2016/03/10 10:44

ハイレゾフェス注目鼎談! 『キープ・オン・ムーヴィン~ハイレゾで聞くジャズ名盤』を事前予習せよ!

3月11日から3月13日まで青山〈スパイラル〉内にて開催される〈HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL〉(詳細は公式ウェブまで)。ライヴ・レコーディングやトークショー、試聴会、さらにはブースで展開される音源などで、さまざまな音楽のジャンルにまたがりハイレゾの魅力がフェスを通じてプレゼンされる。ぜひとも会場にて、ハイレゾ再生によってさらに魅力を増した音楽たちを一度体験してほしい。

さて、本記事で紹介するイベントは、3月12日18時より開催されるトークショー&試聴会「キープ・オン・ムーヴィン~ハイレゾで聞くジャズ名盤」。タイトルにあるように、ここでの話題の中心は、ずばり「ジャズ」。オーディオ評論家で、過去に伝説のジャズ喫茶〈ムーヴィン〉の店主でもあった和田博巳、OTOTOYプロデューサーの高橋健太郎、そしてゲストに気鋭のジャズ・ライター、柳樂光隆を迎えて、ジャズの名盤を中心に、最新の音源なども加えて最新のハイレゾ機器でリスニング、そしてトークを繰り広げるというもの。

本記事では、当日登壇する和田博巳と高橋健太郎、そしてこのイベントで使用される「Aurender N10」と「Resonessence Labs INVICTA MIRUS」を日本にて紹介 / 販売するEmilai Inc.の島幸太郎も登壇し、本トーク・イベントのコンセプトを語る。

キープ・オン・ムーヴィン〜ハイレゾで聞くジャズ名盤

登壇 : 和田博巳(オーディオ評論家) / 高橋健太郎 / 柳樂光隆
日時 : 2016年3月12日(土)18:00〜19:30
場所 : スパイラル 9Fラウンジ
協賛 : Emilai Inc.

入場無料、ご予約は不要ですが混雑時は整理券を配布する場合があります。整理券等の最新の情報は〈HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL〉のTwitterHPにてお知らせします。

HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL

「HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL」は、機器の展示販売、トークイベント、試聴会、さらにはライヴレコーディングなどを通して多角的に「ハイレゾ」の魅力とその「いま」を体感できる3日間です。

開催日 : 2016年3月11日(金)〜2016年3月13日(日)
営業時間 : 11:00〜20:00(11日のみ17:00よりスタート) ※イベントの開催などにより若干の変更があります。
入場料 : 無料 ※一部のライヴ・レコーディング観覧には別途チケットが必要です。
場所 : スパイラルホールほか
〒107-0062 東京都港区南青山 5-6-23(スパイラル 3F)

>>HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL Official HP

新しい機材で、ジャズをもう1回聴いてみたい

左から、高橋健太郎、和田博巳、島幸太朗

高橋健太郎(以下、高橋) : 当時のジャズ喫茶にはALTECとかJBLを備えた特有のサウンドがあって、それを親しんでいる人って多いと思うんですけど、ジャズの名盤もハイレゾで聴ける時代になって、そのリスニング・システムもすごく変わってきた。そういう新しい機材で、ジャズをもう1回聴いてみたいと思って、伝説のジャズ喫茶〈ムーヴィン〉のオーナーであった和田さんにお話をしたのが今回のイベント発端の経緯です。

和田博巳(以下、和田) : 伝説というと僕が働いていた新宿の〈DIG〉、これがものすごく伝説的な店だった。日本全国がアート・ブレイキーや〈アトランティック〉時代のジョン・コルトレーンをかけてたときに、〈DIG〉はいち早くヨーロッパやアメリカの〈ESP〉レーベルのフリー・ジャズをガンガンかけだしたんですよ。もともと常連だったんですけど、そこで1年半ぐらいバイトをして、いろんなレコード・コレクションを覚えて。それで親に借金をして500枚くらいのジャズのレコードを買ってはじめたのが〈ムーヴィン〉(笑)。

