すのが楽しいからずっとね。
──UさんにとってAZUMAさんは、話していて楽しい人なんですね。
U : うーん、楽しいっていうか、何でもしゃべっちゃう。
AZUMA : あとで言われたんですけど、私があまりにもUさんにアタックし過ぎていて、“この子、女の子が好きなんじゃないか”と思われてた(笑)。
──(笑)。では、どういう経緯でバンドを始めようという感じに?
AZUMA : 私のソロで打ち込みのオケに混ざって生ドラムをたたいてもらうっていう可能性もあったんですけど、それだともったいないなと。せっかくだったら打ち込みナシのバンドにしたいと思ったんです。
──結果的に3ピースのロック・バンドとしてサンナナニが結成され、AZUMAさんはシンセベース+ヴォーカル担当になったわけですが、なぜシンセベースだったんでしょう?
AZUMA : 私にとってトリオっていうのがロック・バンドとして1番カッコイイ形なんです。それでドラムにUさんを入れた3人編成ってことを考えると、鍵盤とベース、ドラムっていうのもあり得るけど、私がシンセベースをやればギター、ドラムとのトリオができるなと。
──なんで鍵盤、ベース、ドラムという編成じゃダメだったんですか?
AZUMA : やっぱりギターが居てほしいというのと、見た目をシンプルにしたかったんです。本当にミニマムな形…… 自分のパートをシンセ1台でやってみたかった。一昨年にシンセカルテットのHello, Wendy! を始めて、その中で私がシンセベースを担当した曲も2曲くらいあって、私はバンドの中でシンセベース担当ができるんじゃないかとこっそり思い始めて(笑)、それで去年の夏に矢野顕子さんとスタジオ・ライヴをしたときに、思い切ってシンセベースに挑戦して、“私はシンセベーシストとして行ける!”と確信を得て、それ以降のソロのライヴでもシンセベースを弾く曲を増やしていっていたんです。
──ドラマーとしてUさんは、AZUMAさんがシンセベースでバンドをやるっていうアイディアに違和感はありませんでしたか?
U : いや、全然。そもそもHITOMIちゃんのことを鍵盤奏者だとは思っていなかったので。
──何だと思ってたんですか?
U : 曲作ってシンセをいじる人(笑)。だから、シンベを弾くっていうのも「だよね~」くらいの感じ。実際、最初にスタジオに入ったたときもシンセの音ヤバいなーと思ってた。出す音が全部ヤバい。
──確かにAZUMAさんは凶悪な音を出しますよね。
U : でも、カオスな感じじゃなくてちゃんと意志を持った…… 人に伝わるシンセの音をいつでも出す子なんだなと思った。
AZUMA : やった~!
U : それがあったので、ああ、この子はメロディを作ったり、シンセで音を作ったり、そして歌を歌う子なんだなと。
この3人だったら昔のいい音楽をどんどん取り入れつつ、もっと新しくていいものができる
──ギタリストがひぐちけいさんに決まったのはどんな流れで?
AZUMA : 「いいギタリスト知らない~?」ってUさんに聞いたら、「一緒にサポートの仕事をしている、けいちゃんっていう子がいいギターを弾くよ」って教えてくれて。それで私がけいちゃんがサポートで参加しているチェルシーのライヴを見に行って、“この子だ!”って思って、その日に出待ちして「一緒にバンドやりたいんですけど」って告白した(笑)。
U : けいちゃんも“この子私のこと好きなのかな……”って思ったかもね(笑)。
──Uさんはなぜけいさんを推したのですか?
U : 3~4年一緒にやっていますけど、リズムがいいんですよ。それとけいちゃんのギターは女子っぽいというか、男の人より繊細。それは私のドラムと共通している。
AZUMA : 繊細だけど男気があるというバランス感覚が共通している。で、そんな2人に激しいロックをやらせたらどうだろう? というのを私が妄想したんです。
──確かにサンナナニの曲は1960~70年代のロック色が濃いですけど、懐古的には聴こえないのがおもしろいですよね。文法は当時の人たちと同じなのに、出てくる音は全然違うっていう。
AZUMA : それは私が作ってくる曲の元ネタを2人に明かさないからですね(笑)。
──元ネタありきの曲作りなんですか?
AZUMA : はい、ジェフ・ベックだったりイエスだったりっていうクラシック・ロックの要素を取り込んだものやりたいというのははっきりしています。ただ、メロディについてはまったくそれをやらない…… リズムをパクっていうようがベースのリフをパクっていようが、メロディがちゃんと私の中からでてきたものであれば関係ない。よく“オリジナルなんてもうできない”って言われますけど、私はそのことを認めた上で、それでもいい曲が書ければその感動は新しいものになるからOKというスタンスなんです。影響されることを怖がらず、昔のいい音楽をどんどん取り入れて、もっと新しくていいものにできるんじゃないかなと思ってます。
──そのコンセプトは3人で話し合って決まったものなのですか?
U : いや、全然(笑)。
AZUMA : 何にも話してない(笑)。Uさんもけいちゃんもすごく演奏がうまいので、“こういう音楽をやったらいいと思う”とか話すより、デモを作って渡して、それを聴いて思ったように演奏してもらう方が多分おもしろいと思った。私は曲を作って2人に渡すというところですべてを語っているつもり。
──曲作りはAZUMAさんの担当なのですか?
