2015/04/30 18:52

ハイレゾで聴く美少女戦士の歌声、やくしまるえつこ、井上ヨシマサ、女王蜂、TeddyLoidら豪華制作陣による楽曲を全曲解説

(C)武内直子・PNP・講談社・東映アニメーション

『美少女戦士セーラームーン』が誕生から約20年。少女たちの運命が再び動き出すーー2014年7月より新シリーズとして始動、今年2015年4月からはテレビ放送も開始した『美少女戦士セーラームーンCrystal』より、キャラクター音楽集がリリースされた。キャラソン自体も約20年ぶりとなる今回、その楽曲制作には懐かしのあの人から気鋭のクリエイターまで、豪華メンツが勢揃い! このたびハイレゾ配信とともに、楽曲制作陣が本作に向けた「本気」に迫る。

美少女戦士セーラームーンCrystal キャラクター音楽集Crystal Collection
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC(24bit/96kHz)
>>ハイレゾとは?

【配信価格】(各税込)
単曲 540円 / アルバム 4,320円

【Track List】
01. 降っても 晴れても -come rain or come shine- (月野うさぎ(CV : 三石琴乃))
02. a touch of rain(水野亜美(CV : 金元寿子))
03. 火の海(火野レイ(CV : 佐藤利奈))
04. cherry pie(木野まこと(CV : 小清水亜美))
05. ♡(ハート)が飛んじゃう空だから(愛野美奈子(CV : 伊藤 静))
06. 君の瞳のMoonrise(地場 衛(CV : 野島健児))
07. I'M GOING DOWN(ジェダイト(CV : 岸尾だいすけ)&ネフライト(CV : 鳥海浩輔)&ゾイサイト(CV : 松風雅也)&クンツァイト(CV : 竹本英史))
08. 真夜中secret talk(水野亜美(CV : 金元寿子)&木野まこと(CV : 小清水亜美))
09. Star on Stars(火野レイ(CV : 佐藤利奈)&愛野美奈子(CV : 伊藤 静))
10. 革命はナイト&デイ(セーラームーン(CV : 三石琴乃)&セーラーマーキュリー(CV : 金元寿子)&セーラーマーズ(CV : 佐藤利奈)&セーラージュピター(CV : 小清水亜美)&セーラーヴィーナス(CV : 伊藤 静))
「革命はナイト&デイ」
「革命はナイト&デイ」

豪華制作陣による『美少女戦士セーラームーンCrystal キャラクター音楽集Crystal Collection』の魅力を解明

20周年を迎え、久々の新作アニメ・シリーズが昨年にスタートするなど様々なプロジェクトが進んできた『美少女戦士セーラームーン』。実はこれ、音楽ファンから見ても相当おもしろいプロジェクトとなっているのだ。

まず昨年には、トリビュート・アルバム『美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE』がリリース。ももいろクローバーZ、中川翔子、後藤まりこ×アヴちゃん(女王蜂)、やくしまるえつこ、川本真琴、クレモンティーヌなどが『セーラームーン』を彩る楽曲の数々を歌った1枚だ。メンツの豪華さや多彩さもさることながら、それぞれが自分の味を活かし90年代のアニソンを今の時代に蘇らせたアレンジもかなり秀逸だった。

そして2015年4月29日にリリースされたのが、『美少女戦士セーラームーンCrystal キャラクター音楽集Crystal Collection』。こちらはキャラクター・ソング集というわけで、カヴァーではなく全て新曲。楽曲を提供したのは、ティカ・α(やくしまるえつこ)、女王蜂、TeddyLoid、Jimanicaなど個性派のクリエイターたち。AKB48にも多数楽曲を提供する井上ヨシマサや、70年代に名曲「あなた」でデビューし90年代の『セーラームーン』にも楽曲提供をしていた小坂明子など、歌謡曲の時代から第一線で活躍してきた作曲家勢も参加し、世代を超えたクリエイターたちの「本気」が垣間見える全10曲となっている。

一聴して気付くのは、ここ十数年で高速&過密な進化を果たしてきたアニソンやキャラソンの風潮とは一線を画し、あくまで80‘sや90’sの歌謡曲〜アイドル・ポップを彷彿とさせる曲調が中心となっていること。まず1曲目、月野うさぎ(CV : 三石琴乃)が歌う「降っても 晴れても -come rain or come shine-」は、キラキラした王道のアイドル・ポップ。こちらは『美少女戦士セーラームーンR』の主題歌として一世を風靡した「乙女のポリシー」を作曲した永井ルイよるものだ。

続く水野亜美(CV : 金元寿子)「a touch of rain」は、Jimanicaが作曲。ソロでは即興やエレクトロニカなど実験的な作風も多い彼だが、曲調はストレートなピアノ・バラード。このあたりのアンダーグラウンドな立ち位置とポップ・センスのバランスは、『あまちゃん』で活躍した大友良英とSachiko Mに通じるものかもしれない。やはり水野亜美の歌う「真夜中secret talk」も80’sアイドル歌謡ど真ん中だ。

