2016/01/17 15:14

【「隣の騒音」 第7回】圧倒的なカリスマ性、米国でも注目のガレージ・ロック・バンド Atomic stooges! 最新楽曲&レア・デモ音源を配信!

いちライターとして、いちリスナーとして、関西シーンの渦中にいる田中亮太が、すぐ隣で鳴っている騒音――今この瞬間、どうしても耳に入ってきて、耳を奪われてしまうサウンドを月1で紹介する連載「隣の騒音 ~2014年の関西インディ・ミュージック・ガイド」ーーいえ、2015年の関西インディ・ミュージック・ガイドとして、引き続きお送りします!! さて、第7回は関西を中心に活動する3人組ガレージ・ロック・バンド、Atomic stooges(アトミック・ストゥージズ)。ファースト・デモ音源の時点から米国のインディ・レーベルから声がかかり、関西どころか日本も抜けて海外でカセット・リリース。The fin. やHomecomingsといった関西のバンドたちと同様、ナチュラルに海外とリンクしていることを感じる存在です。いつもとは趣向を変えて、インタヴューを踏まえた田中亮太の書き原稿で、その魅力をお伝えします。

第7回 : Atomic stooges

最新音源セカンド・デモ『Elephant Parade』にOTOTOY購入限定ボーナス・トラック!!
Elephant Parade

【配信形態 / 価格】(各税込)
ALAC / FLAC / WAV / AAC / MP3 : 単曲 200円 アルバム 600円

【Track List】
01. Elephant Parade / 02. fiddle / 03. Taxi Driver
ボーナス・トラック : Walking Ghost(アルバム購入のみ)
現在入手困難なファースト・デモ音源『ORANGE AND MILK』
ORANGE AND MILK

【配信形態 / 価格】(各税込)
ALAC / FLAC / WAV / AAC / MP3 : 単曲 200円 アルバム 450円

【Track List】
01. オレンジとミルク / 02. Hey bee / 03. Elephant Parade

彼らを初めて聴いた場所は、以前自分がDJ出演していたライヴハウスの楽屋だった。ドッタ! ドゥルルッタ!! まず、耳に飛び込んできたのは、一音一音がしっかりとハードでいて、見事に跳ねるドラム。これは只者じゃないという、確信に近い予感が頭を貫き、直後のDJの準備をほっぽり出して、フロアに向かったのだった。

ステージを目の当たりにして、最初の驚きは、その尋常ならざるドラムの叩き手が、女性だったこと。そして次に、3ピースのロックンロール・バンドとして、原石の輝きがそこかしこから放たれていたことだ。つねにブルースの苦味を醸しながら、カッティングとチョーキングを巧みに織り交ぜていくギター・プレイ。蛇のようにうねるベース・ライン。まだあどけなさが残るも、鋭さとダルなぶっきらぼうさをあわせもつ男性ヴォーカリストのカリスマ性にも惹きつけられた。紛れも無い本物。彼らのステージには未来への予感が充満していた。Atomic stooges。その夜最大の収穫が彼らの存在を知れたことだった。

『隣の騒音』第7回では、大阪を拠点に活動する彼ら、Atomic stoogesを紹介したい。あわせて、OTOTOYではファースト・デモ『ORANGE AND MILK』、最新作にあたるセカンド・デモ『Elephant Parade』の配信がスタートしている。現在ライヴ会場でも『ORANGE AND MILK』のCDRはもう完売、ライヴ会場でも販売されてないそうなので、貴重な音源入手の機会となることだろう。そして、『Elephant Parade』は、CDR盤には収録されていない新曲「Walking Ghost」がボーナス・トラックでついてくる。詳しくは後述するが、この新曲がもうめちゃくちゃやばいので、ぜひ手に入れていただきたい。まずは、バンドのバイオグラフィーから振り返ることとしよう。

yoshigoo(Gt, Vo)

hikaru(Ba)

kozue(Dr)

結成は2013年。メンバーは当初から今まで、ギター / ヴォーカルのyoshigoo、ドラムのkozue、そして、当時は東京で暮らしていたベースのhikaru。当初、彼らが雛形としていたバンドは、レッド・ツェッペリンにフラット・デュオ・ジェッツ。ツェッペリンじこみの強烈なロックンロール成分は上で書いたように一目瞭然だ。フラット・デュオ・ジェッツは80年代に活躍した2人組のサイコビリー・バンド。ジャック・ホワイトがホワイト・ストライプス結成をするにあたってモデルにしたことでも知られている。その獰猛なブルース解釈は、Atomic stoogesにもしかと受け継がれている。

2013年の9月にはファースト・デモ『ORANGE AND MILK』を発売。この作品にはhikaruは参加しておらず、yoshigooとkozueのみ、ベースレスでの録音だった。当時はライヴも2人編成でおこなっていたそうだ。hikaru不在時にサポート・ベースを入れるという選択肢をとらなかった理由を彼らはこう語る。