AZUMA : 私がデモを作って、2人に聴かせてスタジオで発展させるっていうやり方ですね。
U : HITOMIちゃんから送られてきたデモは、最初にけいちゃんの車で聴くことが多いんですけど、いつも2人で「すごいよねー」「だよねー」って言ってます(笑)。
──AZUMAさんのデモのどこがすごいんですか?
U : 何だろうな…… 好きな感じっていうか、つまんなくない感じ。“なるほどHITOMIちゃんだよねー”ってところもありつつ、“こう来たか!”というのもあるし。
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──やはり意図的にAZUMA HITOMIソロとは変えてるんですか?
AZUMA : やっぱり作り方が違いますね。ソロのときは発想の出発点がバラバラ…… このシンセの音を使いたいからとか、このシンセを使いたいとか……
U : 全部シンセだ(笑)。
AZUMA : (笑)。やっぱりソロのときは音作りが重要。でも、バンドのときはプリセットのドラムとギターのシミュレーションの音、気に入っているベースの音、その3つがあればデモが完成させられる。アレンジと曲をいっぺんに構築していくから出来上がるのがものすごく早いんですよ。
──3人でスタジオに入るとすぐ完成?
U : はい、デモがちゃんとしているからやりやすいですね。サポートの仕事とは違って余白がすごいあるから、取りあえずやってみるってことができる。多分、けいちゃんも同じだと思います。
──実際、3人で音出しした瞬間、AZUMAさんはどう思うんですか?
AZUMA : もう幸せ…… こんなに楽しいことはないですよ(笑)。簡単なデモとはいえ、ドラムのフィルとかは全部打ち込んであるんですけど、それはUさんにこうたたいてくれってことじゃなくて、私がやりたいことを100%詰めて渡したいからなんです。で、それに対して2人がもっとすごいものを返してくれるから、ホントに幸せな気分になります。
魂をどう出すかっていうのが、このバンドではまだ決まってない
──今回はライヴ音源を2曲配信することになったわけですが、どこで収録したものですか?
AZUMA : 両方とも六本木VARIT.の録音です。元GO! GO! 7188のユウさんがやっているチリヌルヲワカと対バンしたときですね。
──観に行きましたが、お客さんもものすごく盛り上がっていたライヴでしたね。
U : そうでしたか! 良かった~。
AZUMA : 結成してまだ6回目のライヴだったんですけどね。
──6回目とは思えないほど、演奏も構成もこなれてます。
U : いやー、まだですよ……。私自身、魂をどう出すかっていうのが、このバンドではまだ決まってないですし。
AZUMA : えー!!(笑)。
──AZUMAさんはもう魂を出しまくってますよね(笑)。
AZUMA : ガンガン出してます…… 出し損??
U : いやいやいや(笑)。サポート仕事はずっとやっていたけど、バンドのメンバーになるって久しぶりなので。バンド・メンバーというのはいろいろなスタンスがあって、自分はどのスタンスにするのかまだ決まっていない。これから決まっていくと思いますけど。
AZUMA : どうなるんだろうこれから……(笑)。
──実際、このライヴ・トラックを配信した後の予定は?
U : アルバム作りたいです~!
AZUMA : 曲はたくさんできてますからね。私はこれまで、ライヴで曲を育てながらレコーディングをするっていうのをやったことないんですよ。なのでそれをやってみたいです。
──育っていく過程が聴けるのっていいですよね。ライヴに行くたびに変わっていくっていう。
U : そうですよね、実際、毎回違うので楽しいです。
AZUMA : だから今回配信される音源も“2016年5月のとある日の記録”でしかなくて、既に歌詞とかちょっと変わっている(笑)。なので次のライヴでどうなっているかはすごく楽しめると思います。
関連作
大野由美子+AZUMA HITOMI+Neat's+Maika Leboutet / Hello, Wendy!
大野由美子(Buffalo Daughter)、AZUMA HITOMI、Neat’s、Maika Leboutetの4人がシンセサイザー・カルテットを結成し、名曲のカヴァーやメンバーそれぞれのオリジナルなど全10曲を1発録り。世界で初めてコンピュータが歌った曲として知られる「Daisy Bell」、ウェンディ・カルロスによるモーグ・シンセサイザーでの演奏が有名な「ブランデンブルク協奏曲第3番」(バッハ)、言わずとしれたクラフトワークの名曲「Computer Love」など、電子音楽の歴史をなぞるような選曲にも注目。
LIVE INFORMATION
サンナナニ ワンマンライヴ はじめての微熱。
2016年7月13日(水)@渋谷TSUTAYA O-nest
OPEN 19:00 / START 19:30
料金:前売 3,000円 / 当日 3,500円
(税込、整理番号付、ドリンク代別、オールスタンディング)
PROFILE
サンナナニ
実力派ミュージシャンとして活躍するAZUMA HITOMI、ひぐちけい、U の3人がライヴ・バンドの頂点を極めるべく結成したロック・バンド。
>>サンナナニ Official BLOG
>>サンナナニ Official HP