女王蜂が手掛けた「火の海」は、アレンジと演奏こそロック・バンドながら、火野レイ(CV : 佐藤利奈)のフラット気味な歌声もあって、どこか中森明菜あたりを彷彿とさせるような雰囲気。

同じく火野レイと愛野美奈子(CV : 伊藤 静)の歌う「Star on Stars」は小坂明子の提供曲で、ビッグバンド・ジャズに“可愛い子ぶりっ子”な歌声を載せた1曲だ。

一方、ハウスやアシッド・ジャズの軽快なビートを用いて90年代のSMAPあたりに通じるダンス・ポップの楽曲に仕上げているのは、木野まこと(CV : 小清水亜美)「cherry pie」に、タキシード仮面こと地場 衛(CV : 野島健児)が歌う「君の瞳のMoonrise」あたりの楽曲。

井上ヨシマサが提供した愛野美奈子「♡(ハート)が飛んじゃう空だから」は、ユーロビートっぽいシンセが飛び交う1曲。言ってしまえば、ジュリアナ・リヴァイバル。

ダーク・キングダム四天王が歌う「I’M GOING DOWN」は、TeddyLoidらしくブロステップ〜EDMを通過したナンバーだが、アニソン〜トランスの風味も漂わせる。

そして、セーラー戦士たちの歌う「革命はナイト&デイ」はティカ・α(やくしまるえつこ)が提供した1曲。ペンタトニックの耳馴染みいいメロディはやくしまるえつこ節とも言えるもので、5人が代わる代わる歌い分けるヴォーカルは、同じく彼女がももいろクローバーZに提供した「Z女戦争」を彷彿とさせるものだが、ももクロのぶっ飛んだ曲調と比較すると、展開はあくまでオーセンティックなポップソングの範疇に収まっている。

というわけで、どの曲も80’sから90’sの歌謡曲やアイドルポップのマナーをしっかりと守ったサウンドになっているのが、このアルバム。そのテイストには「キャラクターソング」という形をとっているからこその面白みもある。『ラブライブ!』や『アイカツ!』などアニメ×アイドルのカルチャーが定着しているからこそ、その源流のひとつとしてこのアルバムを味わうのもおもしろそうだ。(text by 柴 那典)

『美少女戦士セーラームーンCrystal』とは

アニメ『美少女戦士セーラームーンCrystal』TRAILER ももいろクローバーZ VER.
アニメ『美少女戦士セーラームーンCrystal』TRAILER ももいろクローバーZ VER.

イントロダクション
1992年から月刊誌『なかよし』(講談社刊)で連載を開始した『美少女戦士セーラームーン』。原作単行本は17ヵ国語に翻訳され、アニメーション・シリーズは40ヵ国以上の国で展開され社会現象引き起こした。そんな『美少女戦士セーラームーン』が誕生して20年の時を経た「今」、現代の映像表現をもって、新たなるアニメーションを生み出そうとプロジェクトがスタート。作品中に登場する「幻の銀水晶」のように、強く切なく美しく輝きを放ち続ける原作『美少女戦士セーラームーン』の魅力を余さず描き、原点回帰する… そんな使命を持ってアニメーション・シリーズ『美少女戦士セーラームーンCrystal』が動き出す。

あらすじ
「月野うさぎ」は、ちょっとドジで泣き虫だけど、元気いっぱいの中学2年生。ある日、額に三日月模様をもつ黒猫「ルナ」と出会い、愛と正義のセーラー服美少女戦士「セーラームーン」に変身することに! うさぎには選ばれた正義の戦士として、仲間の戦士と幻の銀水晶を探し出しプリンセスを守るという使命があるらしい。一方、ダーク・キングダムの女王「クイン・ベリル」も、絶大な力を持つ幻の銀水晶を手に入れるべくうさぎの住む街に配下を送り込み、奇怪な事件を起こしていく…。果たして、セーラームーンは他のセーラー戦士とともに幻の銀水晶を探し出し、プリンセスを守ることができるのか…!?

>>アニメ『美少女戦士セーラームーンCrystaL』 Official HP

『美少女戦士セーラームーン』関連作

1990年代に発売された元祖『美少女戦士セーラームーン』のサウンドがハイレゾ用にリマスタリングされ復刻! 大ヒットした主題歌「ムーンライト伝説」「乙女のポリシー」など、主題歌、挿入歌もフルサイズで収録。ロンドンでの録音が行われ、壮麗なシンフォニック・サウンドで描かれた『交響詩 美少女戦士セーラームーンR』も含む全4作品。

[レヴュー] 月野うさぎ(CV:三石琴乃)

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