高橋健太郎のOTO-TOY-LAB ――ハイレゾ/PCオーディオ研究室――

【番外編】Lynx「HILO」で聴く、ECMレコードの世界

ECMレコード『Concerto for violin and orchestra / Aditus / Exodus』のジャケット画像より

OTOTOYプロデューサーの高橋健太郎が、注目のハイレゾ機器を取り上げてレヴューするこの連載。今回はその番外編として、昨年末の「DSD SHOP 2014」で行われたイヴェント「世界初、Thunderbolt接続のAD/DAコンバータで聴く、ECMレコードの世界」の模様をお届けします。世界初のネイティヴThunderbolt接続を実装したLynx「HILO」をDACに使用し、気鋭のジャズ評論家として知られる柳樂光隆氏とともに、ドイツのレーベル「ECM」のカタログを聴き漁りました。まずはHILOの紹介からどうぞ!

世界初、ネイティヴThunderbolt接続を実装したAD/DAコンバータ

Lynx Studio Technology「HILO」

HILOはLynx Studio Technology社のフラッグシップ機的な存在のAD/DAコンバータ。ルックス的にはシンプルな2chのAD/DAコンバータのように見えるが、実は内部に32チャンネルのマトリクス・ミキサーを備えていて、DAWを中心としたスタジオのモニター・コントローラーとしての機能も持っている。操作はタッチ・スクリーンになったフロント・パネル、あるいはPCにインストールした専用のアプリケーションで行う。基本的にはスタジオ・ユースの機材であり、個人でリスニング用に使うには、セットアップなどが少し複雑になる。

2014年、このHILOのThunderboltヴァージョンが登場。これは、それまでのUSB接続のためのインターフェイス・カードに換わって、Thunderbolt接続のためのインターフェイス・カードをインストールされた機種になる。すでにUSBヴァージョンを購入した人も、カードを交換するだけで、Thunderboltヴァージョンにアップグレードできる。ネイティヴのThunderbolt接続で動作するAD/DAは、HILOが世界初だとされる。

USB接続に比べて、Thunderbol接続は、使用感が快適さが増す。動作は速く、安定していて、違うサンプルレートの曲の連続再生などでもストレスを感じさせない。加えて、音質的にもアドヴァンテージがある。

DACチップにシーラスロジックのCS4398を使用したHILOは、もともと、滑らかな中域、抜けの良い高域を持ち、広く透明な音場感もある高性能のAD/DAコンバータだったが、そのポテンシャルがさらに引き出される。PC内のハイレゾ音源をUSB版とThunderbolt版で聴き比べてみると、後者の方がハイエンド、ローエンドも伸びて、音像のクリアーさが増す。とりわけ、立体的なサウンド表現において、非常に優れたものを感じさせた。

ただし、現在のところ、Thunderbolt接続ではDSDの再生はできない。USB版のHILOは5.6MHzまでのDSDの再生に対応している。

(text by 高橋健太郎)

>>さらに詳細なレヴューはこちら (高橋健太郎のOTO-TOY-LAB 第9回)
>>Lynx HILO 製品ページ

世界初、Thunderbolt接続のAD/DAコンバータで聴く、ECMレコードの世界

高橋健太郎(以下、高橋) : 今日は「OTOTOY DSD SHOP 2014」に併設されたブースで、〈世界初、Thunderbolt接続のAD/DAコンバータで聴く、ECMレコードの世界〉というイヴェントを行いたいと思います。選曲をしていただいたのは気鋭のジャズ評論家、柳樂光隆さんです。