「音圧が無くても2人の圧があって2人でやりたいと思った」(yoshigoo)
「他のベースいれるくらいならhikaruとやりたかったし、hikaruと合流できないなら2人でやってこうと思ってましたね」(kozue)

hikaruが関西に戻り、念願の3ピースとして活動を本格化させた彼らは、セカンド・デモ『Elephant Parade』に着手する。タイトル曲は前作にも2人でのヴァージョンが収録されていたので、聴き比べるとバンドのスケール感、パワーに歴然の違いがあることがわかるだろう。強固な土台が加わったことで、ドラムもギターも鎖から解き放たれたかのように暴れまわっている。ここまで各楽器の手数が多いロックンロール・バンドも珍しいのではないか。しかも、それがてんでばらばらに向いているのでなく、渾然一体にグルーヴの塊となっている。バンド自身でも、やはりこの曲が現在の代表曲という自負があるようだ。

「3人になって1番最初に作って、それが今でも1番になってる。3人のグルーヴ感がかっちりと合ってて凄く気持ちいい」(hikaru)

不穏なムードを切り口になだらかに温度を上昇させていく「fiddle」、目が回るほどの勢いで突進するガレージ・チューン「Taxi Driver」もキラー・チューンだが、ここではボーナス・トラックとして配信のみで収録される「Walikng Ghost」に注目しよう。上記の3曲と比較して、どっしりと重たいリズムを持ったミディアム・ナンバー。全ての曲でスパイスのように効いている、バンドのブルースをもっとも顕にした新しい基軸の1曲である。演奏力の高さゆえ、テンポは遅くなろうとも、その攻撃力は一切衰えてない。今後、バンドがさらなる表現力を獲得していくうえでキーとなる楽曲ではないだろうか。

まだ、その知名度が全国に広がってるとは言えないだろう。けれど、早耳のリスナーなかでは、にわかに噂の的となりはじめているようだ。すでに入手困難なファースト・デモ『ORANGE AND MILK』は、オークション・サイトで高値がついているらしい。また、アメリカ / ヒューストンのカセット・レーベル、Love Panic Recordsからのカセット・リリースや、踊ってばかり国やミイラズを輩出したmurffin discsのレーベル・オーディションで入賞を果たすなど、彼らのロックンロールは、確実にその射程距離を広げている。

実際、ライブハウスの場では、対バンのミュージシャンや初見のオーディエンスが、彼らへ向けて驚きと賛辞の言葉を口にしているのを散見する。しかも、思わず口に出てしまったとばかりに。2015年、Atomic stoogesはいっそう多くの人に発見されることだろう。まずは、これら2作の音源で、耳を奪われること、ぶっとばされることへ、そなえておいていてほしい。(text by 田中亮太)

連載「隣の騒音」Archives

第1回 : 生き埋めレコーズ

第1弾は京都で暮らす若干20歳過ぎの男の子たち3人が始めたインディ・レーベル"生き埋めレコーズ"。彼らにとって初のリリースとなるコンピレーション『生き埋めVA』(左)と、主宰の1人が率いるTHE FULL TEENZのファースト・アルバム『魔法はとけた』(右)を配信中。


第2回 : 本日休演

第2弾は現役京大生の4人バンド"本日休演"。"猥雑なパワーと前衛的な音作り、歴史をふまえての豊穣さをもったポップ・ソング。そこにボ・ガンボスからくるりにいたるまでの、京都ならではの濃ゆいブルースが息づいている"――そのサウンドを収めたセルフ・タイトル・アルバムとなる『本日休演』を配信中。


第3回 : その他の短編ズ

第3弾は森脇ひとみと板村瞳によるデュオ"その他の短編ズ"。音色もアンサンブルも定形から解き放たれ、奔放な創作マインドがさらなる爆発を遂げた最新作『3』をはじめ、ゆっくりとした演奏が穏やかなアンビエンスを醸し出しているファースト『その他の短編ズ』、よりソリッドに削ぎ落とされ、どこかポストパンク期のアコースティック作品との趣もあるセカンド『B』を3作同時配信。


第4回 : Seuss

第4弾は4人組のサイケでリア・ポップ・バンド、Suess。気だるいサイケデリアを醸し出すソングライティングの魅力。アンサンブルにはまだまだ発展途上な面がありますが、それを差し置いての、キャラも身丈もそれぞれ違ったタイプの男前なメンバー4人。彼らの初音源となる2曲入りシングル『Melancholia/Little Boy』をハイレゾ音源にて配信。


第5回 : MECCA RADAR

ceroや(((さらうんど)))のエンジニア得能直也が惚れこんだ新世代ジャム・バンド、MECCA RADAR。艶やかで浮遊感たっぷりのギターに、ファンキーにうねるベースライン、小刻みに躍動するドラム。しっかりと歩調のあったアンサンブルは歌がなくてもメロディアスな軌道を描く。得能が腕をふるったサウンド・ワークや立体的な音設計も聴きどころのインストゥルメンタル5曲を収録したミニ・アルバムを配信中。


第6回 : THE FULL TEENZ

第1回に紹介した京都発の新興インディ・レーベル〈生き埋めレコーズ〉の主宰バンドであるTHE FULL TEENZ。クリスマス・イブにリリースした季節ずれのサマー・ソングEP。タイトル曲の「swim! swim!」はこれまでの疾走感はそのままにソングライティングの起伏に磨きをかけた、バンドの新しい代名詞となりそうな甘酢っぱいロックンロール。バンドの新機軸を打ち出した5曲入り。

[連載] Atomic stooges

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