2015/05/21 20:01

世界一のバンドになるために——結成わずか1年のニューカマー、odolが提示する、新たなオルタネイティヴ・サウンド

荒々しく空間を満たすシューゲイズ・サウンドとメランコリックなピアノで注目を集め、結成わずか半年にしてFUJI ROCK FESTIVAL 2014に出演を果たしたニューカマー、odol(オドル)。これまでのリリースがフリー・ダウンロードのE.P2作品のみの彼らが、待望のファースト・アルバムをついに発表。結成1年とは思えない、バンドとしてのソングライティング力、そしてドラマチックな楽器アンサンブルが見事にパッケージングされた全7曲を収録。そんな今作について、メンバーのミゾベリョウ(Vo, Gt)、森山公稀(Pf)にインタヴューを実施。結成から現在にいたるまで、そしてミュージシャン・シップを大いに語ってもらった。

odol

odol

¥ 1,257
odol / odol
【配信形態】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC / mp3

【配信価格】
単曲 205円 アルバム 1,234円

【Track List】
01. あの頃 / 02. 飾りすぎていた / 03. ふたり / 04. 君は、笑う / 05. 欲しい / 06. 愛している / 07. 生活

odol - 飾りすぎていた
odol - 飾りすぎていた

INTERVIEW : odol

左から森山公稀(Pf)、ミゾベリョウ(Vo, Gt)

どうやら筆者はこのバンドを誤解していたようだ。ライヴ時におけるいかにも繊細な若者たちといった佇まい。そこで鳴らされていた、ゆっくりと閃光を放つような轟音ギター・サウンドに、メランコリックな鍵盤の旋律。そして、消え行く日々をなんとか言葉で繋ぎ止めんとする歌詞のセカイ系的世界観。その真っ直ぐな青さに、いわゆる下北系ギター・ロックの先端に立つバンドだと位置づけてしまっていた。

ところが、いざ話を訊いてみると、バンドとして、インディのスモール・コミュニティには一切興味がなく、特定のリスナーから愛玩物として小さく消費されるような存在にはなりたくないという。むしろ、彼らの眼差しは、いわゆる普通の人々にこそ向かっていた。彼らは断言する。「インディでなくポップでありたい」。そして、こう言ってくれた。「世界一のバンドになりたい」と。ルーツを尋ねてみると、実に意外な2バンド。では、ヴォーカリストのミゾベリョウとキーボーディストの森山公稀の発言から、その野心を紐解いていくこととしよう。

インタヴュー&文 : 田中亮太
写真 : 外林健太

僕らには未来がすごいあると感じてて

——こないだの下北沢GARAREでのリリパでライヴを見させていただいたんですが、ミゾベさんが何度も何度もお礼を言っているのが印象的でした。初々しいさあるなって。

森山公稀(以下、森山) : 初々しさありありですね(笑)。単純にすごく経験が少なくて、odolとしてライヴやったのもまだ20回くらいなんですよ。ミゾベと僕は福岡出身で、高校のころから一緒にいろんなバンドやってたんですけど、それを合計してもライヴは人生30回くらいなんですね。

ミゾベリョウ(以下、ミゾベ) : 最近は自分たちがライヴをしているときに、終わったあともなんですけど、反応をくれる人がいたりして、ありがたいと思ってるんです。ライヴで歌って人に伝わることが嬉しいなって気持ちが出てきて。1、2年前くらいは、作品を作っていくことの楽しさのほうが勝ってたんですよね。

——こないだのGARAGEでのライヴを自分たちで採点するとすれば何点ですか?

ミゾベ : 理想を100とするなら1くらいなんですけど、今の自分たちの力を出したかと言われると、出せたかな。これからさらに良くなっていくぞってところも含めて。

森山 : だいたいは更新し続けてますね。ライヴ自体が少ないので、間が開くことが多いんですね。そのあいだに練習もするし、反省して改善もしてるので、つねに最善ではあるんじゃないかな。

——メンバーの年齢、結成からさほど期間がたってないというのもあると思うんですけど、音源を聴くと、odolってバンド自体が意識的に初々しさや青さを大切にされてるって印象もあったんですね。

森山 : あると思います。作るものは大御所と言われるバンドにも負けないもの、それ以上のものを出していこうって気持ちでやってるんですけど、と言っても僕らには未来がすごいあるとは感じてて。自分たちも作品も、これからも発展していく。そういう意味では、まだ1年目、この作品を作ってるときにちょうど始めて1年くらいだったんですけど、初々しさってより、始まりってところを大切にしてました。これからへの期待があるからこそ、その最初ってところを意識的に出した作品づくりにはなってるかと思います。

——歌詞を見ると、「君は、笑う」での〈変わらないでいて〉、「生活」の〈生活に溶けてゆく〉など、変化してゆくもの対してのナイーヴな眼差しがあるように感じました。

odol - 生活
odol - 生活

ミゾベ : 移ろいゆくものに対する儚さとか寂しい気持ちというか、そういうのは日常生活のなかでも持ってますね。でも、もうちょっとプラスの気持ちというか、どちらかと言えば楽しいこととかが、ずっと続いたらいいなとか、そういう気持ちのほうがあるんですよね。それを青さと言われるとそうなのかもしれない。

——森山さん的にはミゾベさんの歌詞を見てどういう特徴があると感じます?