柳樂光隆(以下、柳樂) : よろしくお願いします。

高橋 : 今日は柳樂さんに選んでいただいたECMの音源(e-onkyo musicで配信中)をすべてハイレゾで、「HILO」というDACを使って聴いていきます。世界初のThunderbolt接続DACということですが、みなさんThunderboltはご存知ですか? …1人くらいしかいませんね。Thunderboltというのはですね、PCにはUSB端子が付いてますが、それよりも遥かに高速に情報をやり取りできる規格のことです。Thunderbolt端子というのがありまして、最近のMacには確実に付いています。これを使って直接PCに繋ぐことができるDACはこれまでなかったのですが、今回LynxというカリフォルニアのメーカーからHILOという可愛いサイズのAD/DAコンバータが登場しました。これ、貸していただいて家で使ったんですけど、使いはじめた瞬間にびっくりしました。音ももちろん良いんですけど、何が違うかというと、今まではハイレゾ音源をPCで再生しようとすると結構カクカクしてたんですね。ハイレゾってサンプリングレートが上がっていくとファイルが大きくなるから、PCの動作もどんどん重くなってくるんです。プレイ・ボタンを押しても1、2秒後に音が出たりする。でもこのThunderbolt接続のLynx HILOをMacに繋いだところ、プレイ・ボタンを押した瞬間に音が出るんですね。これはPCオーディオで今まで苦労してきた人には衝撃的で、「ここまできたか」と。さて、そんな機材を使ってECMの音源を聴いていくわけですが、柳樂さんは今年「Jazz The New Chapter」というムックを出しました。これを一言で言うと?

Thunderbolt接続に使用されるインターフェイス・カード

柳樂 : 一言で言うと、新しいジャズしか載っていない本です。

高橋 : 逆に言うと新しいジャズしか載っていない本はこれまでなかった?

柳樂 : そうですね。前書きにも書いてあるんですけど、日本のジャズの本は1990年くらいで止まってるんですね。なので一応、1990年以降も必要なものはおさえつつ、21世紀のジャズを取り上げた本になります。

高橋 : いわゆる“ジャズの周辺”というか、あるいは“ここまで全部ジャズだ”というか。そういう広がりを示した本でもありますよね。

柳樂 : そうですね。最近のミュージシャンがレディオヘッドやディアンジェロ、フライング・ロータスが好きだとかいう話をみんなするので、そういう他のジャンルの影響を受けたジャズを網羅してあるという感じです。

高橋 : この「Jazz The New Chapter 1」が出たときはやられたと思いましたね。どうやってディスってやろうかって(笑)。そして「Jazz The New Chapter 2」が9月に出ましたね。ちょっと僕も書かせていただきました。

柳樂 : 1で取り上げたベッカ・スティーブンスという素晴らしいアーティストがいて今度来日も決まってるんですけど、その人をものすごい早い段階で年間ベストにあげていた評論家がいるということで。それが高橋さんだったので「書いてもらおうじゃないか」と。

高橋 : はい。僕はジャズの評論を書いたことがないんですね。ジャズ素人ですから。ジャズ評論っていうのは、音楽評論じゃなくて“ジャズ評論”なんですよ。ですからジャズの批評の世界で認められるように書かなきゃいけないんですけど、そんなことできないので今までは手を触れないようにしていたんです。それが今回、柳樂くんのおかげでついにジャズ評論家デビューできました。そして2の中で大きなページを割いて特集しているのが、今日取り上げる「ECMレーベル」です。ECMはドイツのジャズ・レーベルって言っていいんですかね?

柳樂 : そうですね。まあレーベル的にはジャズというかコンテンポラリー・ミュージックだと言っているんですが。基本的にはジャズからスタートして1980年代からクラシックも扱いはじめて、ジャズとクラシックの両方でグラミー賞をとった唯一のレーベルじゃないでしょうか?

高橋 : なるほど。ECMというと昔のイメージが強くて、2000年代以降のコンテンポラリーとか、今のECMをあんまり知らない人が多いんじゃないかと思うんですけど。

柳樂光隆(左)と高橋健太郎(右)

柳樂 : そうですね。さっきのジャズ評論の話じゃないですが、ECMはやっぱりECM評論みたいな世界があって。外に紹介される機会があまりなかったので、今回は今までECMの仕事をしたことがない人だけで書くっていうのも含んでいて。あとはテクノとかの元になった音源もたくさんあるレーベルなので。