高橋 : すでに、それが伝説ですよね(笑)。

目指すは「超モダンなジャズ喫茶」

和田 : とは言え、僕が〈ムーヴィン〉をやっていた高円寺だと、フリー・ジャズばっかりかけているとお客さんが来ないんですよ(笑)。したがって、1950年代のなかばから1960年代くらいの有名なモダン・ジャズをガンガンかけてたわけです。そういう時代のジャズ喫茶は、良いスピーカーを使ってるけど、使い方とか接続とか電源の取り方とかを考えるとノイズが酷かったり、スピーカーのセッティングも客席を優先して天井に括りつけてあったりで…。

高橋 : ALTECのスピーカー2台が横並びになってたりとかね(笑)。

和田 : ステレオがモノラルで聴こえるっていう(笑)。とにかく劣悪な環境で、しかも爆音で聴くわけ。それがジャズの音だとみんな思ってきたけど、そのころ聴いてたジャズを、ハイレゾ・ファイルと現代のモダンなシステムで聴くと全く聴こえ方が違うんですよ。アメリカのレコーディング・スタジオの現場では、これに近いマスターテープの音を聴いてたんだろうと思うと、当時の録音ってけっこうすごかったんだと思うよね。

高橋 : すごい情報量が入っているんですよね。

「ネットワーク・トランスポート」という新たな発想

和田 : 今度のイベントは、若いお客さんも来ると思うんだけど、ぼくと同世代のジャズ・ファンにも、「本当はこういう音なんだよ」っていうのを聴いてもらえるといいな。そのために今回用意してもらうmusikelectronic geithain RL901Kは、ハイエンド・オーディオと、昔の大型スピーカーとの中間くらいの感じなんですよね。だから、「超モダンなジャズ喫茶」というサウンドが出せるんじゃないかと今から期待しています。

高橋 : システム的にはネットワーク・トランスポートを使うと。

和田 : ハイレゾを再生するスタイルって、ネットワーク・オーディオか、PCとUSB DACを使ったスタイルが主流だけど、今回協賛していただけるemilaiさんが扱ってる製品にはAurender(オーレンダー) N10というネットワーク・トランスポートがあって、今回はこれを使ってみようと思っているんです。一般には、LAN端子からデジタル信号を受け取る機能だけではなくて、デジタル信号をアナログ信号に変換する機能をつかさどるD/Aコンバーターという機能が内蔵されているのが、いわゆるネットワーク・プレーヤーだと思うんだけど、Aurender N10はなんとD/Aコンバーターを内蔵していないんですよ。

Aurender N10

島 : はい。前回のイベントでは最新フォーマットである11.2MHzのDSD音源を聴いてみるというコンセプトで協賛させていただきましたが、今回はジャズ名盤を聴くというコンセプトとお伺いしましたので、前回とは違うコンセプトの製品をご紹介したいと思いました。もともと、お客様がネットワーク・オーディオをやろうかってなったときに、今まで使っていたD/Aコンバーターとかを急に全部捨ててくださいっていう流れが今までの主流だと思うのですが、Aurenderはこうした流れとは異なるアプローチで、今までオーディオファンが大切に使ってきたDAコンバーターをそのままネットワーク・オーディオでも使えるようにしてしまおう、しかもとびきりいい音で再生しよう、というコンセプトの製品を作っています。まさに、D/Aコンバーターの名機をそのまま使おう、という製品です。

和田 : カートリッジ・レスのアナログ・プレイヤーを買うような感じですね。つまり、いまパソコンとD/AコンバーターをUSBで繋いでいるひとは、Aurender N10を買うと、いま使ってるDACをそのまま生かして、ファイル再生が可能だってことですね?

島 : そうですね。「後付けでネットワーク・オーディオの機能は付け足せる」というコンセプトです。

高橋 : なるほどね。だから、PCオーディオから移行しやすいんですね。

島 : そうですね。また、DLNA的な世界観ではない製品なので、サーバーやNASを用意して設定してという準備が極力なくて、PCでネットができる環境があれば、すぐに使えます。

和田 : ネットワーク環境にNASを置いたり、ハブを置いたりするややこしさはないですよね?