森山 : 普段からよく連絡をとってるんですよ。一行ずつ詞ができていく度に連絡がきたりとか。ミゾベが書く歌詞は、つねに彼の21年間の人生のなかから拾い出してるというか、思い出しながら書いていますね。中2から僕ら知り合いなんで、この歌詞はあのことかなとか、そういう瞬間もあったりして。あと、自分の感覚みたいなのを1番大事にしてるってのが特徴なんじゃないかな。文学的とか抽象的とかにも感じれると思うんですけど、そういう風に書こうってわけじゃなくて、綺麗でありたいというか、綺麗に表わそうとして、そういう感じになってるんじゃないかな。

——そもそもodolの音楽はどうやって作られていくのでしょう?

森山 : 曲のクレジットは連名だったり僕の名前だったりするんですけど、連名の曲は、誰かがきっかけとなるデモを作って、それを共有して演ってみて、これはいけるぞってなれば、僕がメロディをつけて、ミゾベが歌詞を乗せて完成ですね。

ミゾベ : 他のバンドのことはあんまりわからないですけど、森山がメロディをつけるときも、僕や他の人間が、それいいかもとか、もうちょっとこういうフレーズがとか、意見を出してて、1人で作ってるってイメージよりは、みんなで作ってるってのが近いかもしれない。

世界一のバンドになるにはポップであることは必然

——odolってバンドのアイデンティティが確立したのは今のメンバー5人が揃ってから?

森山 : そうとも言い切れないですね。それぞれの今までの音楽性が表れてるとは思います。それぞれが違っていて、それらが合わさったみたいなイメージ。僕ら2人がそれまでやってたバンドから繋がってるものはあるんじゃないかと思います。

——じゃあ、おふたりがodol以前にやってたバンドとodolの共通点、逆にodolにしかない点は?

森山 : ポップであることはずっと意識してるよね。それは外さないようには努力してて。実際の音楽として共通してるところは少ないんですけど、考え方みたいな、美学みたいなところは、わりと共通してるんじゃないかなと。

——森山さんの言うポップの定義とは?

森山 : 僕はポップとキャッチーを使い分けてるんですよね。僕のなかでは、ポップってのはわりと精神的なものというか、内側のもの。で、キャッチーはできあがった外側、外から見たときの表面だと思ってて。ポップな精神でキャッチーを作ることもできる、ポップじゃない精神でキャッチーを作ることもできると思う。

——森山さん的にはポップでもあり、かつキャッチーでもあるってのを重要視してるってことですか?

森山 : いや、そういうわけじゃなくて。僕らが音楽を作るときは、ポップであろうとはしてます、必ず。キャッチーでなくてもポップであればいいという感覚ですね。キャッチーかどうかはできあがってみてのお楽しみかな。

——その中心にあるポップ観をもう少し噛み砕いて教えてもらってもいいですか?

ミゾベ : インディみたいなことをやりたいんじゃなくて、oasisみたいなことをしたいってところじゃないかな。

——特定の美学を持った層に受け入れられればいいって考えじゃなくて、不特定多数の老若男女ってところに音楽を届けたいってことですか?

森山 : 世界一のバンドになるにはポップであることは必然だと思います。

ミゾベ : インディで素晴らしいバンドはいっぱいいると思うんですけど、僕たちがルーツとしてる、良いと思ってるものは、ポップな音楽なので、わざわざそれをポップじゃなくするのも違うかなって。

——世界一のバンドになりたいって言ってくれましたが、今そこにいる存在って具体的にどういうバンドだとイメージできますか?

森山 : もちろんいろんな形があると思うんですけど、まあそのなかのひとつとして、時代を作ったうえで長い時間残り続けるものはすごいあると思います。YMOとか。僕はYMOは世界一だったバンドのひとつだと思ってて。自分のなかのルーツとなっているものとしては1番大きい。彼らのバランス感覚ってのを目指してるところはあります。自分たちも、やりたいことと、やらないといけないこと、2つをどうにかこうにか共存させなきゃって思うんです。odolもそういうバランス感覚をつねに持ってたい。

——ミゾベさんのルーツは?

ミゾベ : 僕は小学校のころにMr.Childrenから入って、中2くらいまではミスチルとoasisだけ聴いてたんですよ。僕は音楽が大好きというよりは、歌が好きだなって気持ちがあるんですよね。

——odolの音楽における幾つかの要素として、ハードな轟音だったりメランコリックな旋律だったり、シューゲイズ的な眩さだったりあると思うんですが、サウンドの面でモデルとなったようなバンドっているんですか?