高橋 : 結構ヒップホップとかテクノの人でもECM好きな人は多いですもんね。

柳樂 : そうなんですよ。なのでそういう視点で、ポップ・ミュージックに近い形でECMを紹介するっていう。

高橋 : なるほど。じゃあ今日はどんな流れで曲を聴いていきましょうか。

柳樂 : まずは馴染みやすいところから。今年亡くなったチャーリー・ヘイデンっていうジャズ・ベースの巨匠がいるんですけど、彼のラスト・アルバムにもなったキース・ジャレットとのデュオの『Last Dance』というアルバムから。

Keith Jarrett, Charlie Haden / Last Danceより
Dance Of The Infidelsを試聴中

高橋 : 今のは24bit/96kHzのハイレゾで聴いていただきました。最初に紹介し忘れてたんですけど、今回パワーアンプはベンチマーク社の「AHB2」というのを使っています。ベンチマーク社はコンバータで有名な会社なんですけど、なんでその会社がパワーアンプを作ったかというと、ハイレゾの音楽再生っていうのはダイナミック・レンジがすごく大きいんですね。それに対してパワー・アンプの性能っていうのは、そこまでのダイナミック・レンジを再生できるようにできていない。そうすると例えば、SN比がとっても良くてダイナミック・レンジが120dBとかあってもそれを再生しきれない。そういうダイナミック・レンジに対する再生能力を持ったアンプということで開発されたのが、この「AHB2」というアンプだそうです。スピーカーは僕の私物でして、ATCの「SCM-10」というモデルです。プリアンプも僕の私物で、Coleman Audioというところのパッシヴのプリアンプです。プリアンプのところではまったく色づけがないので、HILOとAHBとスピーカーの音でそのまま聴けるようになっています。さて、ECMをハイレゾで聴いてみましたが柳樂さん的にどうですか?

Benchmark AHB2

柳樂 : 僕は一度OTOTOYに遊びに行って、その時に初めてハイレゾを聴かせてもらいました。まだジャズ喫茶とかでもハイレゾで聴けるところは少ないんじゃないでしょうか?

高橋 : ジャズ喫茶だと、アナログ・ターンテーブルに真空管アンプとJBLみたいな…。こういうちっちゃなものでジャズを聴いていいのか、みたいな世界ですよね(笑)。

柳樂 : そうですね。「気合いが足らん!」みたいな(笑)。

高橋 : そんな訳で、もう1曲ストレート・アヘッドなものを。

柳樂 : はい。ステファノ・ボラーニというイタリアのピアニストがいて、今ECMでかなりたくさんアルバムを出してるピアニストなんですが、その新譜がすごい良かったのでそれをかけます。

Stefano Bollani / Joy In Spite Of Everythingより
Teddyを試聴中

高橋 : これは新譜なんだ?

柳樂 : 新譜です。今年出たアルバム。

高橋 : ジャズとはいえミニマルでもあり、音響的なアプローチもありですね。

柳樂 : これをかけたかったのは、ギターがビル・フリゼールなんですけど、最初何も考えずに聴くと「どこのジム・ホールだよ」って感じで。さっきはキース・ジャレットをかけましたけど、ECMのルーツにはジム・ホールとキース・ジャレットがいて、その感じを残しつつ新しい感覚を取り入れてる人もいるっていう例でかけてみたんです。

高橋 : なるほど。次はどんな曲を?

柳樂 : 次はもうちょっと新しい感覚があるものを。ストレートなジャズっぽいものを2曲かけたんですけど、ウォルフガング・ムースピールというギタリストの新譜『driftwood』から、「Bossa for Michael Brecker」というマイケル・ブレッカーに捧げた曲です。

Wolfgang Muthspiel / Driftwoodより
Bossa for Michael Breckerを試聴中

柳樂 : これ、ドラムがブライアン・ブレイドなんですけど、彼のECMデビューは実はこれで、ブライアン・ブレイドはジャズをやるとダイナミクスが大きすぎちゃうというか、繊細なところでいきなりドン! と入れるんですけど、やはりあれはECMの感じに合わなかったっぽくて、ここでは繊細で綺麗なサウンドをやってて。

高橋 : これもイタリア録音なんですか?