島 : ないです。ネットワーク・オーディオでイベントをやるときって前日によってたかってメーカー・代理店の担当者が総出で設置したりしますし、お客様宅への納品時にも時間がかかってしまってと大事になることが多いですね。そういう意味では実際に導入するときのハードルがこれまでのディスク・プレーヤーと比べるとどうしても高いんですけど、Aurenderにはその煩わしさがないんです。

高橋 : 音源はUSBケーブルでやりとりすれば良いんですね ?

島 : USBケーブルでもデジタル・ケーブルでもできます。また、ファイルの転送は直接本体でリッピングする方法と、USBメモリやハードディスクを差してそのまま読見込む方法と、パソコンからネットワークでコピーするという3通りの方法があります。

オーディオ再生の世界でソフトウェアが重要になった以降の人が作ったDAC

高橋 : 今回、当日のDACはResonessence Labs(レゾネッセンス・ラボ)のINVICTA MIRUS(インビクタ・ミルス)を使うんですが、和田さんはこれを聴いたことありますか?

和田 : ある。これいいですよ。DACチップは、世界的に人気のアメリカのESS Technology社の最高級モデル、ESS Sable 9018Sを贅沢に使っているんです。

高橋 : 何枚使っているんですか?

島 : 2枚です。片方のチャンネルに1枚ずつ使っています。

和田 : だから、S/N(SN比 : 信号に対するノイズ・雑音の量を対数で表したもの。アンプなどの電気回路の性能を表すときなどに使われる)が上がるんですね。で、そのESSのエンジニアがそもそもこれをつくっちゃったんですよね?

島 : そうですね(笑)。設計しているのがESSの人っていう(笑)。D/AコンバーターってDACチップがどこ製の何かというのが大変注目されるのですが、これまでの常識だと、DACチップメーカーの人が完成品まで作ってしまった例はなかなかないのではないでしょうか。実際、従来のオーディオ・メーカーの考え方とはちょっと違ういろいろな機能が付いてたりします。たとえば、SDカードスロットがあってSDカード経由でハイレゾ音源を単体で読めたりとか。また、様々なデジタル・フィルターが付いていて、切り替えて聴けるんですね。ソフトウェアがオーディオ再生の世界でも重要になってきた以降のいわゆるコンピューター世代のエンジニアがつくるとこうなるのかなという見本のような製品です。

トークショーには柳樂光隆(Jazz The New Chapter)が登場

高橋 : あと、当日は気鋭のジャズ評論家の柳樂光隆さんがゲストで決まっています。

和田 : そう!

高橋 : 柳樂くんはぼくよりも全然若いんですけど、ジャズ喫茶に相当入り浸っていて。もちろん古いジャズからいまのジャズまですべて聴いている、いまの新しいジャズの流れに一番敏感な音楽評論家なんです。和田さんと柳樂くんがどんな話をするのかすごい楽しみです。

和田 : 柳樂くんもぼくも健太郎さんもなんでもかんでも聴くよね。

高橋 : そうですね。

和田 : ネオ・ソウルやヒップ・ホップ世代のケンドリック・ラマーとかって、すごいジャズの要素が強いけど、逆にジャズ・ミュージシャンもネオ・ソウルやヒップ・ホップとジャズの垣根が全然ない。ただ表現手段として、ジャズっぽい方向かヒップ・ホップっぽい方向かの違いで、どちらの音楽にも両方の要素がぐちゃぐちゃに入っている。そこを上手に楽しむとめちゃくちゃ楽しいんだけど、日本のジャズ・ファンあるいはヒップ・ホップ・ファンは、いろんなものが融合してるとわかりにくいって言う。そこを柳樂くんは非常にわかりやすく説明してるんで彼が書いた3冊の解説本(『Jazz The New Chapter』シリーズ)は、ジャズの本にしては珍しくベストセラーになってるんですよね。時を得た非常に好ましいゲストが決まったなと思っています。

高橋 : 当日はそういう話もしながら、ジャズの名盤、それからちょっと新しいものもハイレゾやDSDで聴きたいですね。そういうものが楽しめる90分になると思っています。

機材紹介

Aurender N10
http://www.aurender.jp/products/media-server/n10/

Resonessence Labs INVICTA MIRUS
http://www.resonessencelabs.jp/products/invicta-mirus/

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