ミゾベ : いなくて。よく「radiohead好きでしょ?」とか「ポスト・ロックだね」とか言われるんですけど、実はそういうのをちゃんと通ってるメンバーはひとりもいなくて。ある機材でやったら、こうなったみたいな。

森山 : ルーツはそこにないから、変わっていくことは大いにある。この1年の結果は今作の7曲なんですけど、来年の1年はまた違う音が中心になってる可能性があります。今はまたフラットになってて、5人が今見つけてる音楽とか、5人のなかで流行ってるものとか混ざって、核は変わんなくても、外側は全然変わる可能性があると思います。

僕らがこの1年でやってることそれ自体が新しいわけで

——YMOの世界一感ってのは新しい音楽をやってたっていうのと、それを敷居を低くするようなやり方で見せてたってことだと思うんですね。だから、サウンドの新しさってものも、odolにとって重要なんじゃないかと思います。そのうえで、今のodolが鳴らせてる新しさってどんな面に出てると思います?

森山 : 言ってしまえば、こういうバンドって他に見つからないんですよね。もちろん要素としてかぶってるバンドはたくさんいるんですけど。今作はこの5人で組んだ最初の1枚でもあるし、世界初のodolの7曲。だから、先進って意味でなくてフレッシュって意味での新しさのほうが今回は出てると思います。先進的なことをしたいって気持ちもメンバーみんなにあると思うんですけど、僕らがこの1年でやってることそれ自体が新しいわけで、これからもっと新しいことをやるための、はみだすための枠を作るじゃないですけど、このアルバムには、5人のフラットを全て出したらこれってのが出てる。奇をてらうようなことを徹底的に排除してるんですよ。

——ミゾベさんは作詞家としてMr.Childrenから受け継いでるものってあると思います?

ミゾベ : ミスチルに関しては、1番最初にちゃんと聴いた音楽なんですよ。なので音楽を始めたときは、いかにそれを出さないかというか、似てるとか言われたら嫌だったんで、そっからどうやって外れていくかを考えてたんです。そこからどうやって遠ざかるかだけを考えてやってきた気持ちがあります。そう、こないだ桜井(和寿)さんのインタヴューを読んだんですけど、実は全然違うんだなって思ったんです。

——詳しく教えてください。

ミゾベ : 2つあって。1つは、ミスチルはこれまではコンセプトを決めて作ってたらしいんですけど、新しいアルバムの23曲は曲ごとにテーマが違ってるらしくて。でも、僕たちは次はコンセプトが全曲に通じるものがあってってのをやりたいと思ってるんですね。

——ふむふむ。もう1つは?

ミゾベ : あとは曲を作るうえで見ている場所というか。僕らはいま、曲を作ったりすることにプレッシャーとか全くなくて、自分たちが良いって思うものを作ってるんですけど、ミスチルは良くないものを出したら即叩かれるというか、その曲がバンド以外の何百人もの生活を支えてる。日本に届かせる前提で作ってるみたいなんですね。僕たちはいま、日本に届けるとかではなくて、5年後見返してみたときに、これ良かったねって思われるようなものを作りたい。

——odolってバンドが大きくなるにつれて、ミゾベさんも最終的に桜井さんのような立場になるかもしれない。それを想像したときにその状況は幸せだと思えますか?

ミゾベ : 僕はそれをすごく幸せに思えます。

——1曲が何十万、何百万に届くってのは理想であるってことですか?

ミゾベ : そうですね。

——ポップ・ソングってコミュニケーション・ツールとしても優れてると思うんです。1曲が人の距離を急速に縮めたりできる。そのうえで、次の質問は想像力を使ってみてください。おふたりが出会った歳でもある中学校2年生、その1クラスがあるとして、odolの音楽でつなげたい少年少女は、それぞれどんなキャラクターでしょうか?

森山 : それはもう全員がつながってくれたら1番良いんじゃないかなって思います。先生とか保護者も含めてつながればいいし、校長とかも。でも、バンドマンとして嬉しいのは、バンドやりたいって思ってる2人かな。こういうのやりたいねってなって、そっからまた新しい音楽が生まれたらいいですよね。

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PROFILE

odol

(左から)Shaikh Sofian(Ba) / 井上拓哉(Gt) / ミゾベリョウ(Vo,Gt) / 垣守翔真(Dr) / 森山公稀(Pf)

平均年齢21歳。
2014年2月にファーストE.P『躍る』、7月にセカンドE.P『生活 / ふたり』をbandcampにてフリー・ダウンロードで発表(※現在は終了)。同年、〈FUJI ROCK FESTIVAL’14 ROOKIE A GO-GO〉に出演。

>>odol Official HP

[インタヴュー] odol

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