柳樂 : これはオスロのレインボウ・スタジオですね。こういう、もろにジャズっぽい音源はまだいっぱいあります。じゃあジャズっぽくないのをこれからかけようと思うのですが、ヴィジェイ・アイヤーというインド系のアメリカ人のECMデビュー作で、ECMは基本的にアルバム1枚契約なんですけど、ヴィジェイに関してはオーナーがすごく気に入って、いきなり3枚契約したんです。『Mutations』というアルバムから「Waves」という曲を聴いてください。

VIJAY IYER / Mutationsより
Wavesを試聴中

柳樂 : これはビートのない曲なんですけど、今のジャズはわりと変拍子で細かくリズムを割っていくのが多くて。でもそれをドラムは使わずにストリングスとかでやっているっていうのが今っぽいなと。あと最近ジャズ・ミュージシャンがベースの指弾きを使うことが多くて、ドローン的なものをすごく使うんですけど、彼はそれをストリングスのセクションでやっていて、エレクトロニック・ミュージック的な質感を生演奏でどう出すかっていう。

高橋 : なるほど。心優しいニューエイジのようでありながら、聴くとけっこうどろっとしたところがある。ECMってすごく清潔なイメージ的があるけど、実はそれだけではないのが隠されてる感じがしますね。

柳樂 : ECMのコンセプトで「静寂の次に美しい音」っていうのがあって、そのイメージがつきすぎてしまった。実は結構尖ってるし、ものによっては電子音とか入っていてノイジーなので、そういうのがうまく昇華した新しい部分という感じです。

高橋 : では次ですね。

柳樂 : 次はスイス人なんですけど、コリン・バロンという若いピアニストで、その新譜がめちゃくちゃ良かったのでかけようと思います。『Le vent』というアルバムから「Pixels」という曲ですね。

Colin Vallon / Le Ventより
Pixelsを試聴中

柳樂 : 今日はハイレゾだからめちゃくちゃ音がよくて、ドラムの音色がすごくおもしろいですね。

高橋 : ミュートをかけてパスッとした音になってるね。

柳樂 : チューニングを変えたり、布を上から被せたり、あとはマレットを使ったり、シンバルを割り箸くらいのスティックで叩いてみたり。ピアノもプリペアード・ピアノを使ったりして、生演奏でどこまでできるかというのをひたすら追求しているトリオですね。次はヨーロッパのトラッドというか、フォークロアというか、いろんなことをやっていておもしろい音を紹介します。ノルウェーのハーダンガー・フィドルという楽器の奏者で、ベネディクト・マルセスのという人の作品を聴いてもらいましょう。

Benedicte Maurseth / Asne Valland Nordliより
Aldeを試聴中

高橋 : ノルウェーのフォークロアもおもしろいですね。

柳樂 : ノルウェーとかスウェーデンとか北欧の民族楽器でミニマル・ミュージックみたいなものをやるというのが最近多くて。すごく生々しいレコーディングをするというか、楽器弾いてる物音とかも思いきり入れちゃう感じなので、ハイレゾで聴くとよくわかるんですよ。これもエレクトロニカみたいな感じで聴くのがいいかなと。ちなみにハーダンガー・フィドルは演奏する弦とは別に共鳴弦がついてるんですよ。それがすごくおもしろくて。次はジャン=ルイ・マティニエっていうアコーディオン奏者と、ニッケル・ハルパというスウェーデンの民族楽器を演奏するマルコ・アンブロジーニのデュオですね。今度のニッケル・ハルパはフレットの代わりに弦を押さえる大正琴みたいな楽器で、これも不思議な音がします。

Jean-Louis Matinier, Marco Ambrosini / Inventioより
Tasteggiataを試聴中

高橋 : これはしかし、ジャズ・ファンは買わないな(笑)。いわゆるワールド系のファンもちょっと…。

柳樂 : 某タワーレコードのバイヤーさんもどうしたら良いかわからないって言ってました(笑)。ひとつ前のもそうなんですけど、ちゃんと普段はワールドミュージックっぽいのを出してる人たちなんですよ。それがECMにいくとこういうことになる(笑)。

