2014/11/26 17:16

Nao Yoshiokaによる公開DSDライヴ・レコーディング@YEBISU MUSIC WEEKEND——OTOTOYライヴ・レポート

高いプレイヤビリティーを身に付けたミュージシャンと、観るものを震わせるソウル・ミュージックをプレゼンし続けるSWEET SOUL RECORDS。海外の凄腕ジャズ / ソウル・ミュージシャンが数多く所属するそのレーベルで、数少ない日本人女性シンガーとして異彩を放っているのが、Nao Yoshioka。ニューヨークでの2年半の滞在を経て身に付けた、確かな歌唱力とリズム感、そしてなにより天井を突き抜けるような力強いハイトーン・ヴォイスには、人種、ジャンルなどカテゴライズを跳ね飛ばすほどの魅力に溢れている。

そんな彼女による、YEBISU MUSIC WEEKENDで敢行された熱いパフォーマンスをDSDフォーマットで録音。そしてその模様を詳細なライヴ・レポートでお届け。写真とともに彼女によるソウルフルなパフォーマンスと会場の一体感を体感いただけると幸いだ。

なお今回録音したDSD音源は、12月9日(火)から、渋谷ヒカリエの8階に位置するイベント・スペース〈aiiima〉で開催される“OTOTOY DSD SHOP 2014”で行われる先行試聴会で聴ける予定だ。

Nao Yoshiokaによる、当日のレコーディング模様はこちら
Nao Yoshiokaによる、当日のレコーディング模様はこちら

LIVE REPORT : Nao Yoshioka@YEBISU MUSIC WEEKEND

11月3日、YEBISU MUSIC WEEKENDの最終日。この日はNao YoshiokaによるDSD録音でのライヴ・レコーディングが企画されていた。彼女は大阪出身、ニューヨークでの活躍を経て、現在は東京に暮らすシンガー。 アメリカ最大級のゴスペル・フェスティバルで40,000人の中からファイナリストに選出されたという、不世出の歌声の持ち主だ。昨年SWEET SOUL RECORDSからファースト・アルバム『The Light』をリリース。アメリカ、オランダを経たワールド・ツアーのファイナルにあたる日本公演が今月に控えている。大変多忙な時期だと推測できるが、数多の経験を積んで脂が乗った状態、かつ千秋楽へ向けた前哨戦とも言えそうな今回のライヴ・レコーディング。そのパフォーマンスに大変期待が持たれた。

さて、この日は朝10時からのリハーサル。前日の同企画がフロアでの演奏だったのとはうって変わり、ステージに楽器が並んでいる。レコーディングがスムースに成功した場合、バンドは通常のライヴを披露したいという意向のようだ。Nao Yoshiokaの編成は、キーボードに小林岳五郎、パーカッションに豊田稔を迎えたトリオ。今日はDENONがスポンサーとのことで、ステージには大きなフラッグが掲げられていた。なお、レコーディング・モニター用のヘッドフォンもDENON製のものを使用しているようで、各メンバーともそれぞれの楽器の音量バランスなど入念なチェックが行われていた。1時間ほどでリハーサルは終了。

レコーディング・ライヴは17時5分からスタートした。最初にイベント主催者の飯田仁一郎による「フェスでDSDレコーディングをしてみたい」という企画趣旨の説明、そしてスポンサーであるDENONの宮原利温からの挨拶。DENONが現在意欲的に取り組んでいるというハイレゾに対応した製品開発に際して、「コンテンツの持ってる素晴らしさをあますところなく引き出す」「さらには演奏者のパッションまで引き出す」という企業フィロソフィーを挙げてたのが印象的だった。今回演者の使うヘッドフォンは12月発売の新製品という説明のあと、Nao Yoshiokaへの呼びかけがあり、演奏開始。

まずは、軽いサウンド・チェックから。Nao Yoshiokaの高低自在の歌声にいきなり耳を奪われる。オーディエンスも次第にステージ前方へと集まっていき、軽いコール&レスポンスもばっちりでソウルフルなムードが産まれていく。そして、「どんな苦しい状態でも一筋の光さえあれば、自分を失わずに進んでいける。そんなメッセージを込めた曲です」といって、「The Light」のレコーディングが始まった。1度目の演奏が終わるやいなやメンバー3人とも「もう1回だね」といったムードになり矢継ぎ早に2テイク目がスタート。素人耳からすれば、最初の演奏もどこが悪かったのかというくらい申し分のないものに聴こえたのだが、このセカンド・テイク、明らかな違いがあった。出だしのNaoの歌声からとにかくパワフルでダイナミック。この瞬間、フロアの空気もこれまでの緩く楽しむといった空気から、心地よい緊張感のあるものへと一新された。このテイクのNaoは、脳で考える前に魂から歌が出てきて止まらないといった感じで、身体から歌へと、しなやかな芯が通っているのが透けて見えるようなパフォーマンス。まさに一切のぶれなくパッションが歌となり発せられているといった様子であった。優しく繊細なタッチのキーボード、伸びやかに跳ねるリズムも、Naoの歌声を見事に彩り、躍動させている。この2テイク目、あまりにすごすぎて演奏後、オーディエンスから一瞬沈黙があり、そのあとに大拍手となったほどだった。