高橋 : 音響的にはすごく面白いですよね。

柳樂 : 例えばヤン・ガルバレクみたいに、こういう作品をずっと出してる人はいるわけですよ。でもいわゆるジャズ評論家の人とかジャズ・リスナーの人にガルバレクのどれが好きですか? って聞くと、やっぱり70年代、80年代なんですよね。90年代以降のアルバムって全然聴かれてなくて。大ヒットした『Officium』っていうアルバムがあって、あれも今のECMからさかのぼって聴くとようやく意図が見えるようになってきたというか、ようやくECMの読み方みたいなものが見えてくる。

高橋 : ここまでコアなところまでいったけど、種は蒔かれていたみたいな。

柳樂 : そうなんです。こういうのをハイレゾで聴くとちょっと違うものが聴こえてきて、「おっ」という感じですね。

高橋 : 脳内に何か出ますよね。

柳樂 : 出ますね。じゃあ、次行きますか。次はニュー・シリーズという、ECMのクラシックのシリーズがありまして。これはもう手ごわい音源しかなかったので、その中からなんとか2曲選んできたんですけど。ECMって現代音楽的なものをやったり、音響っぽい新しいのもやってるんですけど、もう一つの柱としてのバロック音楽とかをすごく大事にしてるというか。最近もその路線がずっと続いてて、結構良いものが出てるので、そのクラシック・スタイルをちょっと聴いてみようかなと。ジョン・ホロウェイという、バロック・ミュージックをやるヴァイオリンの巨匠がいるんですけど、その人のアルバムを。

John Holloway / Pavans & Fantasies from the Age of Dowlandより
Lachrimae Antiquaeを試聴中

高橋 : これはすごく英国的な。

柳樂 : 16世紀〜17世紀のイギリスの作曲家のジョン・ダウランドという人の曲です。たとえばブラック・ミュージックを聴くときって、さかのぼってブルースも聴けみたいな話になるんですけど、白人的な音楽のルーツをさかのぼる意味で、こういうバロック音楽もECMはたくさん録音していて。この辺もあらためて聴いてみると音響的だったりするので、ニュー・シリーズは掘り甲斐があると思うんですけど。

高橋 : だいたい年間何作品ぐらいECMで出てるんですか?

柳樂 : 多いときは月に3枚とか出たりします。

高橋 : 全部マンフレート・アイヒャー(※ECMのオーナー)が触ってる?

柳樂 : いや、最近はそうでもないんです。チョン・ミョンフンという世界的な指揮者の息子がECMのプロデューサーをやってるのですが、新しめなものは彼が触ってるみたいですね。韓国人なのでアジアのマーケットを狙ってるというのもあると思うんですけど。

高橋 : なるほど。

柳樂 : それでは、用意してきた最後の曲を。ティグラン・マンスリアンというアルメニアの現代音楽家なんですけど、ECMはアルメニアにすごく執着があって。キース・ジャレットがアルメニアの音楽家のグルジエフの曲をやってたり、アイヒャー自身がヨーロッパのなかでも埋もれがちな国のフォークロアをどんどん拾ってたり。あとはグレゴリオ聖歌みたいなものをさかのぼると、原型に近いものがアルメニアのあたりに残ってるという話もあって。そんな中でこのティグラン・マンスリアンという作家もECMですごくたくさん出しているので、それを聴いてみたいと思います。

Tigran Mansurian / Quasi Parlandoより
Double Concerto For Violin, Violoncello And String Orchestraを試聴中

柳樂 : これも一応、わりと新しい曲なんですけど、すごく古いヨーロッパのバロック音楽みたいな、もしくは教会音楽みたいな。前にOTOTOYでいろいろ聴かせてもらったときに、ハイレゾだとストリングスの音がものすごく良いみたいな話を聞きました。

高橋 : この曲は中低域にストリングスが固まってるんですけど、あのへんが団子にならずにちゃんと1本1本の弦の動きがよく見えるというのはありますね。16bitを24bitにしただけでその辺はすごく変わるんで。しかしやっぱりECMは音が良いですね。今日使ってるHILOはカリフォルニアのメーカーの製品なので、やはりそのお国柄みたいなのがありまして、わりと明るくて素直で音がちゃんと前に出るタイプのDACだと思います。同じフックアップさん取扱いのBenchmark DAC2の方がもっと北欧的というか、わーっと広がる音で、そういう意味ではECMのキャラクターに近いものがあると思います。キャラクターを重ねるのが良いかどうかは別ですけどね。僕が持ってきたATC SCM-10はイギリスのスピーカーで、中域が濃密でちょっと暗めの音がしますが、他にも違う組み合わせで聴いてみたくなってしまいますね。

Benchmark DAC2 HGC

柳樂 : ちなみに、最近ECMのオフィスに行ったという方が言ってたんですけど、イタリアのパスタ・メーカーの近くにあるらしくて、周りに陽気なイタリア人がいっぱいいるらしいです。

高橋 : へぇ、なんかイメージと違う。

柳樂 : オーナーのアイヒャーのインタヴューを聞いてても、とにかくよく喋るんですよ。ひとつ言うと10返ってくるみたいな感じで。どうしても作られたイメージで、ぼそぼそっと哲学的なことを言うみたいな感じがあったんですけど。

高橋 : イタリアでパスタ食ってワイン飲んで、そんな享楽的な生活をしながら、これを作っているという。

柳樂 : ドイツ人らしくちょっと皮肉っぽくて、小難しいことも一応言うんですけど、とにかくよく喋るし、陽気なおじさんだと思います。

高橋 : 今日は本当におもしろかったですね。僕はそんなにジャズを聴いてきてないですけど、それなりにECMは100枚とか200枚は聴いてると思うんですが、それでも最近のECMは取っ掛かりが難しくて。

柳樂 : 某ジャズ喫茶の有名な方とかもほとんど聴いたことがないとおっしゃっていたので、ジャズ・リスナーにとってもそのくらいハードルが高くなっていたので、あえてやりたかったというのもあって。

高橋 : なるほど。今日はありがとうございました。

柳樂 : ありがとうございました。

高橋健太郎のOTO-TOY-LAB アーカイヴス
第1回 iFI-Audio「nano iDSD」
第2回 AMI「MUSIK DS5」
第3回 Astell&Kern「AK240」(前編)
第4回 Astell&Kern「AK240」(後編)
第5回 KORG「AudioGate3」+「DS-DAC-100」
第6回 M2TECH「YOUNG DSD」
第7回 YAMAHA「A-S801」
第8回 OPPO Digital「HA-1」
第9回 Lynx Studio Technology「HILO」
番外編 Lynx「HILO」で聴く、ECMレコードの世界

Lynx HILO 仕様

■ライン入力(A/D)
全高調波歪み : -114dB(@1kHz、-1dBFS、20kHzフィルター)
ダイナミックレンジ : 121dB(A-weighted、-60dBFSシグナルメソッド)
周波数特性 : ± 0.01 dB、20〜20kHz
クロストーク : 最大-140dB(@1kHz、-1dBFS信号)

■ライン出力(D/A)
全高調波歪み : -109dB(@1kHz、-1dBFS、20kHzフィルター)
ダイナミックレンジ : 121dB(A-weighted、-60dBFSシグナルメソッド)
周波数特性 : ± 0.02 dB、20〜20kHz
クロストーク : 最大-135dB(@1kHz、-1dBFS信号)

>>HILO 製品ページ

この記事の筆者
高橋 健太郎 (Reviewed by Kentaro Takahashi)

本名:高橋健太郎 プロデューサー、ジャーナリスト、選曲家など。高橋健太郎 文筆家/音楽制作者 評論集「ポップミュージックのゆくえ〜音楽の未来に蘇るもの」がアルテスパブリッシングから発売中。http://tinyurl.com/2g72u5e twitterアカウントは@kentarotakahash

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