そして、この録音を演者含め全員で聴いてみることに。めいめいにフロアに座りながら、つい先程の演奏に耳を傾けている光景はなかなかユニークであった。やはり見事な演奏!と感じたのだが、Naoはもう1テイクしてみたくなったようで、再度ステージへ戻り3回目の録音に挑戦。この演奏も大変良かったのだが、先ほどの2テイクにあった勢いやテンションは少し緩まっているようにも感じた。

(左から)録音を確認する山内直己(SWEET SOUL RECORDS代表)、Nao Yoshioka

結果、2テイク目が採用されレコーディングは終了。3テイク目はモニターを再調整して演奏したらしい。パーカッションの豊田稔は「これ以上やれば落ちていくなあ」ともらしていたそうで、レコーディングにおけるフレッシュさの重要性をリスナーながらに思い知ることのできた3回の録音だった。おそらく、そのフレッシュさまでもパッケージされてしまうのがDSDレコーディングの醍醐味。音源として仕上がってくるのが楽しみだ。

以降は30分ほどのライヴ・パフォーマンス。「Killing Me Softly」やホイットニー・ヒューストンの「I Have Nothing」などカヴァーも絡めつつ、オリジナル・アルバム『The Light』からの楽曲を、時にしっとりと情感たっぷり、時にグルーヴィに身体を弾ませながら披露していく様は、まさにソウル・レビューの一言。アリシア・キーズやメイシー・グレイといったモダン・ディーヴァと比較しても遜色のない華やかなカリスマを持った歌い手にオーディエンスは釘付けだった。大喝采でライヴは終了。

今回のライヴ・レコーディング。録音からライヴという構成の妙で、演者の魅力やポテンシャルがリスナーへと明確に伝わる試みとなっていたように思う。また、レコーディングという緊張感のある時間をミュージシャンとオーディエンスで共有することで、ライヴへと移行するまでに、両者の間へ不思議な共犯関係とでも言うような一体感が形作られていた。もちろん、Nao Yoshioka、小林岳五郎、豊田稔というそれぞれに卓抜したミュージシャンだからこそ、この企画が成し得たことも特筆せねばならない。けれど、さまざまなミュージシャンやバンドで、ライヴ・レコーディングを体験してみたい、そう思わされた好企画だった。知的好奇心と身体的興奮をともに喚起される、そんな体験、そうはないだろう。

文 : 田中亮太
写真 : 大橋祐希

レコーディングで使用した、DENON機器はこちら


DA-10、AH-MM400




Denonブランド初となるポータブルUSB-DAC / ヘッドホン・アンプ〈DA-10〉。Denonが培ってきたHi-Fi技術をポータブル・サイズに凝縮し、ハイレゾ音源を更にマスター音源に近付けるAdvanced AL32 Processing、デュアル・マスター・クロックなどを惜しみなく投入。天然アメリカン・ウォールナット素材のハウジングとアルミ・ダイキャストの重厚なハンガー部、40mmのフリー・エッジドライバーを採用した新しいオーディオ・ファンのためのヘッドホン〈AH-MM400〉との相性も抜群である。

>>DENON DA-10の詳細はこちら


LIVE INFORMATION

Make the Change Project World Tour 2014
2014年11月20日(木)@名古屋クラブクアトロ
料金 : 5,500円(ドリンク代別)
詳細 / ご予約 : >>http://ny20141120.peatix.com

2014年11月24日(月)@渋谷日本橋三井ホール
料金 : 前売り6,000円(ドリンク代別)
詳細 / ご予約 : >>http://ny20141124.peatix.com

2014年11月26日(水)@札幌市教育文化会館小ホール
料金 : 前売り 4,000円(ドリンク代別)
詳細 / ご予約 : >>http://ny20141126.peatix.com

Nao Yoshioka「The Light」収録の最新作はこちら

Nao Yoshiokaによるデビュー・アルバム
Nao Yoshioka / The Light

【配信フォーマット】
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : まとめ購入2,000円(税込) 単曲257円(税込)

【Track List】
01. Feeling Good
02. The Light
03. Spend My Life
04. At Last
05. A Change Is Gonna Come
06. Certifiable
07. I'm Not Perfect
08. Make the Change feat. Shirma Rouse (Album Ver.)
09. His Eye Is on the Sparrow
10. Make the Change (Original Ver.)
11. Ain't No Mountain High Enough (Live)

PROFILE

Nao Yoshioka

NY仕込みのパワフルなヴォイスと表現力、ヒストリーに根ざしたながらもレイドバックとは異なるモダンなテイストを兼ね備えた進行形ソウル・シンガーNao Yoshioka。2009年からニューヨークに2年半滞在し、アポロシアターのアマチュア・ナイトでは準優勝、トップドッグまで上り詰めた。アメリカ最大級のゴスペル・フェスティバルでは40,000人の中からファイナリストに選ばれ帰国。昨年「Make the Change」を〈SWEET SOUL RECORDS〉からシングル・リリース。更に2013年の7月にはヨーロッパに単身渡り現地で多くのジャム・セッションに参加、8月にはアメリカでショート・ツアーを敢行した。和製アリシア・キーズと呼ばれ、渡米時にはGordon Chambersから称賛を受ける。そして2013年11月待望のデビュー・アルバム『The Light』をリリースし、ソウル・ミュージックの日本代表として音楽界に変革を起こす最注目新人アーティスト。

>>Nao Yoshioka Official HP

[ライヴレポート] Nao Yoshioka

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